日刊スポーツ

データが語る

【アジア杯】日本代表、初戦ベトナム戦のクロス成功率0%、精度のズレを修正して第2戦へ

1月14日、アジア杯 日本対ベトナム 後半、シュートを放つ上田(手前)

AFCアジアカップ(アジア杯)カタール大会で、日本代表(FIFAランキング17位)は19日午後2時半(日本時間同8時半)からアルラヤンでの1次リーグD組第2戦でイラク代表(同63位)と対戦する。

4-2と逆転勝ちした初戦のベトナム戦はセットプレーの守備とともにクロスの精度も課題として残った。3大会ぶり5度目の優勝に向けては、そのズレの修正もポイントの1つになりそうだ。

国際サッカー連盟(FIFA)の技術研究グループのリポートによると、日本のベトナム戦のクロス成功率は0%だった。流れの中から12本のクロスを送り、味方のシュートに直結したピンポイントのクロスは1本もなかった。

前半28分のDF伊藤の左からのクロス、後半4分のMF伊東の右からのクロスはともに精度を欠き、GKに難なくキャッチされた。後半16分には右からグラウンダーのクロスを送った伊東と、ゴール前に入ろうとしたFW上田の呼吸が合わないシーンがあるなど、出し手と受け手のズレも散見された。

相手守備陣の奮闘もあって、サイド攻撃は不発に終わったが、今年8戦8発と好調を維持する上田は守備を固める相手への対処法について「高い位置でボールを奪えていたら背後は取れるけど、ゴールを取る術に関してはクロスやセットプレーとかいろいろある」と話していた。MF南野、久保らの中央突破の効率を高める意味でもクロスのズレを修正し、「攻撃の幅」を広げながら勝ち進みたい。

【石川秀和】

1月14日、アジア杯 日本対ベトナム 後半、ドリブルで攻め込む伊東(左)
データが語る

【データが語る】中村敬斗「出た時にベストパフォーマンス」出場6戦連発なら“伝説のFK”以来

アジア杯カタール大会1次リーグ 日本対ベトナム (撮影・足立雅史)=2024年1月14日(現地時間)

日本代表MF中村敬斗(23=スタッド・ランス)が快記録連発だ。14日のAFCアジアカップ(アジア杯)1次リーグ初戦のベトナム戦(4-2)で、2-2の前半終了間際にペナルティーエリア手前からの見事な右足コントロールシュートで勝ち越し点を奪った。

国際Aマッチデビューとなった昨年3月のウルグアイ戦は後半44分からの出場で無得点だったが、その後は1、2、1、1、1点と出場5試合連続ゴール。日本代表で出場5戦連発は2019年のMF南野拓実らに並ぶ歴代2位タイの記録で、出場6試合連続ゴールとなれば、1985年に日本の「背番号10」MF木村和司がマークした歴代最多記録に並ぶことになる。

FKの名手として知られる当時27歳の木村は1985年10月26日のFIFAワールドカップ(W杯)メキシコ大会アジア最終予選の韓国戦(国立)で、6戦連発となる「伝説のフリーキック」を決めて達成した。右足でゴール左上隅に決めた直接FKゴールは今も語り継がれる。

2000年生まれの中村はその伝説の記録に並ぶ勢い。さらにAマッチデビューから出場7戦7発となれば、日本代表監督を務めたこともあるFW二宮寛(7戦8発)が1959年にマークして以来、実に65年ぶりとなる。

「自分のやることは変わらない。出るか出ないかは監督が決めること。出た時にベストパフォーマンスを出せればいい」。左足首負傷の影響でMF三笘の復帰が不透明な中、新時代のアタッカーにかかる期待は大きい。【石川秀和】

〈日本代表の国際Aマッチ出場連続試合ゴール〉

▼6試合連続

木村和司(85年)1、1、1、1、1、1点

▼5試合連続

渡辺正(58~59年)1、1、1、1、1点

釜本邦茂(66~67年)1、6、3、1、1点

南野拓実(19年)1、1、1、2、1点

中村敬斗(23年~)1、2、1、1、1点

日本対ベトナム 前半、ゴールを決めた中村(中央)(撮影・足立雅史)
W杯メキシコ大会アジア最終予選日本対韓国 前半終了間際、「伝説のフリーキック」を決める木村和司(1985年10月26日撮影)
セルジオ越後「ちゃんとサッカーしなさい」

【セルジオ越後】凡戦の言い訳「初戦は難しい」相手だって初戦だぞ 情けない内容はもういいよ

日本対ベトナム 前半、ベトナム代表グエン・ディン・バックにゴールを決められ、選手たちに指示を出す森保監督(後方)(撮影・足立雅史)

<アジア杯:日本4-2ベトナム>◇1次リーグ◇第1戦◇14日◇カタール・ドーハ

サッカー日本代表(FIFAランキング17位)が14日、アジアカップ(アジア杯)カタール大会の1次リーグ初戦で、元監督フィリップ・トルシエ氏(68)率いるベトナム代表(同94位)と対戦。南野の2ゴールなどで4得点を挙げ、幸先良く白星スタートを切った。

   ◇   ◇   ◇   

「初戦は難しい」。凡戦をいいわけするには、持って来いのキャッチフレーズだな。相手だって初戦だぞ。前半、先制しながらセットプレー2本で一時逆転された。初戦だからか? 特に2失点目。相手の長身選手は1人しかいないのに、その選手に競り負けて失点した。聞きたいよ。2戦目なら止められたかな?

前半のうちに逆転して、後半は楽に得点できると思ったが、なかなかゴールが入らない。相手は前半35分すぎには足が止まっていたぞ。長い距離は走れなかったし、足をつる選手もいた。それでも4点目を奪うのに、時間がかかりすぎた。

「いい守りからいい攻撃」。これは森保ジャパンのキャッチフレーズ。相手が攻めてこないからいい守りは存在しなかった。いい守りが消えて、いい攻撃もできなくなったのかな。ワンパターンでメリハリのない攻撃。この代表がダメな時のパターンが、この日も出てしまったね。

特に左からの攻撃が機能しなかったね。途中から伊東を左に回したが、破壊力がない。三笘の復帰を待つしかないのかな。これまでファーストチームとセカンドチームがそれぞれ結果を出して連勝してきて「選手層が厚くなった」と評価された。でも三笘1人いないだけで、攻撃が限られると、本当に選手層が厚くなったとは言えないだろう。

本当のアジア杯は、決勝トーナメントから。1次リーグ3試合はピッチと気候に慣れるための試合。情けない内容はもういいよ。頼むから、もう2度と変なキャッチフレーズで惑わさないでくれよ。(日刊スポーツ評論家)

日本対ベトナム 前半、ベトナム代表のファム・トゥアン・ハイにゴールを決められ、厳しい表情の森保監督(左から2人目)(撮影・足立雅史)
データが語る

【データが語る】浅野拓磨、日本代表史上最高の「切り札」へ/日本代表歴代交代出場得点ランク

浅野拓磨(2022年11月撮影)

アジア杯カタール大会は12日(日本時間13日未明)に開幕する。3大会ぶり最多5度目の優勝を狙う日本は1次リーグD組で14日にトルシエ元日本代表監督が率いるベトナムと初戦。19日にイラク、24日にインドネシアと顔を合わせる。

日本代表史上最高の「切り札」へ-。FW浅野拓磨(29=ボーフム)は35人目の国際Aマッチ通算10ゴールにあと1点と迫る。先発した試合は16試合で4得点、途中出場では32試合で5得点をマークしている。交代出場での得点数はFW本田圭佑と並び日本歴代2位。FW中山雅史の最多6点にあと1点だ。

J1サンフレッチェ広島時代の15年には森保一監督の下、途中出場だけで年間8ゴールをマーク。もちろん、先発でのゴールも期待したいが、これまでは主に「スーパーサブ」として限られた出場時間の中でも結果を残してきた。

22年ワールドカップ(W杯)カタール大会のドイツ戦では後半12分からピッチに立ち、1-1の同38分に決勝点。昨年9月の国際親善試合でもドイツを相手に2試合連続で途中出場からゴールを決めた。

