ピッタリ合う淀の長丁場 グレイル逆襲/菊花賞

 菊花賞はグレイル(牡、野中)の巻き返しが怖い。水島晴之記者が分析する「G1前哨戦その一瞬」はセントライト記念に注目。タニノフランケルの大逃げで見た目はハイペースだが、実際はスローの消耗戦という変則的な流れ。後方3番手から3着まで追い上げたグレイルは、長丁場で力を発揮する可能性大だ。

折り合い不安なし グレイル

<セントライト記念>◇9月17日=中山◇G2◇芝2200メートル◇3歳◇出走15頭◇

淀の舞台で変わり身が期待されるグレイル
淀の舞台で変わり身が期待されるグレイル
セントライト記念グレイルのコース取り
セントライト記念グレイルのコース取り

 セントライト記念は、タニノフランケルの大逃げで始まった。逃げ宣言していたジェネラーレウーノを抑えて先頭へ。2ハロン目には10秒9の高速ラップを刻んだ。「オーバーペースになる」。誰もがそう思ったが、その後の4ハロンは12秒9を含め、すべて12秒台で流れた。隊列が決まると遅いと分かっても動けない。これが騎手心理。速くなるという「錯覚」がスローの縦長、変則的な流れを生んだ。

 逃げた馬の前半1000メートルは60秒9。これだけ見れば平均ペースだが、2番手以降は10馬身近く離れており、62~63秒台で通過したことになる。後ろの馬には難しい流れだが、追い打ちをかけるように1200メートル地点から今度は3ハロン連続の11秒台へ突入。一気にペースアップしたことで差し、追い込み馬は前との差を詰めるのに早めに脚を使わざるを得ず、消耗戦の中でスタミナを奪われた。

 この流れを後方3番手で追走したグレイルは、最内を回って追い上げたが、直線は前が壁。5、6頭分ほど外へ切り替えるロスもあった(※イラスト)。2着レイエンダの後ろに取り付いた時は、残り200メートルを切っていた。鋭い脚を使ったのは150メートルくらい。岩田騎手は「まだ動ききれていないし、反応したのは直線だけ。芯がしっかりすれば流れに乗るのも楽になると思う」。コメントを素直に受け取れば、距離延長がプラスに出るはずだ。

 流れが向かず、直線は立て直す不利。まともならジェネラーレウーノとの0秒4差はもっと詰まっていただろう。上がりは最速タイの34秒3。評価していい。体がはまってくる(=前後肢の連動がスムーズになる)のに時間がかかるタイプ。3000メートルは未知数だが折り合いに不安はなく、坂の下りからジワッと加速していける菊の舞台は合う。大駆けの可能性を感じさせる1頭だ。

 京都2戦2勝のグレイルが上昇気配。野中師は「かなり良くなった。歩様がいい。ひと夏を越して、こっちが思っているより成長しているのかな」と目を細める。ハーツクライ産駒で距離延長も歓迎。「引っ掛かることはないし、3000メートルの方が競馬はしやすくなると思う」と話した。

末脚光った エタリオウ

<神戸新聞杯>◇9月23日=阪神◇G2◇芝2400メートル◇3歳◇出走10頭◇

ゴール前たたき合うワグネリアン(左から2頭目)。左はメイショウテッコン。右はエタリオウ
ゴール前たたき合うワグネリアン(左から2頭目)。左はメイショウテッコン。右はエタリオウ

 2着エタリオウ(写真右)の末脚が光った。4角9番手からワグネリアン(同中央)を半馬身差まで追い詰めた内容は勝ちに等しい。上がりは最速33秒9。あと50メートルあれば差し切っていたかもしれない。ゴール前の勢いは完全に勝っていた。3角で手応えが怪しくなり、もたついたのは休み明け。今度は反応も良くなるだろう。距離が延びるのも歓迎。たたいた上積み、舞台変更で前進が見込める。

 3着メイショウテッコン(同左)は力を付けた。スタートで他馬と接触して行きたがったが、すぐ折り合ってよく粘った。切れる脚がないので2周目の下り坂で早めにスパートする形が理想。4着エポカドーロはゲートを出てつまずいたのがすべて。皐月賞、ダービーは先行力を生かした馬。あの形では苦しい。直線は大外から差を詰めており、スピードを生かす競馬ができれば巻き返せる。

前なら長い脚控えて切れる ブラスト

  新潟記念 ブラストワンピースが、古馬を蹴散らした。前半は進んでいかなかったが、直線で大外へ出すとノーステッキで突き抜けた。池添騎手が「まだ余裕があった」という内容で1分57秒5(新潟芝2000メートル)の好時計勝ち。前へ行けば長く脚を使い、控えれば切れる脚がある。スタミナ豊富で3000メートルも心配ない。経験の少ない右回りを克服すれば、戴冠チャンス。

<上がり馬>

 夏の福島、新潟を使った馬の中では、ラジオNIKKEI賞2着のフィエールマンと、信濃川特別を圧勝したグロンディオーズが面白い。特に前者は完全に脚を余し2着で能力の高さを証明。目標にした馬が進んでいかず仕掛けが遅れ、直線も大外へ出すロスがあった。ゴール前の勢いは完全にメイショウテッコンを上回っており、勝ち馬をはかりにすればG1でも十分勝負になる。