春季山梨大会組み合わせ決定 センバツ出場の山梨学院は4・13開幕戦で初戦 5・6決勝
春季高校野球山梨大会(13日開幕)の組み合わせが決まった。決勝は5月6日、山日YBS球場で行われる。上位2校が春季関東大会(5月18~21、25、26日、群馬)に出場する。
春季高校野球山梨大会(13日開幕)の組み合わせが決まった。決勝は5月6日、山日YBS球場で行われる。上位2校が春季関東大会(5月18~21、25、26日、群馬)に出場する。
<センバツ高校野球:星稜5-0阿南光>◇28日◇準々決勝◇甲子園
星稜の新2年生・戸田慶星投手が無四死球完封勝ち。センバツで2年生の無四死球完封は14年の履正社・溝田悠人(対小山台)以来10年ぶり。相手のレベルが高まる準々決勝以降では、84年準々決勝のPL学園・桑田真澄(対拓大紅陵)以来40年ぶりの快挙となった。背番号18は春夏を通じて完封投手の最大番号で、11年春1回戦の履正社・渡辺真也(対総合技術)以来2人目。
戸田の快投もあり、石川県勢はセンバツ準々決勝9度目(星稜は5度目)にして初勝利。春に4強がなかった5県(石川以外は福島、新潟、島根、佐賀)から脱した。春夏を通じて優勝がない12県からも抜け出すか。62年作新学院(栃木県宇都宮市)を更新するセンバツ最北端優勝も見えてきた。【織田健途】
<センバツ高校野球・高崎健康福祉大高崎6-1山梨学院>◇28日◇準々決勝◇甲子園
4強入りした高崎健康福祉大高崎(群馬)は“そんなこと”を徹底している。
両投手のボール球が少なく、かつ仕掛けも早い。山梨学院との関東対決は、4回裏終了時点でまだ39分経過というハイペースで進んだ。
ともに元プロ野球選手を父に持つ高山裕次郎内野手、田中陽翔内野手(それぞれ3年)の二遊間コンビが計14個のゴロをさばき、甲子園の黒土を制圧した。
高山は冬に外野から二塁に転向した。「土が硬くて、ボコボコになりにくいし怖さがないです。イレギュラーも少なくてて」。聖地で10個のゴロを完璧にさばき、二塁守備を「すごく楽しいです」と言えるようにまでなった。
低反発バットの影響で、詰まったゴロが増えた。二遊間は特に前へのダッシュが肝になる。5回、先頭打者の遊撃へのゴロは象徴的。田中はしっかり足を動かしてさばいた。「準備もできていたので」。
実は直前の4回裏の攻撃、2死満塁を無得点で終えた瞬間、田中はベンチからダッシュした。普通ならベンチで「あ~」と天を仰ぎそうなところ、田中は駆け出していた。3アウトの11秒後にはもう、ショートの位置に立っていた。
12年ぶりのベスト4入り。青柳博文監督(51)は「(12年前より戦力は)断然上」というほどのタレント軍団だ。そこでスキを見せないよう、技術以外でも圧倒できるよう、生方啓介野球部長(42)と赤堀佳敬コーチ(30)が攻守交代時の全力疾走を口酸っぱく言い続けてきた。
9イニングなら1試合18度の全力疾走になる。赤堀コーチは言う。
「選手たちによく言うんです。『そんなこと、にもこだわりなさい』と。そんなことに? って言われるくらい徹底力をもってこだわっていこうと。試合に勝たせていただくにしても、勝ちに対して価値をつけられるチームじゃないと日本一になっていけない」と大会中も訴えかけた。
その赤堀コーチは大会後、4月から磐田東(静岡)の監督に就任する予定だ。すでに報告を受けている選手たちは「赤堀さんのために」と帽子つば裏に書く。そんなことの徹底に、損なことはない。強い組織がきっと、最後に勝てる。ちゃんと示してから師を送り出す。【金子真仁】
◆高崎健康福祉大高崎の二遊間の父 二塁高山の父は広島、西武の内野手だった高山健一氏(52)で現在は広島スカウト。遊撃田中の父はロッテ、ヤクルトで投手だった田中充氏(48)。
<センバツ高校野球:高崎健康福祉大高崎6-1山梨学院>◇28日◇準々決勝
準々決勝で敗退の山梨学院は、河内佑樹外野手(3年)がチーム唯一の打点を挙げた。6点を追う8回無死満塁で中犠飛を運んだ。昨秋の関東大会で代打で公式戦デビューを果たし、今春に「3番・右翼」の定位置を獲得。初の聖地で堂々とプレーした。
勝負強さに加え、強運も備えている。「人よりもちょっと運が良いかなと思います」。実家は、山梨・韮崎市にある「永明院」で、曹洞宗の寺の息子。実は中学時代、野球継続の危機に直面した。
