日刊スポーツ

南ア・SOポラードにボールを持たすな/村上晃一氏

4日イタリア戦での南アフリカSOポラード

<村上’Sポイント(2)>

ラグビージャーナリストの村上晃一氏(54)が南アフリカの警戒選手を「村上's ポイント」として5回連載で紹介します。2人目は司令塔であり、得点源でもあるSOハンドレ・ポラード(25)です。

  ◇   ◇   ◇  

何でもできる-。それが世界屈指のSOポラードの強みです。プレーメーカーであり、正確なショットで得点源でもある。彼が気持ち良くプレーする展開になれば、南アの強さが最大限に引き出されてしまいます。パス、キックの技術も一流ですが、どうにもならなければ189センチ、98キロの体で強引に前にも出られる。1次リーグのニュージーランド戦ではタックル5回をすべて成功させ、2回のターンオーバーも記録と、防御でも体を張れます。

若い頃からその才能は世界で高い評価を受けていました。18歳で出場したU-20世界選手権で優勝に貢献し、14年には主将として準優勝。その年に南アフリカ代表に選ばれ、21歳で15年ワールドカップ(W杯)メンバーにも入りました。その後はけがに苦しみましたが、W杯を前に完全復活。天才が心身ともに充実の時を迎えています。

日本としては、とにかく反則がかぎになります。プレースキックは50メートル程度は余裕で蹴ってきますしエリアを取るキックも距離が出て、かつ正確です。1つの反則で自陣ゴールライン付近からのラインアウト、そこから南アの強力FWを生かしたモールでトライ。この展開でどのチームも得点を許してしまうのです。ポラードにいかにボールを持たせないか。それが試合のポイントになりそうです。

関連するニュースを読む

南ア上回る日本の進化 アナリストが4年前と比較分析

15年大会1次リーグとの比較から分析

日本ラグビーの進化はデータが証明していた。南アフリカを破りながら決勝トーナメント進出を逃した前回15年W杯と4戦全勝で1位突破を決めた今大会。

1次リーグの数字を比較して変化と成長を探った。ラグビーなどスポーツのデータ解析を行う「データスタジアム」の豊富な情報をもとに、同社ラグビーアナリストの小川孝明氏(35)に聞いた。(聞き手=荻島弘一)

   ◇   ◇   ◇

-前回大会の1次リーグ4試合と比べ、今大会で目立つデータはありますか

小川 ディフェンスではタックル成功率ですね。スコットランド戦で86・1%とやや落としましたが、4試合の平均で今大会は91・5%。前回の85・9%を上回っています。相手を止められているんです。

-成功率向上には、何か要因があるのでしょうか

小川 狙うところが、変わっています。前回は4分の1近くが脚にいっています。下半身を狙うことが多かったですね。ところが、今回は60%近くが胸で、脚は3%だけ。上半身を狙うとターゲットも大きいので成功率も上がります。

-日本は低いタックルが持ち味でしたが

小川 確かに小さな選手が大きな相手を倒すのには有効です。上半身だとパワーの差ではじかれるリスクもありますから。ただ、かわされる可能性も高い。日本選手の個々の能力が上がってパワー負けしないようになったので、上半身に行けるようになったんです。

-ボールに行くというのは鉄則でもありますね

小川 下半身を止めても上半身がフリーだとボールをつながれてしまう。オフロードパス(タックルを受けながらのパス)のスキルも上がっていますから。今回はボールを殺しているので、つながれるオフロードパスが半減しました。

-オフェンスでは、特徴的なことはありますか

小川 ボールを持って前進するキャリー距離が伸びています。1試合平均で600・5メートルだったのが、751・8メートルまでになっています。1キャリーの平均獲得距離も5・4メートルから6・8メートルに伸びました。

-個々の推進力が伸びたということですね

小川 もちろん、それもあります。あとは、攻撃チャンネルの変化。どこを攻めるかです。ラック周辺、SO周辺、CTB周辺、外まで展開、ブラインド(狭いサイド)と5つに分けて攻撃データをみると、劇的な変化が分かります。

-今回は大きく外に展開することが多いですね

小川 そうなんです。実は前回大会で外まで展開したのは2・2%。CTB周辺からの攻めを合わせても8%程度です。ところが、今回は外が11・2%。CTBを合わせると20%近くになります。前回はラック周辺で連続攻撃した。今回は大きく外に振る。松島や福岡のトライも増えます。

-それも、個々の能力がアップしたからですか

小川 ヒートマップ(選手のプレー位置)を見ると一目瞭然で、前回はポイント周辺に多くの選手を配していた。今回はポイント周辺に人数をかけず、外に開いている。少ない人数でも相手に対応できるようになった。個々のパワー向上が戦い方にでています。

-前回は、個々の能力に合った戦い方だったと

小川 メンバーも変わっているし、体格やパワーは4年前よりも間違いなく上がっています。前回大会のエディー(・ジョーンズヘッドコーチ)さんは、あの時点でベストな戦い方をした。それが、今の躍進につながったといえます。

-4年間の進化を踏まえて、データから南アフリカ戦を占ってください

小川 正直言って、1次リーグのデータではほとんど南アフリカが上回っています。ラインアウトなど100%ですから。でも、試合はやってみないと。ホームの利もありますから。勝ってベスト4に進出することを期待しています。

データをもとに4年前との違いを説明するデータスタジアム社アナリストの小川孝明氏
データスタジアム社アナリストの小川孝明氏

関連するニュースを読む

南ア戦闘モード全開「強さ見せたい」入念対策で自信

会見で笑顔を見せる南アフリカのコルビ(左)とH・ヤンチース(撮影・鈴木みどり)

南アフリカ代表は日本戦を「新たな挑戦」と位置づけた。16日、東京都府中市で練習を報道陣に公開し、南アに比べると小柄な日本選手を意識してか、低い姿勢で入るタックルを確認する練習を繰り返した。