準優勝に終わった前回UAE大会はメンバーに選出されるも、負傷のため出場を辞退。悔しい思いが残っている。日本が誇る快足アタッカーは「優勝を目指してやるのは当たり前。アジア杯に向けて100%の状態をつくれるようにしたい」と意気込んでいた。

【石川秀和】

〈日本代表途中出場得点数ランキング〉

1位 中山雅史 6(先発15点)

2位 浅野拓磨 5(先発4点)

2位 本田圭佑 5(先発32点)

4位 大黒将志 4(先発1点)

4位 佐藤寿人 4(先発0点)

セルジオ越後「ちゃんとサッカーしなさい」

【セルジオ越後】お年玉いっぱいもらえたね、いい夢見たよ、真剣勝負のアジア杯では夢を広げてね

日本対タイ 後半、ゴールを決める田中(左)(撮影・足立雅史)

<国際親善試合TOYO TIRES CUP 2024:日本5-0タイ>◇1日◇東京・国立競技場

「新春お年玉大会」だったね。実力差が大きいタイ相手に、元日の国立には6万人を超えるファンが集まった。普通、世界ではこれだけ実力が離れた相手との試合に、こんなにお客さんは来ないよ。

この1試合で、日本サッカー協会(JFA)は億単位の収入を得たのだろう。5人がA代表デビューを果たして思い出を作ったし、チームは5点差の快勝で9連勝だ。めでたい新年に、幸先のいいスタートだ。お年玉をいっぱいもらって良かったね。

このタイミングは、IMD(国際Aマッチデー)ではないため選手をフルに集めることはできないし、対戦相手を探すのも難しい。チームの強化を図るようなことはできない。恒例の天皇杯決勝が開催できず(インカレ決勝を前倒しして)国立が空いたため、偶然に組まれた「イベント」に過ぎないのかな。お祭りとしては大成功だったけどね。

新戦力を多く試したけれど、森保監督はこの試合でアジア杯カタール大会のメンバー入りを見極めようとは、思わないだろう。中旬(12日)にはアジア杯が始まる。26年FIFAワールドカップ(W杯)北中米大会から、アジアに与えられた出場権が8・5枠にもなったため、W杯予選は価値を大きく落とした。そのため、トーナメントの1戦1戦がアジアの強豪とサバイバルマッチとなるアジア杯が、日本代表に与えられた久しぶりの真剣勝負の場となる。

森保監督はかなり評価を上げているけど、振り返ってみれば、W杯でドイツ、スペインに勝っただけ。東京五輪ではメダルが取れなかったし、W杯では目標の8強に入れなかった。今度のアジア杯は、就任以来初めての大きなタイトルとなる。

お祭りは終わった。これからは真剣勝負。アジアの頂点にならないと、世界8強は夢だからね。新年いい夢を見たわけだから、まずはアジア杯で強敵をなぎ倒して頂点に立ってくれよ。それでこそ、夢が広がるよ。(日刊スポーツ評論家)

日本対タイ 後半、ゴールを決めジャンプし喜ぶ南野(撮影・足立雅史)
日本対タイ 後半、ゴールを決め喜ぶ南野(左)(撮影・井上学)
日本対タイ 前半、シュートを放つ伊東(中央)(撮影・井上学)
日本対タイ 後半、ゴールを決める田中(中央)(撮影・井上学)
日本対タイ 後半、頭でゴールを決め笑顔を見せる川村(中央)(撮影・足立雅史)
日本対タイ 後半、南野(中央)と握手する森保監督(右)(撮影・井上学)
日本対タイ 前半、指示を出す森保監督(右)(撮影・足立雅史)
日本対タイ 後半、ゴールを決め喜ぶ南野(撮影・足立雅史)
日本対タイ 後半、頭でゴールを決め笑顔を見せる川村(中央)(撮影・足立雅史)
日本対タイ 後半、頭でゴールを決める川村(右)(撮影・足立雅史)
日本対タイ 後半、ゴールを決めた中村(左)(撮影・足立雅史)
日本対タイ 後半、ゴールを決め笑顔を見せる田中(撮影・足立雅史)
日本対タイ 後半、ゴールを決め笑顔の田中(右から2人目)(撮影・井上学)
日本対タイ 後半、ゴールを決める田中(奥)(撮影・井上学)
サッカー現場発

ジャンボ大久保哲哉、今季も神奈川県1部で17戦12得点5アシスト地域でも結果残し続ける理由

今季12得点を挙げたFIFTY CLUBのFW大久保哲哉

「ジャンボの愛称で知られ、神奈川県1部FIFTY CLUBのFW大久保哲哉(43)が、公式戦17試合出場で12得点5アシストの結果を残し今季を終えた。「結果が求められているポジションなので、数字が必要。そこを意識しながらプレーしていた。そういう意味ではいいシーズンだった」と振り返った。

大久保がJ1から数えて7番目のカテゴリーであるFIFTY CLUBに所属して今季が5年目だ。1年目の19年は18得点で得点王。20年も8試合9得点で得点王。21年は8得点(2位)、22年も6得点(2位)とコンスタントに結果を残している。Jリーグから数多くの選手が地域リーグに移籍しているが、公式戦も練習場も人工芝という環境の変化の中、大きな負傷もなく結果を残し続けるのは容易ではない。

12月の初旬、今季の最後の練習にお邪魔した。チームではもちろん最年長。ゲーム形式の練習では、率先してプレスのスイッチを入れ、プレスの連動の声かけも目立っていた。GKからのロングフィードが頭上を越えたときは「(自分の)胸を狙ってくれればOKだから」と、コーチのような口調で指導する風景もあった。

居残り練習では、21歳のMF中野龍斗とシュート練習。中野のクロスをゴール前で点で合わせる練習を繰り返していた。元Jリーガーではあるが、自らその壁を取り払いチームに溶け込んでいる。

大久保は言う。「コミュニケーションは、チームがいい雰囲気になるように言わないといけない。それは心がけるようにしています。感情的になるシーンもありますが、そのままの勢いで思ったことを言葉にすると、若手は萎縮してしまう。うちのチームには18歳、20歳の選手もいる。若手には伸び伸びやってもらえる方がいいので」。

大久保は19年にA級コーチのライセンスも取得し、三浦学苑高校(神奈川)のサッカー部のテクニカルアドバイザーとして指導にも当たっている。ライセンスの講習では、自身の考えの言語化や、相手に伝えることの重要性も学んだ。現チームでの立ち居振る舞いについて、大久保は「指導者講習や高校生の指導の経験も今に生きてると思う」と話す。

ただ、ストライカーとして得点へのギラギラした思いは変わらない。だからこそ「こういうボールが欲しい」と日々の練習から要求は言い続ける。「自分がドリブルして1人で点を決めるタイプではないので。周囲に生かしてもらってる」。居残り練習で大久保とコンビを組む中野は、大久保へ今季、5アシストをマークした。「こういうボールが欲しいと言い続けて、チームメートが分かっているからこそ、数字が残っていると思う。結局、練習しないとダメですよね」。

Jリーガーのプライドはあるが、それは内に秘め、あくまでもチームのために考えて言動に移している。だからこそ、神奈川県1部で5年連続、結果を残せているのだろう。

FIFTY CLUBの角野隆監督も「決められたこと、与えられたことで表現する能力は非常に高い。社会適応能力が高いことも、(プロとして)長生きしている秘訣(ひけつ)だと思います。仲間ともいい言葉を掛け合いながらやっていて大人ですよ」と、大久保を評価する。

来季は44歳になる。もちろん、現役続行への気持ちは強い。「結果を残せている限りやれると思っている。やり続けることが大事。まだ若い選手には負けられない」。

今季は夏に練習で左膝を一度痛めたが、試合の欠場はなかった。このほど行われた中村俊輔氏の引退試合にも出場。ユニホームを脱ぐ同年代の仲間がいる中で、より、現役へのこだわりが芽生えた。昨年12月に他界した父も、できる限り長く現役を続けることを望んでいた。チームの和を重んじ、勝利と得点には貪欲-。来季もギラギラした思いを胸に、ジャンボの挑戦が始まる。【岩田千代巳】

