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勝負優先の五輪マラソン、暑さが日本選手の味方に?

勝負優先の五輪マラソン、暑さが日本選手の味方に?

両手を広げて優勝のゴールテープを切る中村匠吾(2019年9月16日撮影)

東京オリンピック(五輪)は「暑さ対策」が大きなテーマだが、マラソンに関して言えば暑さが日本の味方になる可能性は高い。高速化で多くのマラソン大会は2時間3、4分台の争いになっているが、暑さによって優勝タイムが大幅に下がるのは確実。タイムより勝負優先の五輪で30度を超す猛暑になれば、優勝タイムは2時間10分を大きく下回るはずだ。

このタイムなら、日本選手にもチャンスはある。世界のトップに君臨するケニア、エチオピア勢が慣れない蒸し暑さで失速する可能性もある。五輪本番ほどではないにしろ、暑さの中で結果を出した中村匠吾らには期待がかかる。日本陸連マラソン強化戦略プロジェクトの瀬古利彦リーダーは「現実的に考えれば男子は入賞狙い」と言いながら「メダルを狙うことは大切。そのためにMGCをやったのだから」と話す。想定外の暑さが、想定外の結果を生むかもしれない。

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中村匠吾が誕生日に誓った五輪銅 根拠と課題は明確

プレゼントされた誕生日ケーキを前に笑顔を見せる中村(撮影・横山健太)

新国立競技場に日の丸を掲げる。男子の「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」で1位になった中村匠吾(27=富士通)がレースから一夜明けた16日、代表に内定した20年東京オリンピック(五輪)で銅メダル獲得を目標に掲げた。日本男子の表彰台は92年バルセロナ五輪銀メダルの森下広一以来、遠ざかる。自国開催の五輪。持ち味である暑さの耐性、終盤のスパートを生かし、低迷が続く日本マラソン界の希望の光となる。

   ◇   ◇   ◇

27歳バースデーの壮大な誓いだった。この日が誕生日の中村は、記念のケーキを日本陸連などからサプライズで贈られた。照れくさそうに笑い、ロウソクの火を吹き消した。内定を決めた1年後の大舞台の抱負を聞かれると、寡黙な男は決意をにじませた。

中村 数年の五輪や世界選手権をみると、1位と3位の選手は多少の差がある。3位は十分狙える隙がある。昨日のような勝負を作れれば、銅メダルに届く可能性はあると思う。

色を銅とするのは、控えめでなく、現実的に見つめる証し。エリウド・キプチョゲ(ケニア)が持つ世界記録は2時間1分39秒。マラソン12戦11勝という異次元な34歳が、五輪に出てくれば、さすがにかなわない。しかし、他は大きく実力差は開いていない。状況は厳しいと分かった上で条件、展開に恵まれれば、チャンスは見いだせる。

根拠はある。まず暑さへの耐性。体にたまった熱を外に逃がすことに優れる天性の体質を持つ。だから、28度以上になったレースも「天候にも恵まれた」と笑う。もちろん対策を怠るつもりはない。「本番は35度とかになってもおかしくない。35度になると体感も変わってくる。準備も進めていかないと。日ごろから高温多湿の環境で練習したりするのはすごくアドバンテージ」。海外勢が力を発揮できない暑さが増せば、増すほど、好都合となる。

課題も明確に見えている。MGCでは上り坂が続く最後の2・195キロを出場選手中最速の6分18秒で走り、勝負を決めた。「五輪本番も、どこかのタイミングで自分から動かすレースをしたい」と見据える。ただ鬼スパートの逃げ切りを再現するには、そもそも中盤まで上位にいることが必要。加えて脚をためておく地力もいる。「世界と戦うには上でスピード面の余裕度を作らないと」と話す。