ボーイズチームでの練習時、送球が右目に直撃した。「痛すぎて目が開けられなくて。最初はずっと人が三重くらいに見えてて」。すぐさま病院へ向かうと、負傷箇所があと少し下だったら失明の可能性もあったという。手術はせず2週間安静にすると、1カ月で視力は回復。これ以降大きなケガなく、野球に打ち込めている。
もしかしたら当たり前にこなしている慣習が、強運の秘訣(ひけつ)なのかもしれない。寺の息子らしく「自分の家は年末年始が忙しいので。帰省の時はずっと掃除してます」と、仏像磨きに精を出している。「全力で集中力がもつまではやります。2時間くらい」。やるからには、とことんきれいにしたいタイプ。ここぞの集中力には自信がある。
甲子園では9打数3安打1打点。全3試合をスタメン出場し、憧れの場所でもひるまなかった。「平常心でいつも通りの野球ができたのはすごく良い経験になりました。また夏にここで試合がしたい」。
さらなる中心選手となって帰ってこれるように。再びこの場所に戻ることを誓った。【佐瀬百合子】
<センバツ高校野球:中央学院5-2青森山田>◇28日◇準々決勝◇甲子園
青森山田が中央学院(千葉)に2-5で敗れ、春夏通じて初の4強入りを逃した。先発した桜田朔投手(3年)が4回途中5失点と試合をつくれず。初回、先頭打者に四球を与え、2回には自身の暴投や連打などで3失点。4回に左越え2点適時打を浴び、1-5となったところで降板。以降はエース右腕・関浩一郎投手(3年)が無失点投球も、打線がチャンスをものにできず14残塁の拙攻。4回途中5失点の桜田は試合後、悔し涙を浮かべた。
◇ ◇ ◇
「自分のせいで負けてしまった」。桜田の口をついて出るのは反省ばかりだった。「気持ちも弱々しくて、真っすぐに全然気持ちが乗っていなかった」。マウンド上での弱々しい投球は野手のエラーにもつながった。自責点は「2」だが、「悪い流れをつくってしまったのは自分。自分がすべて悪いと思っています」。全責任を背負うかのように重い口調で振り返った。
後を託した関には何も言えなかった。普段からご飯の量やトレーニングで競い合うライバルは、1死二塁での登板もわずか4球で2死を奪ってピンチを脱すると、以降は散発3安打無失点。「『0』で抑えてくれた。さすがだなと思います。僕のせいで負けてしまったので、やっぱり関の方が上だなと思っています」。競い合う相手を上だと認めてしまうほど、ふがいない投球だった。「やめたいっす…」。桜田はぼそっとつぶやいた。
これまでも野球をやめたいと思ったことがある。中学時代にはリトルシニアでのエースの重圧や周りとのレベルの差、自身の体が細かったこともあり、自信をなくしていた。それでも野球と向き合い続け、21年夏にはリトルシニア日本一に輝いた。高校でも日本一を目指し、青森山田へ。しかし、高1の時にひじの痛みで右腕が上がらなくなった。クリーニング手術をしたが、今度は野球ができないことに投げやりな気持ちになって、落ち込む日々が続いた。
だが、その時期があったからこそ弱い自分と向き合うことができた。自分には努力が足りないと感じ、「もうやるしかない」と思えるようになった。
報道陣がいなくなってから、糸が切れたように座り込んで泣いた桜田。悔しくて悔しくて仕方がない春になった。だが、こういった局面から何度も立ち上がってきたのも事実だ。夏に向けて「何も見えないです」と言いながら、「勝ちたいです」と力強く言った。4月生まれで、名前は「さくらださく」。春に笑顔の桜を咲かせることはできなかったが、この代にはまだ夏がある。夏こそは笑顔の「さくらがさく」はずだ。【濱本神威】
<センバツ高校野球:中央学院5-2青森山田>◇28日◇準々決勝
青森山田が中央学院(千葉)に2-5で敗れ、春夏通じて初の4強入りを逃した。先発した桜田朔投手(3年)が4回途中5失点と試合をつくれず。初回、先頭打者に四球を与え、2回には自身の暴投や連打などで3失点。4回に左越え2点適時打を浴び、1-5となったところで降板。以降はエース右腕・関浩一郎投手(3年)が散発3安打の無失点投球。打線がチャンスをものにできず14残塁の拙攻も、青森山田のエースが意地を見せた。
◇ ◇ ◇
