日刊スポーツ

データが語る

【アジア杯】日本代表、初戦ベトナム戦のクロス成功率0%、精度のズレを修正して第2戦へ

1月14日、アジア杯 日本対ベトナム 後半、シュートを放つ上田(手前)

AFCアジアカップ(アジア杯)カタール大会で、日本代表(FIFAランキング17位)は19日午後2時半(日本時間同8時半)からアルラヤンでの1次リーグD組第2戦でイラク代表(同63位)と対戦する。

4-2と逆転勝ちした初戦のベトナム戦はセットプレーの守備とともにクロスの精度も課題として残った。3大会ぶり5度目の優勝に向けては、そのズレの修正もポイントの1つになりそうだ。

国際サッカー連盟(FIFA)の技術研究グループのリポートによると、日本のベトナム戦のクロス成功率は0%だった。流れの中から12本のクロスを送り、味方のシュートに直結したピンポイントのクロスは1本もなかった。

前半28分のDF伊藤の左からのクロス、後半4分のMF伊東の右からのクロスはともに精度を欠き、GKに難なくキャッチされた。後半16分には右からグラウンダーのクロスを送った伊東と、ゴール前に入ろうとしたFW上田の呼吸が合わないシーンがあるなど、出し手と受け手のズレも散見された。

相手守備陣の奮闘もあって、サイド攻撃は不発に終わったが、今年8戦8発と好調を維持する上田は守備を固める相手への対処法について「高い位置でボールを奪えていたら背後は取れるけど、ゴールを取る術に関してはクロスやセットプレーとかいろいろある」と話していた。MF南野、久保らの中央突破の効率を高める意味でもクロスのズレを修正し、「攻撃の幅」を広げながら勝ち進みたい。

【石川秀和】

1月14日、アジア杯 日本対ベトナム 後半、ドリブルで攻め込む伊東(左)
スペイン発サッカー紀行

なぜサウジ開催? スペイン・スーパー杯はRマドリードが2試合9得点の圧勝で13回目の王者に

レアル・マドリードは14日、スペイン・スーパーカップ決勝で宿敵バルセロナに圧勝し、通算13回目の王者に輝いた。

今回もサウジアラビア開催となったが、そもそもなぜスペインの統一王者を決める大会が国外で行われるようになったのか? それには当然、多額の金銭が絡んでいる。

■経済的利益を上げるため国外開催

82-83年シーズンにスタートした同大会はこれまで、夏にホーム・アンド・アウェー形式で行われるのが常だった。しかし18-19年シーズン、スペインサッカー連盟は経済的利益を上げるため、同大会史上初となる一発勝負および国外開催を決断。さらにスペインの公式戦で初めてVARを導入し、タンジェ(モロッコ)が舞台となった。

スペインサッカー連盟はさらに翌年、これまであまり大きな価値がないとされていたこの大会を立て直し、「スペインサッカー」をブランド化し世界に広めるべく、19-20年シーズンから本格的に大会形式を一新。スペインリーグ優勝と2位、国王杯ファイナリストの4チーム参加のトーナメント制となり、冬に国外で開催されることになった。そして数ヶ国によるオークションの結果、サウジアラビア政府がその権利を落札したのだ。

スペインスーパー杯を制して喜ぶレアル・マドリードの選手たち(AP)

■ピケが会長務める投資会社が支援

この契約は、まだ現役だった元バルセロナDFジェラール・ピケ氏が会長を務める投資会社コスモス(楽天の三木谷会長の財政支援を受けて17年に創業)が仲介役を務め、サウジアラビアの公営企業セラとの間で交わされたことで物議を醸し出した。

当初の契約は6年間。最初3大会は強制的に開催され(20-21年シーズンは新型コロナウイルス感染拡大の影響によりスペイン国内で実施)、残り3大会はサウジアラビア政府の決定次第という内容だった。

当時の報道によると、スペインサッカー連盟はサウジアラビア政府から1大会ごとに4000万ユーロ(62億円)を受け取り、そのうち1000万ユーロ(約15億5000万円)を自分たちの利益とし、3000万ユーロ(約46億5000万円)を参加チームに分配する予定だったという。そしてコスモス社には仲介手数料として同国から、1大会ごとに400万ユーロ(約6億2000万円)が支払われ、スペイン・スーパーカップはまさに金のなる木となった。

この契約は現在、2029年まで延長されているが、同大会に参加する選手たちは今後もシーズン半ばの疲労が溜まるタイトな日程の最中、中東への移動を余儀なくされ、大きな犠牲を払うことになる。

■不平等な分配金は裁判になった

また、参加チームの実績(タイトル獲得数、視聴者数、放映権の分配比率など)に応じて算出される不平等な分配金は当初から大きな問題になっていた。さらに、ピケ氏と当時スペインサッカー連盟の会長を務めていたルイス・ルビアレス氏(※ワールドカップ優勝後の表彰式でスペイン女子代表選手にキスしたことが原因で昨年9月に会長職を辞任)の間の音声データが流出し、大きな衝撃を与えていた。

同大会に選手として参加していたピケ氏はその際、分配金に関して、「Rマドリードとバルセロナに800万ユーロ(約12億4000万円)を渡し、その他の2チームにそれぞれ100万ユーロ(約1億5500万円)と200万ユーロ(3億1000万円)を払えば、スペインサッカー連盟に600万ユーロ(約9億3000万円)残る」などと、運営に介入するかのような具体的な話をしていた。

不平等な分配金については当然のことながら2強以外のクラブから不満の声が上がり、19-20年シーズンに参加したバレンシアは商業裁判所にスペインサッカー連盟を提訴。最終的にこの訴えが認められ、倍近い賞金を得るに至っていた。

今大会では当初、Rマドリードとバルセロナは固定で600万ユーロ(約9億3000万円)、アトレチコ・マドリードは280万ユーロ(約4億3400万円)、オサスナは90万ユーロ(約1億3950万円)を受け取る予定になっていた。しかし、オサスナへの分配金が安すぎたため、最終的に他の3チームからそれぞれ20万ユーロ(約3100万円)ずつ支払われ、150万ユーロ(約2億3250万円)にアップした。

さらに結果に対するボーナスとして、優勝チームに150万ユーロ(約2億3250万円)、準優勝チームに100万ユーロ(約1億5500万円)、準決勝敗退の2チームにそれぞれ75万ユーロ(約1億1625万円)が追加されることになっていた。

スペインスーパー杯を制して喜ぶレアル・マドリードの選手たち(AP)

■ビニシウス39分間でハットトリック

このような条件下で今年10日から14日にかけてサウジアラビアの首都リヤドで開催された今大会に、バルセロナ(スペインリーグ優勝)、Aマドリード(スペインリーグ3位。Rマドリードが2位のため繰り上げ参加)、Rマドリード(国王杯優勝)、オサスナ(国王杯準優勝)が参加した。

Rマドリードは今季の勢いそのままに、準決勝でAマドリードとのダービーマッチを延長戦の末に5-3で制し、決勝ではオサスナを破ったバルセロナ相手のクラシコに4-1で勝利した。2試合合計9ゴールを奪う見事な内容で、2大会ぶり通算13回目の優勝を成し遂げたのだ。

特に決勝は両チームの今季の出来が如実に現れる結果となった。Rマドリードはボールの有無にかかわらず、試合を通じて素晴らしいパフォーマンスを発揮した。立ち上がりから攻撃陣がうまく機能し、バルセロナの高いディフェンスラインを次々と破っていく。ビニシウスはキックオフからわずか39分間でハットトリックを完成させ、アラウホの退場を誘発する大活躍を見せるなど、最高の出来であった。怒涛のゴールラッシュでRマドリードが圧勝し、前大会決勝のリベンジを果たした。

Rマドリードで11個目のタイトルを獲得したアンチェロッティ監督はこの試合後、チームが大量得点を挙げている要因として、「前線の選手たちはポジションが固定されておらず、機動力があるので、我々は相手にとって非常に危険な存在になっている。ビニシウス、ベリンガム、ロドリゴはサイドバックのサポートを受けながら多くのチャンスを作り出しており、その機動力が相手に問題を引き起こしている」と説明した。

一方、公式戦のクラシコ3連敗および10失点を喫したバルセロナのシャビ監督は「今季最悪の姿を露呈した」と試合内容の悪さを認め、「バルセロニスタに謝罪したい」と大敗に落ち込んだようすを見せていた。

■昨年9月以降は21試合負けなし

Rマドリードは近年、シーズン半ばとなる1月に調子を崩す傾向にあったが、今季は安定した戦いぶりを見せている。序盤苦しんだ得点力不足を改善し、クルトワ、ミリトン、アラバといったDF陣の主力をけがで欠きながらも、代わりを務める選手たちの奮闘により堅守を誇っている。ここまでの公式戦成績は28試合24勝3分け1敗。昨年9月に唯一の黒星を喫したAマドリード戦以降、21試合連続で負けておらず、現在7連勝中と絶好調だ。

この後、18日に国王杯4回戦で再度Aマドリードと対戦し、来月半ばのライプチヒ戦で欧州チャンピオンズリーグ(CL)を再開する。シーズンが佳境を迎える中、Rマドリードが今の勢いを維持し続けられるなら、2季ぶりのスペインリーグ&欧州CL優勝および国王杯2連覇も夢ではないかもしれない。

【高橋智行通信員】(サッカーコラム「スペイン発サッカー紀行」/ニッカンスポーツコム)

スペイン・スーパーカップ決勝で敗れたバルセロナの選手(ロイター)

データが語る

【データが語る】中村敬斗「出た時にベストパフォーマンス」出場6戦連発なら“伝説のFK”以来

アジア杯カタール大会1次リーグ 日本対ベトナム (撮影・足立雅史)=2024年1月14日(現地時間)

日本代表MF中村敬斗(23=スタッド・ランス)が快記録連発だ。14日のAFCアジアカップ(アジア杯)1次リーグ初戦のベトナム戦(4-2)で、2-2の前半終了間際にペナルティーエリア手前からの見事な右足コントロールシュートで勝ち越し点を奪った。

国際Aマッチデビューとなった昨年3月のウルグアイ戦は後半44分からの出場で無得点だったが、その後は1、2、1、1、1点と出場5試合連続ゴール。日本代表で出場5戦連発は2019年のMF南野拓実らに並ぶ歴代2位タイの記録で、出場6試合連続ゴールとなれば、1985年に日本の「背番号10」MF木村和司がマークした歴代最多記録に並ぶことになる。

FKの名手として知られる当時27歳の木村は1985年10月26日のFIFAワールドカップ(W杯)メキシコ大会アジア最終予選の韓国戦(国立)で、6戦連発となる「伝説のフリーキック」を決めて達成した。右足でゴール左上隅に決めた直接FKゴールは今も語り継がれる。

2000年生まれの中村はその伝説の記録に並ぶ勢い。さらにAマッチデビューから出場7戦7発となれば、日本代表監督を務めたこともあるFW二宮寛(7戦8発)が1959年にマークして以来、実に65年ぶりとなる。

「自分のやることは変わらない。出るか出ないかは監督が決めること。出た時にベストパフォーマンスを出せればいい」。左足首負傷の影響でMF三笘の復帰が不透明な中、新時代のアタッカーにかかる期待は大きい。【石川秀和】

〈日本代表の国際Aマッチ出場連続試合ゴール〉

▼6試合連続

木村和司(85年)1、1、1、1、1、1点

▼5試合連続

渡辺正(58~59年)1、1、1、1、1点

釜本邦茂(66~67年)1、6、3、1、1点

南野拓実(19年)1、1、1、2、1点

中村敬斗(23年~)1、2、1、1、1点

日本対ベトナム 前半、ゴールを決めた中村(中央)(撮影・足立雅史)
W杯メキシコ大会アジア最終予選日本対韓国 前半終了間際、「伝説のフリーキック」を決める木村和司(1985年10月26日撮影)
セルジオ越後「ちゃんとサッカーしなさい」

【セルジオ越後】凡戦の言い訳「初戦は難しい」相手だって初戦だぞ 情けない内容はもういいよ

日本対ベトナム 前半、ベトナム代表グエン・ディン・バックにゴールを決められ、選手たちに指示を出す森保監督(後方)(撮影・足立雅史)

<アジア杯:日本4-2ベトナム>◇1次リーグ◇第1戦◇14日◇カタール・ドーハ

サッカー日本代表(FIFAランキング17位)が14日、アジアカップ(アジア杯)カタール大会の1次リーグ初戦で、元監督フィリップ・トルシエ氏(68)率いるベトナム代表(同94位)と対戦。南野の2ゴールなどで4得点を挙げ、幸先良く白星スタートを切った。

   ◇   ◇   ◇   

「初戦は難しい」。凡戦をいいわけするには、持って来いのキャッチフレーズだな。相手だって初戦だぞ。前半、先制しながらセットプレー2本で一時逆転された。初戦だからか? 特に2失点目。相手の長身選手は1人しかいないのに、その選手に競り負けて失点した。聞きたいよ。2戦目なら止められたかな?