○…FIFTY CLUBは地域リーグから関東2部昇格を目指す「関東社会人サッカー大会」で今年もPK戦の末で敗れ、昇格を逃した。今年で4回目の挑戦だったが、なかなか昇格の壁を破れずにいる。来季は、昇格を目指す同大会が地元の神奈川開催。角野監督は「来年は勝負の年」と位置付け「来季はリーグ戦は18試合。全部勝ちきれる選手層を求め、練習を含めてやっていかないと」と“5度目の正直”を目指し昇格をつかみに行く。

サッカー現場発

神戸内定の筑波大MF山内翔が見せた涙と4年間で得た確証「ここに来なかったら今の自分はない」

全日本大学選手権(インカレ) 準決勝 筑波大対明大 決勝進出を逃し、悔しい表情を見せる筑波大・山内翔(右)(2023年12月21日撮影)

来季ヴィッセル神戸入団が内定している筑波大MF山内翔(4年/神戸U-18)の大学サッカーでのプレーが幕を閉じた。

12月21日、茨城・流通経済大学龍ケ崎フィールドで行われた全日本大学サッカー選手権準決勝。明大に0-1で敗れた。主将山内は試合後の表彰式まで毅然(きぜん)とした態度を保っていたが、会場のバックスタンドで応援していた仲間の元へ近づくと、こみ上げてくるものがあった。

あいさつをすると号泣。ユニホームで顔を隠し、仲間に連れられながらベンチまで戻った。

「(今まで)あんまり試合終わってから感情を出すことはなかった。なるべく最後までやりきりたいなと思っていましたけど、応援の人のことや、あと1試合やりたかったなというのもあった。こういう素晴らしいチームに会えたことだったり、勝たせてあげたかったなというのと、自分の力不足だなと…いろんな感情がありました」

筑波大では1年時からコンスタントに試合に出場。3年春には早々と神戸入りを決めた。いち早くプロの道に進む選択肢もある中で、主将に就任し、筑波大のために全てをささげた。強烈なキャプテンシーでチームをまとめあげ、小井土正亮監督(45)に「山内翔のチームだった。彼がまとめあげてくれた」と言わしめるほどだった。今季は世代別代表の活動などでメンバーが抜けることも多かった。秋には、自身を含む主力3人がU-22日本代表メンバーとしてアジア大会に出場。1カ月近く不在の期間もありながら、リーグ戦を制した。そこから気持ちを切らすことなく43年ぶりにリーグ戦とインカレの2冠を狙い、あと1歩までチームをけん引した。

試合中の存在感も別格だった。落ち着いてボールを受け、さばき、時にはドリブルで前線まで運んだ。守備でも対人の強さを発揮し、的確な読みでインターセプトを繰り返した。チームは終始主導権を握り、相手をシュート1本に抑えたが、その1本を決められて夢が破れた。それでも「サッカーの本質の所、決めるか決めきれないかで明治大学さんが上回った。自分たちの全てと明治大学さんの全てがぶつかりあって、本当に力負け」と潔かった。

「好青年」を絵に描いたように、いつもハキハキと取材に応じる。今回も1度涙が引いてから取材が始まったが、主将の重圧について問われると、思わず目を潤ませた。時節声を詰まらせながらこう言った。

「自分1人でここまで来られたわけではないので、仲間に本当に感謝したいなと思います。今日試合に出られなかった4年生とか選手にちょっと申し訳ないというのはありましたけど、みんながいてくれたからこそ、ここまで来られたし、自分が特別なことをしたっていうのはないです」

遠く関西のJクラブのアカデミーから北関東の国立大学に進学した。4年間で着実にレベルアップし、神戸に戻る。筑波大に来たことの意義を認識している。「ここに来なかったら今の自分はない。ここまで育ててくれた筑波大や、小井土さんには感謝してもしきれない。それを恩返しできるのは、もう次はプロの舞台でしかないですし、そこに向けてやりたいです」

続けて「4年前の選択肢は間違いではなかったと言い切れますか?」と問われると、ニヤッと笑い「それはまあ来年、プロの世界で自分がどうなるかっていうところで答えが出ると思います」。そして「ここに来られたこと、このチームに出会えたことは、ほんとに良かったなと思います」と晴れやかな表情で言い切った。

仲間とともにかけぬけた濃密な大学サッカー生活が終わった。数多くの経験を胸に、山内がプロの舞台でスタートを切る。【佐藤成】

Get toto

Bミュンヘン-シュツットガルト「0」/第1416回

今回はブンデスリーガとプレミアリーグ。今季好調のシュツットガルトはBミュンヘンと対戦。シュツットガルトはドイツ杯ではドルトムントを下し8強進出。Bミュンヘンは第14節でEフランクフルトに5失点大敗後、欧州CLではマンチェスターUに競り勝っており、今節は大崩れはしないとみる。Bミュンヘン-シュツットガルトは引き分けの「0」。プレミアの首位リバプールはマンチェスターUとの対戦。リバプールは司令塔MFマカリテルの負傷欠場が予想され痛いか。リバプール-マンUはマンU勝利の「2」。【岩田千代巳】

◆日刊予想

(1)アウク-ドルト2

(2)ボーフ-ウニオ1

(3)フライ-ケルン1

(4)レーバ-Eフラ1

(5)Bミュ-シュツ0

(6)マイン-ハイデ1

(7)ダルム-ウォル2

(8)ライプ-ホッフ1

(9)アーセ-ブライ1

(10)マンC-クリス0

(11)リバプ-マンU2

(12)ブレン-アスト2

(13)ニュー-フラム1

※左がホーム。1=ホーム90分勝ち、2=ホーム90分負け、0=その他

Get toto

三笘好調ブライトン勝利/第1415回

ブライトンの勝利を予想。ブレントフォード戦で先発の日本代表MF三笘薫は状態の良さをうかがわせ、アシストを記録。今度は得点にも期待。アストンビラは前節マンチェスターCから金星をゲットも、続けて強豪アーセナル相手となるとホームとはいえ連勝は難しいか。下降気味のトットナムは韓国代表FW孫興民が気を吐いているが、ニューカッスルの勝利を予想した。ブンデスリーガはフライブルクの好調の日本代表MF堂安律が再びゴールに絡むプレーを見せることに期待し、勝利予想とした。【岡崎悠利】

◆日刊予想

(1)Eフラ-Bミュ2

(2)ヴォル-フライ2

(3)ウニオ-ボルシ2

(4)ブレー-アウク1

(5)シュツ-レバー2

(6)ハイデ-ダルム1

(7)ドルト-ライプ1

(8)ケルン-マイン1

(9)クリス-リバプ2

(10)ブライ-バーン1

(11)アスト-アーセ2

(12)ルート-マンC2

(13)トット-ニュー2

※左がホーム。1=ホーム90分勝ち、2=ホーム90分負け、0=その他

サッカー現場発

鹿島内定の関学大DF濃野公人は「内田篤人2世」負けず嫌いの強さと記者仕込み?ラボーナにも注目

関学大から来季Jクラブへ加入する(左から)FW望月想空、MF長尾優斗、DF濃野公人、MF美藤倫、MF倍井謙(2023年11月27日撮影)

11月28日、兵庫・西宮市にある関学大の上ケ原キャンパスで行われた、Jリーグ内定5選手合同会見の取材に足を運んだ。

山見大登(24)ら4人がJリーガーとなった21年を上回り、今季は過去最多の5人を輩出することになった関学大。しかも今年はJ1クラブに3選手が進むというレベルの高さだ。

J1組の名古屋グランパス内定MF倍井(ますい)謙(4年=名古屋グランパスU18)、ガンバ大阪内定MF美藤倫(みとう・りん、4年=東海大大阪仰星)、鹿島アントラーズ内定DF濃野公人(4年=大津)は特に、パリ五輪出場を本気で狙う逸材たちだ。

その中でも個人的に注目するのが、大津高(熊本)時代に続いて主将を務め「内田篤人2世」の呼び声も高い濃野だ。

関学大の高橋宏次郎監督によると「最初はBチームからのスタートだった」ということだが、この4年間で能力を引き出されたことで、プロへの道を切り開いた。

高校まで攻撃的なポジションを務めてきた濃野は、1年時はFW、2年時は右サイドハーフを主戦場とした。Jリーガーとなるための転機となったのは、3年時の右サイドバック(SB)へのコンバートだった。高橋監督から提案され「このままじゃプロになるのは難しい」と考えていた濃野が前向きに受け入れ、取り組んだ。