「これ以上『点をやらない』と思いました」。降板後、ベンチで涙を浮かべる桜田を見て、そう思った。前日の広陵(広島)との2回戦では、5回途中から登板した関。先発桜田が無失点で粘ってきた中で、8回に2失点、9回に3失点を喫した。打線が8回に2点、9回に3点を取り返し、5-5で迎えた延長10回裏無死満塁、原田純希(あつき)内野手(3年)の中犠飛でサヨナラ勝ち。試合後、関は時折涙を浮かべて声を詰まらせながら、「この試合はチームのみんなに本当に感謝しなきゃいけない」と語っていた。
前日に助けられた分、好投で恩返しした。得点圏には3度走者を進めながらも、きっちりと「0」に抑えた。前日のような逆転劇とは行かず、チーム初の1勝をつかんだ春は8強で終わったが、関は「チームとしても個人としてもたくさん反省や課題が得られたと思う。1日1日改善しながら、また夏、チームの目標である『日本一』に向かって頑張っていけたらと思います」。青森山田の「背番号1」は前を向いていた。今度こそ「日本一」をつかむために、夏にまたこの場所に帰ってくる。【濱本神威】
全国高校女子硬式野球選抜大会の準決勝が28日、埼玉・加須きずなスタジアムで行われ、東海大静岡翔洋が蒼開(兵庫)を5-1で下した。
打線は、初回に川満芽衣内野手(2年)が先制の適時打を放つなど5得点。先発の垣崎瑠依投手(1年)も2安打1失点完投で応え、快勝した。県勢初の進出となった決勝は4月7日に東京ドームで行われ、神戸弘陵(兵庫)と対戦する。
<涙は夏のため>
<センバツ高校野球:中央学院5-2青森山田>◇28日◇準々決勝
センバツが100年を迎えた。敗れて甲子園を後にする敗者には、今夏の甲子園へとつながっていくドラマがある。「涙は夏のため~新しい夢のため~」と題し、さまざまな角度から敗れたチームの物語を紡ぐ。
◇ ◇ ◇
野球がつらかった、やめたかった-。青森山田・桜田朔投手(3年)は、青森山田リトルシニア時代に何度も「野球をやめたい」と思ったことがある。中学時代は青森山田中に自宅から通っており、毎日送り迎えをしていた父博さん(47)は「毎日、朔が苦しんでいる顔を見るのがつらかった」。片道36キロ、往復72キロの道のりで、曇った表情の息子が心配だった。周りとのレベル差や細い体-。桜田は「多分自信がなかったんですよね」と振り返る。
リトルシニアで日本一に輝き、高校日本一を目指して青森山田に入学。しかし、高校1年で右ひじのクリーニング手術をし、今度は野球ができず、投げやりな気持ちになり落ち込む日々が続いた。苦しい時期を過ごしたが、だからこそ弱い自分と向き合えた。努力が足りないと感じ「もう、やるしかない」と前を向けるようになった。
この日は中央学院を相手に4回途中5失点で降板。目に涙を浮かべ「自分のせい」と何度も口にしたが、夏に向けて「勝ちたいです」と力強く言った。悔しい春となったが、まだ次がある。再び立ち上がり、夏こそ笑顔で締めくくる。【濱本神威】
<センバツ高校野球:報徳学園4-1大阪桐蔭>◇28日◇準々決勝
報徳学園「つなぎの4番」斎藤佑征内野手(3年)が3戦連続決勝打で勝利へ導いた。
1回無死満塁、大阪桐蔭・平嶋の外角変化球を流し打ち、三遊間を破った。先制打に「後ろにつなぐ意識があればどんな球でも対応できると思った。ヒットになって本当によかった」と右拳を突き上げた。勝負強さを発揮し「秋とは変わった報徳の姿を見せたいと思った。それを表現できるのは4番の僕と思っている」と胸を張った。
<センバツ高校野球:中央学院5-2青森山田>◇28日◇準々決勝
中央学院(千葉)が青森山田を破り初の4強入りを決めた。
蔵並龍之介投手(3年)は、背番号1のプライドを今大会初登板のマウンドに賭けた。1、2回戦は臼井夕馬投手(3年)、颯佐心汰内野手(3年)の継投で勝利。蔵並は終盤、一塁での起用はあったものの、登板はなかった。「投げたくて悔しかった。それをこの1試合に出せました」。8回途中まで毎回走者を背負ったが動じない。決め球のフォークを武器に粘り8安打1失点。打撃でも同点打を含む2安打1打点と勝利に貢献した。
投げられない自分に腹が立った。2回戦の宇治山田商戦前日。ブルペンでいい球が投げられず涙がこぼれた。「直球の質、変化球。うまくいかなくて…」。だから、出番がない。現実を突きつけられたが、「自己改革」が新たな力を生んだ。「自分の性格はマイナス思考。でも、相馬(幸樹)監督やチームメートが変えてくれた」。周りの声かけで「今できることを精いっぱいやる」と、プラス思考に。無心で練習を重ね、全力投球のマウンドにかえた。
