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福士加代子「死ぬしかねぇ」で5大会連続五輪へ道

福士加代子「死ぬしかねぇ」で5大会連続五輪へ道

女子1万メートル決勝 3位に終わった福士加代子はゴール後手を挙げて満面の笑顔を見せる(撮影・上山淳一)

<陸上:関西実業団選手権>◇25日◇第1日◇ヤンマースタジアム長居◇女子1万メートル

途中棄権した名古屋ウィメンズマラソン(3月)以来のレースに臨んだ福士加代子(38=ワコール)が、目標のタイム切りに笑顔を見せた。

32分17秒65の3位で日本選手権(12月、大阪)の参加標準記録(32分25秒00)を突破。優勝は東京五輪女子マラソン代表の一山麻緒(23)で32分9秒31。2位には32分12秒24で安藤友香(26)が入り、ワコール勢が表彰台を独占した。

レース後の福士の一問一答は以下の通り。

-5000メートルを過ぎたところで先頭に立った。一山が驚いていた。

福士 私、あそこしか出れん。最後は無理なんよ。最初に稼ぐタイプなんよ。出なきゃ、私が(タイム)出なくなっちゃうんだもん。その危機感があったから「今、行かな!」みたいな、そういう変な勘がありますね。多分ここまでいって落ちて、ずるずるいっても、私、最後(ペースが)上がらない感じがした。

-自分に刺激を入れる意味でもあった

福士 これはもう「死ぬしかねえ」って思って。どっちにしても(目標タイムが)出るか出ないかギリギリのところで「もう、いけえ!」みたいな。「出なくても、もういいや!」ってなって「行っちゃえ!」と。前の2人(一山、安藤)は連戦で(ペースが)上がらなさそうだったし、こっちは連戦じゃねえし。

-名古屋以来のレースになった

福士 まあ、きつい。本当にきつい。トラックって調整の時はすごいいい感じで「私、走れるわ」って思うんですけど、痛い目にあいました。本当にビックリする。「やらねえとダメだな」って、あらためて実感しますよね。

-慣れが影響する

福士 スピード持久力とかがね。ない、ない、ない、ない。

-ラスト1周が速く感じた

福士 「ふ~ん!」っていう、それ(大きく走る)だけは最近覚えたので「これなら1秒ぐらい稼げる!」って思って。

-日本選手権の参加標準記録を意識したレース

福士 途中で監督が「(1周)78(秒)でいい」って言われて「ギリなんだけど」って思って、最後の1周になって「75秒でいいから!」って言われて「もうちょっと頑張らな!」ってね。「頼む、もうちょっと動いて」みたいな。キレがないので、今。もう必死。久しぶりにこんなに時計見て、最後のゴールまで走った気がする。「ラッキー!」みたいな。良かった。しばらくこれで休みます。(駅伝は走る予定だが)12月までね。

-東京五輪が延期になった

福士 ちょうどいいんじゃないですか、私にとってはね。トラックなので。これで記録を切ったので、12月に(日本選手権に)出て。

-東京五輪は

福士 見え隠れしている。(五輪自体が)「あるのか?」「ないのか?」「あるのか?」「ないのか?」っていうね。でもなくても準備するので「いいんじゃね?」って。うちの一山とかも、その先まで見ているので。24年(パリ五輪)まで見ているので、大してやること変わらないんじゃないですかね。

-名古屋の後の練習は

福士 ずっと寮でやっていて。密にならないようにして、自由にやっていました。

-スイッチ入れ始めたのは

福士 7月ぐらいから北海道合宿が始まって、そこから2~3カ月で、やっとここまで。だけど、全然ダメだね。今日走った感じ。

-中長距離界が好記録連発で盛り上がっている

福士 すごいよね。生きてんじゃん、私の記録みたいな(笑い)。「みんな、いいねえ」っていう感じです。

女子1万メートル決勝 女子1万メートル決勝 力走する、左から安藤友香、一山麻緒、福士加代子(撮影・上山淳一)
女子1万メートル決勝 福士加代子は3着でゴールする(撮影・上山淳一)

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福士加代子「やるだけ!」東京五輪へ第1関門突破

3着に入った福士はゴール後手を挙げて満面の笑顔を見せる、左は1着の一山(撮影・上山淳一)

<陸上:関西実業団選手権>◇25日◇ヤンマースタジアム長居◇女子1万メートル

東京オリンピック(五輪)で日本陸上界初の5大会連続出場が懸かる福士加代子(38=ワコール)が第1関門を突破した。

25日、ヤンマースタジアム長居で行われた関西実業団選手権女子1万メートルに出場。3月の名古屋ウィメンズマラソンは途中棄権し、同種目の出場権を逃して以来のレースだった。32分17秒65の3位で日本選手権(12月、大阪)の参加標準記録(32分25秒00)を突破し「イエ~イ!」と絶叫した。

5000メートルを超えた中盤で「これは死ぬしかない」と先頭に立ち、引き離されても粘るレースに「どえらいきつい」と苦笑い。日本選手権では五輪参加標準記録(31分25秒00)を突破し、優勝で五輪に内定する。38歳は「(結果的に)なかったらない。やるだけ、やるだけ!」と諦めない。

福士加代子は3着でゴールする(撮影・上山淳一)

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女医ランナー広田有紀 地元新潟で表彰台へ全力疾走

日本選手権での活躍を誓う広田

新潟市開催の陸上日本選手権(10月1~3日、デンカビッグスワンスタジアム)で新潟アルビレックスランニングクラブ(RC)のメンバーが活躍を誓っている。新潟市出身で女子800メートルの広田有紀(25)は自己ベストで県記録の2分4秒33の更新と表彰台(3位以内)を狙う。今春、秋田大医学部を卒業し、医師国家試験に合格した異色ランナー。新型コロナウイルスとの闘いの最前線に立つ医療従事者へ感謝と励ましを込め、全力疾走する。

   ◇   ◇   ◇

広田は笑顔の奥に決意を忍ばせる。「新型コロナ禍の中、地元選手の頑張りで明るいニュースを届けたい」。秋田大2年の時もデンカビッグスワンでの日本選手権を経験している。今春から新潟RCに所属し、その初年度に故郷で2度目のビッグレース参戦。「ありがたいです」と喜ぶ。