前半のうちに逆転して、後半は楽に得点できると思ったが、なかなかゴールが入らない。相手は前半35分すぎには足が止まっていたぞ。長い距離は走れなかったし、足をつる選手もいた。それでも4点目を奪うのに、時間がかかりすぎた。

「いい守りからいい攻撃」。これは森保ジャパンのキャッチフレーズ。相手が攻めてこないからいい守りは存在しなかった。いい守りが消えて、いい攻撃もできなくなったのかな。ワンパターンでメリハリのない攻撃。この代表がダメな時のパターンが、この日も出てしまったね。

特に左からの攻撃が機能しなかったね。途中から伊東を左に回したが、破壊力がない。三笘の復帰を待つしかないのかな。これまでファーストチームとセカンドチームがそれぞれ結果を出して連勝してきて「選手層が厚くなった」と評価された。でも三笘1人いないだけで、攻撃が限られると、本当に選手層が厚くなったとは言えないだろう。

本当のアジア杯は、決勝トーナメントから。1次リーグ3試合はピッチと気候に慣れるための試合。情けない内容はもういいよ。頼むから、もう2度と変なキャッチフレーズで惑わさないでくれよ。(日刊スポーツ評論家)

日本対ベトナム 前半、ベトナム代表のファム・トゥアン・ハイにゴールを決められ、厳しい表情の森保監督(左から2人目)(撮影・足立雅史)
データが語る

【データが語る】浅野拓磨、日本代表史上最高の「切り札」へ/日本代表歴代交代出場得点ランク

浅野拓磨(2022年11月撮影)

アジア杯カタール大会は12日(日本時間13日未明)に開幕する。3大会ぶり最多5度目の優勝を狙う日本は1次リーグD組で14日にトルシエ元日本代表監督が率いるベトナムと初戦。19日にイラク、24日にインドネシアと顔を合わせる。

日本代表史上最高の「切り札」へ-。FW浅野拓磨(29=ボーフム)は35人目の国際Aマッチ通算10ゴールにあと1点と迫る。先発した試合は16試合で4得点、途中出場では32試合で5得点をマークしている。交代出場での得点数はFW本田圭佑と並び日本歴代2位。FW中山雅史の最多6点にあと1点だ。

J1サンフレッチェ広島時代の15年には森保一監督の下、途中出場だけで年間8ゴールをマーク。もちろん、先発でのゴールも期待したいが、これまでは主に「スーパーサブ」として限られた出場時間の中でも結果を残してきた。

22年ワールドカップ(W杯)カタール大会のドイツ戦では後半12分からピッチに立ち、1-1の同38分に決勝点。昨年9月の国際親善試合でもドイツを相手に2試合連続で途中出場からゴールを決めた。

準優勝に終わった前回UAE大会はメンバーに選出されるも、負傷のため出場を辞退。悔しい思いが残っている。日本が誇る快足アタッカーは「優勝を目指してやるのは当たり前。アジア杯に向けて100%の状態をつくれるようにしたい」と意気込んでいた。

【石川秀和】

〈日本代表途中出場得点数ランキング〉

1位 中山雅史 6(先発15点)

2位 浅野拓磨 5(先発4点)

2位 本田圭佑 5(先発32点)

4位 大黒将志 4(先発1点)

4位 佐藤寿人 4(先発0点)

スペイン発サッカー紀行

Rマドリードが“冬の王者”に スペイン過去の統計から前半戦首位チームが優勝する可能性55%

Rマドリードのベリンガム(左)は新年初戦のマジョルカ戦にフル出場(AP)

全てのチームが新年最初の第19節を消化し、スペインリーグの前半戦が終了した。レアル・マドリードが“冬の王者”に輝き、欧州チャンピオンズリーグ(CL)出場圏内にジローナやビルバオといったダークホースが食い込む結果となった。

■守備面改善でリーグ最少11失点

Rマドリードは15勝3分け1敗の勝ち点48でジローナと並ぶも、得失点差、直接対決の結果でともに上回り、首位で前半戦を折り返した。

エースのベンゼマ退団の影響が懸念され、けが人続出の厳しい状況の中、新加入のベリンガムが瞬く間にフィットし、得点ランキングトップに立つ13得点を挙げてチームを牽引。さらにロドリゴが復調し、普段出番の少ない選手たちの奮闘が目立った。

アンチェロッティ監督が第19節マジョルカ戦後に前半戦を振り返り、「アトレチコ・マドリード戦での問題を解決できた」と語ったように、今季唯一の敗北を喫したマドリードダービーから守備面を改善できたことも成功の要因に挙げられる。守備の要であるクルトワとミリトン不在の中、ここまでクリーンシートを10回達成し、リーグ戦最少の11失点と申し分ない成績だ。

後半戦に向けて気がかりは、アラバが先月、今季絶望の大けがで離脱したにもかかわらず、アンチェロッティ監督が今冬の移籍市場で新たなセンターバックを補強しないと明言したことだ。チュアメニやカルバハルでカバーする方針を明かしているが、シーズンが佳境に入りCLが再開する中、うまく乗り切ることができるのか、その手腕に注目が集まる。

■ジローナの観る者楽しませる攻撃

特筆すべきは2位につけるジローナの存在だ。2季前に2部だったチームが今の順位にいることを、開幕前に誰が予想できただろうか? ミチェル監督がこれまでに培ってきた“観るもの全てを楽しませる攻撃的なサッカー”が華開き、リーグ戦最多の46得点を記録。Rマドリードと並ぶ15勝3分け1敗の勝ち点48の2位という堂々の成績で前半戦を終了した。

マンチェスター・シティを筆頭とするシティ・フットボール・グループの恩恵を受け、サビーニョやヤン・コウトのブラジル人サイドアタッカー、11ゴールで得点ランキング4位につけるFWドフビク、中盤の大黒柱アレイシュ・ガルシアなど、各ポジションにタレントを配し、ここまで黒星はRマドリード戦のみ。激しい撃ち合いを制し4ゴールを奪ったバルセロナ戦やアトレチコ・マドリード戦の戦いぶりは圧巻の一言に尽きる。

後半戦、各チームの警戒が増すことは必至のため、前半戦のようには勝ち星を挙げられないかもしれない。しかし、ここまでに獲得した勝ち点を過去のデータに照らし合わせると、3位以内でフィニッシュする確率は100%。それはジローナが来季、クラブ史上初の欧州CL出場を達成することを意味している。

■バルサに目立つ取りこぼしの多さ

昨季王者のバルセロナは12勝5分け2敗の勝ち点41で3位。序盤は新戦力がうまく機能し、勝ち星を順調に積み重ねていった。しかし主力のけがが多発したことや、昨季の得点王レバンドフスキの決定力に翳(かげ)りが見えていること、そしてクンデやバルデ、オリオール・ロメウ、ジョアン・フェリックスいった選手たちのパフォーマンス低下などが原因で、勝ち点を思うように伸ばせなくなっていった。それに追い打ちをかけるようにガビが今季絶望の重傷を負う不運に見舞われている。

また、守備での致命的なミスやプレスの弱さが目立ち、リーグ戦をまだ半分しか消化していないにもかかわらず、堅固な守備を誇った昨季全体の20失点をすでに上回る22失点を喫している。それも影響してリーグ戦ここ6試合のうち半分しか勝てておらず、Rマドリードとの勝ち点差が7に開いている。

シャビ監督が取りこぼした試合後に度々「我々は勝利に値した」と発言しているが、これは不安定なチーム状態を表していると言えるだろう。

直近のラスパルマス戦でバルセロナデビューを飾った新加入のビトール・ロケは可能性を感じさせるパフォーマンスを披露し、後半戦の巻き返しに向けた起爆剤となり得る人材かもしれない。しかしまだ18歳で欧州初挑戦のため、過度な期待は禁物だ。

■ビルバオは組織力に前線が機能

ビルバオは現在3連勝中で、ここ9試合負けなし(6勝3分け)と絶好調。11勝5分け3敗の勝ち点38という成績で、アトレチコ・マドリードを得失点差で上回って4位につけ、10季ぶりの欧州CL出場権獲得に向けて前進している。

成功の要因として、既存のメンバーに新戦力のガラレタが加わり組織力がアップしたことや、前線の4人がうまく機能していることが挙げられる。イニャキとニコのウィリアムズ兄弟のサイドアタックに磨きがかかり、トップ下のサンセットがスペイン代表に選出されるまでに成長し、前線でグルセタが高い得点力を発揮している(8得点)。

■Aマドリードはアウェーで勝負弱さ

アトレチコ・マドリードは12勝2分け5敗の勝ち点38で欧州CL出場圏外の5位。カラスコ退団で懸念された左ウイングバックを、期限付き移籍から戻ったサムエウ・リーノとリケルメでうまく穴埋めした以外、昨季から大きな変化がないが、シメオネ監督がここ数年取り組んでいる3バックシステムの完成度をより高めている。

得点ランキング2位のモラタ(12得点)と4位のグリーズマン(11得点)がスペインリーグ最強の2トップを形成して、チームが例年以上の得点力を発揮していることが特徴だ。

さらにホームのシビタス・メトロポリターノを難攻不落の要塞と化し、1年前にバルセロナに敗れた後、リーグ戦21試合無敗を誇る(19勝2分け)。空中戦で圧倒的な強さを発揮し、Rマドリードに唯一黒星をつけたチームとなった。

一方、アウェーで勝負弱さを露呈している。バルセロナ、ジローナとの優勝争いの直接対決に敗れて4連敗中であることが大きく影響し、首位に勝ち点10差をつけられている。

10季ぶりの参戦となる欧州CLで成功を収めているレアル・ソシエダードは、久保が6得点3アシストという素晴らしいパフォーマンスを発揮してチームを牽引。しかし序盤の取りこぼしや選手層の薄さ、最近のゴール欠乏症によりここ3試合連続で引き分けていることなどが響き、8勝8分け3敗の勝ち点32で6位となっている。

上位5チームとの対戦のうち、勝利したのはビルバオ戦のみ。その他の4チームに一度も勝っておらず(Rマドリード、バルセロナ、Aマドリードに敗北、ジローナと引き分け)、4位との勝ち点差が6あるため、2季連続の欧州CL出場権獲得はやや厳しい状況だ。