今から55年前の東京五輪。円谷幸吉が獲得したメダルも銅だった。国中を感動の渦に包み、大会のハイライトの1つとして今も語り継がれる。瀬古利彦、野口みずきと希代のランナーを輩出した三重県出身の男は「どこまで挑戦できるか、今はすごい楽しみ」。男子マラソンは最終日。メダルならば、閉会式の新国立競技場に日の丸が揚がることになる。確実に歴史の1ページとなる。【上田悠太】

MGCから一夜明け、自身の走りを振り返る中村(撮影・横山健太)
MGCから一夜明け、たくさんの報道陣に囲まれる中村(撮影・横山健太)

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前田穂南、慣れないテレビ出演続くも「緊張感ない」

MGCから一夜明け、自身の走りを笑顔で振り返る前田(撮影・横山健太)

女子のマラソン・グランドチャンピオンシップで1位になり、20年東京オリンピック(五輪)の代表に内定した前田穂南(23=天満屋)がレースから一夜明けた16日、報道陣に対応した。

2位の鈴木亜由子(27=日本郵政グループ)に3分47秒差を付ける圧勝劇だった。昨夜から慣れないテレビ出演が続いたが、暇な時間が少なかったことは幸い。「バタバタしていたから、そんなに緊張感はなかったです」と振り返った。

照れ屋で口数は少ないが走りだすと、別人のようにたくましい。昨日の会見では「金メダルを目指す」と口にしていた。厳しい練習で知られる名門・天満屋。武冨豊監督(65)について聞かれると「練習をもっとしたいけど、控えめにさせられます。きつい練習の方が何かやっている感じがあります」。とにかく走ることが大好きで、苦にならない。

趣味は「ないです。探しています」。ただドラマは見るという。日本テレビ系ミステリードラマ「あなたの番です」の話題を振られると、毎週見ていたそうで少し声を弾ませた。その最終回にはモヤモヤした様子だが、新たな物語に期待していた。

MGCから一夜明け、日刊スポーツを手に笑顔を見せる前田(撮影・横山健太)

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中村匠吾「銅は届く」日本勢28年ぶりメダル目標 

プレゼントされた誕生日ケーキを前に笑顔を見せる中村(撮影・横山健太)

新国立競技場に日の丸を掲げる。男子のマラソン・グランドチャンピオンシップで1位になった中村匠吾(27=富士通)がレースから一夜明けた16日、代表内定を勝ち取った20年東京オリンピック(五輪)でメダル獲得を目標に掲げた。

都内で報道陣に対応。「代表になったからには、メダルを期待される。何よりも自分自身がメダルを取りたい思いがある。そこに向けて今から何ができるか考えて取り組みたい。昨日のような勝負にもつれれば、銅メダルは届く可能性は出てくると思う」。

そのために武器である後半のスパートを生かすため、前半の走り方をポイントに挙げた。日本の男子マラソンは92年バルセロナ五輪の森下広一さんの銀メダル以来、表彰台から遠ざかっている。

暑い中でのレースには自信を持つ。この日の東京の天気は、前日とがらり変わって、冷たい雨。「天候にも恵まれたのかな」とフィニッシュ時は28・8度まで気温が上がったレースを回想した。その上で「本番は35度ぐらいになってもおかしくない。35度になったら体感も変わってくると思う。その辺の準備も進めていきたい」と口にした。

この日は27歳の誕生日。日本陸連などから記念のケーキを贈られた。照れくさそうにロウソクの火を消すと「プレッシャーのある中、オリンピックの準備をしないといけない。代表として恥じぬように努力をしていきたい」。前夜からはテレビ番組をはしごで出演した。多くの祝福のメッセージも届いた。「思っていたより反響は大きかった。これが日の丸を背負っていくことだと実感した」と話した。

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前田穂南独走V長い手足が目印の東京五輪新ヒロイン

ガッツポーズしながら1位でゴールする前田(撮影・鈴木みどり)