今大会の結果が来年のアジア大会代表選考の参考になる。オリンピック(五輪)への1つのステップ。「目標は2分2、3秒台」と自身の持つ県記録の更新を掲げた。クリアすれば3位以内も見える。6月に右アキレス腱(けん)を痛め、超音波治療を施すなどベストな状態ではない。それでも8月のセイコーゴールデングランプリ(東京・国立競技場)で3位。2周目以降の粘りが持ち味だが、日本選手権に向けて1周目からスピードに乗る練習を積んできた。少しずつ成果が出ている。

今春、秋田大医学部を卒業。医師免許を取得した。来年に延びた東京五輪を目指し、卒業後2年間の研修医生活を封印した。同時に医療現場で新型コロナウイルスの終息に向けて働く医療従事者への思いが強くなった。

研修医になった大学の仲間とはオンラインで会話する。さりげない話の後、「頑張って」と励まされる。「勇気を届ける走りができれば」。仲間の頑張りに負けない走りを、飛躍のベースと位置付けた。【斎藤慎一郎】

◆新潟アルビレックスRC出場予定選手 【男子】▽800メートル 林貴裕(23)▽110メートル障害 栗城アンソニー(24)▽400メートル障害 須貝充(26)▽走り高跳び 長谷川直人(23)、佐藤凌(26)▽三段跳び 有松今日(28)▽棒高跳び 松沢ジアン成治(28)▽やり投げ 横堀雅孝(23)▽円盤投げ 高倉星也(24)▽砲丸投げ 佐藤征平(28)【女子】▽800メートル 広田有紀(25)▽円盤投げ 敷本愛(37)▽やり投げ 右代織江(30)

◆広田有紀(ひろた・ゆうき)1995年(平7)5月20日生まれ、新潟市出身。新潟高では女子800メートルで2年時に国体、3年で全国高校総体優勝。秋田大医学部に進み、16年日本選手権4位、昨年のインカレ2位。165センチ、50キロ。

日本選手権に向け、調整する広田

円盤投げ高倉星也「アジア選手権出たい」選考を意識

イメージトレーニングで調整する高倉

新潟市開催の陸上日本選手権(10月1~3日、デンカビッグスワンスタジアム)で新潟アルビレックスランニングクラブ(RC)のメンバーが活躍を誓っている。

男子円盤投げの高倉星也(24=上越市出身)は「記録よりも結果。表彰台を狙う」と目標を明確にした。自己ベストは大会記録で優勝した北陸実業団(5日)での54メートル53。勢いを実感し迎える日本選手権は「アジア選手権に出たい」と選考レースに加わる土台にする。

地元開催にモチベーションは高い。15年のデンカビッグスワンでの開催は標準記録をクリアできず不参加。「ここで結果を出せれば恩返しできる」。上り調子を実感しながら大舞台に臨む。

◆高倉星也(たかくら・せいや)1996年(平8)9月17日生まれ、上越市出身。頸城中では短距離選手。上越総合技術高で円盤投げを始める。3年時にインターハイ4位。新潟医療福祉大に進み、4年時のインカレ5位。昨年の日本選手権は7位。187センチ、120キロ。

走り高跳び長谷川直人 ライバル真野友博の記録意識

男子走り高跳びで上位を目指す長谷川

新潟市開催の陸上日本選手権(10月1~3日、デンカビッグスワンスタジアム)で新潟アルビレックスランニングクラブ(RC)のメンバーが活躍を誓っている。

男子走り高跳びの県記録2メートル25の保持者、長谷川直人(23)はマイナーチェンジをして大舞台に臨む。

これまでスピードに乗った助走から跳躍に入っていたがスピードを抑え、踏み切りに力を込めることを意識。「練習では2メートル30を跳べるようになった」。80キロのバーベルを担ぎ、踏み切りのイメージトレーニングをするなど工夫を重ねてきた。

全日本実業団(20日)では2メートル19で3位。同い年の真野友博(九電工)が日本歴代4位の2メートル31で優勝した。「その記録を意識している」。ライバルへの対抗心が原動力になる。

◆長谷川直人(はせがわ・なおと)1996年(平8)11月15日生まれ、新潟市出身。新発田中央高で走り高跳びを始め、3年時全国高校総体、国体に出場。新潟医療福祉大では17年日本選手権3位、日本学生個人選手権優勝、18年インカレ優勝。178センチ、66キロ。

桐生祥秀「信」接戦必至、日本選手権の抱負を記す

信じることで勝利の女神を引き寄せる-。陸上男子100メートルの桐生祥秀(24=日本生命)は日本選手権(10月1~3日・新潟)の抱負を漢字1文字「信」と記した。

23日、オンラインイベントに登壇。約1週間後に迫った日本選手権では6年ぶり2度目の制覇を目指す。それを実現するためには? 思考を巡らせ、思いを口にした。

「いろんな人を信じ、いろんな人に信じてもらっている。100メートルの最後の5メートル。接戦になった時に、何が大事か。今までやった練習を信じて、最後まで慌てずに走ることが大事。自分を、今までの練習を信じてみる」

日本記録保持者のサニブラウン・ハキームこそ出場を見送ったものの、日本選手権は接戦必至。ライバルたちは調子のピークを合わせてくるだけに、少しのミスが順位を分ける。ただ、今季の桐生は6度走って、10秒0台が実に4度。突出した数だ。大切なのは自分を信じること。それさえできれば、接戦になっても、上体が反る悪い走りにはならない。「しっかり調整して、優勝できるようにしたい。タイムも後から付いてくると思う」。東洋大1年時以来の頂点に立ち、来年の東京オリンピックへ弾みとする。

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寺田明日香「持って帰りたい」愛娘が金メダル熱望

日本選手権の抱負を「きんめだる」と記した寺田

陸上女子100メートル障害で12秒97の日本記録を持つ寺田明日香(30=パソナグループ)が23日、オンラインイベントに登壇し、日本選手権(10月1~3日・新潟)への抱負を語った。

昨年は3位と銅メダルだった。愛娘の果緒ちゃん(6)から「金が欲しい」と言われているという。それだけにママアスリートは「金メダルを持って帰りたい」と意気込んだ。全日本実業団対抗選手権は左太もも裏の違和感で欠場したが、「大丈夫」と万全の様子だった。

先月29日のナイトゲームズ・イン福井の決勝では追い風2・1メートルと惜しくも参考記録の条件ながら、12秒93。しかし、結果は2位で、12秒87を出した青木益未(七十七銀行)に敗れた。日本選手権でもハイレベルな争いが予想される。