ポジション変更後の成長は著しく、才能が開花した。近年のSBは外に位置取るだけでなく、インサイドに入ってプレーすることも求められるが、濃野は相手ゴール前まで頻繁に顔を出す積極性が持ち味。動きで相手を混乱させ、ゴール前での落ち着きと精度で得点に絡むことができる“超攻撃的SB”として知られるようになった。

今春のデンソーカップでは、関西選抜の一員として優勝に貢献。SBながら背番号7を付ける理由を「アタッカーのプライド」と笑う濃野は、一気に注目株となった。

そこに注目したのが、鹿島の椎本邦一スカウト担当部長、牛島真諭スカウトだった。椎本氏からは最大限の評価を受けた。「鹿島っぽいSBを久々に見た。上下動ができて、最後の質も高い。デビュー当時の内田篤人に似ている」。数々の名SBを輩出してきた鹿島を長年見てきた椎本氏からそんな言葉をもらえば、素直にうれしいものだろう。

複数クラブから興味を持たれ、オファーも受けていた濃野は、施設見学の際に「椎本さんから、チームが大事にしてきたものや根底にあるDNAの説明を受けて、入団を決めた」という。プロ1年目に向けては、早くも強い意気込みを見せている。「パリ五輪も視野に入れて頑張っています。食い込んでいくためには、鹿島で結果を出すことが一番の近道だと思うので、開幕からスタメンを狙って、貪欲に取り組んでいきたいと思います」。

これは余談だが、記者は彼が幼稚園児の頃、コーチとして接していたことがある。所属歴では大阪DREAMからとなっているが、その前に入っていた北摂地域のクラブがあり、そこで一緒にボールを蹴らせてもらった。兄の文人(あやと)とともにプレーし、小さいながら技術があったこと、強烈な負けず嫌いだったことを鮮明に覚えている。

課題を簡単にクリアするような際に、一気に難しくすると、クリアできない悔しさをにじませ、ミニゲームで負けそうになるだけで涙を流すような兄弟だった印象だ。

その後はお互いがクラブを離れて、交流はなかったが、J内定選手として取材させてもらうことになった。「こんなに大きくなって」と親戚のおじさんのような目線で記者会見に参加したのは初めてだった。次はプロの舞台でも取材することが楽しみになった。良い選手で、見ていて楽しい選手でもあるので、鹿島のみなさんにはぜひ楽しみにしてもらいたい。

濃野家では、記者のことを「ラボーナを教えてくれたコーチ」と伝えてくれたようなので、濃野のラボーナでアシストやゴールをした時は、取材を受ける側としてコメントを準備したいと思っている。【永田淳】

解析料理

【解析料理】新潟サポがリーグ入場者数底上げ 今季ホーム総入場者数はリーグ6番目の39万人

【イラスト】新潟のJリーグ年度別ホーム平均入場者数

J1復帰1年目だったアルビレックス新潟のサポーターが、リーグ全体の入場者数を底上げした。今季のホームゲーム17試合の総入場者数はリーグ6番目の39万2920人。1試合平均は2万3113人で、J1優勝を果たした神戸の2万2553人を上回った。最多は浦和で3万509人だった。

アウェー扱いではあったが、今季J1の最多入場者数カードは国立競技場で開催された名古屋-新潟戦の5万7058人。4月29日に味の素スタジアムで行われた東京-新潟戦、日産スタジアムで開催された11月24日の横浜-新潟戦も3万人以上が集まるなど、新潟サポーターの力強さをリーグ全体に示した。

1-0で競り勝った最終節のC大阪戦。気温9・5度の寒い雨の中でも2万人以上が本拠地のビッグスワンに集まり、チームを後押し。今季のホーム成績は6勝6分け5敗となり、白星を先行させて終えた。松橋監督は「自分たちのスタイル、楽しくて見ている方にも楽しんでもらえるようなものは出せた」と笑顔で今季を締めくくった。【石川秀和】

サポーターにあいさつする新潟の選手たち(撮影・大島享也)
後半42分、J1初ゴールを決め喜ぶ長倉(右)(撮影・大島享也)
後半42分、J1初ゴールを決め喜ぶ長倉(中央)(撮影・大島享也)
Get toto

昇格かける富山、最終戦「1」/第1413回

J1とJ3が最終節。降格圏内、昇格を争うクラブのそれぞれの戦いが熱い。いずれも直接対決はなし。まずJ1。横浜FCと柏は勝ち点3差で柏残留有力。しかも得失点差に開きがある。さらにJ1は、3位争いがし烈だ。3位・広島と4位・浦和が勝ち点1差。来季ACLの出場権がかかっているだけに、両チームとも落とせない。J3は昇格をかけた2位争いがある。勝ち点61の鹿児島と同59の富山が最後の一戦で運命を分ける。長丁場を締める最後の試合で、注目カードのチームは簡単には負けないはず。【盧載鎭】

◆日刊予想

(1)八-相2

(2)鹿-浜1

(3)G-神2

(4)名-柏1

(5)鳥-川2

(6)福-広1

(7)札-浦1

(8)湘-東2

(9)新-C2

(10)京-横2

(11)鳥-児1

(12)岩-讃1

(13)富-Y1

※左がホーム。1=ホーム90分勝ち、2=ホーム90分負け、0=その他

解析料理

【解析料理】新潟、クラブ記録に並ぶJ1リーグ戦3戦連続無失点 記録伸ばし来季につなげたい

【イラスト】新潟のJ1年度別無失点試合数

アルビレックス新潟がJ1でのクラブ記録に並ぶリーグ戦3試合連続無失点を達成した。24日の横浜戦で0-0と引き分けて今季10度目の無失点。J1リーグ戦での3試合連続無失点は16年以来、7年ぶり9度目となった。12月3日のC大阪とのホームでの最終節で、新記録樹立が期待される。

横浜戦は小見、三戸ら期待のアタッカー陣が決定機を逃して無得点に終わったが、優勝を争うチームを相手にも守備は最後まで崩れなかった。GK小島の好守とともに光ったのが右サイドバック藤原の対応力。J1最強クラスのアタッカーである横浜のFWエウベルとの1対1にも粘り強く対応した。

シュートまで持ち込まれたとしても藤原がコースを限定。枠内に飛んでも頼れる守護神の守備範囲に収まった。後半途中からはFW宮市とも相対したが、自慢の運動量は最後まで落ちることなく、そのスピード抜群の日本代表経験者を完璧に抑え込んだ。

Jリーグ公認データ「J STATS」によると、今季の藤原の1試合平均のタックル数はリーグ7位(23日現在)。このデータが示すようにJ1でも屈指の右サイドバックと言えるようになった。ただ、今季は23試合に出場して無得点。J1初ゴールが待たれる。

今季は最終節を残すのみ。9位との勝ち点差は5に開き、残留決定後の目標にしていたひと桁順位はならなかった。それでもモチベーションとなりそうな目標は残っている。藤原らのJ1初得点に加え、4連続試合無失点のクラブJ1新記録となる勝ち点3で来季につなげたい。【石川秀和】

24日横浜戦後半、相手のシュートをセーブする新潟GK小島(中央)
Get toto

主力3人出場停止 柏不利「2」/第1412回

J1もJ3も残り2試合。J1で16位の柏は主力のDF古賀、ジエゴ、MF高嶺が累積警告で出場停止。直近で敗れた2試合は、ともに出場停止選手がおり、今回も不利とみる。名古屋はMFマテウス・カストロが夏に移籍し急失速。首位神戸との対戦だが、勢いに乗る神戸が有利。最下位横浜FCと17位湘南は残留を巡る熱い直接対決。湘南は直近4試合を3勝1分け。勢いがありFW大橋が4戦5発と好調で、湘南が勝つとみる。【岩田千代巳】