さらに来月上旬まで久保、トラオレ、サディクを代表戦で欠く可能性がある中、ビルバオ、ジローナとの重要なアウェーゲームを控え、正念場を迎えている。

下位チームに目を向けると、アルメリアは1勝もできず、残留圏内の17位セルタと勝ち点11差の最下位。前半戦を終えて勝ち点5というのはスペインリーグ史上、97-98年シーズンのスポルティング(勝ち点3)に次ぎ、2番目に悪い成績である。

100年近い歴史のスペインリーグにおいて、統計的に“冬の王者”に輝いたチームが優勝トロフィーを掲げる可能性は55%。一方、ここ10シーズンはその可能性が高まっており、70%となっている。すなわち、まだ19試合を終えたばかりだが、現時点でRマドリードが最も優勝に近い存在であることは間違いない。

【高橋智行】(スペイン発サッカー紀行/ニッカンスポーツコム・サッカーコラム)

セルジオ越後「ちゃんとサッカーしなさい」

【セルジオ越後】お年玉いっぱいもらえたね、いい夢見たよ、真剣勝負のアジア杯では夢を広げてね

日本対タイ 後半、ゴールを決める田中(左)(撮影・足立雅史)

<国際親善試合TOYO TIRES CUP 2024:日本5-0タイ>◇1日◇東京・国立競技場

「新春お年玉大会」だったね。実力差が大きいタイ相手に、元日の国立には6万人を超えるファンが集まった。普通、世界ではこれだけ実力が離れた相手との試合に、こんなにお客さんは来ないよ。

この1試合で、日本サッカー協会(JFA)は億単位の収入を得たのだろう。5人がA代表デビューを果たして思い出を作ったし、チームは5点差の快勝で9連勝だ。めでたい新年に、幸先のいいスタートだ。お年玉をいっぱいもらって良かったね。

このタイミングは、IMD(国際Aマッチデー)ではないため選手をフルに集めることはできないし、対戦相手を探すのも難しい。チームの強化を図るようなことはできない。恒例の天皇杯決勝が開催できず(インカレ決勝を前倒しして)国立が空いたため、偶然に組まれた「イベント」に過ぎないのかな。お祭りとしては大成功だったけどね。

新戦力を多く試したけれど、森保監督はこの試合でアジア杯カタール大会のメンバー入りを見極めようとは、思わないだろう。中旬(12日)にはアジア杯が始まる。26年FIFAワールドカップ(W杯)北中米大会から、アジアに与えられた出場権が8・5枠にもなったため、W杯予選は価値を大きく落とした。そのため、トーナメントの1戦1戦がアジアの強豪とサバイバルマッチとなるアジア杯が、日本代表に与えられた久しぶりの真剣勝負の場となる。

森保監督はかなり評価を上げているけど、振り返ってみれば、W杯でドイツ、スペインに勝っただけ。東京五輪ではメダルが取れなかったし、W杯では目標の8強に入れなかった。今度のアジア杯は、就任以来初めての大きなタイトルとなる。

お祭りは終わった。これからは真剣勝負。アジアの頂点にならないと、世界8強は夢だからね。新年いい夢を見たわけだから、まずはアジア杯で強敵をなぎ倒して頂点に立ってくれよ。それでこそ、夢が広がるよ。(日刊スポーツ評論家)

日本対タイ 後半、ゴールを決めジャンプし喜ぶ南野(撮影・足立雅史)
日本対タイ 後半、ゴールを決め喜ぶ南野(左)(撮影・井上学)
日本対タイ 前半、シュートを放つ伊東(中央)(撮影・井上学)
日本対タイ 後半、ゴールを決める田中(中央)(撮影・井上学)
日本対タイ 後半、頭でゴールを決め笑顔を見せる川村(中央)(撮影・足立雅史)
日本対タイ 後半、南野(中央)と握手する森保監督(右)(撮影・井上学)
日本対タイ 前半、指示を出す森保監督(右)(撮影・足立雅史)
日本対タイ 後半、ゴールを決め喜ぶ南野(撮影・足立雅史)
日本対タイ 後半、頭でゴールを決め笑顔を見せる川村(中央)(撮影・足立雅史)
日本対タイ 後半、頭でゴールを決める川村(右)(撮影・足立雅史)
日本対タイ 後半、ゴールを決めた中村(左)(撮影・足立雅史)
日本対タイ 後半、ゴールを決め笑顔を見せる田中(撮影・足立雅史)
日本対タイ 後半、ゴールを決め笑顔の田中(右から2人目)(撮影・井上学)
日本対タイ 後半、ゴールを決める田中(奥)(撮影・井上学)
サッカー現場発

ジャンボ大久保哲哉、今季も神奈川県1部で17戦12得点5アシスト地域でも結果残し続ける理由

今季12得点を挙げたFIFTY CLUBのFW大久保哲哉

「ジャンボの愛称で知られ、神奈川県1部FIFTY CLUBのFW大久保哲哉(43)が、公式戦17試合出場で12得点5アシストの結果を残し今季を終えた。「結果が求められているポジションなので、数字が必要。そこを意識しながらプレーしていた。そういう意味ではいいシーズンだった」と振り返った。

大久保がJ1から数えて7番目のカテゴリーであるFIFTY CLUBに所属して今季が5年目だ。1年目の19年は18得点で得点王。20年も8試合9得点で得点王。21年は8得点(2位)、22年も6得点(2位)とコンスタントに結果を残している。Jリーグから数多くの選手が地域リーグに移籍しているが、公式戦も練習場も人工芝という環境の変化の中、大きな負傷もなく結果を残し続けるのは容易ではない。

12月の初旬、今季の最後の練習にお邪魔した。チームではもちろん最年長。ゲーム形式の練習では、率先してプレスのスイッチを入れ、プレスの連動の声かけも目立っていた。GKからのロングフィードが頭上を越えたときは「(自分の)胸を狙ってくれればOKだから」と、コーチのような口調で指導する風景もあった。

居残り練習では、21歳のMF中野龍斗とシュート練習。中野のクロスをゴール前で点で合わせる練習を繰り返していた。元Jリーガーではあるが、自らその壁を取り払いチームに溶け込んでいる。

大久保は言う。「コミュニケーションは、チームがいい雰囲気になるように言わないといけない。それは心がけるようにしています。感情的になるシーンもありますが、そのままの勢いで思ったことを言葉にすると、若手は萎縮してしまう。うちのチームには18歳、20歳の選手もいる。若手には伸び伸びやってもらえる方がいいので」。

大久保は19年にA級コーチのライセンスも取得し、三浦学苑高校(神奈川)のサッカー部のテクニカルアドバイザーとして指導にも当たっている。ライセンスの講習では、自身の考えの言語化や、相手に伝えることの重要性も学んだ。現チームでの立ち居振る舞いについて、大久保は「指導者講習や高校生の指導の経験も今に生きてると思う」と話す。

ただ、ストライカーとして得点へのギラギラした思いは変わらない。だからこそ「こういうボールが欲しい」と日々の練習から要求は言い続ける。「自分がドリブルして1人で点を決めるタイプではないので。周囲に生かしてもらってる」。居残り練習で大久保とコンビを組む中野は、大久保へ今季、5アシストをマークした。「こういうボールが欲しいと言い続けて、チームメートが分かっているからこそ、数字が残っていると思う。結局、練習しないとダメですよね」。

Jリーガーのプライドはあるが、それは内に秘め、あくまでもチームのために考えて言動に移している。だからこそ、神奈川県1部で5年連続、結果を残せているのだろう。

FIFTY CLUBの角野隆監督も「決められたこと、与えられたことで表現する能力は非常に高い。社会適応能力が高いことも、(プロとして)長生きしている秘訣(ひけつ)だと思います。仲間ともいい言葉を掛け合いながらやっていて大人ですよ」と、大久保を評価する。

来季は44歳になる。もちろん、現役続行への気持ちは強い。「結果を残せている限りやれると思っている。やり続けることが大事。まだ若い選手には負けられない」。

今季は夏に練習で左膝を一度痛めたが、試合の欠場はなかった。このほど行われた中村俊輔氏の引退試合にも出場。ユニホームを脱ぐ同年代の仲間がいる中で、より、現役へのこだわりが芽生えた。昨年12月に他界した父も、できる限り長く現役を続けることを望んでいた。チームの和を重んじ、勝利と得点には貪欲-。来季もギラギラした思いを胸に、ジャンボの挑戦が始まる。【岩田千代巳】

○…FIFTY CLUBは地域リーグから関東2部昇格を目指す「関東社会人サッカー大会」で今年もPK戦の末で敗れ、昇格を逃した。今年で4回目の挑戦だったが、なかなか昇格の壁を破れずにいる。来季は、昇格を目指す同大会が地元の神奈川開催。角野監督は「来年は勝負の年」と位置付け「来季はリーグ戦は18試合。全部勝ちきれる選手層を求め、練習を含めてやっていかないと」と“5度目の正直”を目指し昇格をつかみに行く。

サッカー現場発

神戸内定の筑波大MF山内翔が見せた涙と4年間で得た確証「ここに来なかったら今の自分はない」

全日本大学選手権(インカレ) 準決勝 筑波大対明大 決勝進出を逃し、悔しい表情を見せる筑波大・山内翔(右)(2023年12月21日撮影)

来季ヴィッセル神戸入団が内定している筑波大MF山内翔(4年/神戸U-18)の大学サッカーでのプレーが幕を閉じた。

12月21日、茨城・流通経済大学龍ケ崎フィールドで行われた全日本大学サッカー選手権準決勝。明大に0-1で敗れた。主将山内は試合後の表彰式まで毅然(きぜん)とした態度を保っていたが、会場のバックスタンドで応援していた仲間の元へ近づくと、こみ上げてくるものがあった。

あいさつをすると号泣。ユニホームで顔を隠し、仲間に連れられながらベンチまで戻った。

「(今まで)あんまり試合終わってから感情を出すことはなかった。なるべく最後までやりきりたいなと思っていましたけど、応援の人のことや、あと1試合やりたかったなというのもあった。こういう素晴らしいチームに会えたことだったり、勝たせてあげたかったなというのと、自分の力不足だなと…いろんな感情がありました」

筑波大では1年時からコンスタントに試合に出場。3年春には早々と神戸入りを決めた。いち早くプロの道に進む選択肢もある中で、主将に就任し、筑波大のために全てをささげた。強烈なキャプテンシーでチームをまとめあげ、小井土正亮監督(45)に「山内翔のチームだった。彼がまとめあげてくれた」と言わしめるほどだった。今季は世代別代表の活動などでメンバーが抜けることも多かった。秋には、自身を含む主力3人がU-22日本代表メンバーとしてアジア大会に出場。1カ月近く不在の期間もありながら、リーグ戦を制した。そこから気持ちを切らすことなく43年ぶりにリーグ戦とインカレの2冠を狙い、あと1歩までチームをけん引した。

試合中の存在感も別格だった。落ち着いてボールを受け、さばき、時にはドリブルで前線まで運んだ。守備でも対人の強さを発揮し、的確な読みでインターセプトを繰り返した。チームは終始主導権を握り、相手をシュート1本に抑えたが、その1本を決められて夢が破れた。それでも「サッカーの本質の所、決めるか決めきれないかで明治大学さんが上回った。自分たちの全てと明治大学さんの全てがぶつかりあって、本当に力負け」と潔かった。

「好青年」を絵に描いたように、いつもハキハキと取材に応じる。今回も1度涙が引いてから取材が始まったが、主将の重圧について問われると、思わず目を潤ませた。時節声を詰まらせながらこう言った。