ナイトゲームズ・イン福井の予選でも2・3メートルの追い風参考記録ながら、12秒92を出した寺田は「12秒台を出さないと、勝てない試合になると思う。冷静に走って、日本記録を更新し、金メダルを取れれば」と語った。

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競歩岡田久美子「応援を力に」地元埼玉で活躍誓う

地元上尾市でイベントに出演した競歩女子の岡田久美子。フェイスガード付きのマイクでトークを展開した(撮影・奥岡幹浩)

東京五輪の女子20キロ競歩代表に内定している岡田久美子(28=ビックカメラ)が22日、出身地の埼玉県上尾市内で行われたイベントに出演し、1年延期された東京五輪に向けて「メダル獲得できるよう、応援を力に変えたい」と地元ファンの前で活躍を誓った。

昨年5月に、同市のPR大使に任命された岡田。小学生だったころは、「駆けっこが得意で、負けず嫌いな性格だった」と振り返り、学業も「苦手という意識はなく、スポーツするのと同じように勉強も頑張っていたと思う」。

オフの過ごし方について聞かれると、「ワンちゃんが好きなんです」と、猫派ではなく犬派であることを明かし、「ドッグカフェに行ったり、ドッグランを遠目に見たりします」。河川敷などを利用してトレーニングしている際にも、「ワンちゃんを見かけたら目で追っちゃう」と笑った。

競歩のルールについて話題が及ぶと、両足が地面から離れた状態になってしまう「ロス・オブ・コンタクト」や、接地の瞬間に膝が曲がってしまう「ベント・ニー」について、身ぶり手ぶりを交えて丁寧に説明。さらに約10メートルほどの距離を猛スピードで往復するデモンストレーションも披露し、会場から大きな拍手を浴びた。

東京五輪の延期が決まったときには、「悔しいし、残念な気持ちになった」と、正直な気持ちを明かしたうえで、「それでもまた1年強化できると前向きに捉えて頑張っている」。昨年の世界選手権で「やっと6位に入れた。あと3つ順位を上げられれば」と、メダル獲得に意欲を見せた。

今後は来年の元旦競歩出場も視野に入れつつ、2月の日本選手権(神戸)に向けて調整していく。

地元の埼玉県上尾市内のショッピングセンターのイベントに出演し、ファンの前で競歩を“実演”する東京五輪代表の岡田(撮影・奥岡幹浩)

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観客0は困難、ファンのモラル頼み/箱根駅伝Q&A

第96回箱根駅伝、大手町を一斉にスタートする1区の選手たち(2020年1月2日撮影)

来年1月2日、3日の東京箱根間往復大学駅伝は「無観客」で開催することが発表された。それによって考えられる選手や勝負への影響は?

   ◇   ◇   ◇

Q コースは公道なのに「無観客」にできるの?

A 実際にコースと接した場所で生活している人もいますし、本当の意味で観客0人というのは、現実的に難しいです。過去の事例で言えば、3月の東京マラソン、名古屋ウィメンズマラソンとも、沿道の応援自粛が呼び掛けられていましたが、それぞれ7万人、2万5000人が集まりました。例年よりはずっと少ないですが、人垣ができた場所もありました。ファンの方のモラルに依存する部分が大きいのです。

Q テレビ中継は?

A いつも通り日本テレビ系列で生中継されます。

Q 10月17日の箱根駅伝の予選会はどうするの?

A 東京・自衛隊立川駐屯地の周回コースに変更となりました。一般人が入れない駐屯地内に制限されることで、完全な無観客の選考会が実現しました。従来は同駐屯地から市街地を抜け、昭和記念公園にゴールで、多くのファンや大学関係者が応援に来ていました。距離は例年同様にハーフマラソンを走り、各校上位10人の合計タイムで争い、上位10校が出場権を獲得する方式は変わりません。

Q 出雲駅伝や全日本大学駅伝は?

A 残念ながら、出雲駅伝は中止が決まりました。大会を支えるボランティアは、多くが重症化リスクの高い65歳以上のため、コロナ禍での運営の安全性を考慮した判断でした。11月1日の全日本大学駅伝は開催へ向けて準備を進めています。ただ開会式、閉会式は行わず、走り終えた選手もゴール伊勢神宮に向かわない新様式で実施されます。

Q 陸上の大会でクラスターが発生した例は?

A 一部で有観客の大会も始まりましたが、東京マラソンや名古屋ウィメンズマラソンも含め、現時点では確認されていません。

Q 箱根駅伝は多くのマスコミが集まりますよね?

A 新聞や雑誌の記者は密を避けるために、基本的に往路ゴールの芦ノ湖に行けず、リモート取材になる可能性が高いようです。

第96回箱根駅伝、戸塚中継所手前で力走する東洋大2区相沢晃(奥)(2020年1月2日撮影)

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日本選手権100mに桐生、ケンブリッジ飛鳥ら登録

ケンブリッジ飛鳥(20年8月撮影)

日本陸連は21日、日本選手権(10月1~3日、新潟)のエントリー選手を発表し、男子100メートルは桐生祥秀(日本生命)小池祐貴(住友電工)ケンブリッジ飛鳥(ナイキ)山県亮太(セイコー)多田修平(住友電工)飯塚翔太(ミズノ)らが名を連ねた。

決勝は2日午後8時半の予定。日本記録を持つ前回短距離2冠のサニブラウン・ハキームは出場しない。長距離種目の日本選手権は12月に行われる。今年の日本選手権は新型コロナウイルスの影響で6月から延期された。

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神野大地が語る箱根5区…無観客で気持ちを保てるか

神野大地(2019年3月3日撮影)

来年1月2日、3日の東京箱根間往復大学駅伝は「無観客」で開催することが発表された。それによって考えられる選手や勝負への影響は? 青学大3年時に山登りの5区で区間新記録を樹立し、「3代目山の神」と呼ばれ、現在はプロランナーとして活躍する神野大地(27=セルソース)に話を聞いた。【取材・構成=上田悠太】