186センチ、90キロの恵まれた体で「実は意識をしている」という左足を高く上げる“ロッテ佐々木朗希フォーム”で、全国にその名を知らしめた。「マウンドに上がった選手がエース。次もその気持ちで投げ込みたい」。背番号1の復活が、チームに弾みをつける。【保坂淑子】
<センバツ高校野球:高崎健康福祉大高崎6-1山梨学院>◇28日◇準々決勝
昨年の王者、山梨学院は連覇を逃した。
エース・桜田隆誠投手(3年)は、左手指のマメをつぶした先発の津島悠翔投手(2年)に代わり、5回途中からマウンドに上がった。「変化球でカウントをとれたんですが、決め球が決まらなかった」と、3回1/3を5安打2失点。「まだ諦めない気持ちで。ここから粘ってと思っていたんですが…」と肩を落とした。
大会直前、インフルエンザにかかり、調整が遅れた。急きょ津島がメンバー入りし初戦、2回戦と先発し勝ち進んだ。「制球が持ち味なのに、そこが全然もどらなくて。体調を崩した自分が悪い。そこは切り替えて少しでもチームに貢献できるように、と思ってやっていました」。しかし、本来の投球ができないままに、春のセンバツを終えた。
中学の卒業式、全校生徒と保護者の前で「両親へ、野球の練習にずっと送り迎えしてくれてありがとう。僕が必ず、甲子園につれて行きます」と、スピーチした。アルプスでは母・佳子さん(52)が「有言実行してくれた。それがうれしい」と、見守った。
「また戻って来られるようにやっていきたいです」と桜田。有言実行の男の目は、すでに夏の舞台を見つめている。【保坂淑子】
<センバツ高校野球:報徳学園4-1大阪桐蔭>◇28日◇準々決勝
昨春準優勝の報徳学園(兵庫)がセンバツ2大会連続で大阪桐蔭を下し、4強入りを決めた。昨秋近畿大会で同校にKOされた今朝丸裕喜投手(3年)が9回5安打1失点で完投勝ち。2年連続のベスト4進出へチームを導いた。星稜は8強唯一の公立校・阿南光(徳島)を破り、石川県勢初の春4強進出。高崎健康福祉大高崎(群馬)、中央学院(千葉)も4強入りした。準決勝は休養日をはさんで、30日に行われる。
◇ ◇ ◇
プロ注目右腕が、5カ月前の雪辱を果たした。報徳学園の長身右腕・今朝丸が「西の横綱」に9回5安打1失点で完投勝ち。昨秋近畿大会で7回途中4失点でKOされた相手を寄り切った。「やられた分、取り返そうと強い気持ちで臨みました。秋のリベンジを果たせて良かった」。すっきりした表情だった。
昨年10月28日、大阪桐蔭との近畿大会準々決勝に先発したが、7回途中4失点。センバツ当確ランプを灯せず、険しい表情で球場を去った。
冬は体重増とメンタル強化に励んだ。初回1死二塁、質の向上した高め直球で徳丸を空振り三振。「今日はいける」と手応えを得た。2-0の8回に1点を返されたが、女房役の徳田が二盗を刺しバッテリーでほえた。「本当に助かった。秋は気持ちに余裕がなかった。甲子園でもピンチの場面が絶対来ると思っていた」と動揺はなかった。
「ド」がつくほどの天然キャラ。チームで研究し尽くしたはずの相手校のエースも、試合当日になって「エース、だれやったっけ?」と首をかしげ、味方は「あれだけミーティングしてるのに…」と苦笑い。ただ、マウンド上ではマイペースで動じない。根っからの投手タイプで、この日も強気の投球でねじ伏せた。
甲子園6試合目の登板で初完投。お立ち台にも初めて上がり「マウンドより緊張した」と笑った。強豪ひしめくブロックを勝ち抜き、準優勝の昨春に続く4強入り。「今日が一番大きなヤマ場だと思っていた。勝ち抜けたので日本一を取る意識が強く持てる。強い意識を持って戦っていこうかな」。春夏4度目の悲願まであと2勝だ。【林亮佑】
◆大阪桐蔭に連勝 報徳学園が甲子園では昨年春の準決勝(7-5)に続き連勝。大阪桐蔭に甲子園で2勝した学校は初めて。
<センバツ高校野球:中央学院5-2青森山田>◇28日◇準々決勝
青森山田は春夏通じて初の4強入りはかなわなかった。
4回途中から救援したエース右腕の関浩一郎投手(3年)が無失点投球も、打線が14残塁と好機を生かせず。初球を遊撃に打ち上げ最後の打者となった橋場公祐主将(3年)は「つながないといけない場面で1本出せなかったのは自分の実力不足」と反省。「しっかり鍛え直して夏を迎えたい」と気を引き締めた。
<センバツ高校野球:星稜5-0阿南光>◇28日◇準々決勝◇甲子園