「自分1人でここまで来られたわけではないので、仲間に本当に感謝したいなと思います。今日試合に出られなかった4年生とか選手にちょっと申し訳ないというのはありましたけど、みんながいてくれたからこそ、ここまで来られたし、自分が特別なことをしたっていうのはないです」

遠く関西のJクラブのアカデミーから北関東の国立大学に進学した。4年間で着実にレベルアップし、神戸に戻る。筑波大に来たことの意義を認識している。「ここに来なかったら今の自分はない。ここまで育ててくれた筑波大や、小井土さんには感謝してもしきれない。それを恩返しできるのは、もう次はプロの舞台でしかないですし、そこに向けてやりたいです」

続けて「4年前の選択肢は間違いではなかったと言い切れますか?」と問われると、ニヤッと笑い「それはまあ来年、プロの世界で自分がどうなるかっていうところで答えが出ると思います」。そして「ここに来られたこと、このチームに出会えたことは、ほんとに良かったなと思います」と晴れやかな表情で言い切った。

仲間とともにかけぬけた濃密な大学サッカー生活が終わった。数多くの経験を胸に、山内がプロの舞台でスタートを切る。【佐藤成】

スペイン発サッカー紀行

欧州CLで強いスペイン復活の兆し!レアル、バルサ、アトレチコ、ソシエダ最多4クラブ首位通過

23-24年シーズンの欧州チャンピオンズリーグ(欧州CL)1次リーグの全日程が13日に終了した。スペインからは4チームが決勝トーナメントに駒を進め、数年ぶりに強いスペインが戻ってきた。

スペイン勢は近年、コロナ禍の影響で多くのクラブが深刻な財政難に陥り、欧州CLにおける競争力の低下が囁(ささや)かれていた。特に昨季、1次リーグを突破したクラブは、厳しい状況下でも健全経営を維持し、同大会をここ10年で5回優勝しているレアル・マドリードのみ。バルセロナとセビリアは3位、アトレチコ・マドリードは最下位という散々な結果で大会を去っていた。

ボールを手に走るレアル・ソシエダード久保建英(ロイター)

■16強の国別の内訳は断トツ

今季欧州CLに参戦しているのは、昨季のリーグ戦を4位以内で終え参加資格を得たバルセロナ、Rマドリード、Aマドリード、レアル・ソシエダードに加え、欧州リーグ優勝で出場権を獲得したセビリアの5チーム。

そのうちセビリア以外の4チームがグループリーグ首位通過という好成績で、決勝トーナメント1回戦に駒を進めている。スペイン勢の1次リーグ首位通過は過去、3チームが最多で通算8回あったが、4チームは初の快挙である。

決勝トーナメントに進出した16チームの国別の内訳は、スペインが最多の4チーム。続いて、ドイツ(1次リーグ首位通過:バイエルン・ミュンヘン、ドルトムント、2位通過:ライプチヒ)とイタリア(2位:ナポリ、インテル・ミラノ、ラツィオ)が3チーム、イングランド(首位:マンチェスター・シティー、アーセナル)が2チーム。そして、フランス(2位:パリ・サンジェルマン)、オランダ(2位:PSV)、ポルトガル(2位:ポルト)、デンマーク(2位:コペンハーゲン)がそれぞれ1チームとなっている。

■5大リーグにみた補強総額は?

各国リーグの競争力を測る指針の1つとなるのが、選手を獲得する際の投資額だ。お金が全てと一概には言えないが、補強に費やせる金額が大きければ大きいほど優れた選手が集まりやすく、必然的にリーグ全体のレベルが上がっていく。

今夏の移籍市場における欧州5大リーグ(スペイン、イングランド、イタリア、ドイツ、フランス)の補強総額を見てみると、プレミアリーグが27億3770万ユーロ(約4243億4350万円)で例年通りのトップであった。

続いてフランスリーグが8億8064万ユーロ(約1364億円9920万円)で2位、セリエAが8億4566万ユーロ(約1310億7730万円)で3位、ブンデスリーガが7億4702万ユーロ(約1157億8810万円)で4位。対してスペインリーグはわずか4億3280万ユーロ(約670億8400万円)で最下位となっている。

スペインリーグとプレミアリーグにおけるコロナ禍前の2019年夏の差は、2億5000万ユーロ(387億5000万円)程度だった。しかし今夏、その差が23億ユーロ(約3565億円)にまで開いていることを考慮すると、今季のスペイン勢の躍進は大いに評価できる。

■シャビ監督の手腕には疑問も

2季連続で1次リーグ敗退という憂き目に遭っていたバルセロナは、ポルト、シャフタル・ドネツク、アントワープと一緒になったH組を、4勝2敗という成績で終了した。

3季ぶりに決勝トーナメント進出を果たしたにもかかわらず、最終節でそれまで未勝利だったアントワープに敗れるなど、不安定な戦いぶりを露呈していることでシャビ監督の手腕に疑問を持たれている。9大会ぶり通算6回目の優勝を目指している。

決勝点となる3点目を決め吠えるレアル・マドリードのセバージョス(ロイター)

■ベリンガムを大黒柱に6連勝

Rマドリードは今季開幕前から主力のけがが相次ぎ、最終節ではクルトワ、ミリトン、ビニシウス、カルバハル、カマビンガ、チュアメニといったレギュラー陣が負傷欠場を余儀なくされた。しかし、新加入のベリンガムが若干20歳にしてチームの大黒柱となり、調子を上げているロドリゴ、そして普段は出番の少ない選手たちが奮闘し、ナポリ、ブラガ、ウニオン・ベルリン相手にC組で6連勝を達成。2大会ぶり、前人未到の通算15回目の優勝に向けて前進している。

またRマドリードは、95-96年シーズンに欧州CLが現行のフォーマットになってから行われた32回(99-00年から02-03年シーズンに実施された2次リーグ含む)のグループリーグ全てを突破した唯一のチームとなっている。

■グリーズマンとモラタが5得点

昨季1次リーグを最下位で敗退したAマドリードは今回、対戦相手のチームに上田綺世(フェイエノールト)、前田大然、古橋亨梧、旗手怜央、岩田智輝、小林友希(セルティック)、鎌田大地(ラツォオ)が所属していることから、日本で注目された。

グリーズマンとモラタがハーランド(マンチェスター・シティー)、ホイルンド(マンチェスター・ユナイテッド)と並ぶ5ゴールを挙げ、今大会の得点ランキングトップに立つ活躍を披露し、マンチェスター・シティー(18得点)に次ぐ高い得点力(17得点)でE組を4勝2分けで終えた。

首位通過は16-17年シーズン以来、7季ぶり。最終節ではクラブタイ記録となる、ホームの公式戦20連勝を達成した。ここ10年で2回進出した決勝では、同じ街のライバルであるRマドリードにいずれも敗れる屈辱を味わっており、悲願の初優勝が目標となっている。

■久保は無得点も存在感を発揮

10季ぶり、通算5回目の参加となった久保建英所属のRソシエダードは、今大会で台風の目となる活躍を見せているチームだ。昨季のファイナリストのインテル・ミラノ、そしてベンフィカ、レッドブル・ザルツブルクと同居した1次リーグD組を、3勝3分けと無敗で切り抜けた。

得点は7と少なかったが、参加32チーム中最少のわずか2失点という堅固な守備を武器に、20年ぶりの決勝トーナメント進出を成し遂げた。この後、クラブ史上の最高記録「82-83年シーズンの準決勝」を上回る成績をチーム一丸となって目指す。

久保は全6試合に出場(先発5試合)。得点、アシストともになかったが、第2節レッドブル・ザルツブルク戦でブライス・メンデスが決めたチーム2点目の起点になるプレーなど、印象に残るプレーを度々見せていた。

■セビリア1勝もできず最下位

セビリアは国内リーグ同様のパフォーマンスで低迷したまま、今大会を去ることとなった。アーセナル、PSV、ランスと一緒になったB組で一勝も上げることができず、2分け4敗の最下位。これにより昨季の欧州リーグ王者は、その大会に参加する権利も逃すこととなった。

スペインの4チームはこの後、2位通過のPSV、ライプチヒ、コペンハーゲン、インテル・ミラノ、ナポリ、パリ・サンジェルマン、ラツィオ、ポルトのいずれかと対戦する(※1次リーグ同組のチームは除く)。そのライバルを知ることになる運命の決勝トーナメント1回戦の組み合わせ抽選会は、18日にニヨン(スイス)で開催される。

【高橋智行通信員】(ニッカンスポーツコム/サッカーコラム「スペイン発サッカー紀行」)

Get toto

Bミュンヘン-シュツットガルト「0」/第1416回

今回はブンデスリーガとプレミアリーグ。今季好調のシュツットガルトはBミュンヘンと対戦。シュツットガルトはドイツ杯ではドルトムントを下し8強進出。Bミュンヘンは第14節でEフランクフルトに5失点大敗後、欧州CLではマンチェスターUに競り勝っており、今節は大崩れはしないとみる。Bミュンヘン-シュツットガルトは引き分けの「0」。プレミアの首位リバプールはマンチェスターUとの対戦。リバプールは司令塔MFマカリテルの負傷欠場が予想され痛いか。リバプール-マンUはマンU勝利の「2」。【岩田千代巳】

◆日刊予想

(1)アウク-ドルト2

(2)ボーフ-ウニオ1

(3)フライ-ケルン1

(4)レーバ-Eフラ1

(5)Bミュ-シュツ0

(6)マイン-ハイデ1

(7)ダルム-ウォル2

(8)ライプ-ホッフ1

(9)アーセ-ブライ1

(10)マンC-クリス0

(11)リバプ-マンU2

(12)ブレン-アスト2

(13)ニュー-フラム1

※左がホーム。1=ホーム90分勝ち、2=ホーム90分負け、0=その他

Get toto

三笘好調ブライトン勝利/第1415回

ブライトンの勝利を予想。ブレントフォード戦で先発の日本代表MF三笘薫は状態の良さをうかがわせ、アシストを記録。今度は得点にも期待。アストンビラは前節マンチェスターCから金星をゲットも、続けて強豪アーセナル相手となるとホームとはいえ連勝は難しいか。下降気味のトットナムは韓国代表FW孫興民が気を吐いているが、ニューカッスルの勝利を予想した。ブンデスリーガはフライブルクの好調の日本代表MF堂安律が再びゴールに絡むプレーを見せることに期待し、勝利予想とした。【岡崎悠利】

◆日刊予想

(1)Eフラ-Bミュ2

(2)ヴォル-フライ2

(3)ウニオ-ボルシ2

(4)ブレー-アウク1

(5)シュツ-レバー2

(6)ハイデ-ダルム1

(7)ドルト-ライプ1

(8)ケルン-マイン1

(9)クリス-リバプ2

(10)ブライ-バーン1

(11)アスト-アーセ2

(12)ルート-マンC2

(13)トット-ニュー2

※左がホーム。1=ホーム90分勝ち、2=ホーム90分負け、0=その他

サッカー現場発

鹿島内定の関学大DF濃野公人は「内田篤人2世」負けず嫌いの強さと記者仕込み?ラボーナにも注目

関学大から来季Jクラブへ加入する(左から)FW望月想空、MF長尾優斗、DF濃野公人、MF美藤倫、MF倍井謙(2023年11月27日撮影)

11月28日、兵庫・西宮市にある関学大の上ケ原キャンパスで行われた、Jリーグ内定5選手合同会見の取材に足を運んだ。

山見大登(24)ら4人がJリーガーとなった21年を上回り、今季は過去最多の5人を輩出することになった関学大。しかも今年はJ1クラブに3選手が進むというレベルの高さだ。