   ◇   ◇   ◇

神野は、「無観客」とはいえ大会が開催されることを喜んだ。そもそも開催可否が心配されていた。

神野 学生は同じメンバーで1年しか戦えない。4年生は最後の箱根。来年はない。この状況では開催されることが最重要なので。

コロナなど存在しなかった時-。何度も声援に支えられたことを覚えている。

神野 箱根のように20キロ走れば、きつくなる時がある。でも家族やチームメート、ファンの声で諦められない気持ちになった。

ただ、今の社会情勢を考えると、沿道に人を集めるわけにはいかない。「全員が同じ条件。与えられた中で、選手がベストを出せる準備をすることが一番大事」と強調する。

箱根駅伝は例年、5区の山登りが大きく勝敗を左右する。「無観客」になれば、その流れは、より顕著となる可能性も指摘する。

神野 5区は選手の力量、調子の良しあしで、いつも以上にタイム差が生まれるかもしれない。山は気持ちが切れたら、終わり。立て直すことができない。気持ちを保つ要素に応援は大きいですから。今、5区を振り返れば、僕も応援がなかったら、苦しかった。

異例のシーズン。どんな選手が力を発揮できるか。

神野 出雲駅伝も中止で、モチベーション維持が難しい時期もあったはず。その中で日々、淡々と変わらぬ努力をしてきた選手が結果を出せる大会なのかな。

ロードレースは中止が相次ぐ。それは観客が密になる恐れも一因にある。

神野 応援に行かないことが、一番の応援になる。陸上選手の職場を失わせないためにも、コロナが消えるまで、決められたルールの中で応援をお願いします。

箱根駅伝の影響力は大きい。陸上界に日常を取り戻すため、ファンがモラルを示すことも重要になる。

◆神野大地(かみの・だいち)1993年(平5)9月13日生まれ、愛知県津島市出身。神守中-中京大中京-青山学院大。箱根駅伝は2年時に2区で区間6位。3年は5区で区間新記録でチームの初Vに貢献し、山の神を襲名。故障に苦しんだ4年時も5区で区間2位。卒業後はコニカミノルタを経て、18年5月にプロに転向。マラソン自己記録は18年東京の2時間10分18秒。昨年9月の東京五輪代表選考会マラソン・グランドチャンピオンシップにも出場。165センチ、46キロ。

16年1月2日、第92回箱根駅伝往路優勝し指を突き上げゴールする青学大5区神野大地
前年度の箱根駅伝、箱根神社・大鳥居を通過する青学大5区飯田(2020年1月2日撮影)

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無観客箱根の応援自粛文書は「加盟校向け」関東学連

関東学生陸上競技連盟が出した応援自粛要請

来年1月2日、3日の東京箱根間往復大学駅伝は「無観客」で開催することが発表された。それによって考えられる選手や勝負への影響は?

   ◇   ◇   ◇

箱根駅伝を主催する関東学生陸上競技連盟の日隈広至副会長は、今回の「競技会での応援等の自粛」との発表文書について、「加盟校に向けたもので、ファンの方に対するものではありません」と述べた。19日、加盟校にはメールで通達していた。加盟校が多く、一部には届かない可能性もあるため、20日にウェブサイトに掲載したという。文章には「加盟校各位」と記されている。

ウェブサイトでの公開が20日夜だったのも、これが理由。「メディア向けの発表は、余裕を持って朝刊等に間に合うように、多くは(午後)3時ごろに発表するよう心掛けています。ただ、今回は加盟校へ向けたものだったので、そうはしませんでした。(夜アップの)意図は、まったくありません」と話した。

今回の文書は加盟校に対するものとはいえ、その中には「無観客」と記されている。「一般の方にお願いをする前に、まずは当事者である加盟校や関係者に自律ある行動を求めないといけない」。箱根駅伝に関するファンへ向けた沿道のお願いは今後、具体的に内容を詰めていく。時期は未定だが、決まり次第、発表する方針という。

第96回箱根駅伝、声援を受けゴールに向かう青学大10区の湯原(2020年1月3日撮影)

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箱根駅伝など無観客開催「自律ある行動」学連が促す

関東学生陸上競技連盟が出した応援自粛要請

関東学生陸上競技連盟は20日、本年度の主催大会について、無観客開催と応援自粛の要請を発表した。主催大会には来年1月2日、3日の第97回東京箱根間往復大学駅伝(箱根駅伝)も含まれる。チケット制ではないロードレースは、沿道の観戦に関する規制が難しいが、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、自粛を促した。正月の風物詩は2日間で沿道に100万人以上の見物客が集まるとされる。

   ◇   ◇   ◇

正月の風物詩・箱根駅伝の応援自粛要請が出された。関東学生陸上競技連盟はこの日、ホームページで主催大会について「競技会場はもとより会場周辺への来訪も控えていただくよう要請をお願いします」と発表した。毎年、沿道には往路、復路で100万人以上が集まるが、一般のファンはもちろん各大学の応援団、OBや選手の家族にも応援自粛を求めた。

理由は新型コロナウイルスの感染予防のため。ロードレースは公道を使用するため、完全に人の出入りを制限はできない。しかし、今の時代には少しでも密を避ける必要がある。「駅伝競走開催においても沿道の地元住民の方々のご理解とご協力がなくては成立しません。これまで、駅伝競走は沿道で応援していただく皆様に育てられてきました。これからも、末永く愛される駅伝競走でありたいと思っておりますので、ぜひともご理解ご協力をお願いします」とした。今回は「応援に行かない」という「応援の形」が求められる。

未知のコロナウイルスの猛威は広がり、大学3大駅伝の初戦である出雲駅伝を含め、多くのロードレースが中止になっている。例年通りの開催はできないが、中止を避けるため、開催へ向けて、最大限の努力をした形でもある。

ロードレースを巡っては、今年3月の東京マラソンや名古屋ウィメンズマラソンでも応援の自粛が求められていた。沿道は例年と比べれば、人の数は減ったものの、東京マラソンには約7万人が集まっていた。クラスターが発生すれば、今後のスポーツイベントにも影響は大きい。強く「自律ある行動」を促した。

10月の箱根駅伝予選会も、コースを変更し、無観客の開催となった。また11月の全日本大学駅伝では例年、走り終えた選手がゴール地点の伊勢神宮へ向かっていたが、今年は、それもしない方向で調整している。

前年度の箱根駅伝、箱根神社・大鳥居を通過する青学大5区飯田(2020年1月2日撮影)

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出場校の応援、家族も応援自粛/関東学連の発表文書

関東学生陸上連盟が出した応援自粛要請

関東学生陸上連盟は20日、本年度の主催大会について、無観客開催と応援自粛の要請を発表した。主催大会には来年1月2日、3日の東京箱根間往復大学駅伝(箱根駅伝)も含まれる。チケット制ではないロードレースは、沿道の観戦に関する規制が難しいが、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、自粛を促した。正月の風物詩は2日間で沿道に100万人以上の見物客が集まるとされる。