星稜(石川)が快勝し、初めて4強に入った。石川県勢としてもセンバツでは初の準決勝進出。能登半島地震で被害を受けた地元に、あと2勝で紫紺の優勝旗が届く。高崎健康福祉大高崎(群馬)は堅守で4強へ。山梨学院の春連覇はならなかった。関東勢では中央学院(千葉)も春夏通じて初のベスト4。大阪桐蔭を破った報徳学園(兵庫)は30日の準決勝に進んだ。
◇ ◇ ◇
試合ごとに2桁背番号の選手が躍動する星稜に、また新たなヒーローが生まれた。1回戦は20番東汰生(たいせい)外野手(3年)、2回戦は13番中島幹、そしてこの日は18番戸田慶星投手(2年)。公式戦初先発の2年生右腕が2安打完封で、県勢初の4強に導いた。
3回、先頭打者に初安打を許し、そこから1死二塁と得点圏に走者を背負った。だが連続内野ゴロでピンチを脱出。9回2死から2本目の安打を許すまでピンチらしいピンチもなく、堂々の完封勝利を挙げた。
登板前は「何も考えないようにして試合に入った」と無心を心がけた。女房役の能美とブルペン捕手の河上も作戦を練った。戸田の緊張しやすい性格を知る2人は、あえて「緊張しとけよ」と声をかけた。「緊張するもんだと思えと。緊張がダメと言えば、そっちにのめり込んで、意識が向いてしまう」という気づかいも功を奏した。
OBのヤクルト奥川の投球に心を奪われ、星稜中に入学。父岳仁(たけと)さん(52)の「星稜に入ってほしい」との願いで、慶星(けいた)の名前に「星」の字が入る。奥川がエースとしてけん引した当時の映像を、繰り返し見てきた。「小学校の頃は(甲子園で)投げられるとは思ってなかった」と、夢舞台に立つこと自体が夢心地だった。
冬場はウエートトレに励み、室内練習場に掲げられた「念ずれば花開く」の言葉を胸に刻んだ。戸田の志を知るエースの佐宗翼(3年)は「この冬で一番の成長。頼もしくて安心して見ていました」と明かした。
センバツ4強は星稜にとって5度目の正直。松井秀喜(元ヤンキース)、山本省吾(元オリックス)、奥川らも果たせなかった。「先輩を超えたとは…」と喜びがこみあげる。チームは昨秋から16連勝。「1球1球を大事にして、結果的に1点でも相手より多く取れるように」と春制覇に向かう。【中島麗】
<センバツ高校野球:大阪桐蔭1-4報徳学園>◇28日◇準々決勝
大阪桐蔭が2年連続で報徳学園に屈し、ベスト8で甲子園から姿を消した。
前回大会の準決勝で惜敗した相手にリベンジはならず。聖地で同じ相手に2敗は、同校初の屈辱となった。母校に苦汁をなめさせられた西谷浩一監督(54)は「粘り強い報徳学園さんに粘り勝ちしたいと思ってやったんですけど、粘りきれなかった」と悔やんだ。
初回の失点が最後まで尾を引いた。先発平嶋がいきなり連続四球を許し、4番斎藤に先制の左前適時打を許すなど2失点。2回以降は立ち直ったが、4回2失点で降板し「自分が試合を崩してしまった」とうなだれた。打線も大会屈指の好投手、今朝丸から1点しか奪えず、指揮官は「力負けだと思います」と脱帽した。
西谷監督は今大会で2勝を手にし、甲子園単独最多69勝監督となったが、春夏9度目の優勝はかなわず。王手をかけていた都道府県別で史上初の大阪春夏400勝も夏にお預けに。指揮官は「夏への課題がたくさん見つかった、詰まったゲームだった。何とかまたここで勝負をできるように、日本一を目指せるように準備したいと思います」と前を向いた。【古財稜明】
▽大阪桐蔭・境(2試合連続3安打と奮闘)「悔しいです。チームとしても個人としてももっとレベルアップして、また夏に戻ってこられるように練習をやっていきたい」
<センバツ高校野球:報徳学園4-1大阪桐蔭>◇28日◇準々決勝
大阪桐蔭が報徳学園に敗れ、2年ぶりのセンバツ制覇を逃した
報徳学園とは昨年のセンバツ準決勝で対戦。3回に5点の大量リードを奪うも、7回に追いつかれ、8回に2点を勝ち越されて力尽きた。その試合で8回から救援した今朝丸裕喜投手(3年)がこの日は先発で、1点しか奪えなかった。
大阪桐蔭が同じ相手に甲子園で2敗するのは初めてのケースとなった。
<センバツ高校野球:星稜5-0阿南光>◇28日◇準々決勝◇甲子園
星稜(石川)が快勝し、初めて4強に入った。石川県勢としてもセンバツでは初の準決勝進出。能登半島地震で被害を受けた地元に、あと2勝で紫紺の優勝旗が届く。
◇ ◇ ◇