J1組の名古屋グランパス内定MF倍井(ますい)謙(4年=名古屋グランパスU18)、ガンバ大阪内定MF美藤倫(みとう・りん、4年=東海大大阪仰星)、鹿島アントラーズ内定DF濃野公人(4年=大津)は特に、パリ五輪出場を本気で狙う逸材たちだ。

その中でも個人的に注目するのが、大津高(熊本)時代に続いて主将を務め「内田篤人2世」の呼び声も高い濃野だ。

関学大の高橋宏次郎監督によると「最初はBチームからのスタートだった」ということだが、この4年間で能力を引き出されたことで、プロへの道を切り開いた。

高校まで攻撃的なポジションを務めてきた濃野は、1年時はFW、2年時は右サイドハーフを主戦場とした。Jリーガーとなるための転機となったのは、3年時の右サイドバック(SB)へのコンバートだった。高橋監督から提案され「このままじゃプロになるのは難しい」と考えていた濃野が前向きに受け入れ、取り組んだ。

ポジション変更後の成長は著しく、才能が開花した。近年のSBは外に位置取るだけでなく、インサイドに入ってプレーすることも求められるが、濃野は相手ゴール前まで頻繁に顔を出す積極性が持ち味。動きで相手を混乱させ、ゴール前での落ち着きと精度で得点に絡むことができる“超攻撃的SB”として知られるようになった。

今春のデンソーカップでは、関西選抜の一員として優勝に貢献。SBながら背番号7を付ける理由を「アタッカーのプライド」と笑う濃野は、一気に注目株となった。

そこに注目したのが、鹿島の椎本邦一スカウト担当部長、牛島真諭スカウトだった。椎本氏からは最大限の評価を受けた。「鹿島っぽいSBを久々に見た。上下動ができて、最後の質も高い。デビュー当時の内田篤人に似ている」。数々の名SBを輩出してきた鹿島を長年見てきた椎本氏からそんな言葉をもらえば、素直にうれしいものだろう。

複数クラブから興味を持たれ、オファーも受けていた濃野は、施設見学の際に「椎本さんから、チームが大事にしてきたものや根底にあるDNAの説明を受けて、入団を決めた」という。プロ1年目に向けては、早くも強い意気込みを見せている。「パリ五輪も視野に入れて頑張っています。食い込んでいくためには、鹿島で結果を出すことが一番の近道だと思うので、開幕からスタメンを狙って、貪欲に取り組んでいきたいと思います」。

これは余談だが、記者は彼が幼稚園児の頃、コーチとして接していたことがある。所属歴では大阪DREAMからとなっているが、その前に入っていた北摂地域のクラブがあり、そこで一緒にボールを蹴らせてもらった。兄の文人(あやと)とともにプレーし、小さいながら技術があったこと、強烈な負けず嫌いだったことを鮮明に覚えている。

課題を簡単にクリアするような際に、一気に難しくすると、クリアできない悔しさをにじませ、ミニゲームで負けそうになるだけで涙を流すような兄弟だった印象だ。

その後はお互いがクラブを離れて、交流はなかったが、J内定選手として取材させてもらうことになった。「こんなに大きくなって」と親戚のおじさんのような目線で記者会見に参加したのは初めてだった。次はプロの舞台でも取材することが楽しみになった。良い選手で、見ていて楽しい選手でもあるので、鹿島のみなさんにはぜひ楽しみにしてもらいたい。

濃野家では、記者のことを「ラボーナを教えてくれたコーチ」と伝えてくれたようなので、濃野のラボーナでアシストやゴールをした時は、取材を受ける側としてコメントを準備したいと思っている。【永田淳】

解析料理

【解析料理】新潟サポがリーグ入場者数底上げ 今季ホーム総入場者数はリーグ6番目の39万人

【イラスト】新潟のJリーグ年度別ホーム平均入場者数

J1復帰1年目だったアルビレックス新潟のサポーターが、リーグ全体の入場者数を底上げした。今季のホームゲーム17試合の総入場者数はリーグ6番目の39万2920人。1試合平均は2万3113人で、J1優勝を果たした神戸の2万2553人を上回った。最多は浦和で3万509人だった。

アウェー扱いではあったが、今季J1の最多入場者数カードは国立競技場で開催された名古屋-新潟戦の5万7058人。4月29日に味の素スタジアムで行われた東京-新潟戦、日産スタジアムで開催された11月24日の横浜-新潟戦も3万人以上が集まるなど、新潟サポーターの力強さをリーグ全体に示した。

1-0で競り勝った最終節のC大阪戦。気温9・5度の寒い雨の中でも2万人以上が本拠地のビッグスワンに集まり、チームを後押し。今季のホーム成績は6勝6分け5敗となり、白星を先行させて終えた。松橋監督は「自分たちのスタイル、楽しくて見ている方にも楽しんでもらえるようなものは出せた」と笑顔で今季を締めくくった。【石川秀和】

サポーターにあいさつする新潟の選手たち(撮影・大島享也)
後半42分、J1初ゴールを決め喜ぶ長倉(右)(撮影・大島享也)
後半42分、J1初ゴールを決め喜ぶ長倉(中央)(撮影・大島享也)
スペイン発サッカー紀行

超攻撃的なサッカーで大躍進を続けるジローナ、総得点数トップでバルサ、Aマドリードを抑え2位

ジローナFCのインスタグラムから

今季、スペインリーグで最もセンセーショナルな活躍を見せているチームと言えば、スペイン・ビッグ3に割って入っているジローナだろう。その勢いはさながら、プレミアリーグ15-16年シーズンを制したレスターの再来のようだと、毎試合注目を集める存在となっている。

第14節を終了した時点での成績は、脅威の11勝2分け1敗の勝ち点35。27日にホームでビルバオと引き分けたことで連勝が5でストップ。ここまで唯一の敗北を喫した相手レアル・マドリードに首位の座を明け渡した。とはいえ、3位アトレチコ・マドリード(1試合未消化)および4位バルセロナに勝ち点4差をつけ、首位と勝ち点で並ぶ僅差で2位につけている。

■Rマドリードの14分の1規模

今季前半のジローナのサラリーキャップ(選手の契約年数に合わせて分割された移籍金や選手年俸などの限度額)は、リーグ20チーム中13位の5197万6000ユーロ(約80億5628万円)。一方、トップのRマドリードはその14倍の7億2745万1000ユーロ(約1127億5490万円)。この差をもってして現在の順位を考えると、ジローナがいかにすごいことを成し遂げているかが分かるだろう。

カタルーニャ州北部に本拠地を置くジローナは、これまで常にスペイン1部リーグにいたわけではない。1930年創設で93年の歴史を持つクラブが、1部初昇格を果たしたのは17-18シーズンとつい最近のことだ。初年度は10位、翌18-19年シーズンは18位でセグンダ降格、1部に復帰した昨季は10位。この時点でも十分に優秀な成績であると言えるが、1部通算4季目となる今季、ここまでの大躍進を誰が予想できただろうか。

■シティーFCグループ所属で恩恵

今夏、主力選手であったオリオール・ロメウ、リケルメ、カステジャーノスらが退団したことで、今季の戦力が不安視されていた。そこでクラブはスペインリーグで今夏7番目に多額の2200万ユーロ(約34億1000万円)を投資し、ドフビク、ブランド、エリック・ガルシア、パブロ・トーレなどを獲得し補強に努めた。

さらにジローナの強みのひとつ、17年からプレミアリーグ、マンチェスター・シティを筆頭とするシティ・フットボール・グループに属したことで、多くの恩恵が受けられるのが他クラブとは大きく違う点だ。今季は同グループ傘下のトロワ(フランス)からサビーニョが期限付き移籍で加入、マンチェスター・シティーからヤンヘル・エレーラが完全移籍を果たし、ヤン・コウトが再び期限付き移籍で所属している。

このような補強を施したチームをうまくまとめているのが、ジローナ3季目のミチェル監督だ。起用する選手や相手によって巧みにシステムを変えて3-4-3や4-3-3(4-4-1-1)で戦い、時に攻撃での左右のバランスが非対称になることもある。

■DF陣が次々とオーバーラップ

縦への推進力、ハイプレス、強力なサイドアタックを武器に、前線の選手のみならず、DF陣も次々とオーバーラップする超攻撃的なサッカーを展開。7人が3点以上記録し、ビッグ3を上回るリーグ戦最多の32得点を挙げている(※PKでの得点は1回のみ)。

当然のことながら、この戦い方は守備面に大きな負担がかかる。そのため簡単にゴールを許すこともあり、失点は17と2位のチームにしては多い。だが、チームは自分たちの攻撃力に大きな自信を持っており、リードされても慌てることなく、ここまで逆転勝利を5回も収めている。

個々が自分に与えられた役割を全うしているため、特筆すべき選手を絞るのは難しい。敢えて各ポジションから挙げるとするならば、DFは今夏バルセロナから出場機会を求めて期限付き移籍で加入したエリック・ガルシア。守備のリーダーとなり、後ろからチームを支えている。

■注目サビーニョ4得点4アシスト

中盤ではオリオール・ロメウ退団の穴を見事に埋めているアレイシュ・ガルシア。リーグ戦で2番目に多いパス成功数を記録し、先月スペイン代表デビューを飾ったほど絶好調の選手だ。

チームで最も注目を浴びるのは、スペインリーグ屈指のドリブラーとして大ブレークしている左ウイングのサビーニョ。ドリブル成功数がリーグ戦で2番目に多く、4得点4アシストを記録。その活躍が評価され、来夏のパリ五輪に向けたU-23ブラジル代表にも選出された。年明け、五輪予選を兼ねた南米プレオリンピックトーナメントへの出場が濃厚で、ミチェル監督は約3週間、チームで最も違いを生み出す選手を失う可能性が高い。

クラブ史上最高額の移籍金750万ユーロ(約11億6250万円)で加入したセンターフォワードのウクライナ代表FWドフビク。ペナルティーエリア内で与えられたタスクを果たし、チームトップの7ゴールを挙げ、リーグ戦の得点ランキングで5位につけている。

■ミチェル監督は弱気?の発言

ここまでは素晴らしいパフォーマンスを発揮しているジローナだが、まだシーズンは3分の1を終えたばかり。先日リーグ優勝できると思うか?という質問を受けたミチェル監督は、やや弱気の発言をしていた。

「できるとは思っていない。我々は何も諦めてはいないが、Rマドリード、アトレチコ、バルサは勝ち点をほとんど落とさないと思うし、毎日が完璧でなければ優勝争いに加わることはできない。優勝は無理だと思うが、現時点では彼らと戦えるだけの力はある」

一見すると弱気にも聞こえるが、監督や選手だけでなく、クラブにとっても過去最高の成績にある中、冷静に現状を分析して発した指揮官ならではの言葉なのだ。

スペインリーグにおいて、ビッグ3以外のクラブが最後に優勝を飾ったのは、03-04年シーズンのバレンシアと、20年前まで遡らなければならない。そのため”レスターの再現”は現実的には非常に難しいことかもしれない。

■データが欧州CL進出へ後押し

一方、クラブ史上初となる欧州チャンピオンズリーグ(CL)出場権獲得となると、それを後押しするデータが存在する。

それは「第12節終了時、10勝を挙げているチームはこれまで必ずトップ3以内でシーズンを終えている」というものだ(※ジローナはその段階で10勝、勝ち点31)。

さらにこれまで、その時点で勝ち点31を獲得したことがあるのはRマドリード(11回)、バルセロナ(6回)、Aマドリード(2回)、ベティス(1回)のみで、ジローナは見事5番目のチームとなった。過去20回の最終的な結果は、優勝13回、準優勝6回、3位1回。