   ◇   ◇   ◇

関東学生陸上競技連盟としての自粛事項

(1)今年度の主催競技会すべて無観客として開催します(必要最小限の人数で運営します)。なお、競技会の模様はそれぞれWebを通してのライブ配信や、日本テレビで生中継や録画放送することを予定しています。

(2)競技会場への来場は出場選手の他は必要最小限の人数に抑えます。

(3)出場校の応援団など、集団による応援は行いません。また、運営上必要なもの以外に、大学名を示すのぼりや小旗の配布なども行いません。

(4)OB、OG、大学関係者、同窓会組織、選手のご家族などにも、応援自粛を要請します。

(5)競技会場および周辺では、主催者が認めている観客サービス(大会公式プログラムやグッズ等の販売活動)は行いません。

(6)競技会場および周辺では、運営に必要ではないすべての配布物を禁止します(新聞社の小旗や号外、大学新聞、協賛社関連配布物等)。

(7)開会式、閉会式、表彰式などの式典は、極力縮小するか行わないこととします。(以上、原文まま)

関東学生陸上連盟が出した応援自粛要請
関東学生陸上連盟が出した応援自粛要請

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箱根駅伝は無観客で実施発表、ファンに協力要請

前年度の箱根駅伝(20年1月2日)

関東学生陸上連盟は20日、箱根駅伝を含めた本年度の主催大会をすべて無観客で実施すると発表した。

有吉正博会長の名義で応援自粛に関する要請を出し「公道を使用して実施させていただく駅伝競走においては、競技場での開催とは異なり決められた出入口での入退場のコントロールができません。(中略)これからも、末永く愛される駅伝競走でありたいと思っておりますので、是非ともご理解ご協力をお願いします」などとファンに協力を求めた。OBや大学関係者、選手の家族らにも応援自粛を要請した。

前年度の箱根駅伝(20年1月2日)

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坂東悠汰が日本人最高4位 自己記録で上々滑り出し

男子5000メートルで日本人1位でゴールし、手をたたく坂東(撮影・鈴木みどり)

<陸上:全日本実業団対抗選手権>◇最終日◇20日◇埼玉・熊谷スポーツ文化公園陸上競技場◇男子5000メートル

坂東悠汰(23=富士通)が自己最高の13分22秒60をマークし、日本人最高の4位となった。3位との差はわずか0秒18差。左足を骨折した影響などで実戦から遠ざかっていたが、待望の今季初戦で上々の滑り出しを見せた。

法大から富士通入りして2年目。チームは昨年、ニューイヤー駅伝の連続出場が途切れた。巻き返しを期す今シーズン。ルーキーも加わる中で、「若手の僕たちがいちばん元気がある。後ろから刺激を与えることで、チームがレベルアップできれば」。駅伝での活躍も誓った。

男子5000メートルで日本人1位の坂東(右)(撮影・鈴木みどり)
男子5000メートルで日本人1位の坂東(撮影・鈴木みどり)

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新谷が日本歴代2位「引っ張ってくれた」広中に感謝

女子5000メートルで日本人1位の新谷(右)と同2位の広中はお互いをねぎらう(撮影・鈴木みどり)

<陸上:全日本実業団対抗選手権>◇最終日◇20日◇埼玉・熊谷スポーツ文化公園陸上競技場◇女子5000メートル

陸上の全日本実業団対抗選手権最終日が20日、埼玉・熊谷スポーツ文化公園陸上競技場で行われ、女子5000メートルでは、新谷仁美(32=積水化学)が日本歴代2位となる14分55秒83秒で日本勢最高の2位に入った。3位の広中璃梨佳(19=日本郵政グループ)も日本歴代3位の14分59秒37。これまで「15分の壁」を突破した日本人女子は日本記録(05年)を持つ福士加代子(38=ワコール)だけ。一気に2人が大台を突き抜けた。

   ◇   ◇   ◇

新谷が自覚する「弱いメンタル」に打ち勝った。残り1周は必死の形相で腕を振った。ゴールすると、これまで福士加代子だけだった「15分の壁」を、ともに突破した3位の広中と握手し、抱擁を交わした。新谷は「広中さんが前半を1周72秒ペースで引っ張ってくれた。彼女がいなかったら、14分台はなかった」と13歳年下のライバルに感謝した。

14年1月に電撃引退。一時は体重が13キロも増えたというOL生活を経て、18月6月にプロとして復帰した。「分かりやすく結果で表現するのであれば、メダルしかない。例え不可能と言われていても、それを可能にするために私たちはいる」と言い切る。本職は13年世界選手権で5位に入った1万メートル。すでに東京オリンピック(五輪)に向け、5000メートルと1万メートルの参加標準記録を突破済み。五輪の長距離トラック種目でメダルを獲得した日本人はいない。常識も記録も塗り替え、その1点を目指す。

○…東京五輪参加標準記録を突破している5000メートルで、広中が存在感を示した。序盤から果敢にレースを引っ張り、中盤以降は新谷に懸命に食らいついた。日本歴代3位の好タイムで3位。「新谷さんの大きな背中についていけたことは収穫」。2日前には3000メートルで自己ベストを更新。キャップ(帽子)がトレードマークの19歳は、まさに伸び盛りだ。

女子5000メートルで日本人1位の新谷(左)と同2位の広中は笑顔でピース(撮影・鈴木みどり)
女子5000メートルで日本人1位の新谷(右)と同2位の広中(左)(撮影・鈴木みどり)

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広中璃梨佳も「15分の壁」突破 新谷と激戦3位

女子5000メートルで日本人2位でゴールする広中。手前は同1位の新谷(撮影・鈴木みどり)

<陸上:全日本実業団対抗選手権>◇最終日◇20日◇埼玉・熊谷スポーツ文化公園陸上競技場◇女子5000メートル

東京五輪参加標準記録を突破している5000メートルで、広中璃梨佳(19=日本郵政グループ)が歴代3位となる14分59秒37の好タイムをマーク。この日、熱戦を繰り広げた新谷仁美(積水化学)とともに、05年福士加代子(ワコール)以来15年ぶりとなる「15分台の壁」を乗り越えた。

数字だけでなく、内容も濃かった。序盤から果敢に主導権を握る展開。中盤に新谷に先頭を譲ったあとも食らいつき、ムワンギ・レベッカ・ジェリとの優勝争いを繰り広げた。最後は力尽きて3位となったが、「新谷さんの大きな背中についていけたことは収穫」。自らの成長と手応えを感じている様子だった。