15年大会で日本に敗れ、今年9月のテストマッチでは34点差で大勝した。16年リオ五輪7人制で銅メダルに貢献した快足WTBのコルビは「今回は新たな挑戦で非常に楽しみ。より勝ちにこだわった方が準決勝に進むと思うし、南アフリカの強さを見せたい」と戦闘モード全開だ。過去2度の優勝を誇る強豪は海外勢で一番乗りの9月1日に来日し、コンディションも万全。「体の調子も良い。日本の素早い展開ラグビーを封じるオプションも準備している」とトライゲッターは自信をのぞかせた。

記者の質問に答える南アフリカのコッホ(左)。右はモスタート(撮影・鈴木みどり)
記者の質問に答える南アフリカのH・ヤンチース(撮影・鈴木みどり)

関連するニュースを読む

ジョセフHC契約延長へ「早急に決まると」協会見解

ジェイミー・ジョセフHC(2019年10月11日撮影)

日本ラグビー協会の森重隆会長は16日、都内で行われた理事会後に取材に応じ、日本代表をW杯で初めてベスト8進出に導いたジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチ(49)との契約延長について「ジェイミーじゃなきゃおかしい。早急に決まると思う」と見解を示した。

W杯開幕前に続投に向けた交渉は始めており、条件面などの詳細を詰め、早期の合意を目指していく。理事会では、森会長を筆頭とした選考委員会を立ち上げ、W杯後の体制を決めていくことを確認した。

森重隆日本ラグビー協会会長(2019年10月15日撮影)

関連するニュースを読む

日本ラグビー協会が代表の帯同スタッフ募集 定員1人

日本ラグビー協会は16日、日本代表カテゴリー各チームの「チームサポートスタッフ」を公募すると発表した。

募集人数は1人で、主な業務内容は「日本代表カテゴリー各チームの合宿及び遠征の手配、備品管理、ヘッドコーチの指示による遠征・合宿日程管理、合宿・試合などへの帯同、スタッフ・選手・関係者の通訳など」。協会側の希望条件として「マネージャー経験、英語力(TOEIC700点以上もしくは相当レベル)、普通免許」としている。契約期間は今年12月1日から2020年11月30日までで、更新の可能性もある。

応募締め切りは10月20日で、詳しくは日本ラグビー協会のウェブサイトまで。

関連するニュースを読む

南ア撃破へ「私はテレサの何?」クイズで脳フル回転

会見で笑顔を見せる坂手(撮影・鈴木みどり)

脳までフル回転で下克上の再現だ。ラグビーW杯日本大会で初の8強入りを果たした世界ランク7位日本代表は16日、同5位南アフリカとの準々決勝(20日、東京・味の素スタジアム)に向けて都内で練習。

ジムトレーニング中にクイズを解きながら、試合の苦しい時間帯に頭を使う意識付けを行った。前回大会で日本に敗れて雪辱を狙う南アフリカも、都内で調整した。

   ◇   ◇   ◇

決戦まで残り4日となった日本代表の練習場。FWは体にキレを出すトレーニングの合間、次々とホワイトボードの前へ向かった。

「テレサの娘が私の娘の母だったら、私はテレサの何にあたる?」

「a:祖母 b:母 c:娘 d:孫娘 e:テレサ本人」

フランカーのリーチを筆頭に、じっと問題を見つめ、また次のトレーニングに移る。練習後の記者会見でフッカー坂手は「しんどい状態で、どう頭を使うか。一番しんどい時に判断を下さないといけない。考えながら、相談しながらやっている」と種明かしをした。

8月の北海道・網走合宿から、ガルブレイス・メンタルコーチが導入。WTB福岡、フランカーのラブスカフニらが得意というクイズで、問題を解決する力を高めてきた。「今日の答えは娘です」と笑った坂手は「7点差で守っているところとかで、生きている」。前戦のスコットランド戦最終盤を、実用例で挙げた。

開幕前の9月に行われた南アフリカ戦は7-41で敗戦。リーチは「自分たちで集中しすぎて、周りやスペースが見えなかった」と反省点を挙げる。15年W杯の歴史的勝利再現へ、必ず訪れる正念場。「頭」も武器の1つになる。【松本航】

室内で練習するリーチ(撮影・鈴木みどり)
室内で練習に励む稲垣(撮影・鈴木みどり)

関連するニュースを読む

V2狙う静岡聖光学院、花園で「シード校撃破する」

試合形式でゲインライン突破の練習をする静岡聖光学院ラグビー部の選手ら(撮影・倉橋徹也)

全国高校ラグビー県大会が20日に開幕する。昨年優勝の静岡聖光学院は、少ない時間をムダなく集中して練習に取り組み、全国大会レベルで戦い合うイメージでチーム力を上げてきた。1回戦は静岡高対焼津水産の勝者とぶつかり合う。

   ◇   ◇   ◇

2年連続6度目の全国出場がかかる強豪校。チームを引っ張る、フォワード(FW)の大西馨汰(けいた)主将(3年)は「花園に出て、シード校を撃破する」と高いチーム目標を語った。

取り組んできた課題は主に4つ。攻守切り替えの素早さ、ゲインラインを突破されたときに前へ出る守り、ラインアウトでのセットプレーの安定化、インパクトがあるタックルだ。3番目以外は「どれもできている」とし、第1シードとして迎える初戦の来月4日までに、3番目も仕上げるつもりだ。

実は主将は、今夏の合宿中に激しいアタックで脳振とうに見舞われた。影響はもうないが、大事をとって1カ月ほど練習から遠ざかった。練習に参加できなかった3つ目の課題は、「残された時間でクリアする」。

チームの2~10月の練習は週3回。1回は90分。残り時間はあるようで、あまりない。だが「短時間に集中することで、充実してできている」と心配はしていない。自身は昨年の花園に出場。全国レベルでの選手の強さを実感した。チーム全体で1年かけ高めた技と体力で、再び全国の舞台を勝ち取りにいく。【倉橋徹也】

県大会を目前に士気を高めた静岡聖光学院ラグビー部の選手ら(撮影・倉橋徹也)

関連するニュースを読む

FB山中が恩人に思い、南アフリカ戦は平尾さん命日

記者の質問に答える山中(撮影・鈴木みどり)