また過去5シーズン、欧州CL出場圏内の4位になったチームの平均勝ち点は70というデータもある。これはジローナが最初14節で手にした勝ち点35を、残り24節で再び獲得すれば、Rソシエダードやベティス、ビルバオなどといったライバルを抑え、欧州最高の大会に出場する可能性が非常に高いことを示している。

■見る者をワクワクさせる攻撃力

今後、上位チームとして対戦相手から徹底的に研究されることが予想され、これまでのように勝ち続けることは難しくなっていくと思われる。しかし、見るものをワクワクさせる超攻撃的なサッカーは、何か大きなことをやってくれるのではないかと期待してしまう。今シーズン、ジローナのサッカーを楽しむ時間はまだまだ残されている。【高橋智行通信員】

(スペイン発サッカー紀行/ニッカンスポーツコム・コラム)

Get toto

昇格かける富山、最終戦「1」/第1413回

J1とJ3が最終節。降格圏内、昇格を争うクラブのそれぞれの戦いが熱い。いずれも直接対決はなし。まずJ1。横浜FCと柏は勝ち点3差で柏残留有力。しかも得失点差に開きがある。さらにJ1は、3位争いがし烈だ。3位・広島と4位・浦和が勝ち点1差。来季ACLの出場権がかかっているだけに、両チームとも落とせない。J3は昇格をかけた2位争いがある。勝ち点61の鹿児島と同59の富山が最後の一戦で運命を分ける。長丁場を締める最後の試合で、注目カードのチームは簡単には負けないはず。【盧載鎭】

◆日刊予想

(1)八-相2

(2)鹿-浜1

(3)G-神2

(4)名-柏1

(5)鳥-川2

(6)福-広1

(7)札-浦1

(8)湘-東2

(9)新-C2

(10)京-横2

(11)鳥-児1

(12)岩-讃1

(13)富-Y1

※左がホーム。1=ホーム90分勝ち、2=ホーム90分負け、0=その他

解析料理

【解析料理】新潟、クラブ記録に並ぶJ1リーグ戦3戦連続無失点 記録伸ばし来季につなげたい

【イラスト】新潟のJ1年度別無失点試合数

アルビレックス新潟がJ1でのクラブ記録に並ぶリーグ戦3試合連続無失点を達成した。24日の横浜戦で0-0と引き分けて今季10度目の無失点。J1リーグ戦での3試合連続無失点は16年以来、7年ぶり9度目となった。12月3日のC大阪とのホームでの最終節で、新記録樹立が期待される。

横浜戦は小見、三戸ら期待のアタッカー陣が決定機を逃して無得点に終わったが、優勝を争うチームを相手にも守備は最後まで崩れなかった。GK小島の好守とともに光ったのが右サイドバック藤原の対応力。J1最強クラスのアタッカーである横浜のFWエウベルとの1対1にも粘り強く対応した。

シュートまで持ち込まれたとしても藤原がコースを限定。枠内に飛んでも頼れる守護神の守備範囲に収まった。後半途中からはFW宮市とも相対したが、自慢の運動量は最後まで落ちることなく、そのスピード抜群の日本代表経験者を完璧に抑え込んだ。

Jリーグ公認データ「J STATS」によると、今季の藤原の1試合平均のタックル数はリーグ7位(23日現在)。このデータが示すようにJ1でも屈指の右サイドバックと言えるようになった。ただ、今季は23試合に出場して無得点。J1初ゴールが待たれる。

今季は最終節を残すのみ。9位との勝ち点差は5に開き、残留決定後の目標にしていたひと桁順位はならなかった。それでもモチベーションとなりそうな目標は残っている。藤原らのJ1初得点に加え、4連続試合無失点のクラブJ1新記録となる勝ち点3で来季につなげたい。【石川秀和】

24日横浜戦後半、相手のシュートをセーブする新潟GK小島(中央)
Get toto

主力3人出場停止 柏不利「2」/第1412回

J1もJ3も残り2試合。J1で16位の柏は主力のDF古賀、ジエゴ、MF高嶺が累積警告で出場停止。直近で敗れた2試合は、ともに出場停止選手がおり、今回も不利とみる。名古屋はMFマテウス・カストロが夏に移籍し急失速。首位神戸との対戦だが、勢いに乗る神戸が有利。最下位横浜FCと17位湘南は残留を巡る熱い直接対決。湘南は直近4試合を3勝1分け。勢いがありFW大橋が4戦5発と好調で、湘南が勝つとみる。【岩田千代巳】

◆日刊予想

(1)浜-湘2

(2)神-名1

(3)広-G1

(4)浦-福1

(5)C-京0

(6)柏-鳥2

(7)東-札1

(8)児-沼2

(9)讃-松1

(10)奈-取1

(11)北-島2

(12)愛-八1

(13)崎-富2

【注】左がホーム。1=ホーム90分勝ち、2=ホーム90分負け、0=その他

サッカー現場発

「レベルアップできる部分を毎試合探す」欧州組招集不要論も冨安健洋が語った2次予選での戦い方

日本対シリア 日本代表スタメン。前列左から久保、菅原、浅野、守田、遠藤、後列左から上田、GK鈴木、伊東、谷口、伊藤、冨安(2023年11月21日撮影)

<サウジアラビア現場発>

日本代表がW杯アジア2次予選で2連勝スタートを切った。森保一監督(55)は欧州組のフルメンバーを招集。戦前の予想通り、2戦とも5-0での大勝だった。そんな結果を受け、国内では2次予選での欧州組招集は不要という声も上がる。

◇  ◇  ◇

実際にプレーする選手からは、さまざまな声が聞かれた。MF遠藤主将はシリア戦後、「こういう試合をファンの方たちが見た時に楽しんでもらえるのか、疑問もある」と冷静にコメント。前主将の吉田麻也の主張に沿う形で「そもそも2次予選の形はどうなんだ、というところはある」と、枠組みに対しての私見を残した。

16日に対戦したミャンマーは、リードされているにも関わらず、失点を増やさないようにか、勝っているかのような時間稼ぎをする場面もあった。公式戦にもかかわらず、サッカーの競技性から外れたようなシーンだった。プレミアリーグでプレーするDF冨安は「(日本には)CLやELで戦う選手もいる中で、モチベーションは難しい部分はもちろんあります」とこぼした。長距離移動などを強いられる選手が、もどかしい思いになるのは当然だろう。

一方で、アジア全体を見渡しての意見もあった。MF守田は現行の形を「すっきりはしない」としつつ「こういう時でしか、強豪国、アジアで言えば日本などと戦う機会がないと思う。日本代表も、歴史的にそういう時代があったと思う。その意味でやらないといけないかな」。今は実力差があっても、切磋琢磨(せっさたくま)するアジア同士であることに目を向けた。

少なくとも、近々で今の方式が変わるとは考えにくい。ホーム&アウェーで行われる2次予選は、まだまだ先が長い。「自分たちに集中して、レベルアップできる部分を毎試合探す」。現状では冨安のこの言葉が、日本代表の戦い方の答えになりそうだ。【岡崎悠利】

セルジオ越後「ちゃんとサッカーしなさい」

【セルジオ越後】文句なしの内容、これ皮肉 W杯予選をダラダラやるよりアジア杯で決めるべき

日本対シリア 勝利した森保監督(右)はゴールを決めた細谷と引き揚げる(撮影・パオロ ヌッチ)

<ワールドカップ(W杯)アジア2次予選:シリア0-5日本>◇21日◇プリンス・アブドゥラ・アルファイサル・スタジアム

テレビで日本代表戦が見られないと分かっていても、やっぱり寂しかったな。日本は2試合連続でレベルの低い相手に5-0で快勝した。パスはつながるし、シュートは決まるし、ルーズボールもほとんど拾ったし、文句なしの内容だね。言っとくけど、これ、皮肉だよ。

その中で、MF伊東は存在感を見せていた。4アシストか。裏にスペースがないから、持ち前のスピード突破はなかったが、相手が嫌がる位置でポジションを取っていた。相手がファウルしてはいけない位置でボールを受けるから、アシストができる。しかも4本とも「どうぞ、入れてください」というパスだった。

来年1月にはカタール・ドーハでアジア杯が開かれる。下のカテゴリーはすでに実施しているけれど、W杯や五輪の出場権はアジア杯で決まる。A代表もつまらない予選をダラダラやるより、アジア杯で決めればいいと思うよ。全試合テレビ中継もあるわけだしね。

4年前も日本は2次予選を大量得点で突破した。つまり、アジアの弱い国は、4年たってもまったく成長しなかった。国内にちゃんとしたリーグがない国は、やはり強くならないね。弱い相手と大事なIMD(国際マッチデー)を使って試合をするから、アジア全体のレベルが上がらない。他の組を見ても、W杯常連国は大勝しているし、だからといって大喜びすることもない。

02年W杯以来、アジアはW杯本大会で16強の壁を破っていない。現状だと、新しい景色はなかなか見ることができないだろうな。恐ろしいことは、シリアは初戦で北朝鮮に勝ったため、2位まで通過する今回の予選を突破する可能性があることだ。このレベルが最終予選に参加できるとは、恐るべしアジアだね。(日刊スポーツ評論家)

日本対シリア 勝利した日本の選手たちはサポーターにあいさつする(撮影・パオロ ヌッチ)
日本対シリア 後半、追加点を決めた菅原はチームメートの祝福に笑顔(撮影・パオロ ヌッチ)
日本対シリア 前半、ゴールを決め浅野(後方左)と握手を交わす上田(撮影・パオロ ヌッチ)
日本対シリア 後半、ゴールを決める菅原(撮影・パオロ ヌッチ)菅原由勢
【イラスト】久保のゴール図
【イラスト】上田の1点目
【イラスト】上田の2点目
【イラスト】菅原のゴール
【イラスト】細谷のゴール
セルジオ越後「ちゃんとサッカーしなさい」

【セルジオ越後】躍動感も危機感もない試合 5点は少ない 2次予選は日本にとっては価値ない

日本対ミャンマー ミャンマーに勝利し関係者と握手する森保監督(中央)(撮影・加藤哉)

<ワールドカップ(W杯)アジア2次予選:日本-ミャンマー>◇16日◇大阪・パナソニックスタジアム

B組初戦で、日本代表(FIFAランキング18位)がミャンマー代表(同158位)に5-0で大勝した。W杯北中米大会に向けて幸先良く白星スタートを切る中、セルジオ越後氏は「危機感がない」と厳しく指摘した。

   ◇    ◇

また錯覚する時期に入ったね。日本は急に全員うまくなった-。そう勘違いしちゃうよ。前回の2次予選(21年5月)ではFW大迫とMF南野が得点を重ねた。その後、彼らの好調はW杯本大会まで続いたのか? 今度はFW上田の番か。ハットトリックだ。これでエースFWの当確ランプがつくのかな?