2日前には3000メートルで自己ベストを更新し、「それが自信になった」。伸び盛りの19歳は、1年後、そしてその先へ向け、さらなる成長曲線を描いていく。

【奥岡幹浩】

女子5000メートルで日本人1位の新谷(左)と同2位の広中は笑顔でピース(撮影・鈴木みどり)
女子5000メートルで日本人1位の新谷(右)と同2位の広中はお互いを労う(撮影・鈴木みどり)

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飯塚翔太2年ぶりV「刺激し合い」陸上界盛り上げる

男子200メートルで優勝した飯塚(右)(撮影・鈴木みどり)

<陸上:全日本実業団対抗選手権>◇最終日◇20日◇埼玉・熊谷スポーツ文化公園陸上競技場◇男子200メートル決勝

16年リオデジャネイロ五輪男子400メートルリレー銀メダリストの飯塚翔太(29=ミズノ)が20秒47(追い風1・2メートル)で2年ぶり3度目の優勝を果たした。

カーブをリラックスして曲がり、直線に入ると、しっかり伸びた。中盤以降に動きが小さくならないことを意識し、2位の北川翔(渡辺パイプ)に0秒61、3位の白石黄良々(セレスポ)に0秒72の差。貫禄を見せつけた。「緊張感のあるレースだった。優勝はうれしい。また勝てるように頑張りたい」と笑顔を見せた。その上で「60メートルまでのタイムも上げることが、大きなタイムにつながる」。前半の強化に課題とした。

近年は本職の200メートルだけでなく、100メートルも力を入れる。スピード向上や細かい技術を突き詰めて、相乗効果での成長を目指している。日本選手権(10月1~3日・新潟)にも両種目に出場予定。「気持ちは日本選手権へ持っている。まだまだ上げられる。両方いいレースができるように」。また、みんなで日本陸上界を盛り上げたい気持ちも強い。「パフォーマンスを通じ、刺激し合いながらやりたい。(不調で)記録が出ない人にもエネルギーを発せられるような走りをしたい」と力を込めた。【上田悠太】

男子200メートルで優勝した飯塚(右)(撮影・鈴木みどり)
男子200メートルで優勝し花束を手に笑顔の飯塚(撮影・鈴木みどり)
男子200メートルで優勝した飯塚は花束を手にガッツポーズ(撮影・鈴木みどり)

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大石沙也加が女子200m連覇 全日本実業団対抗

女子200メートルで優勝した大石(撮影・鈴木みどり)

<陸上:全日本実業団対抗選手権>◇最終日◇20日◇埼玉・熊谷スポーツ文化公園陸上競技場◇女子200メートル決勝

大石沙也加(セレスポ)が追い風0・6メートルの条件下、23秒85で連覇を果たした。

「日本選手権で今よりもいい記録を出せるように頑張りたい」と振り返った。17年の日本選手権予選で左アキレス腱(けん)を断裂。支えてくれた「会社の方や周りの方に恩返しをしたい気持ち」で競技を続けている。自己記録は故障前の15年に出した23秒81。「ここまで戻ってこられたので、あとはしっかり自己ベストを出したい」と話した。

旧姓は藤沢。今年5月に結婚した事を明かし、「公私ともに支えてもらえっている。新しい名字でも頑張りたい」と笑顔を見せた。得意料理はロールキャベツだという。

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走り高跳び真野友博が連覇、自己記録を3センチ更新

男子走り高跳びで優勝した真野(撮影・鈴木みどり)

<陸上:全日本実業団対抗選手権>◇最終日◇20日◇埼玉・熊谷スポーツ文化公園陸上競技場◇男子走り高跳び

男子走り高跳びで、真野友博(24=九電工)が日本歴代4位タイとなる2メートル31で連覇を達成した。

自己記録を3センチ更新。後のない3回目の挑戦で、見事にバーを越えた。「(2メートル)30以上を跳べたことは非常にうれしい」と喜んだ。2メートル33は失敗だったが、「33に関しても意外と高さは感じなかった。合わせていけば33も飛べる高さに感じた」。助走の歩数を変えたことが功を奏しており、言葉からも手応えがにじみ出る。

「自分はメンタルは弱い方」と言う。過去には試合で精神面の影響から「足がつったりする」こともあったほどだ。今は「試合を楽しむ気持ち」を大事にする。拠点である福岡での開催だった昨年の日本選手権では記録なしに終わった。かなり落ち込んだが、周囲の励ましに支えられた。それで「頑張ろう」と前向きになったという。周囲の支えが競技のモチベーションになっている。

広島・山陽高から福岡大を経て、九電工に入った。今後は東京五輪の参加標準記録2メートル33が目標。「その先に日本記録を視野に入れてやりたい」。戸辺直人(28=JAL)が持つ日本記録2メートル35を見据えた。【上田悠太】

男子走り高跳びで優勝し、声援に応える真野(撮影・鈴木みどり)
男子走り高跳びで優勝し、花束を手に笑顔の真野(撮影・鈴木みどり)

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高山峻野が男子110m障害V 全日本実業団対抗

男子110メートル障害で優勝した高山(左)(撮影・鈴木みどり)

<陸上:全日本実業団対抗選手権>◇最終日◇20日◇埼玉・熊谷スポーツ文化公園陸上競技場◇男子110メートル障害

ライバル不在となった決勝で高山峻野(ゼンリン)が貫禄を示し、13秒51で優勝。「スタートが1台目からぐたぐたで、後半もタレてしまった」。開口一番、反省の弁を並べたが、口ぶりは滑らかだった。

予選で大会新となる13秒38をたたき出した金井大旺(ミズノ)が、状態や今後の調整など重視して決勝を棄権。それを聞いた高山は、「うれしくて気楽に走れた」とぶっちゃけトーク。「金井君はスタートが速いから、同じレースに走る選手はみんな嫌。前に出られると自分のプランで走れないから。金井君が出ないとアップ場で知ったとき、みんな喜んでいた」。冗談交じりに舞台裏の選手たちの様子を振り返った。

こうしたトークを繰り広げるのも、年下のライバルの実力を認め、敬意を抱いているからこそ。日本選手権(新潟、10月1日開幕)では、この日は実現しなかった直接対決が濃厚で、「まずは金井君についていくことが目標」。世界トップレベルでの活躍を期待する声に対しても、「このままでは難しい。まずは金井選手に頑張ってもらい、そこについていくことで自分も高められれば」。ライバルを持ち上げつつ、自身の飛躍を期していた。