W杯日本大会で8強進出を果たしたラグビー日本代表は16日、20日の準々決勝南アフリカ戦(東京・味の素スタジアム)に向けて、都内で調整した。

20日は16年に胆管細胞がんで亡くなった元日本代表監督、平尾誠二さん(享年53)の命日。過去4戦全てに出場し、所属する神戸製鋼で指導を受けてきたFB山中亮平(31)は「今、ここまで来られていて『よく頑張ったな。思い切って楽しんでやるだけだ』って言ってくれると思う。すごい日に試合がある。思い切ってぶつかって、全力で楽しんでプレーしたいと思います」と恩人に思いをはせた。

平尾さん率いる日本代表の選手として、99年W杯に出場した長谷川慎スクラムコーチ(47)は「私を日本代表に選んでくれたのは平尾さん。試合に出してくれたのも平尾さん。平尾さんと(コーチを務めた)土田(雅人)さんの関係を見ていて、僕もW杯のコーチになりたいと思いました。特別な人の命日に、特別な試合がある。しっかり恩返しできるように、そのことだけを考えて、ラグビーをやりたいと思います」。初めての4強へ、気持ちを高ぶらせた。

会見で笑顔を見せる山中(撮影・鈴木みどり)

関連するニュースを読む

南ア戦はイングランドの40歳ベテラン審判が笛

ラグビーの国際統括団体ワールドラグビーは15日、ワールドカップ(W杯)準々決勝の審判団を発表し、日本-南アフリカ(20日・味の素スタジアム)はウェイン・バーンズ氏(イングランド)が主審を務める。

40歳のバーンズ氏はW杯4大会目のベテランで、1次リーグでは南アフリカ-イタリアなどで笛を吹いた。

関連するニュースを読む

新設白紙「ネーションズ選手権」の検討継続

ワールドラグビーのギルピン・ワールドカップ統括責任者は15日、22年の新設を目指しながら白紙になった国際大会「ネーションズ選手権」について、検討を継続していることを明らかにした。

ギルピン氏は「競技の発展のために、いい考えだったと信じている。計画を捨てたわけではない」と話した。

関連するニュースを読む

スコットランド協会発言は独立紛争委が判断

日本戦を是が非でも開催したいと訴えるスコットランド・ラグビー協会ドットソンCEO(撮影・狩俣裕三)

ワールドラグビー(WR)は15日、台風19号の影響で日本戦の開催が危ぶまれた際のスコットランド協会トップの発言が大会の懲戒規定に抵触した疑いがあり、独立紛争委員会が判断すると発表した。

スコットランドは台風で試合が中止ならそのまま1次リーグで敗退する可能性があり、協会トップが中止となった場合の法的措置を示唆し、順延での開催を求めていた。試合は13日に予定通りに実施された。15日の記者会見で、WRのギルピンワールドカップ(W杯)統括責任者は「スコットランド協会の発言については独立紛争委員会に委ねた」と話すにとどめた。

関連するニュースを読む

南ア・マークスはブルドーザー級突破力/村上晃一氏

練習場に入る南アフリカ代表のマークス(右)。左はマルヘルベ(撮影・狩俣裕三)

<村上'Sポイント(1)>

ラグビージャーナリストの村上晃一氏(54)が日本が準々決勝で対戦する南アフリカの警戒選手を「村上‘s ポイント」として5回連載で紹介します。1人目はフッカーのマルコム・マークス(25)です。17年に同国内の最優秀選手に選ばれ、18年のスーパーラグビーでFW選手最多の12トライをあげた「フィジカルモンスター」が、日本の前に立ちはだかります。

マークスの前で孤立したら最後、瞬時に絡まれ、屈強な体を生かした世界トップクラスのジャッカルでボールを奪い取られます。ランも強烈で、勢いに乗るとブルドーザーのように相手を蹴散らしながら前進してきます。私が最初にマークスを認識したのは、16年2月のサンウルブズ対ライオンズ戦。試合途中からピッチに立つと、3人のタックラーをはじき飛ばす突進を見せ、「すごい選手が出てきたな」と感じました。その試合は、わずかな出場時間ながら、3回ボールを持ち、63メートル前進。当時21歳。その半年後に代表デビューを果たし、一気に世界のトップに駆け上がりました。

185センチ、107キロ。魅力はパワーだけではありません。高校までFW第3列でプレーしており、華麗なパスでトライを演出する器用さも彼の武器です。強くて、うまい。間違いなく、現在、世界で3本の指に入るフッカーです。止めるには1人でいかず、日本の武器であるダブルタックルが必須です。そして、攻撃時は孤立せずに、いかに2人目のサポートが早く入れるかが重要です。1次リーグでは本来の活躍はできていませんが、本当の力を見せるのはここから。そんな不気味な雰囲気を感じます。

19年9月、日本戦でプレーする南アフリカのフッカー・マークス(左)

関連するニュースを読む

日本8強39・2%「紅白歌合戦」クラスの数字

日本対スコットランド 後半、突破を図るNO8姫野和樹(左)(19年10月13日撮影)

ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会で日本代表が史上初の決勝トーナメント(T)進出を決めた13日のスコットランド戦で、日本テレビ系生中継(午後7時30分)の平均視聴率が、関東地区39・2%(関西地区37・2%)だったことが15日、ビデオリサーチの調べで分かった。

平均視聴率が40%に迫る数字は、テレビ界では「NHK紅白歌合戦」クラスといえる。例えば昨年大みそかの紅白第2部では41・5%、第1部は37・7%を記録。第2部だけみると17年39・4%、16年40・2%と近年40%前後の数字が続いている。最近10年間の高視聴率ドラマをみると、13年9月放送のTBS系「半沢直樹」最終回で42・2%。11年12月放送の日本テレビ系「家政婦のミタ」最終回で40・0%を記録した。ちなみに昨年のサッカーW杯における日本代表戦では、同6月19日にNHKが放送したコロンビア戦が48・7%、同28日にフジテレビが放送したポーランド戦が44・2%だった。

関連するニュースを読む

日本8強39・2%「魂のプレーが視聴者の心に」

スコットランドを破って決勝トーナメント進出を決めて喜ぶWTB福岡(左)ら(19年10月13日撮影)

ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会で日本代表が史上初の決勝トーナメント(T)進出を決めた13日のスコットランド戦で、日本テレビ系生中継(午後7時30分)の平均視聴率が、関東地区39・2%(関西地区37・2%)だったことが15日、ビデオリサーチの調べで分かった。今年のスポーツ中継番組トップで、瞬間最高視聴率53・7%(同52・2%)という盛り上がりぶり。その影響を受けたNHK「いだてん~東京オリムピック噺」は大河ドラマワーストを更新する苦しい数字となった。

まさに「今年1番の盛り上がり」だった。午後9時41分。7点差を追うスコットランドの猛攻。必死に耐える日本。スタンドからは試合終了へカウントダウンの大合唱。ラックから出たボールを山中亮平が蹴り出し日本初の8強が決まった瞬間の視聴率は、関東地区で53・7%をたたき出した。平均39・2%は、同局系で中継された5日サモア戦の32・8%、1月3日の箱根駅伝復路の32・1%を上回った。午後7時からの試合直前番組も平均15・3%を記録した。

同局スポーツ局の渡辺卓郎プロデューサーは「初の決勝T進出という歴史的快挙の放送を担当させていただいたこと、大変光栄に思います。日本の不屈の闘志と、スコットランドの意地、両チームの魂のプレーが多くの視聴者の心に届いた結果と感じています」とコメントした。

日テレにとっても、悲願の中継と言えそうだ。これまで南アフリカを破った15年W杯、アイルランドを破った今大会9月28日の試合はともにNHKが中継。「ジャイアントキリング」や劇的な試合との縁に恵まれなかった日テレに、4連勝の日本代表が追い風を吹かせた。渡辺氏は「台風19号の影響がある中、早朝からグラウンド等の復旧作業をされ、歴史に残る名勝負の舞台を整えた関係各所のご尽力に敬意を表したいと思います」と感謝した。

W杯の盛り上がりと比例するように、日本代表の視聴率はうなぎのぼり。20日の準々決勝南アフリカ戦を再び中継するNHKは、大河「いだてん」放送を休止してBSから総合に変更した。ただ日本代表が準決勝に進めば、決勝まで放送権は日テレ。渡辺氏は「今後はラグビー日本代表の1歩1歩がそのまま歴史に刻まれていきます。引き続き日本の躍進と、世界最高峰の戦いを楽しみにしつつ、決勝トーナメントの放送責任を果たしていきたい」。日本戦中継の機会が再び訪れることへの期待感もにじませた。

関連するニュースを読む

日本が平尾さん命日に4強届ける!20日運命南ア戦

14年5月に開かれた伏見工山口総監督の祝賀会で壇上に立った高崎氏(右)と平尾さん(高崎氏提供)

日本代表が運命の日に世界4強の扉を開く。W杯準々決勝・南アフリカ戦(20日、東京・味の素スタジアム)に向け、15日は都内で冒頭15分の筋力トレーニングを報道陣に公開。決戦の日は、16年に胆管細胞がんで亡くなった元日本代表監督、平尾誠二さん(享年53)の命日。日本ラグビーの停滞期を支え、W杯招致に尽力した天国の恩人へ、三たび歴史的勝利を届ける。

  ◇  ◇  ◇  

これも日本代表に課された使命か。史上初の準々決勝となる南アフリカ戦が行われる10月20日は偶然にも日本ラグビー界を支えた恩人の命日。この日の会見で司会を務めたのは神戸製鋼時代、平尾さんと日本選手権7連覇を達成した日本協会の藪木宏之広報部長だった。試合ではSOとCTBとしていつも隣にいた。

藪木広報部長 今の選手は「平尾さんのために」というのはないのかもしれないけれど、これも何かの導きなのでしょうね。日本の活躍はもちろん、この大会の大成功を平尾さんは待ち望んでいると思います。

何度も世界の壁にはね返されて、今がある。平尾さんは87年の第1回W杯から3大会連続で出場し1勝8敗。監督として出場した99年大会は3戦全敗。世界に勝ちたい-。その思いはだれよりも熱かった。伏見工(現京都工学院)時代の80年度に初の全国制覇を達成。当時、ハーフ団を組んだ元同校監督の高崎利明氏(57)とは、深夜まで飲み明かし、愚痴を言い合った。

高崎氏 平尾は代表で監督をしていた時に、結果を出せなかったことを悔やんでいたんです。監督を退いてからも、日本のためにできることはないかを、考えていた。今回のW杯を、見届けたかったはずです。

その思いは見えない糸でつながっている。大会が開幕した9月20日、平尾さんの愛娘が第2子を出産。孫が増えた。神戸製鋼のFB山中は11年大会前、育毛剤に禁止薬物が含まれていたとして2年の出場停止処分。救ったのは当時GMの平尾さんだった。W杯メンバー選出時、山中は「ラグビーを続けられたのは平尾さんのおかげ」と感謝。伏見工出身のSH田中、CTB松田も遺志を受け継ぐ。

スコットランドを破って初の8強進出を決めた夜。藪木広報部長は横浜のホテルに戻ると、小さな遺影を出した。ビールを2本。久しぶりに2人で祝杯を挙げたという。神戸の街並みを一望する平尾さんの墓石にはこう刻まれている。

「自由自在」

自由に楽しく魅了する。日本が世界を驚かせる戦いはまだ続く。【益子浩一】

14年5月に開かれた伏見工山口総監督の祝賀会で記念撮影する高崎氏(右)と平尾さん(高崎氏提供)

関連するニュースを読む

南アフリカの「ロールスロイス」が松島と福岡を警戒

都内練習場に入る南アフリカ代表のルルー(撮影・狩俣裕三)

南アフリカ代表は15日、都内で日本戦に向けた練習を開始した。

W杯2大会連続出場で代表58キャップのFBウィリー・ルルーは「日本には正確なキックがあり、外には2人のフェラーリ軍団がいる。1つ1つにフォーカスを当てて、しっかりと守っていきたい」と、1次リーグで2人合わせて9トライのWTB松島と同・福岡を警戒した。