ミャンマー相手なのに、4万の吹田は満員になった。サッカーどころの国なら、半分も埋まらなかったはず。お祭り気分にはなれたと思うよ。試合が終わって、相手選手の名前が1人も頭に残らない時点で、その試合に価値はないともいえるが。

この試合、両サイドバックのオーバーラップがほとんどなかった。なぜ? 前にいる左MF相馬、右MF堂安が1人で突破できるし、クロスも上げられるから、必要がなかった。センターバック2人はほとんどの時間、敵陣でプレーした。躍動感も危機感もない試合だったな。

その割に、5点は少ないね。相手シュート0なのに、GK交代の意味も分からなかった。結局、これではまるで、たくさんのお客さんを集めたコンサートだよ。

MF三笘やDF板倉、FW古橋と前田ら多くの選手を負傷で欠いた。DF冨安もベンチ外。それでも危機感はない。それほど、2次予選は日本にとっては価値のないものだね。

これでは南米や欧州との差は開く一方だ。ケガ人が出なかっただけで、よしとするしかないね。

(日刊スポーツ評論家)

日本対ミャンマー 試合後、細谷(中央左)らと喜び合う町田(同右)らイレブン(撮影・前田充)
日本対ミャンマー 試合後、勝利の喜びを分かち合う佐野(右)らイレブン(撮影・前田充)
日本対ミャンマー 後半、GK大迫(右)と交代するGK前川(撮影・前田充)
日本対ミャンマー 前半、南野からのボールを頭で合わせ先制ゴールを決める上田(撮影・加藤哉)
日本対ミャンマー 後半、ハットトリックを決め毎熊(左)の祝福に笑顔を見せる上田(撮影・垰建太)
スペイン発サッカー紀行

Rソシエダード、久保ら代表選手10人量産 パフォーマンス評価されスペイン屈指の輩出クラブに

前日練習に臨む久保(撮影・垰建太)

レアル・ソシエダードは現在、国際Aマッチ期間を過ごしているが、今月は10人が各国代表に招集された。

スペイン代表にル・ノルマン、スビメンディ、ミケル・メリーノ、オヤルサバルが呼ばれた他、以前より代表入り間近と噂されていたレミーロが初招集。そして久保が日本代表、トラオレがマリ代表、サディクがナイジェリア代表、トゥリエンテスがU-21スペイン代表、チョーがU-20フランス代表にそれぞれ選ばれている。

今季、Rソシエダードは主に24人のメンバーで構成されているが、もしティアニー(スコットランド)とアンドレ・シルバ(ポルトガル)がケガをしていなければ、代表選手がチームの半数を占めていた可能性も十分あった。

■昨年のW杯出場は久保だけ

昨年の今頃、代表招集されたのは久保、セルロート(現ビリャレアル)、アンダー世代のチョー、トゥリエンテス、パチェコの5人のみ。そして昨年末のワールドカップ(W杯)カタール大会に参加したのは久保だけだったことから、Rソシエダードがいかに大きく飛躍しているかが分かる。

特筆すべきは一番大きな変化があったスペイン代表だろう。ルイス・エンリケ監督指揮下のW杯では、Rソシエダードから1人も招集されなかった。しかし新監督となったルイス・デ・ラ・フエンテが指揮を執り始めた今年3月以降、徐々に人数が増加し、5回目の活動となった今回、バルセロナ(4人)を上回る、最多5人がメンバー入りするまでになっている。

今月開催の国際Aマッチにレアル・マドリードから9人、アトレチコ・マドリードから10人が各国代表に招集されていることを考えると、Rソシエダードはわずか1年でスペイン屈指の代表選手輩出クラブになったと言える。

この状況を受けてイマノル・アルグアシル監督は、自分たちのやっていることに手応えを感じている旨のコメントをした。

「それは我々にとってとても良い兆候だ。私は以前、もっと多くの選手が呼ばれてほしいと言ったが、少しずつそうなっている。デ・ラ・フエンテはおそらく恥ずかしさもあり、Rソシエダードからあと3人招集しなかったのだろう。でもルイス(デ・ラ・フエンテ)よ、安心してほしい。君が望むなら、我々は5人から8人に増える準備はできている」

アルグアシル監督がこう語るのは、スベルディア、ブライス・メンデス、バレネチェアのスペイン代表入りも近いと見られているからだ。

さらにザハリャンにロシア代表復帰の可能性もあることから、今月スペインリーグ最多となる代表選手14人を輩出しているバルセロナを、Rソシエダードが上回る日がいずれ来るかもしれない。

■アルグアシル監督の手腕

多くの選手が代表に呼ばれている現状は、チームのやってきたことが正当に評価された証しと言える。各選手が調子を上げていることはもちろんだが、アルグアシル監督の手腕が優れていることが最大の要因として挙げられるかもしれない。

選手の気持ちを奮い立たせてパフォーマンスを最大限に引き出し、Rソシエダードの指揮官に正式就任した19-20年シーズン以降、国王杯優勝と3季連続の欧州リーグ(EL)出場権を獲得。昨季はチームをスペインリーグ4位に導き、10季ぶりに欧州チャンピオンズリーグ(CL)出場権を手に入れた。そして今季、同大会で20年ぶりとなる決勝トーナメント進出を決めるなど、十分な結果を残している。

とはいえ、代表選手を多く輩出するのは、今のRソシエダードにとって良いことだけではない。控え選手のレベルが低いとの声も聞こえるチーム状況にもかかわらず、主力選手がごっそり抜けた国際Aマッチ期間中は、まともなチーム練習ができないのだ。さらに久保のように長距離移動を余儀なくされる選手もいる。

今季中に行われた過去2回の国際Aマッチ期間後は幸い、どの選手もけがすることなくチームに戻り、試合結果に大きな影響を与えることはなかった。しかしこの後、スペインリーグ、欧州CL、国王杯の3大会を戦うことによる過密日程により、疲労が蓄積されることは間違いない。

さらに年明け、久保がアジアカップ(1月12日~2月10日、カタール)、トラオレとサディクがアフリカ選手権(1月13日~2月11日、コートジボワール)への参加で不在となる可能性が高い。そうなった場合、チームは特に久保とトラオレが良い関係を築いている右サイドで問題を抱えることになるだろう。

今後、さまざまな問題に直面すると予想される中、アルグアシル監督がどのようにチームをマネージメントし、どのように困難を乗り切るのか、その手腕に注目したい。【高橋智行通信員】

Get toto

力の差は歴然、日本勝利の「1」堅い W杯アジア2次予選/第1408回

FIFAランキング18位の日本は、同158位のミャンマーとホームで対戦する。前回大会のアジア2次予選でも10-0で大勝しており、力の差は歴然。今回も勝利はほぼ確実といっていい。日本は直近6試合で6連勝で、24得点と攻撃陣が爆発。守備ブロックを固めてくるであろう相手から何点奪えるか。他にも韓国や豪州、サウジアラビア、イラン、UAE、オマーン、ウズベキスタンは力の差のある国との対戦で、勝利は堅い。タイ-中国、マレーシア-キルギスは力が拮抗しており、引き分けと予想した。【佐藤成】

◆日刊予想

(1)日-ミャ1

(2)タイ-中0

(3)タジ-ヨル2

(4)オマ-台1

(5)クウ-印2

(6)豪-バン1

(7)比-ベト2

(8)韓-シンガ1

(9)マレ-キル0

(10)トル-ウズ2

(11)U-ネパ1

(12)イラ-香1

(13)サウ-パキ1

【注】左がホーム。1=ホーム90分勝ち、2=ホーム90分負け、0=その他

解析料理

【解析料理】新潟、残り2試合。10年ぶり得失点差をプラスにし、白星を先行させたい

【イラスト】新潟のJ1年間の得失点差がプラス

残り2試合。得失点差をプラスにし、白星を先行させたい。J1新潟は11日、ホームで東京と0-0で引き分けた。10勝11分け11敗で、五分の星に戻すことができなかった。35得点、40失点で得失点差はマイナス5。J1で得失点差がプラスだったのは7位に躍進した13年(48得点、42失点)が最後。10年ぶりの「プラス」で来季につなげたいところだ。

松橋監督は「いつもより、らしさは少なかった。迷いが全部裏目に出ているというところが見受けられたのは残念。いかに試合中に修正していけるか、我々の課題」と話した。試合後のインタビューとしてはこれまでにないような奥の深いコメントか。勝ち点3を逃した悔しさがにじんだ。

前線に強力ブラジル人アタッカーを擁する東京を相手に無失点での勝ち点1。これまでならポジティブに捉えられていたかもしれない。だが、今季J1で32試合を戦った中でチームは確実に進化。2万人以上が集まった本拠地で、無得点での引き分けは物足りなさが残った。

シュート数は13本で相手の5本を倍以上も上回った。J1リーグ戦で7戦負けなしは14年以来、クラブ9年ぶりとなった。ただ、今季の7戦の内訳は3勝4分けと引き分けが先行。チームの進化とともに、サポーターの求めるレベルも高まっている。【石川秀和】

東京森重(右)と競り合う谷口。約4カ月ぶり先発で奮闘もゴールを割れず
データが語る

【データが語る】J3V王手の愛媛「史上最高タイトルコレクター」森脇良太全カテゴリー制覇へ 

アジア・チャンピオンズリーグ(ACL) 決勝・第2戦 浦和対アルヒラル 浦和DF森脇良太(右から2人目)がACL優勝トロフィーを掲げるも無反応のイレブン(2017年11月25日撮影)

J3愛媛FCがJ2昇格とJ3優勝に王手をかけている。11日の今治戦に勝てば、3シーズンぶりのJ2復帰が本拠地で決まり、その上で2位の鹿児島が同日のアウェー琉球戦に引き分け以下なら、3試合を残してJ3優勝が確定する。

「史上最強のタイトルコレクター」に、また栄誉が加わりそうだ。元日本代表の愛媛DF森脇良太(37)は今季J3リーグ戦23試合に出場。広島時代の08年にJ2で優勝し、12年にはJ1優勝の原動力になった。J1、J2、J3の全カテゴリーでタイトル獲得となれば、史上3人目の珍しいケースとなる。

過去にはMF岡本知剛とDF小池龍太が達成。岡本は08年にJ2広島で1試合のみの出場にとどまったが優勝メンバー入り。13年にはJ1を制し、18年にJ2松本、現役最終年の21年にJ3熊本でタイトルを獲得した。小池はJFLからステップアップし、15年にJ3山口、19年にJ2柏(シーズン途中にベルギーのロケレンに移籍)、22年にはJ1横浜の優勝に大きく貢献した。

今回の森脇は「個人昇格」を続けた小池のケースとは違い、実績のある経験豊富なベテランとして、かつてプレーしたJ2復帰を目指すチームに戻った。これまで数多くのタイトルを獲得してきた37歳DFの経験は大きく、ムードメーカーとしてピッチ外でもチームに欠かせない存在になっている。

日本代表では11年のアジア杯優勝。追加招集だったが、その存在がチームに一体感をもたらした。フィールド選手で唯一、出場機会がなかったものの、決勝弾を決めたFW李忠成、MVPのFW本田圭佑、全試合フルタイム出場のDF長友佑都らとともに堂々と誇らしげにアジア杯を掲げた。

J1浦和時代は16年のルヴァン杯、18年度の天皇杯を手にし、国内3冠を達成。17年にはアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)を制した。J1が2ステージ制だった15年の第1ステージ、16年の第2ステージでも優勝した。

さらにさらに、広島ユース時代には日本クラブユース選手権、高円宮杯全日本ユース、Jユース杯と「ユース3冠」。個人の主要タイトルはないが、獲得できるほぼ全てのチームタイトルを手にしてきた。

いじられキャラとしてサポーターからも愛される優勝請負人。ここ最近は出場機会が減っているものの、誰よりも高々とJ3リーグ杯を掲げるはず。そしてブーイング(?)。プロ19年目、史上初のタイトル総なめなるか注目だ。【石川秀和】

Get toto

首位交代呼ぶ浦和「1」/第1407回

残り3試合となったJ1はここで首位交代が起きると予想。逃げたい神戸はアウェーでの3位浦和戦と今節屈指の好カード。浦和はACLから中3日と過密日程だがGK西川、ショルツとホイブラーテンのCBという守備は鉄壁。神戸の強力FW陣との“矛盾対決”を制するとみた。一方の横浜は盤石のホームで強さを見せたい。守備陣の負傷者に悩むが、MF喜田主将の統率力、攻撃陣の奮起で苦手C大阪に意地を見せる。【岡崎悠利】