◆日刊予想

(1)浜-湘2

(2)神-名1

(3)広-G1

(4)浦-福1

(5)C-京0

(6)柏-鳥2

(7)東-札1

(8)児-沼2

(9)讃-松1

(10)奈-取1

(11)北-島2

(12)愛-八1

(13)崎-富2

【注】左がホーム。1=ホーム90分勝ち、2=ホーム90分負け、0=その他

サッカー現場発

「レベルアップできる部分を毎試合探す」欧州組招集不要論も冨安健洋が語った2次予選での戦い方

日本対シリア 日本代表スタメン。前列左から久保、菅原、浅野、守田、遠藤、後列左から上田、GK鈴木、伊東、谷口、伊藤、冨安(2023年11月21日撮影)

<サウジアラビア現場発>

日本代表がW杯アジア2次予選で2連勝スタートを切った。森保一監督(55)は欧州組のフルメンバーを招集。戦前の予想通り、2戦とも5-0での大勝だった。そんな結果を受け、国内では2次予選での欧州組招集は不要という声も上がる。

◇  ◇  ◇

実際にプレーする選手からは、さまざまな声が聞かれた。MF遠藤主将はシリア戦後、「こういう試合をファンの方たちが見た時に楽しんでもらえるのか、疑問もある」と冷静にコメント。前主将の吉田麻也の主張に沿う形で「そもそも2次予選の形はどうなんだ、というところはある」と、枠組みに対しての私見を残した。

16日に対戦したミャンマーは、リードされているにも関わらず、失点を増やさないようにか、勝っているかのような時間稼ぎをする場面もあった。公式戦にもかかわらず、サッカーの競技性から外れたようなシーンだった。プレミアリーグでプレーするDF冨安は「(日本には)CLやELで戦う選手もいる中で、モチベーションは難しい部分はもちろんあります」とこぼした。長距離移動などを強いられる選手が、もどかしい思いになるのは当然だろう。

一方で、アジア全体を見渡しての意見もあった。MF守田は現行の形を「すっきりはしない」としつつ「こういう時でしか、強豪国、アジアで言えば日本などと戦う機会がないと思う。日本代表も、歴史的にそういう時代があったと思う。その意味でやらないといけないかな」。今は実力差があっても、切磋琢磨(せっさたくま)するアジア同士であることに目を向けた。

少なくとも、近々で今の方式が変わるとは考えにくい。ホーム&アウェーで行われる2次予選は、まだまだ先が長い。「自分たちに集中して、レベルアップできる部分を毎試合探す」。現状では冨安のこの言葉が、日本代表の戦い方の答えになりそうだ。【岡崎悠利】

セルジオ越後「ちゃんとサッカーしなさい」

【セルジオ越後】文句なしの内容、これ皮肉 W杯予選をダラダラやるよりアジア杯で決めるべき

日本対シリア 勝利した森保監督(右)はゴールを決めた細谷と引き揚げる(撮影・パオロ ヌッチ)

<ワールドカップ(W杯)アジア2次予選:シリア0-5日本>◇21日◇プリンス・アブドゥラ・アルファイサル・スタジアム

テレビで日本代表戦が見られないと分かっていても、やっぱり寂しかったな。日本は2試合連続でレベルの低い相手に5-0で快勝した。パスはつながるし、シュートは決まるし、ルーズボールもほとんど拾ったし、文句なしの内容だね。言っとくけど、これ、皮肉だよ。

その中で、MF伊東は存在感を見せていた。4アシストか。裏にスペースがないから、持ち前のスピード突破はなかったが、相手が嫌がる位置でポジションを取っていた。相手がファウルしてはいけない位置でボールを受けるから、アシストができる。しかも4本とも「どうぞ、入れてください」というパスだった。

来年1月にはカタール・ドーハでアジア杯が開かれる。下のカテゴリーはすでに実施しているけれど、W杯や五輪の出場権はアジア杯で決まる。A代表もつまらない予選をダラダラやるより、アジア杯で決めればいいと思うよ。全試合テレビ中継もあるわけだしね。

4年前も日本は2次予選を大量得点で突破した。つまり、アジアの弱い国は、4年たってもまったく成長しなかった。国内にちゃんとしたリーグがない国は、やはり強くならないね。弱い相手と大事なIMD(国際マッチデー)を使って試合をするから、アジア全体のレベルが上がらない。他の組を見ても、W杯常連国は大勝しているし、だからといって大喜びすることもない。

02年W杯以来、アジアはW杯本大会で16強の壁を破っていない。現状だと、新しい景色はなかなか見ることができないだろうな。恐ろしいことは、シリアは初戦で北朝鮮に勝ったため、2位まで通過する今回の予選を突破する可能性があることだ。このレベルが最終予選に参加できるとは、恐るべしアジアだね。(日刊スポーツ評論家)

日本対シリア 勝利した日本の選手たちはサポーターにあいさつする(撮影・パオロ ヌッチ)
日本対シリア 後半、追加点を決めた菅原はチームメートの祝福に笑顔(撮影・パオロ ヌッチ)
日本対シリア 前半、ゴールを決め浅野(後方左)と握手を交わす上田(撮影・パオロ ヌッチ)
日本対シリア 後半、ゴールを決める菅原(撮影・パオロ ヌッチ)菅原由勢
【イラスト】久保のゴール図
【イラスト】上田の1点目
【イラスト】上田の2点目
【イラスト】菅原のゴール
【イラスト】細谷のゴール
セルジオ越後「ちゃんとサッカーしなさい」

【セルジオ越後】躍動感も危機感もない試合 5点は少ない 2次予選は日本にとっては価値ない

日本対ミャンマー ミャンマーに勝利し関係者と握手する森保監督(中央)(撮影・加藤哉)

<ワールドカップ(W杯)アジア2次予選:日本-ミャンマー>◇16日◇大阪・パナソニックスタジアム

B組初戦で、日本代表(FIFAランキング18位)がミャンマー代表(同158位)に5-0で大勝した。W杯北中米大会に向けて幸先良く白星スタートを切る中、セルジオ越後氏は「危機感がない」と厳しく指摘した。

   ◇    ◇

また錯覚する時期に入ったね。日本は急に全員うまくなった-。そう勘違いしちゃうよ。前回の2次予選(21年5月)ではFW大迫とMF南野が得点を重ねた。その後、彼らの好調はW杯本大会まで続いたのか? 今度はFW上田の番か。ハットトリックだ。これでエースFWの当確ランプがつくのかな?

ミャンマー相手なのに、4万の吹田は満員になった。サッカーどころの国なら、半分も埋まらなかったはず。お祭り気分にはなれたと思うよ。試合が終わって、相手選手の名前が1人も頭に残らない時点で、その試合に価値はないともいえるが。

この試合、両サイドバックのオーバーラップがほとんどなかった。なぜ? 前にいる左MF相馬、右MF堂安が1人で突破できるし、クロスも上げられるから、必要がなかった。センターバック2人はほとんどの時間、敵陣でプレーした。躍動感も危機感もない試合だったな。

その割に、5点は少ないね。相手シュート0なのに、GK交代の意味も分からなかった。結局、これではまるで、たくさんのお客さんを集めたコンサートだよ。

MF三笘やDF板倉、FW古橋と前田ら多くの選手を負傷で欠いた。DF冨安もベンチ外。それでも危機感はない。それほど、2次予選は日本にとっては価値のないものだね。

これでは南米や欧州との差は開く一方だ。ケガ人が出なかっただけで、よしとするしかないね。

(日刊スポーツ評論家)

日本対ミャンマー 試合後、細谷(中央左)らと喜び合う町田(同右)らイレブン(撮影・前田充)
日本対ミャンマー 試合後、勝利の喜びを分かち合う佐野(右)らイレブン(撮影・前田充)
日本対ミャンマー 後半、GK大迫(右)と交代するGK前川(撮影・前田充)
日本対ミャンマー 前半、南野からのボールを頭で合わせ先制ゴールを決める上田(撮影・加藤哉)
日本対ミャンマー 後半、ハットトリックを決め毎熊(左)の祝福に笑顔を見せる上田(撮影・垰建太)
Get toto