【奥岡幹浩】

男子110メートル障害で優勝した高山は表彰式でなぜか寄り目を披露(撮影・鈴木みどり)

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日本選手権で倍返し&恩返しだ!青木100M障害V

女子100メートル障害で優勝した青木(撮影・鈴木みどり)

<陸上:全日本実業団対抗選手権>◇最終日◇20日◇埼玉・熊谷スポーツ文化公園陸上競技場◇女子100メートル障害決勝

倍返し&恩返しだ! 七十七銀行の青木益未(26)が13秒13(無風)が2年ぶり3度目の優勝を果たした。

18年ジャカルタ・アジア大会代表の“バンカー”は7人の“敵”との争いを制した。「安定して13秒1台を出せたのはよかった。日本選手権で勝負できるようにしたい」と力を込めた。

その日本選手権(10月1~3日・新潟)は昨年2位。“倍返し”を狙っている。「それができれば気持ち良くシーズンを終われる。できればいいですね」と笑った。やられたら、やり返す-。その精神だ。

アスリートとしての活動“資金”元である七十七銀行では「事務センター」で月に1度ほど業務を行う。為替レートの数字を打ち込む作業などを担うという。銀行に所属する者として、もちろんドラマ「半沢直樹」もチェックする。「すごく大げさだなと思います。でも、もしかしたら(現実も)、あんな風に上はドロドロしているのかな」と笑った。

“出向”して、力を付けた。冬から男子の日本記録を持つ高山峻野(26=ゼンリン)に“おねしゃす”と頼み込み、一緒に練習を始めた。アスリートは体が“資本”。今までより技術面の突き詰め、ハードリングを“再建”した。昨季までの自己ベストは13秒15だったが、今季は数字が“インフレ”中。得意にスプリントの力にも磨きがかかり、8月23日には13秒08を出し、同29日には追い風2・1メートルと惜しくも参考記録ながら、12秒87をマークした。陸上界での立ち位置も“出世”した。

施されたら、施し返す-。“恩返し”したい人もいる。「所属の課長、監督」を挙げ「応援してくれている。結果が恩返しができたらいい」。ドラマ「半沢直樹」では憎い上司もたくさん出てくるが、青木には頼りになる人が多いようだ。

東京オリンピック(五輪)の参加標準記録は12秒84。半沢直樹よろしく“難題”を突き付けられているが、痛烈に乗り越えていく。

【上田悠太】

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新谷仁美が福士以来14分台、電撃引退OL生活経て

女子5000メートルで日本人1位の新谷(右)と同2位の広中(左)(撮影・鈴木みどり)

<陸上:全日本実業団対抗選手権>◇最終日◇20日◇埼玉・熊谷スポーツ文化公園陸上競技場◇女子5000メートル

1度は引退した新谷仁美(にいや・ひとみ=32、積水化学)が日本歴代2位の14分55秒83秒を出した。福士加代子(38=ワコール)が05年に出した日本記録14分53秒22には及ばなかったが、日本人女子では2人目となる「15分の壁」を突破した。

まず新谷は前半を1周72秒の安定したペースで引っ張った広中璃梨佳(19=日本郵政グループ)に感謝を述べ、「それが14分台に入れたポイントだった。彼女がいなかったら、14分台はなかった」と言った。「いろんな世界で戦い抜いた先輩」と尊敬する福士に続くタイム。「私だけでなく、日本記録に挑戦できる選手が多くいる。福士さんのためにも塗り替えたい」と話した。

12年ロンドン五輪代表で、13年世界選手権では5位と大健闘した新谷は、14年1月に電撃引退。一時は体重が13キロも増えたというOL生活を経て、18月6月にプロとして復帰した。丸4年のブランクがあったが、その間に踵などの故障が癒え、快走を続けている。復帰後にはハーフマラソン日本記録を樹立しただけでなく、5000メートルでも自己ベストを更新。歯に衣(きぬ)きせぬコメントもさえ渡っている。

現在は12年ロンドン五輪男子800メートル代表の横田真人氏の指導を受け、すでに東京オリンピック(五輪)の参加標準記録は5000メートルと1万メートルの2種目で突破している。さらに進化を続けていく。

3位だった広中も日本歴代3位となる14分59秒37の好記録だった。

女子5000メートルで日本人1位の新谷(左)と同2位の広中(左から2人目)(撮影・鈴木みどり)

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卜部蘭800制し2冠「会社の代表」積水所属初年

女子800メートルで優勝した卜部(撮影・鈴木みどり)

<陸上:全日本実業団対抗選手権>◇最終日◇20日◇埼玉・熊谷スポーツ文化公園陸上競技場◇女子800メートル

卜部蘭(積水化学)が800メートルを2分5秒26で駆け抜け、18日の1500メートルに続く2冠目を手にした。今年から所属先が変わって臨んだ今大会で活躍。「会社の代表の気持ちでいたので、嬉しい」と笑顔を浮かべた。

レース中盤、内側のポジションにいたことで前に出られない場面もあったが、落ち着いて対応。「レースの流れを意識して走れた」と振り返った。

冬場に向け、駅伝での活躍も期待される。「自分がイメージしたものを、レース1本1本で再現していきたい。そうすることで、駅伝にもつなげられれば」。幅広い距離で存在感を示していく。

女子800メートルで優勝した卜部(右から2人目)(撮影・鈴木みどり)

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安部孝駿が400障害3年ぶりV「上を目指したい」

男子400メートル障害で優勝した安部(左)(撮影・鈴木みどり)

<陸上:全日本実業団対抗選手権>◇最終日◇20日◇埼玉・熊谷スポーツ文化公園陸上競技場◇男子400メートル障害

世界選手権4度出場の安部孝駿(28=ヤマダ電機)が49秒38で3年ぶり3度目の優勝を果たした。

大きなストライドを生かし、前半から積極的に出て、リードを奪った。課題の中盤も「悪いなりにまとめられた」。調子はよくなかったというが、最後まで失速は最小限に抑えた。得意の先行策で、2位小田将矢(豊田自動織機)に0秒80差をつける圧勝。「非常にうれしい」と振り返った。

すでに東京オリンピック(五輪)の参加標準記録は突破済み。昨秋の世界選手権(ドーハ)準決勝では全体10番目のタイムだった。上位8人の決勝進出も十分に狙えるハードラーだ。「世界のトップはすごくレベルが高いが、4番以降は狙えない位置ではない。諦めずにさらに上を目指したい」。16年リオデジャネイロ五輪の前には故障に苦しみ、かみ合わない時期が続いたが、東京五輪へ向けては充実の日々を重ねている。