◆日刊予想

(1)札-広1

(2)湘-名1

(3)鹿-柏2

(4)鳥-浜2

(5)G-福2

(6)新-東0

(7)横-C1

(8)川-京1

(9)浦-神1

(10)大-群1

(11)仙-町2

(12)金-岡2

(13)藤-い2

※左がホーム。1=ホーム90分勝ち、2=ホーム90分負け、0=その他

セルジオ越後「ちゃんとサッカーしなさい」

【セルジオ越後】「ネズミ」相手でもベストメンバー森保ジャパン 26年W杯も変わらないだろうな

日本代表メンバーを発表し会見に臨む森保監督(撮影・垰建太)

日本サッカー協会(JFA)は8日、11月のワールドカップ(W杯)アジア2次予選ミャンマー戦(16日、パナソニックスタジアム吹田)、シリア戦(21日=日本時間22日、サウジアラビア)に臨む日本代表メンバーを発表した。

  ◇  ◇  ◇

猫とネズミの戦いだな。日本や韓国、オーストラリアが2次予選から登場する現システムはおかしいけれど、決まりだから仕方ないね。森保監督は格下相手でもベストメンバーを呼んだ。力の差はかなりあると思うけれど、公式戦だから当たり前か。全力でネズミを捕りに行くだろうね。

メンバー発表会見で、森保監督は4年前の予選を振り返って、危機感を口にした。立場上「余裕で勝てます」とは言えないだろうけれど、危機感を口にするのはちょっと大げさかな。だって前回大会はアジアに割り当てられたチケットが4・5枚だったけれど、今回からは8・5枚だからね。

ジッダでのシリア戦だって、厳密に言うとアウェーじゃないからね。現地の駐在員とか、日本のサポーターも多く訪れるはずだよ。ピッチも悪くないわけだしね。相手は日本を警戒して、守備ラインを低くして2重でラインをつくって、超守備的に戦うだろう。裏にスペースもなく、早い時間帯に得点できないかもしれないけれど、焦らずにボールを回しておけば、相手は徐々にバテるだろう。

監督が代わらない限り、26年W杯北中米大会もこのメンバーが中心になるだろうな。入れ替わったとしても2、3人程度か。日本は次から次へと、強烈な選手が出る国でもないからな。まだまだ余力を残しているベテランや力をつけている若手もいるが、森保監督は固定メンバー中心の安定感をベースにした成長を好むからな。もうW杯メンバー入りの当確ランプがついた選手が何人も見えるのは、オレだけかな?(日刊スポーツ評論家)

【イラスト】サッカー日本代表メンバー
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決勝は浦和が一枚上手「2」/第1406回

ルヴァン杯決勝は初優勝を目指す福岡と7季ぶりの優勝を狙う浦和が争う。リーグ最少失点の堅守とタレントぞろいの攻撃陣を誇るACL王者の浦和が一枚上手か。J2は昇格争い、残留争いが大詰め。自動昇格圏内の2位清水は、降格圏内の21位大宮とホームでぶつかる。プライドをかけた戦いを制してJ1昇格に前進したい。3位磐田は17位水戸と対戦。ホームの利を生かして確実に勝ち点3をゲットすると予想した。前節で3位磐田と引き分けた4位東京Vは18位栃木と衝突。確実に勝ち点を拾って食らいつきたい。【佐藤成】

◆日刊予想

(1)福-浦2

(2)金-分2

(3)長-仙2

(4)徳-藤2

(5)磐-水1

(6)い-形0

(7)口-町2

(8)群-千2

(9)岡-秋0

(10)V-栃1

(11)清-宮1

(12)鹿-奈1

(13)琉-富2

※左がホーム。1=ホーム90分勝ち、2=ホーム90分負け、0=その他

スペイン発サッカー紀行

Aマドリード、公式戦15連勝とホームスタジアムを難攻不落の要塞と化した成功の要因は?

アトレチコ・マドリードのシメオネ監督(ロイター)

ホームスタジアムのシビタス・メトロポリターノを難攻不落の要塞(ようさい)と化したアトレチコ・マドリードが今季絶好調だ。

チームは29日のスペインリーグ第11節アラベス戦を2-1で勝利し、6連勝と勢いに乗っている。10試合8勝1分け1敗の勝ち点25。悪天でセビリア戦が延期されたことより1試合少ないにも関わらず、バルセロナを抜き3位に浮上している。

■クラブ史上最多連勝記録

またこの日、リーグ戦のホーム連勝数を14に伸ばした。これは11-12年と12-13年のシーズンにかけて達成した、クラブ史上の最高記録に並ぶ偉業であり、12日のビリャレアル戦は、この記録を塗り替える大事な一戦となる。

さらに公式戦15連勝を達成。これはクラブ史上の公式戦最多連勝記録である。ホームで最後に勝ち点を落としたのは、今年2月4日のヘタフェ戦で1-1のドロー。すなわち、シビタス・メトロポリターノで観戦するサポーターは9カ月あまり、チームの勝利する姿しか見ていないことになる。

これに対しシメオネ監督は、「ホームで今起こっている全てにおいて、サポーターの応援が力になっている。選手たちはその力をピッチに反映させている」とアラベス戦後に述べ、毎試合スタジアムを満員にしてくれるサポーターの支えに感謝した。

今でこそ絶好調のAマドリードだが、ほんの1年前は散々な状態であった。昨季の前半戦では公式戦5戦連続で勝てない時期もあり、欧州CLでは1次リーグ最下位で敗退してしまう屈辱を味わった。

しかし、多数の選手を送り出したワールドカップ(W杯)を終え、後半戦が始まると、その敗北はわずか2回のみとなった。

■不協和音の2選手が移籍

チームが徐々に本来の調子を取り戻し始めた要因はいくつかある。

まず冬の移籍市場のタイミングだ。本来Aマドリードは団結力の強いチームであったが、そこで不協和音を生じさせていた、不満分子のジョアン・フェリックスとクーニャがチームを離れたことが大きな要因と考えられた。

さらに、バルセロナとの契約条件により、グリーズマンの出場時間が制限されていた問題や、W杯を制したアルゼンチン代表デ・パウルとAマドリードサポーターとの間にあった確執など、選手個々の抱えていた問題が解消されたことも、チームに良い影響を与えた。

また、Aマドリードのアイデンティティとも言える”堅固な守備”が再び機能し始めたことも大きな要因のひとつだ。FWからDFまで全員が連動する積極的なプレスが功を奏し、失点を抑えることに成功した。

本来の強さを取り戻し始めたAマドリードは今夏、ハビ・ガラン、ソユング、アスピリクエタを獲得し、サムエウ・リーノとリケルメが期限付き移籍から復帰した。一方、退団を希望したジョアン・フェリックスや、サウジアラビア行きを選択したカラスコなどがチームを離れている。

■シメオネ監督の采配の妙

昨季のメンバーをベースに、シメオネ監督は今季も3-5-2で臨んでいる。カラスコが抜けた左ウイングバックは、サムエウ・リーノとリケルメが攻撃的な役割を果たし、うまくカバーしている。戦力的な上積みはあまりないものの、チームが一丸となった昨季の勢いをうまく維持できている。

直近のアラベス戦でレマル、サムエウ・リーノ、デパイ、ヘイニウドが欠場したように慢性的に多くのけが人を抱えており、頻繁に選手を入れ替えることで対策しているが、シメオネ監督がうまく指揮をとり、攻守ともにうまく機能しているのが、今のAマドリードの強みだ。中でも今季無敗で首位だったレアル・マドリードを3-1で粉砕したダービーマッチの出来はすばらしく、圧巻の一言に尽きる。

■2トップは最強の破壊力

リーグ戦の総得点は25。23得点のレアル・マドリードとバルセロナを抑え、ジローナと並びトップとなっている。この好調ぶりを支えているのは、現在スペインリーグで最も破壊力のある2トップだ。

1人は、昨季のリーグMVPの呼び声高かったグリーズマン。豊富な運動量でピッチ全体を幅広く動き回り、ゲームメイクもこなしながらゴールを量産している。ここまで全10試合に出場し7ゴールと、得点ランキングでベリンガム(Rマドリード)に次ぐ2位につけている。その安定したパフォーマンスで、幾度となくAマドリードを救っている。

もう1人は、例年以上にゴール前で自信に溢れたプレーを見せ、クラブでも代表でも冷静にゴールネットを揺らしているモラタだ。リーグ戦の成績は9試合6得点1アシストで、得点ランキングで3位につけている。

昨季控えに甘んじていたサウールが本来の力を取り戻したことも、チームの助けとなっている。左インサイドハーフとしてレギュラーの座を勝ち取り、ここまで10試合に出場し、リーグ戦最多の5アシストを記録している。

さらに、守護神オブラクを中心に鉄壁の守備陣を築き、総失点9と、Rマドリード(8失点)に次いで2番目に少ない。けがの多いヒメネスのコンディションは気になるが、シメオネは本来MFのヴィツェルや右サイドバックのアスピリクエタをセンターバックに配置しすることで、うまく対処している。

■欧州CLはアウェー苦戦

一方、毎試合、日本人選手が所属するチームと対戦している欧州CLはここまで、アウェーでやや苦戦中。1次リーグE組3試合を終え、1勝2分けの勝ち点5で2位につけている。昨季の失態を払拭し、決勝トーナメントに進出するためにも、残り3試合をうまく乗り切る必要があるだろう。

Aマドリードの今季の目標は3季ぶり12回目のリーグ優勝だ。さらに近年稀に見るこの好調ぶりを維持できた場合、非常に難しいとは思うが、シメオネ監督が2回決勝まで行くも届かなかった、欧州CL初制覇も視野に入ってくるかもしれない。【高橋智行通信員】(スペイン発サッカー紀行/ニッカンスポーツコム・コラム)

解析料理

【解析料理】新潟、初の5バックで7試合ぶり無失点勝利 最終ライン増やし守備固める

【イラスト】J1新潟の28日京都戦の布陣変更

<明治安田生命J1:京都0-1新潟>◇第31節◇28日◇サンガS

J1アルビレックス新潟は初の5バックでリードを守り切った。7試合ぶりの無失点勝利を挙げた28日のアウェー京都サンガFC戦(1-0)。前半34分にセットプレーから決勝点を決めたDF渡辺は「きれいなゲームではなかった」と言った。松橋監督は「内容なんて言葉は必要がなく、目的である勝ち点3を取ってくれた選手を誇りに思う」とたたえた。

相手は試合終盤に高さを前面に押し出してきた。そこで指揮官は後半37分にボランチのMF高に代えて185センチのDF舞行龍を投入した。5バックで守備を固めるという、これまで見せたことのない戦い方で逃げ切りを狙った。

今季は前節まで延べ131人が試合中に交代したが、FW→FW、ボランチ→ボランチというように同じポジションの交代か、守備から攻撃的な選手への変更で占められた。退場者を出した試合を除けば、最終ラインの人数を増やす交代は今季初めてだった。

勝負に徹した指揮官は「トレーニングでやってきたわけではないけど、(ハーフタイムに)選手と少しだけ話をして、それを(即座に)実戦でしっかり対応してくれた」。結果は今季8度目の無失点。選手個々が対応力の高さを示した。

リーグ最高の平均57%だったボール保持率は新潟としては低い50%、同1位の平均85%に達するパス成功率も79%にとどまった。それでも最後まで集中を切らすことなく、相手の激しいプレスにも動じず、タフに戦い抜いて6戦無敗。「俺たちがついているさ」と選手を鼓舞し続けたサポーターを含めチームの総力で勝ち点3を手にした。

【石川秀和】