力の差は歴然、日本勝利の「1」堅い W杯アジア2次予選/第1408回

FIFAランキング18位の日本は、同158位のミャンマーとホームで対戦する。前回大会のアジア2次予選でも10-0で大勝しており、力の差は歴然。今回も勝利はほぼ確実といっていい。日本は直近6試合で6連勝で、24得点と攻撃陣が爆発。守備ブロックを固めてくるであろう相手から何点奪えるか。他にも韓国や豪州、サウジアラビア、イラン、UAE、オマーン、ウズベキスタンは力の差のある国との対戦で、勝利は堅い。タイ-中国、マレーシア-キルギスは力が拮抗しており、引き分けと予想した。【佐藤成】

◆日刊予想

(1)日-ミャ1

(2)タイ-中0

(3)タジ-ヨル2

(4)オマ-台1

(5)クウ-印2

(6)豪-バン1

(7)比-ベト2

(8)韓-シンガ1

(9)マレ-キル0

(10)トル-ウズ2

(11)U-ネパ1

(12)イラ-香1

(13)サウ-パキ1

【注】左がホーム。1=ホーム90分勝ち、2=ホーム90分負け、0=その他

解析料理

【解析料理】新潟、残り2試合。10年ぶり得失点差をプラスにし、白星を先行させたい

【イラスト】新潟のJ1年間の得失点差がプラス

残り2試合。得失点差をプラスにし、白星を先行させたい。J1新潟は11日、ホームで東京と0-0で引き分けた。10勝11分け11敗で、五分の星に戻すことができなかった。35得点、40失点で得失点差はマイナス5。J1で得失点差がプラスだったのは7位に躍進した13年(48得点、42失点)が最後。10年ぶりの「プラス」で来季につなげたいところだ。

松橋監督は「いつもより、らしさは少なかった。迷いが全部裏目に出ているというところが見受けられたのは残念。いかに試合中に修正していけるか、我々の課題」と話した。試合後のインタビューとしてはこれまでにないような奥の深いコメントか。勝ち点3を逃した悔しさがにじんだ。

前線に強力ブラジル人アタッカーを擁する東京を相手に無失点での勝ち点1。これまでならポジティブに捉えられていたかもしれない。だが、今季J1で32試合を戦った中でチームは確実に進化。2万人以上が集まった本拠地で、無得点での引き分けは物足りなさが残った。

シュート数は13本で相手の5本を倍以上も上回った。J1リーグ戦で7戦負けなしは14年以来、クラブ9年ぶりとなった。ただ、今季の7戦の内訳は3勝4分けと引き分けが先行。チームの進化とともに、サポーターの求めるレベルも高まっている。【石川秀和】

東京森重(右)と競り合う谷口。約4カ月ぶり先発で奮闘もゴールを割れず
データが語る

【データが語る】J3V王手の愛媛「史上最高タイトルコレクター」森脇良太全カテゴリー制覇へ 

アジア・チャンピオンズリーグ(ACL) 決勝・第2戦 浦和対アルヒラル 浦和DF森脇良太(右から2人目)がACL優勝トロフィーを掲げるも無反応のイレブン(2017年11月25日撮影)

J3愛媛FCがJ2昇格とJ3優勝に王手をかけている。11日の今治戦に勝てば、3シーズンぶりのJ2復帰が本拠地で決まり、その上で2位の鹿児島が同日のアウェー琉球戦に引き分け以下なら、3試合を残してJ3優勝が確定する。

「史上最強のタイトルコレクター」に、また栄誉が加わりそうだ。元日本代表の愛媛DF森脇良太(37)は今季J3リーグ戦23試合に出場。広島時代の08年にJ2で優勝し、12年にはJ1優勝の原動力になった。J1、J2、J3の全カテゴリーでタイトル獲得となれば、史上3人目の珍しいケースとなる。

過去にはMF岡本知剛とDF小池龍太が達成。岡本は08年にJ2広島で1試合のみの出場にとどまったが優勝メンバー入り。13年にはJ1を制し、18年にJ2松本、現役最終年の21年にJ3熊本でタイトルを獲得した。小池はJFLからステップアップし、15年にJ3山口、19年にJ2柏(シーズン途中にベルギーのロケレンに移籍)、22年にはJ1横浜の優勝に大きく貢献した。

今回の森脇は「個人昇格」を続けた小池のケースとは違い、実績のある経験豊富なベテランとして、かつてプレーしたJ2復帰を目指すチームに戻った。これまで数多くのタイトルを獲得してきた37歳DFの経験は大きく、ムードメーカーとしてピッチ外でもチームに欠かせない存在になっている。

日本代表では11年のアジア杯優勝。追加招集だったが、その存在がチームに一体感をもたらした。フィールド選手で唯一、出場機会がなかったものの、決勝弾を決めたFW李忠成、MVPのFW本田圭佑、全試合フルタイム出場のDF長友佑都らとともに堂々と誇らしげにアジア杯を掲げた。

J1浦和時代は16年のルヴァン杯、18年度の天皇杯を手にし、国内3冠を達成。17年にはアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)を制した。J1が2ステージ制だった15年の第1ステージ、16年の第2ステージでも優勝した。

さらにさらに、広島ユース時代には日本クラブユース選手権、高円宮杯全日本ユース、Jユース杯と「ユース3冠」。個人の主要タイトルはないが、獲得できるほぼ全てのチームタイトルを手にしてきた。

いじられキャラとしてサポーターからも愛される優勝請負人。ここ最近は出場機会が減っているものの、誰よりも高々とJ3リーグ杯を掲げるはず。そしてブーイング(?)。プロ19年目、史上初のタイトル総なめなるか注目だ。【石川秀和】

Get toto

首位交代呼ぶ浦和「1」/第1407回

残り3試合となったJ1はここで首位交代が起きると予想。逃げたい神戸はアウェーでの3位浦和戦と今節屈指の好カード。浦和はACLから中3日と過密日程だがGK西川、ショルツとホイブラーテンのCBという守備は鉄壁。神戸の強力FW陣との“矛盾対決”を制するとみた。一方の横浜は盤石のホームで強さを見せたい。守備陣の負傷者に悩むが、MF喜田主将の統率力、攻撃陣の奮起で苦手C大阪に意地を見せる。【岡崎悠利】

◆日刊予想

(1)札-広1

(2)湘-名1

(3)鹿-柏2

(4)鳥-浜2

(5)G-福2

(6)新-東0

(7)横-C1

(8)川-京1

(9)浦-神1

(10)大-群1

(11)仙-町2

(12)金-岡2

(13)藤-い2

※左がホーム。1=ホーム90分勝ち、2=ホーム90分負け、0=その他

セルジオ越後「ちゃんとサッカーしなさい」

【セルジオ越後】「ネズミ」相手でもベストメンバー森保ジャパン 26年W杯も変わらないだろうな

日本代表メンバーを発表し会見に臨む森保監督(撮影・垰建太)

日本サッカー協会(JFA)は8日、11月のワールドカップ(W杯)アジア2次予選ミャンマー戦(16日、パナソニックスタジアム吹田)、シリア戦(21日=日本時間22日、サウジアラビア)に臨む日本代表メンバーを発表した。

  ◇  ◇  ◇

猫とネズミの戦いだな。日本や韓国、オーストラリアが2次予選から登場する現システムはおかしいけれど、決まりだから仕方ないね。森保監督は格下相手でもベストメンバーを呼んだ。力の差はかなりあると思うけれど、公式戦だから当たり前か。全力でネズミを捕りに行くだろうね。

メンバー発表会見で、森保監督は4年前の予選を振り返って、危機感を口にした。立場上「余裕で勝てます」とは言えないだろうけれど、危機感を口にするのはちょっと大げさかな。だって前回大会はアジアに割り当てられたチケットが4・5枚だったけれど、今回からは8・5枚だからね。

ジッダでのシリア戦だって、厳密に言うとアウェーじゃないからね。現地の駐在員とか、日本のサポーターも多く訪れるはずだよ。ピッチも悪くないわけだしね。相手は日本を警戒して、守備ラインを低くして2重でラインをつくって、超守備的に戦うだろう。裏にスペースもなく、早い時間帯に得点できないかもしれないけれど、焦らずにボールを回しておけば、相手は徐々にバテるだろう。