日本代表内では以前、ジェイミー・ジョセフHCからロシア戦の3トライで「フェラーリのよう」とたたえられた松島が、続くアイルランド戦を前に「僕の中でのフェラーリは福岡堅樹」と語り、盛り上がりを見せていた。一連のやりとりを知る海外メディアから、会見で「ロールスロイスのような選手」と高級車に例えられたルルーは「僕はピックアップトラックのような選手。うまく外の選手を生かしたい」と控えめに話した。攻撃ではボールの運び屋に徹し、防御では最後のとりでFBらしく日本のエースを止める。

15年から2シーズン、トップリーグのキヤノンでプレー経験がある。「日本のラグビーは7人制のような速さがある」と警戒した。スティック・アシスタントコーチも「オールブラックスと似たような展開ラグビーをしてくる。ティア2として見ずに、世界ランク7位の強豪国として挑む」と、日本の攻撃をW杯2連覇中のニュージーランド代表と重ねた。優勝候補が日本への警戒を最大限に高め、快進撃を止める。【佐々木隆史】

ウオーミングアップをするルルーら南アフリカ代表の選手たち(撮影・狩俣裕三)
都内で行われた練習でウオーミングアップをする南アフリカ代表のムタワリラ(撮影・狩俣裕三)

関連するニュースを読む

森会長「20年後ぐらいにもう1度」W杯再度日本で

記者の質問に答える森重隆日本ラグビー協会会長(撮影・鈴木みどり)

日本ラグビー協会の森重隆会長(67)が15日、都内で2度目のW杯開催へあらためて意欲を示した。4連勝で1次リーグA組首位突破を決めた日本代表に「ベスト8は信じられない」とニッコリ。全国のラグビー熱の高まりを肌で感じ「20年後くらいにもう1度、W杯をやりたい。1回ではもったいない」と青写真を描いた。

この日、都内で行われた記者会見では、台風19号の影響で3試合が中止となった点に質問が相次いだ。国際統括団体、ワールドラグビーのビル・ボーモント会長は「日本開催に全く後悔していない。日本の結果(8強入り)は大変素晴らしい。世界ランキングは7位。強豪を倒している」と開催国の奮闘を評価した。

関連するニュースを読む

フッカー北出流行グルメ「北出丼」で胃袋から一体感

会見を終え、笑顔で肩に手を置きながら引き揚げる、左から北出、木津、徳永(撮影・鈴木みどり)

長期戦を「北出丼」で乗り越える。ラグビーW杯で初の4強を目指す日本代表が15日、準々決勝の南アフリカ戦(20日、東京・味の素スタジアム)に向けて都内で再始動。1次リーグで出場機会がなかったフッカー北出卓也(27=サントリー)は、自らが流行の発信源になった「北出丼」の存在を明かした。今大会出番のない5人もメンバー争いを激化させ、登録31人が「ONE TEAM」で強敵を食いにかかる。

   ◇   ◇   ◇

代表31人の一体感が、記者会見の入場に象徴された。都内ホテルの大広間。右前方の扉が開くと、フッカー北出、フランカー徳永、プロップ木津が三位一体で現れた。試合前のウオーミングアップ後、主将を先頭に、前の人の肩に手を置いてロッカー室に戻る恒例の儀式。今大会出場機会のない北出は「ピッチに立っていたいというのは、常に持っている気持ち。でも、チームが勝つのはうれしい」と素直な心境を明かした。

4連勝で決めた8強の裏には、試合メンバーから外れた選手の支えがある。練習で組み合うスクラム。北出は「僕らが意識するのは、試合以上のプレッシャーをかけること」と胸を張る。食事はバイキング形式だが、長期間のホテル暮らしには飽きもくる。小腹がすいたある日、ごはんに高菜、めんたいこ、しらす、ネギをかけ、最後に卵とごま油を添えて食べていると、周囲が「何それ!?」とまねを始めた。通称「北出丼」の発案者は「今では選手の7割が食べています」とオチをつけて笑わせた。

個々の思いは複雑だ。試合でウオーターボーイを務める徳永は「毎週(メンバーに)入りたいと思っていて、外れたら、どうしても落ち込む」。それでも他のFWと相手ラインアウトを分析し、試合では首脳陣の指示を選手に届ける。「ずっと引きずらない。勝つためにはサポートが大事」。決して腐らない姿勢は、ピッチで戦う23人の力の源だ。フッカー堀江は「メンバー外がいなければ、出ている選手たちはいい練習できていない」と感謝を示す。

SH茂野、WTBモエアキオラを含めた5人は、W杯初出場を諦めない。その決意を代表するように、茂野は「どこで試合に出られるチャンスがあるか分からないので、常に準備する」と力を込めた。激しい競争はもちろん、ピッチを離れれば「北出丼」で生まれる一体感。本当の「ONE TEAM」が、日本を高みへ押し上げる。【松本航】

会見で記者の質問に答える北出(撮影・鈴木みどり)
会見で記者の質問に答えるモエアキオラ(撮影・鈴木みどり)

関連するニュースを読む

ラグビー日本8強、札幌地区の平均視聴率42・9%

スコットランドに勝利し決勝トーナメント進出を決め喜ぶWTB福岡(左から2人目)ら(2019年10月13日撮影)

13日にSTVで放送されたラグビーW杯日本大会・日本-スコットランド戦は、札幌地区の平均視聴率が42・9%だったことが15日、ビデオリサーチの調べで分かった。

5日の日本-サモア戦の38・6%を上回り、道内全局を含む今年の最高視聴率をマーク。STVの歴代平均視聴率でも9位に入った。瞬間最高は53%で、試合終了から残り1分の場面だった。

関連するニュースを読む

ラグビー日本8強 静岡で瞬間最高視聴率55・6%

スコットランドに勝利し決勝トーナメント進出を決め喜ぶ日本代表(2019年10月13日撮影)

日本テレビ系が放送するラグビーW杯日本大会で、13日の「日本-スコットランド」(午後7時30分)の平均視聴率が、静岡地区では39・9%(占拠率46・4%)だったことが15日、ビデオリサーチの調べで分かった。