星稜・山下智茂名誉監督「選抜初のベスト4おめでとうございます。これまで4度、ベスト8で敗れていたので、今大会は能登の方々にとても大きな希望を与えているのではないでしょうか。これからが大変な戦いになるので頑張ってほしいと思います」
<センバツ高校野球:高崎健康福祉大高崎6-1山梨学院>◇28日◇準々決勝◇甲子園
高崎健康福祉大高崎(群馬)の4番、箱山遥人捕手(3年)にようやくスカッとする当たりが出た。
2点を先制した5回、なおも2死二、三塁。山梨学院の技巧派左腕津島の初球の直球を振り抜いた。惜しくも本塁打とはならなかったものの、打球はフェンスに直撃。2点適時三塁打となり、滑り終えるとこぶしを突き上げた。
「友人であったり、家族であったり、いろんな方に支えられて、応援されて、自分がチームのために行動することが一番結果につながるって心に言い聞かせて、仲間のために初球から振っていこうと思いました」
そんな感情を吐露した。強肩強打の捕手として、今秋ドラフト候補に挙がる。2月に腰を痛め、全体練習に参加できない時期もあったが、ようやく大会終盤に本領を戻してきた。
中学時代から好捕手として評判で、山梨学院も進路先の候補にあったという。それが1年秋、2年秋と山梨学院に敗退。「それが本当に悔しくて。甲子園という舞台でやっと山梨学院さんに勝つことができて、特別な思いもありますし、そこはすごいうれしいなっていうふうに思います」と熱い感情を口にした。
30日の準決勝では星稜(石川)と戦う。「1試合1試合、1イニング1球1球をやりきる強い思いを持ってやっているので、自分たち9人でやった結果が勝利につながればいいなって思います」と意気込んだ。
<センバツ高校野球:高崎健康福祉大高崎6-1山梨学院>◇28日◇準々決勝◇甲子園
高崎健康福祉大高崎はこの日も2年生の継投で勝った。
先発左腕の佐藤龍月投手は5回2死、左手人さし指の血豆が悪化。その後に直球で空振り三振を奪ったものの、6回からは右腕の石垣元気投手にマウンドを託した。「自分は『投げられる』って言ったんですけど、次の試合もあるので」と佐藤。報道対応を終え治療に向かった。
◆無失策試合 山梨学院-高崎健康福祉大高崎戦で記録。今大会4度目。
<センバツ高校野球>◇28日◇準々決勝4試合
センバツ高校野球第9日は準々決勝4試合。第1試合は星稜(石川)が阿南光(徳島)を5-0で破り春のセンバツで初の4強入り。第2試合は高崎健康福祉大高崎(群馬)が連覇を目指した山梨学院に快勝した。第3試合は中央学院(千葉)が青森山田を破って初の4強入り。第4試合は報徳学園(兵庫)が大阪桐蔭を4-1で破り2年連続の4強入りを決めた。
準決勝は明後日30日、星稜-健大高崎、中央学院-報徳学園のカードで行われる。
チーム | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
桐蔭 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 |
報徳 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | X | 4 |
【桐】平嶋、南、中野
【報】今朝丸
チーム | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
中学 | 0 | 3 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 5 |
山田 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 2 |
【山】桜田、関
【中】蔵並、颯佐
チーム | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
山学 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 |
健大 | 0 | 0 | 0 | 0 | 4 | 0 | 2 | 0 | X | 6 |
【健】佐藤、石垣
【山】津島、桜田
チーム | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