監督が代わらない限り、26年W杯北中米大会もこのメンバーが中心になるだろうな。入れ替わったとしても2、3人程度か。日本は次から次へと、強烈な選手が出る国でもないからな。まだまだ余力を残しているベテランや力をつけている若手もいるが、森保監督は固定メンバー中心の安定感をベースにした成長を好むからな。もうW杯メンバー入りの当確ランプがついた選手が何人も見えるのは、オレだけかな?(日刊スポーツ評論家)

【イラスト】サッカー日本代表メンバー
Get toto

決勝は浦和が一枚上手「2」/第1406回

ルヴァン杯決勝は初優勝を目指す福岡と7季ぶりの優勝を狙う浦和が争う。リーグ最少失点の堅守とタレントぞろいの攻撃陣を誇るACL王者の浦和が一枚上手か。J2は昇格争い、残留争いが大詰め。自動昇格圏内の2位清水は、降格圏内の21位大宮とホームでぶつかる。プライドをかけた戦いを制してJ1昇格に前進したい。3位磐田は17位水戸と対戦。ホームの利を生かして確実に勝ち点3をゲットすると予想した。前節で3位磐田と引き分けた4位東京Vは18位栃木と衝突。確実に勝ち点を拾って食らいつきたい。【佐藤成】

◆日刊予想

(1)福-浦2

(2)金-分2

(3)長-仙2

(4)徳-藤2

(5)磐-水1

(6)い-形0

(7)口-町2

(8)群-千2

(9)岡-秋0

(10)V-栃1

(11)清-宮1

(12)鹿-奈1

(13)琉-富2

※左がホーム。1=ホーム90分勝ち、2=ホーム90分負け、0=その他

解析料理

【解析料理】新潟、初の5バックで7試合ぶり無失点勝利 最終ライン増やし守備固める

【イラスト】J1新潟の28日京都戦の布陣変更

<明治安田生命J1:京都0-1新潟>◇第31節◇28日◇サンガS

J1アルビレックス新潟は初の5バックでリードを守り切った。7試合ぶりの無失点勝利を挙げた28日のアウェー京都サンガFC戦(1-0)。前半34分にセットプレーから決勝点を決めたDF渡辺は「きれいなゲームではなかった」と言った。松橋監督は「内容なんて言葉は必要がなく、目的である勝ち点3を取ってくれた選手を誇りに思う」とたたえた。

相手は試合終盤に高さを前面に押し出してきた。そこで指揮官は後半37分にボランチのMF高に代えて185センチのDF舞行龍を投入した。5バックで守備を固めるという、これまで見せたことのない戦い方で逃げ切りを狙った。

今季は前節まで延べ131人が試合中に交代したが、FW→FW、ボランチ→ボランチというように同じポジションの交代か、守備から攻撃的な選手への変更で占められた。退場者を出した試合を除けば、最終ラインの人数を増やす交代は今季初めてだった。

勝負に徹した指揮官は「トレーニングでやってきたわけではないけど、(ハーフタイムに)選手と少しだけ話をして、それを(即座に)実戦でしっかり対応してくれた」。結果は今季8度目の無失点。選手個々が対応力の高さを示した。

リーグ最高の平均57%だったボール保持率は新潟としては低い50%、同1位の平均85%に達するパス成功率も79%にとどまった。それでも最後まで集中を切らすことなく、相手の激しいプレスにも動じず、タフに戦い抜いて6戦無敗。「俺たちがついているさ」と選手を鼓舞し続けたサポーターを含めチームの総力で勝ち点3を手にした。

【石川秀和】

Get toto

柏-川崎Fはホーム勝利予想/第1405回

天皇杯決勝の前哨戦となる柏-川崎Fはホーム勝利を予想。川崎Fは過密日程だけでなく、長くチームを支えるDF大南拓磨のコンディション不良が痛い。同様に最終ラインに多数の故障者を抱えるのが連覇を目指す横浜。盤石の布陣にはほど遠く、敵地で福岡から勝ち点3を得るのは難しい。2クラブ同様にアジア・チャンピオンズリーグを戦う浦和は勝利と予想。直近の同大会浦項戦は完敗も、リバウンドメンタリティーが問われる相手はライバル鹿島。守護神GK西川周作は今季ベストGKクラスの安定感だ。【岡崎悠利】

◆日刊予想

(1)札-浜2

(2)C-G1

(3)鹿-浦2

(4)福-横1

(5)東-広1

(6)湘-神0

(7)京-新1

(8)柏-川1

(9)大-秋1

(10)清-熊1

(11)仙-山1

(12)形-群1

(13)岡-栃1

※左がホーム。1=ホーム90分勝ち、2=ホーム90分負け、0=その他

解析料理

【解析料理】新潟フェアプレーでJ1残留決定!反則数はリーグ最少319回

【イラスト】今季J1の反則の少ないチーム

リーグ最少の反則数で来季のJ1残留を決めた。新潟は21日、ホームで鳥栖と1-1で引き分け。勝ち点を37に伸ばし、J2自動降格圏の最下位になることがなくなった。

チームとしてフェアプレーが徹底され、この日のファウル数は8回。そのうち6回が大きな問題にはならない敵陣でのものだった。自陣で相手に直接FKを与えたファウルはDF舞行龍が警告を受けたプレーだけ。それ以外はほぼノーファウルで対応した。鳥栖のクリーンファイトもあって、プレーが途切れることはほとんどなかった。

それを象徴するかのように後半のロスタイムはわずか3分。昨年のW杯カタール大会後はより正確に計測し、10分を超えることも珍しくなくなった中、異例の短さだった。それもフェアプレーが徹底されていたからだろう。

Jリーグによると、前節終了時点の新潟の反則数は319回。首位に立つ神戸の338回を抑えてリーグ最少となっている。鳥栖戦では右サイドを抜け出したMF松田が相手のペナルティーエリア内でのハンドを誘発し、今季初のPKも獲得。前節までリーグで唯一、PKでの得点がなかったが、それをFW鈴木が冷静に仕留めた。

その直後に失点し、勝ち点1に終わったが、松橋監督は「いいゲームは展開できた。今後は内容と結果をリンクさせる戦いをしていきたい」と残り4試合を見据えた。【石川秀和】

先制のPKを決め、チームメートから祝福される鈴木(右)
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町田プレッシャーはねのけ「2」/第1404回

町田は、J1昇格がかかる大事な一戦となる。相当なプレッシャーがあるが、はねのけることができると判断した。J2で2位以内を確保したい磐田と清水の静岡勢は1試合も落とせない状況。両チームはJ1で長くもまれたクラブ歴史もあり、勝ち点を簡単には落とせないはず。鹿島と神戸の国立決戦。神戸は勝てば初優勝へ大きく前進するが、鹿島も上位に食い込む可能性を残す。神戸が勝ち点3を確保するのは難しい。【盧載鎭】

◆日刊予想

(1)新-鳥1

(2)浜-東1

(3)G-名2

(4)神-鹿2

(5)広-C2

(6)横-札2

(7)京-湘1

(8)熊-町2

(9)栃-大2

(10)い-清2

(11)秋-仙2

(12)金-山2

(13)徳-磐2

※左がホーム。1=ホーム90分勝ち、2=ホーム90分負け、0=その他

セルジオ越後「ちゃんとサッカーしなさい」

【セルジオ越後】久保建英はトップ下では? 相手のプレスから左に逃げた 残念でならないよ

日本対チュニジア 後半、ドリブルで攻め込む久保(撮影・藤尾明華)

<サッカー国際親善試合:日本2-0チュニジア>◇17日◇ノエビアスタジアム神戸

日本代表(FIFAランキング19位)がチュニジア(同29位)を2-0で下し、国際Aマッチ6連勝となった。11月から始まる2026年ワールドカップ(W杯)アジア2次予選を前に最後の実戦でも自慢の攻撃陣が地力を発揮し、昨年6月に0-3と敗れていた相手にリベンジも果たした。

   ◇   ◇   ◇   

久保のポジションはどこだ? 確か、トップ下のはずだった。でも相手のプレスから左に逃げた。だからせっかくのシュートチャンスも逃してしまう。トップ下で試合を作ったのは、久保ではなく、ボランチの守田だった。相手は右MF伊東を警戒し、そのサイドに重きを置いて守った。その分、逆サイドが空いて、久保は左に流れた。利き足が左の久保が、左でプレーすることになってやりづらかったのだろう。