本年度に静岡地区で放送された全番組の中で最高の視聴率。5日の「日本-サモア」の34・1%に続き、ラグビーの中継場組としては異例の高視聴率を連発した。

瞬間最高視聴率は55・6%。日本がスコットランドを退け、史上初の決勝トーナメント進出を決めた直後の午後9時41分に記録した。

リーチら日本代表が南アフリカ戦へ練習再開

練習の合間に真剣な表情の田中(右)と田村(撮影・鈴木みどり)

ラグビーのワールドカップ(W杯)日本大会で史上初めてベスト8に入った日本代表は15日、準々決勝の南アフリカ戦(20日・味の素スタジアム)に向けて東京都内で練習を再開した。

フランカーのリーチ主将(東芝)や、13日のスコットランド戦の前半途中で退いたプロップ具智元(ホンダ)らが屋内での筋力トレーニングで調整した。

W杯は13日に1次リーグが終了し、19日から8チームによる決勝トーナメントが始まる。日本はA組を4戦全勝の1位で突破し、南アフリカはB組を3勝1敗の2位で通過した。両チームはW杯前の9月6日に対戦し、日本が7-41で敗れた。(共同)

ウエートトレーニングを行う松島(右)と笑顔の福岡(撮影・鈴木みどり)
ウエートトレーニングを行う姫野(撮影・鈴木みどり)
ウエートトレーニングを行う具(撮影・鈴木みどり)
練習の合間に笑顔を見せる徳永(右)とマフィ(撮影・鈴木みどり)

関連するニュースを読む

ラグビーが「国民を1つにしてくれている」鈴木長官

都内でイベントに出席しラグビー日本代表の活躍をたたえた鈴木大地スポーツ庁長官(撮影・大友陽平)

スポーツ庁の鈴木大地長官が15日、都内で「FUN+WALK MORNING」PRイベントに出席し、ラグビーW杯で初の決勝トーナメント進出を決めた日本代表をたたえた。

鈴木長官は「日本代表が期待に応える活躍をしてくれていて、それを国民が後押しするようないい雰囲気で、いい戦いをしてくれている。団体競技のまとまりが、国民を1つにしてくれている」。

また自国開催の国際大会でもあり「アジア初の(ラグビー)W杯開催で、観客を含めていい雰囲気を作れている」と話し「日本代表にはさらなる活躍をしてもらって、日本を元気にしてほしい。そして体を動かそうとする動きにつながれば」と話した。

関連するニュースを読む

ラグビー日本劇的8強39・2%瞬間最高53・7%

スコットランドに勝利し決勝トーナメント進出を決め喜ぶ日本フィフティーン(撮影・鈴木みどり)

ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会で13日に日本テレビ系が生中継し、日本が勝利して史上初の決勝トーナメント進出を決めたスコットランド戦(午後7時30分~)の平均視聴率が、39・2%(関東地区)だったことが15日、ビデオリサーチの調べで分かった。

瞬間最高視聴率は午後9時41分。スクラムでボールを守る日本代表に、スタジアムから試合終了のカウントダウンの大合唱が起こり、その後ボールを蹴り出して勝利を決めた場面で記録した53・7%だった。

日テレ系で中継された5日サモア戦の平均32・8%、瞬間46・1%を上回り、今年最高の数字を更新した。また午後7時から7時30分の試合直前番組も、平均15・3%と高視聴率を記録した。

日本×スコットランドは午後7時45分にキックオフ。日本代表は前半6分に先制を許したが、同18分に松島幸太朗のトライなどで同点に追いつくと、同26分には稲垣啓太がトライを決め逆転。福岡堅樹もトライを決め、前半を21-7で折り返すと、後半2分にも福岡がトライ。その後、スコットランドの猛攻に耐え、28-21で勝利した。

日本代表はプール戦を4戦全勝。視聴率はここまで、9月20日のロシアに30ー10で勝利した開幕戦は日テレ系が中継し平均18・3%、瞬間最高25・5%。28日にアイルランドに19-12で勝利した試合はNHKが中継し平均22・5%、瞬間最高28・9%。5日のサモア戦は日テレ系が中継し、平均32・8%、瞬間46・1%だった。

20日の準々決勝南アフリカ戦は、NHKがBSの予定を変更して、総合で生中継。大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」は休止される。

関連するニュースを読む

スコットランド地元「今年最高のラグビー」日本賛美

スコットランド戦の後半、突破を図るSH田中(19年10月13日撮影)

<ラグビーワールドカップ(W杯):日本28-21スコットランド>◇1次リーグA組◇13日◇横浜・日産スタジアム

スコットランドの地元メディアや熱戦を見守ったファンからは、日本代表のプレーを惜しみなくたたえる声が相次いだ。「結果を嘆くよりも、今年最高のラグビーを見せてくれた日本をたたえよう」。14日付の地元紙スコッツマンに寄稿した名物コラムニストは、日本の「技術と断固たる決意」に感銘を受けた様子。「忘れ去られてしまう勝利もあるが、この試合はずっと語り継がれる」として「全てのコーチは(日本戦の)ビデオを選手に見せるべきだ」と訴えた。

中心都市エディンバラのラグビー用品専門店では、店員のロス・キャンベルさん(20)が「欧州各国の代表よりもスピードがある。密集でのしつこさなど、基本動作を何度も反復できる強さも備えていた」と脱帽。ワールドカップ(W杯)開幕前に仕入れた50着の日本代表ユニホームは既に残り1着に。スコットランドを破った13日の試合直後に「日本のはあるかと、照会の電話があったよ」といい、戦いぶりに魅了された地元住民もいたようだ。

関連するニュースを読む

ニュージーランド監督が絶賛「日本はティア1」

13日、スコットランドに勝利し決勝トーナメント進出を決め喜ぶWTB福岡(左から2人目)ら

ニュージーランドのハンセン監督が都内で会見し、ラグビーワールドカップ(W杯)で8強入りした日本を強豪の10カ国・地域を示す「ティア1」と見なすかと問われ「間違いなくそういうことになる。質の高いラグビーをしており、誇りに思うところまできている」と絶賛した。

日本は2番手グループの「ティア2」に属する。フランカーのケーンは多くのチームメートが日本の試合を観戦したと明かし「スピードとスキルレベルが素晴らしい」とたたえた。