星稜 | 1 | 3 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 5 |
阿南 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
【阿】大坂、吉岡
【星】戸田
<センバツ高校野球:報徳学園4-1大阪桐蔭>◇28日◇準々決勝
報徳学園(兵庫)が昨春に続き大阪桐蔭を破り2年連続の4強入りを果たした。昨年は準決勝で対戦し7-5で勝利。大阪桐蔭とは甲子園対戦成績を2勝1敗とした。
先発のプロ注目右腕今朝丸裕喜が快投。188センチの長身から145キロ前後の角度ある直球とスプリットで大阪桐蔭打線を圧倒した。7回まで3安打無失点。8回に1点を失ったが最少失点で完投した。今朝丸は昨年の同カードでも勝利投手になっており2年連続で大阪桐蔭から白星を挙げた。
打線は1回、大阪桐蔭・平嶋の立ち上がりを攻め、連続四球と敵失で無死満塁。4番斎藤佑征の左前適時打と内野ゴロの間に2点を先制。1点差に迫られた8回には敵失から好機を広げ5番安井康起の適時打、暴投で2点を奪った。
大阪桐蔭は8回に一時は1点差に迫ったが3年連続の4強入りを逃した。西谷浩一監督は母校に敗れ70勝到達ならず。さらに大阪勢の春夏甲子園400勝目も夏以降に持ち越しとなった。
<30日の準決勝組み合わせ>
第1試合:星稜(石川)-高崎健康福祉大高崎(群馬)
第2試合:中央学院(千葉)-報徳学園(兵庫)
<センバツ高校野球:大阪桐蔭-報徳学園>◇28日◇準々決勝◇甲子園
大阪桐蔭の吉田翔輝外野手(3年)が、試合中のアクシデントにより途中交代した。
2点を追う8回2死三塁から吉田が左前へのタイムリーを放ち、一塁へ出塁。その後、徳丸快晴外野手(3年)の打席で相手投手が一塁へけん制球。帰塁した際に右肩を痛めた模様で、治療のためベンチに下がった。臨時代走に境亮陽外野手(3年)が送られたが、8回裏の守備には就かず、そのまま交代となった。
<センバツ高校野球:中央学院5-2青森山田>◇28日◇準々決勝
青森山田は春夏通じて初の4強を狙ったが、同じく初の4強を狙った中央学院に阻まれた。先発した青森山田・桜田朔投手(3年)は4回途中5失点(自責点2)で降板。降板後はベンチで天を仰いだり、帽子のつばで顔を覆って目に涙を浮かべていた。
試合終盤は、ベンチから大きな声で声援を送った。勝利を願い続け、チームも再三チャンスをつくったが、なかなか得点にはつながらず。試合後「自分のせいで負けてしまったので、すごい反省しています」と涙目。マウンド上で弱気になり「真っすぐにも全然気持ちが乗ってなくて棒球のようなボールをずっと投げてしまっていた」と、弱々しい投球になった自分を責めた。
<センバツ高校野球:星稜5-0阿南光>◇28日◇準々決勝◇甲子園
就任2年目で県勢初のセンバツ4強入りを果たした星稜・山下智将監督(42)が喜んだ。
「石川県が大変な中で、石川から背中を押されているような気がして、いろんな人からたくさんのパワーをいただいている」。春4強の壁は厚かったが「うちの最高成績は(春は)ベスト8ということを知らない選手もいるかもしれない」とナインには意識させないように心がけ、県と部の球史を塗り替えた。
<センバツ高校野球:中央学院5-2青森山田>◇28日◇準々決勝
中央学院(千葉)が青森山田を破り初の4強入りを決めた。千葉県勢の4強は19年の習志野以来5年ぶり。
1回に1点を先制されたが2回に逆転。2死走者なしから敵失と暴投で好機をつくり8番蔵並龍之介の適時打で1-1同点。さらに9番上村晃平が安打でつなぎ1番青木勝吾の適時二塁打で2者生還し3-1と勝ち越した。4回に青木の2点適時二塁打で加点した。青木は3本の二塁打を放ち4打点を挙げた。
先発は今大会初登板の蔵並。8回途中まで毎回走者を出しながらも粘りの投球で8安打1失点。8回無死一塁から登板の颯佐心汰が1失点に抑え逃げ切った。
青森山田は初の4強入りならず。1回に1点を先制も2回以降は拙攻で8回まで追加点を奪えなかった。9回にようやく1点を返したが及ばなかった。
<センバツ高校野球:高崎健康福祉大高崎6-1山梨学院>◇28日◇準々決勝◇甲子園
高崎健康福祉大高崎(群馬)が山梨学院を突き放し、ベスト4に進出した。30日予定の準決勝で星稜(石川)と対戦する。