迷っていた。ドリブルの場面でパスを選び、リスクのあるパスより、味方に確実に届くパスコースを選択した。相手がまだ元気だった前半は、ミスを恐れたプレーが多かった。今の代表ではサブメンバーなのに、自分の立ち位置が分かっていないようだ。認識の甘さかな。鎌田や三笘、堂安がいなくて、せっかくのアピールの場。しかも相手は5バックで守備的だった。ここで攻撃力、ひらめき、積極性を見せなければ、いつになってもベンチだぞ。

相手の足が止まった後半から、少しは目立つ動きがあった。しかし、これでは監督としては戦力としては計算しづらい。来月からのW杯アジア2次予選、来年1月開幕のアジア杯、その先のW杯最終予選。相手は守備的に来るはずだ。この日のチュニジアと違って、後半まで足は止まらない。そうなると、やはり今の久保なら使いづらい。

せっかくスペインリーグの月間MVPを引っ提げて帰国したんだ。成長した姿を見るのが楽しみだっただけに、残念でならないよ。(日刊スポーツ評論家)

日本対チュニジア 後半、ボールをカットされたタルビ(下)を跳び越える久保(撮影・藤尾明華)
日本対チュニジア 後半、パスを出す久保(撮影・前田充)
日本対チュニジア 後半、パスを出す久保(撮影・前田充)
日本対チュニジア 後半、ゴールを決め、アシストのパスを出した久保(左)と喜ぶ伊東(撮影・藤尾明華)
日本対チュニジア 後半、ゴールを決め、アシストのパスを出した久保(左)と喜ぶ伊東(撮影・藤尾明華)
日本対チュニジア 後半、交代し森保監督(左)とタッチを交わす久保(撮影・藤尾明華)
日本対チュニジア 後半、伊東のゴールをアシストする久保(後方)(撮影・狩俣裕三)
日本対チュニジア 後半、伊東のゴールをアシストする久保(後方)(撮影・狩俣裕三)
日本対チュニジア 後半、橋岡(右)と交代する久保(撮影・前田充)
日本対チュニジア 後半、指示を出す久保(撮影・前田充)
サッカー現場発

【天皇杯】浦和の来季参加資格はく奪に思う、サポーターの暴挙を選手が償う結末は正しいのか

浦和のチーム旗

今年の天皇杯は、日本サッカー史に残る事件が起きた負の歴史が刻まれた大会になった。

8月2日の4回戦において、浦和レッズのサポーターが名古屋グランパスのサポーターに対し暴力行為を働いたとして、天皇杯を主催する日本サッカー協会は史上初の処分として、浦和レッズの24年度天皇杯参加資格のはく奪が決まったと発表した。

  ◇  ◇  ◇   

懲罰を決めた日本サッカー協会(JFA)の規律委員会によれば、2000年以降、浦和サポーターによる懲罰事案は11件にのぼったという。「本件サポーターらには、自らの行為がクラブに招いた結果の重大性をしっかりと受け止めてほしい」と、処分決定時には日本協会が異例の付言も残した。

クラブとサポーターはひとつのファミリーという考え方が日本サッカー界にはある。Jリーグは理念として、クラブの本拠地を「ホームタウン」と呼ぶ。その意味を「Jクラブと地域社会が一体となって実現する、スポーツが生活に溶け込み、人々が心身の健康と生活の楽しみを享受することができる町」を定義している。クラブを応援することで、地域も盛り上がっていく。それがJリーグ構想の大きな柱となっている。

ゆえに、サポーターのトラブルに対してもクラブは責任を負う。場合によってはサポーターとコミュニケーションをとりながら、共栄の形を探ってきた。

サポーターが騒動を起こせば、クラブは調査を行い、必要であればペナルティーを科す。そうして、秩序維持が図られてきた。浦和は特に、熱心なサポーターに支えられているクラブ。サポーターと良好な関係を築くことも、クラブの大切な役割になっていた。

ただ、一部サポーターによる騒動は繰り返された。昨年7月にコロナ禍での声出し応援禁止のルールを破り、Jリーグから罰金2000万円の処分が出た。自浄作用の欠如も露呈され、今回で天皇杯参加資格をはく奪するペナルティーを決断するに至った。

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サポーターが起こした騒動によって、選手が公式戦に出場する機会が奪われる罰に行き着いてしまった。浦和の選手は公にはコメントしていない。ただ、クラブ関係者は「懸命にプレーしていた選手が処罰の対象になってしまったことには、不条理を感じる」と声を漏らした。サポーターの中には、天皇杯の試合前にわざわざクラブハウスに来て応援のために横断幕を貼り、天皇杯の先にあるアジア・チャンピオンズリーグ、そしてクラブワールドカップで、愛するクラブが躍進する姿を願う者もいた。選手を応援する機会を奪われ、怒りに震えていることだろう。

これ以上の暴走を阻止しなければという使命感と、事態を収拾しなければという焦燥感があったにせよ、選手にペナルティーが及ぶという本質から外れた裁定に至ったことは痛恨と言える。タイトルを失うだけではなく、選手のプレー機会が減少することも避けられない。

敗戦に怒り、警察の力を借りなければ止められないほどの暴走を起こしたことはあるまじき行為だ。だが、それによって選手がプレーの場を失うのは、日本サッカーの発展を目指すという大会の意義に逆行している。今回の決定が今後、負の先例とならないことを願うしかないのが現状だ。

当該サポーターへの厳罰は言うまでもない。と同時に、サポーターの行動にまで広く責任を負うのがクラブトップだとする観点に立つなら、選手でなくその立場の人間やクラブに相当な処分がなされるべきではないか。せめて、選手に処罰が及ぶことは阻止すべきだった。サポーターの暴挙が選手の公式戦欠場で償われることなど、あってはならない。

試合会場は変更できなかったのか。過去に起きた騒動の際、サポーターへの働きかけは本当に十分だったのか。サポーターの熱という面においてはJリーグをけん引すべき立場だからこそ、この事態を招く前にクラブが徹底できることはあった。

躍進著しい日本サッカーだが、今回の暴挙とそれに付随する裁定は、日本サッカーが抱えた恥ずべき出来事として、決して忘れてはならない。【岡崎悠利】

永島昭浩「スーパーゴォ〜ル」

【永島昭浩】カナダの勝機奪い取った守備 前線から奪い、押し上げ、シュートで完結する形が確立

日本対カナダ 前半、守備をする中村(右)(撮影・足立雅史)

<国際親善試合MIZUHO BLUE DREAM MATCH 2023:日本4-1カナダ>◇13日◇デンカS

日本がカナダから4点を奪い、大勝した。元日本代表FWで日刊スポーツ評論家の永島昭浩氏(59)は、相手に勝利の計算もさせない、完勝だったという。その勝因は、相手がボールを保持した時から始まる日本の守備を挙げた。

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日本はカナダに何もさせなかった。相手はファーストタッチやトラップの際、立ったままスピードを緩める傾向があった。そこを見逃さなかった。浅野が相手からボールを奪い、中村の得点につなげた3点目はその象徴だろう。カナダにPKの失敗があったとはいえ、ほぼ勝機を奪い取った上での完勝だった。

確立された守備は昨年のW杯で自信をつけ、今がある。前線のFWが守備のスイッチを入れ、ボールを奪いに行き、全体を押し上げ、ゴール前に攻め込む。

ペナルティーエリア付近では、中村のように高確率でシュートまで持っていくし、2、3列目から田中がゴール前に顔を出せるのも、守備から始まった攻撃がきっちり、完結するという確信があるからだ。

三笘や堂安ら常連組が不在だったが、誰が入っても守備の時点からポジティブな思考なのだろう。この一連の動きが、攻撃への厚みとなり、5試合で22得点という数字に表れている。

日本は前からの守備がうまく機能せず、ビルドアップも停滞した時、どう対応できるか。さらに強くなるため、対戦相手によって日本の武器を消された時の想定をしておきたい。(日刊スポーツ評論家)