関連するニュースを読む

日本8強の裏で2000人が日産スタジアム復旧尽力

高床式構造の日産スタジアム(撮影・峯岸佑樹)

ラグビーワールドカップ(W杯)8強進出を決めた日本代表の歴史的勝利の裏には、会場スタッフの「ONE TEAM」があった。

台風19号の影響で、13日夜のスコットランド戦(日産スタジアム)の実施が危ぶまれたが、スタッフらが急ピッチで準備を進めて開催にこぎつけた。

絶対に試合をやって決着をつける-。チームだけでなく、スタッフも同じ気持ちだった。会場を運営する新横浜公園管理事務所の高橋昌広氏(50)は「大会組織委員会などと連携し、台風直撃を想定しながら万全の準備を整えた。我々にとっても、10月13日は歴史的な1日になった」と振り返った。

管理スタッフや警備員、ビールの売り子ら総勢約2000人が会場復旧に向け、尽力した。交通機関の混乱などの影響で、人手不足により一部売店の閉鎖などもあったが、多くのスタッフが午前6時過ぎから仕事前に土砂の清掃や、大型スポンジを使って通路の雨水を吸うなどの作業をスムーズに行った。

会場周辺の多目的遊水地も一役買った。近くの鶴見川は過去にたびたび氾濫した「暴れ川」と呼ばれる。12日午後には水位が6・58メートル(通常0・8メートル)まで上がり、普段は陸上競技場などで使われるエリアが遊水地として機能した。鶴見川の流水を一時的にためて、洪水被害も防いだ。会場は1000本以上の柱に支えられた「高床式」で、1階駐車場は80センチの浸水があったが、迅速に管理スタッフが水吸引などの対応を施した。仮に駐車場が水没しても、開催できる体制も整えていた。2階の選手控室や3階のグラウンドの被害はなかった。

リーチ主将は試合後、「この試合を実現するために多くの方が努力してくれたことは分かっている。みんなに『ありがとう』」と感謝の言葉を伝えた。運営スタッフも含めた「ONE TEAM」で、勝ち取った勝利だった。【峯岸佑樹】

◆鶴見川多目的遊水地 2003年(平15)から供用開始。鶴見川が氾濫した際、一時的に河川の水を引き込み、流域への洪水被害を低減させる。遊水地には過去20回以上の浸水があったが、被害を最小限で抑えている。14年10月の台風18号では日産スタジアム1階の駐車場が1・9メートル浸水した。横浜市民には街を守る「安全装置」として知られている。

鶴見川の水を引き込む日産スタジアムの構造
スコットランド戦から一夜明け、水が残る遊水地(撮影・峯岸佑樹)
13日午前、浸水する日産スタジアム1階の駐車場(新横浜公園管理事務所提供)
12日午後、鶴見川から大量の泥水が流れる遊水地(新横浜公園管理事務所提供)

関連するニュースを読む

リーチ4強へ森岡隆三氏やNZカフイの教えヒントに

スコットランド戦一夜明けの会見で、記者の質問に答えるリーチ(撮影・狩俣裕三)

経験者の教えにヒントあり-。ラグビーW杯日本大会で初めて8強入りした日本代表フランカーのリーチ・マイケル主将(31=東芝)が14日、決勝トーナメント(T)に向けて“予習”を志した。

スコットランド戦の劇的勝利から一夜明け、横浜市内で記者会見。決勝Tに進んだ02年サッカーW杯日韓大会で、日本代表主将を務めた森岡隆三氏(44)らの教訓を参考に、準々決勝の南アフリカ戦(20日、東京・味の素スタジアム)勝利を目指していく。

   ◇   ◇   ◇

抱き合い、叫び、歌った前夜の興奮は静まっていた。質問を受けるリーチは、答えまでに少しの間を置きながら「なかなか寝付けなかった。チームが怖いぐらいに強くなっている」と確かな自信をにじませた。日本ラグビー界が、長年目指してきた8強。その達成感をかみしめて言い切った。

「もう1回、いい試合を見せたい気持ちが一番強い。そのチャンスを得たことを喜んでいます。ゼロからスタートして、もう1回作り上げることが大事です」

視線は前へと向いた。中6日で迎える準々決勝。8強のうち、日本だけは決勝Tの経験がない。リーチは未知の戦いへ、事前に仕入れていた学びを明かした。

「今、新しい歴史をつくって、ゴールに立った。でも、ここからが大事。ここがゴールではなく、次勝って、その次も勝って…。勝っていくことが大事です」

他競技の先輩に授かった教訓だった。02年サッカーW杯で日本代表主将を務めた森岡氏とは、食事を共にする間柄。決勝T1回戦で敗れ、16強止まりだった当時を、同氏は「より上を目指す志がなかった」と後悔してきた。リーチはその経験談を聞き、切り替えの難しさを実感。この日、恥ずることなく「これから勉強していきたい」と誓った。

ニュージーランド(NZ)で生まれ、過去に数多くの同国代表「オールブラックス」経験者とプレーしてきた。同じ東芝に在籍し、NZ代表として11年W杯優勝経験を持つCTBカフイらの名前を挙げると「どう過ごしてきたか、一言もらいたい。メンタリティーが大事になってくると思う」。独自ルートも活用し、後悔のない1週間を過ごす。

4年前、大金星を挙げた南アフリカとは今年9月に対戦。W杯直前の一戦は7-41の完敗だった。だが、W杯4連勝で過去最高の世界ランク7位に浮上した今、立ち止まる考えはない。

「(W杯の)4つの試合でプレッシャーになれて、注意力も上がってきた。次はもっといい勝負になる。しっかりと勝って、さらに日本の歴史をつくりたい」

また日本全体で喜ぶために、全身全霊の準備を施す。【松本航】

◆森岡隆三(もりおか・りゅうぞう)1975年(昭50)10月7日、横浜市生まれ。神奈川・桐蔭学園高から94年に鹿島入り。95年に清水に移籍し、長く守備の中心として活躍した。07年に京都に移籍し、08年限りで引退。京都コーチ、同U-18監督、鳥取監督などを歴任。今季から清水アカデミーアドバイザーを務め、解説でも活躍。Jリーグ通算307試合10得点、国際Aマッチ38試合。02年W杯では主将を務めた。