4回終了まで40分かからないハイテンポな試合で0-0の5回、相手投手の制球の乱れからチャンスを作り、1番斎藤銀乃助外野手、2番田中陽翔内野手(ともに3年)が連続適時打を放った。
さらにその後、今秋ドラフト候補の4番箱山遥人捕手(3年)が左翼フェンス直撃の2点適時三塁打を放ち、試合を決めた。
守っては佐藤龍月投手(2年)が試合中盤に人さし指の血豆がつぶれるアクシデントがあったものの、石垣元気投手(ともに2年)との継投で、昨春甲子園Vの山梨学院を1点に抑えた。高山裕次郎内野手(3年)と田中で組む二遊間も堅実で、試合を引き締めた。
同校の準決勝進出は12年以来12年ぶり。青柳博文監督(51)は12年当時のチーム力と比べて「数段上です。これで勝てないと監督に力がないことになる。プレッシャーを感じます」と苦笑いしながら、快勝には手応えを感じていた。
<センバツ高校野球:中央学院-青森山田>◇28日◇準々決勝
4回表無死一、二塁、青森山田の先発・桜田朔投手(3年)が、中央学院・上村晃平外野手(3年)の投ゴロを処理し三塁へ送球。飛び出していた二塁走者の飯山成夢捕手(3年)が青森山田・菊池伊真内野手(2年)に激突した。
体を張ったプレーでアウトを奪ったが、走者のひざが直撃したか、菊池伊はしばらく立てなかった。この接触でユニホームの左袖が破れたが、菊池伊はプレー続行。その裏の打席では、兜森崇朗監督、ナインらが満面の笑みでゲキを飛ばした。
<センバツ高校野球:高崎健康福祉大高崎6-1山梨学院>◇28日◇準々決勝
山梨学院の先発・津島悠翔投手(2年)は流血後に制球を乱して粘り切れなかった。4回の登板中に左手の爪から出血。ユニホームに血をつけながら必死に腕を振った。4回は2死走者なしから安打と2四球で満塁としたが無失点。吉田洸二監督(54)も4回裏を終えたところで確認した。「4回が終わったところで爪が激しく割れて出血がひどかった。左指の爪ですね。ここらへん(左太もも)にかなり血がついていた」と状況を説明した。
無失点だったため続投したが、5回は2四球と3安打で4失点。イニング途中での降板となった。「今大会はよく津島が頑張ってくれたので何とか5回までと思っていったんですけど…。チェンジアップが全く落ちなかったので限界が来てたんでしょうね。痛い中でよく投げた」と左腕をねぎらった。
<センバツ高校野球:高崎健康福祉大高崎6-1山梨学院>◇28日◇準々決勝
山梨学院は準々決勝で敗れて、春連覇を逃した。
吉田洸二監督(54)は「現状が関東大会に出れるかなというスタートだった」と振り返り、「褒めてやりたいね。優勝旗を返せたらというところから始まった物語なので、すごいいいものを見られたかなというのが正直な気持ちです」と選手をねぎらった。
「連覇」については全く頭になかったと言い、「もうちょっと強かったら意識があったかもしれないけど、何の言い訳にもならないくらい何もなかったですね。言われて思い出すくらい」と勝ち進むことに必死だった。
開会式で全員で優勝旗を返還することができたことに感謝した。「僕は開会式が1回戦と言っていた。この大会は出たことに感謝してる。よくここまで連れてきてくれたなというのが本音です」。史上4校目の春連覇を目指した戦いは8強で止まった。
<センバツ高校野球:高崎健康福祉大高崎6-1山梨学院>◇28日◇準々決勝
高崎健康福祉大高崎(群馬)が山梨学院との関東勢対決に快勝。12年ぶりの4強入りを決めた。準決勝で星稜(石川)と対戦する。昨年の王者、山梨学院は連覇を逃した。
0-0の5回、1死一、三塁から1番斎藤銀乃助、2番田中陽翔の連続適時打で2点を先制。さらに2死二、三塁から4番箱山遥人の左翼フェンス直撃の適時三塁打で2点を加え計4点を奪った。7回には2死からの連続長打などで2点を追加した。
守っては2年生コンビが好投。先発の佐藤龍月が5回を1安打無失点。佐藤は今大会3戦19イニング無失点となった。6回からは石垣元気が登板。3試合連続の完封リレーは逃したが4イニングを1失点に抑え逃げ切った。
山梨学院は先発の津島悠翔が4回まで無失点の好投。しかし5回途中、左手指から出血するアクシデントに見舞われた。制球に苦しむなど四球の後に連打を許し4失点。主導権を握られた。打線は後半のチャンスでビッグイニングをつくれず1点止まり。昨春から続いた甲子園での連勝は「8」で止まった。