日本選手権(10月1~3日・新潟)ではコンディションを整え、連覇を目指す。「記録を狙い、優勝して東京オリンピックにうまくつなげられるようにしたい」と意気込んだ。

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宇都宮絵莉400障害圧勝「前半に楽に加速できた」

女子400メートル障害で優勝し、声援に応える宇都宮(撮影・鈴木みどり)

<陸上:全日本実業団対抗選手権>◇最終日◇20日◇埼玉・熊谷スポーツ文化公園陸上競技場◇女子400メートル障害決勝

宇都宮絵莉(27=長谷川体育施設)が58秒12をマークし、2位に0秒92差をつけて圧勝した。

今季初戦となった8月のセイコー・ゴールデングランプリでは5位。インターバルの歩数配分を変更したことが影響して思うような結果を残せなかったが、この日はそれを元に戻し、「前半に楽に加速できた」。しっかり修正して結果を出し、日本選手権(新潟、10月1日開幕)に弾みをつけた。

7種競技でも国内トップクラスの実力を持つ万能アスリート。いまは東京オリンピック(五輪)出場を目指し、ハードルレースに注力している。

女子400メートル障害で優勝した宇都宮(左)(撮影・鈴木みどり)

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草野誓也が100M優勝、ルイス育てた名将の助言で

<陸上:全日本実業団対抗選手権>◇第2日◇19日◇埼玉・熊谷スポーツ文化公園陸上競技場◇男子100メートル決勝

成長を続けるベテランスプリンターが存在感を示した。草野誓也(32=アクセル)が10秒30(追い風1・2メートル)で優勝。雨が降り、気温が冷え込む条件のなかで力強く走り抜けた。白石黄良々(セレスポ)らを振り切り、「自信をつかむことができた」。

32歳にして右肩上がりの成長曲線を描いている。昨年には、順大時代に出した自己ベストに並ぶ好タイムを9年ぶりにマーク。今年に入ってさらに記録を伸ばし、8月下旬には自己最高の10秒28をたたき出すと、この日もそれに迫るタイムを計測。「まだまだ成長できると思っている」と笑顔で話す。

今年2月に渡米し、名将テレツ・コーチから指導を受けたことが、躍進の要因のひとつになっている。あのカール・ルイスらを育てた名将から「15メートル先の地面を見るようにしろ。それがお前のポジションだ」とのアドバイスを受け、走行時の姿勢を矯正。「どうすればスムーズに走れるかが見えてきた」と手応えを口にする。

次戦は日本選手権(新潟、10月1日~3日)。「米国で教えてもらったことを、今後も継続していきたい」。伝統の舞台で、さらなる飛躍を期す。

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服部勇馬1万メートル自己ベスト スピード成果示す

男子10000メートルで力走する服部(撮影・鈴木正人)

<陸上:全日本実業団対抗選手権>◇第2日◇19日◇埼玉・熊谷スポーツ文化公園陸上競技場◇男子1万メートル

東京オリンピック(五輪)男子マラソン代表・服部勇馬(26=トヨタ自動車)が強化に取り組むスピードの成果を示した。1万メートルで27分47秒55の自己ベストを出した。

残り1周で鈴木健吾(25=富士通)とのスパート合戦を制した。外国人の実業団ランナーには先着を許したが、堂々の日本人トップだった。

「タイムに関しては満足」と振り返った。7月15日のホクレン・ディスタンスチャレンジ網走大会1万メートルで自身初の28分切りとなる27分56秒32を出した。この日は「(月間)1000キロぐらい走り込んだ。位置付けとしては練習の一環」だったのに、それを9秒ほど上回った。

言葉の端々にも手応えと自信がにじんでいる。

「スピード持久力を磨き、(マラソンで2時間)4分、3分台を出せる選手になりたい。5分、6分以上を目指すには、1万メートル、ハーフマラソンでのスピードの絶対値を上げる。それが求められる」

「2、3年前に比べると、5分、6分は身近に感じられる。5分台を達成した時に、目標を見失わないように、4、3分台という目標設定をしている」

現在のマラソンの自己記録は2時間7分27秒だが、ごく自然と5分台や6分台という言葉が出てくる。それはスピードに対する自信が出てきたことの証しである。

今後は「年末にマラソンに出たい」と言う。培ったスピードを42・195キロに生かしていく。【上田悠太】

男子10000メートル3組で日本人1着になった服部(撮影・鈴木正人)

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京大出身の山西利和が日本新でV「想定の範囲内」

男子5000メートル競歩で日本新記録を出し時計の前でガッツポーズする山西(撮影・鈴木正人)

<陸上:全日本実業団対抗選手権>◇第2日◇19日◇埼玉・熊谷スポーツ文化公園陸上競技場◇男子5000メートル競歩決勝

男子競歩20キロで東京オリンピック(五輪)の代表に決まっている山西利和(24=愛知製鋼)が、5000メートルを18分34秒88の日本新記録で優勝した。従来の記録は鈴木雄介の18分37秒22だった。

日本記録を更新しても、山西に浮かれた素振りはなかった。「いまの地力なら、コンディションが整えば(日本新は)出るとわかっている。想定の範囲内のタイム」と、京大出身の知性派アスリートは冷静に分析。「3秒程度しか更新できなかった。いまの競歩界のレベルなら、誰でも超えることができるような記録」と満足していない。

冷たい雨が降るなか、自らレースを引っ張った。残り4000メートル付近からは、同じく東京五輪20キロ代表の高橋英輝(富士通)とのマッチレースに。残り2500メートル付近から高橋との差を広げにかかり、その後は一人旅となった。

世界選手権金メダリストは、1年後に延期された東京五輪だけでなく、さらにその先も見据えながら競技に取り組んでいる。「東京だけを見ていたら、東京では勝てない。その先の世界陸上や、パリ五輪まで勝ち続けていくぐらいのイメージを持つことが、結果的に東京で活躍できる近道になる」。

この日の日本記録はあくま通過点と捉えるが、手応えをつかむレースとなったことは間違いない。「20キロの世界記録は射程内に入ってきている」。クールな口ぶりに、強い自信が溢れた。【奥岡幹浩】

男子5000メートル競歩で日本新記録を出した山西(撮影・鈴木正人)

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