◆02年サッカーW杯の日本代表 2大会連続2度目の出場。トルシエ監督、森岡主将の体制で臨み、1次リーグ初戦はベルギーに2-2。第2戦はロシアに1-0、第3戦はチュニジアに2-0と連勝し、H組1位通過で初の決勝T進出。トルコとの決勝T1回戦は0-1で敗れ、ベスト16。

スコットランド戦一夜明けの会見で、静かにマイクを置くリーチ(左)。右は藤井強化委員長(撮影・狩俣裕三)
スコットランド戦一夜明けの会見で、記者の質問を聞きながら水を飲むリーチ(撮影・狩俣裕三)

関連するニュースを読む

南アフリカ監督、日本戦敗戦の過去は「塗り替えた」

会見で笑顔を見せる南アフリカ代表のエラスムス監督(撮影・狩俣裕三)

ラグビーW杯日本大会の準々決勝(20日、東京・味の素スタジアム)で世界ランク7位日本と対戦する同5位南アフリカ代表が14日、都内で会見を行った。

9月6日のテストマッチでは41-7で快勝。しかしヨハン・エラスムス監督は、日本が決勝トーナメント進出したことについて「ジャパンが勝ったことに驚きは全くない。事前に試合をして、プール戦は必ず1位か2位になると思っていた」と話した。

15年大会で日本に敗れた過去も「この間の試合で歴史は塗り替えたと思った。その話がまた挙がってこないことを期待したい。1つ1つしっかりと準備したい」と気を引き締めた。

会見で笑顔を見せる南アフリカのエラスムス監督(撮影・狩俣裕三)
会見で笑顔を見せる南アフリカ代表のエラスムス監督(左)とムタワリラ(撮影・狩俣裕三)

関連するニュースを読む

南アフリカ「日本にプレッシャーを」戦術変更を示唆

会見で笑顔を見せる南アフリカのエラスムス監督(撮影・狩俣裕三)

優勝候補の南アフリカ代表が、日本戦へ全力を尽くす。14日、都内で会見を行ったヨハン・エラスムス監督は「日本が勝ったことに関して驚きは全くない。プール戦は必ず1位か2位になると思っていた」と勝利した9月の直前試合から、日本の8強入りを予想していたという。すでに日本の1次リーグ4試合を全てチェック済み。「スコットランド戦では8回しか蹴っていないが、サモア戦では32回蹴っている。その時の相手によってさまざまな戦い方を持っていて、自分たちの長所を出してくる」と細かく分析している。

15年大会では、日本にまさかの敗戦。だが直前試合で勝利し「歴史は塗り替えたと思っている」と引きずっていない。キックを多用した戦術も「同じプランになることはない」と否定。「日本の速い展開にプレッシャーを与える準備をしている」と別の戦術をちらつかせた。15年大会と直前試合に出場した、プロップのムタワリラは「日本のスクラムは4年前に比べて改善している。まとまりとして強い。4年前の負けは過去の話で新しいチャレンジになる」と油断はない。チーム一丸となり、快進撃を続ける日本の壁になる。【佐々木隆史】

会見で笑顔を見せる南アフリカ代表のエラスムス監督(左)とムタワリラ(撮影・狩俣裕三)
会見で笑顔を見せる南アフリカのエラスムス監督(撮影・狩俣裕三)

関連するニュースを読む

リーチ主将「怖いくらい強くなっている」一問一答

スコットランド戦一夜明けの会見で、記者の質問に答えるリーチ(撮影・狩俣裕三)

史上初のワールドカップ(W杯)8強入りを果たしたラグビー日本代表のリーチ・マイケル主将(31=東芝)が14日、A組首位突破を決めたスコットランドとの1次リーグ最終戦から一夜明け、横浜市内のホテルで会見を行った。緊迫した大一番の試合前、入場の際に手をつないだエスコートキッズとの裏話などを明かした一問一答は以下の通り。

--昨夜はゆっくり寝られたのか。偉業については

リーチ なかなか寝付けることができませんでした。チームが怖いぐらいに強くなっている。国民の応援があったからこそ、ここまで強く頑張れていると思います。次もタフな試合になるが、しっかりと準備を重ねて臨みたいと思います。

--スコットランド戦の勝利は、日本ラグビー界にとってどんな意味があるか

リーチ 日本の子どもたちが自分たちの試合を見て、日本代表になりたいっていう選手が増えると思います。そういう子が増えれば、自然と代表は強くなる。そして今、トップリーガーや大学生で、日本代表になりたい選手が増えてきていると思う。増えたことで争いが激しくなって、入りたい人がどんどん増える。自然と代表がこれから、もっともっと強くなると思います。

--入場後にエスコートキッズと何かを話していた

リーチ エスコートキッズの子としゃべって、肩を触った時に、すごくドキドキしていた。「緊張していますか?」って聞いたら「緊張しています。スコットランド、ボコッてください」って言われました。

--何が良くて、新しい歴史が作れたのか

リーチ この4週間の中で間違いなくジェイミー・ジョセフ(ヘッドコーチ)が良かった。(開幕の)ロシア戦終わって、(第2戦の)アイルランド戦でベストなチームを選んだ。それで僕がベンチに戻ったり、ゲームキャプテンをラピース(ラブスカフニ)選手に与えたり。リーダーシップグループとコーチングスタッフが「アライメント」っていう言葉をすごく大事にしている。この4週間を振り返ると、ジェイミーがすごく良かったと思います。

--準々決勝で戦う南アフリカとは9月に対戦して敗れたが、教訓は

リーチ 得たものはたくさんある。自分たちで集中しすぎると、周りやスペースが見えない。その試合(9月)を振り返ると、スペースができたところはたくさんあって、チャンスもたくさん作った。ただ、大事なところをミスしたり、前を見られなかったり。(W杯の)4つの試合でプレッシャーに慣れて、注意力も上がってきたので、次はもっと、いい勝負になると思います。

スコットランド戦一夜明けの会見で、記者の質問に少し考えながら答えるリーチ(撮影・狩俣裕三)

関連するニュースを読む