<陸上:女子マラソングランドチャンピオンシップ>◇15日◇東京・明治神宮外苑発着42・195キロ

女子1号のMGC出場権獲得者だった前田穂南(23=天満屋)が2時間25分15秒で優勝し、2位に3分47秒差をつける独走で東京オリンピック(五輪)代表切符をつかみ取った。全国高校駅伝では3年間控え。そこから類いまれな集中力でマラソンの才能を花開かせた。00年シドニー五輪から4連続で五輪代表を輩出した天満屋は8年ぶり5人目となる代表内定で名門の底力を見せつけた。

知らぬ間に、ひとりぼっちだった。15キロから1人、2人、3人、前田の背中を離れていく。日本橋から銀座へ向かう20キロ付近、粘っていた鈴木までもが脱落。日本一の繁華街が長い、長い1人旅の出発点になった。

増上寺前の折り返し付近でついに気がつく。誰もいない。「仕掛けたつもりはなかった」予期せぬ20キロ以上の独走。暑さもある。大都会東京のど真ん中で1人、支えになったのは天満屋の厳しい練習だった。

4月から月間1000キロをこなし、30キロ走の最後1キロをペースアップさせる練習では、その1キロで3分を切った。芝生のクロスカントリー50キロ走では、27キロで脱水症状となりストップしたが「それ以外は100%に近い達成率。これでダメなら諦めがつくぐらいに練習した」(武冨豊監督)と、自信の裏付けになった。

「自分の感覚で走った」と細かいタイム設定もなし。五輪本番でも必ず鍵となる35キロからの上り坂では、2位に2分差以上をつける余裕を持ちながら、東京五輪は一切想像せず、邪念を断ち切った。

その集中力が「一番すごい」と武冨監督。子どもの頃からそうだった。ピアノ、そろばん、バスケットボール、水泳。習い事に多忙だった小学時代も「全てちゃんとできた。『これをする』と決めた時の集中力はすごかった」と父哲宏さん(45)。

高校時代、日の目を浴びなかった前田が天満屋に入る前、母麻理さん(45)に初めて示した五輪への夢。「マラソンで五輪に出て、世界で戦いたいという気持ちでずっと練習してきた」。ゴールテープを切った時だけ「ちょっとホッとしました」と気が緩んだ。

それもつかの間。武冨監督は「ここからは地元開催が重圧になる。僕も、本人も。それに負けない練習をしたい」と、東京五輪への戦いはもう始まる。新たなヒロインは曇りなく言った。「金メダルを目指す」。自ら重圧を背負い、覚悟は決まった。【三須一紀】

◆前田穂南(まえだ・ほなみ)1996年(平8)7月17日、兵庫県尼崎市生まれ。大阪薫英女学院高を卒業後、15年に天満屋入社。17年1月に初マラソン。同8月の北海道マラソンで優勝し、MGC出場権を獲得した。自己ベストは18年1月の大阪国際で出した2時間23分48秒。両親がドラマ「東京ラブストーリー」のファンで、ヒロイン役だった女優鈴木保奈美と同じ読み方の「穂南」と名付けた。家族は両親、弟。166センチ、46キロ。

◆天満屋(てんまや)女子陸上部 江戸後期に創業した老舗百貨店が1992年(平4)4月に岡山市を拠点に創部。10年全日本実業団対抗女子駅伝で悲願の初優勝。五輪女子マラソン代表は00年シドニー大会に山口衛里が初選出され、今回の前田穂南で5人目。選手は主に岡山市で社業と兼務。武冨豊監督(65)。

表彰式で優勝カップを手に笑顔を見せる前田(撮影・狩俣裕三)
前田のマラソン全成績

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中村匠吾Vは想定内、設楽の勇気に敬意を/瀬古利彦

ガッツポーズしながら1位でゴールする中村(撮影・鈴木みどり)

<陸上:男子マラソングランドチャンピオンシップ>◇15日◇明治神宮外苑発着42・195キロ

中村匠吾(26=富士通)が1位、服部勇馬(25=トヨタ自動車)が2位となり五輪出場が内定した。大迫傑(27=ナイキ)は3位で、「MGCファイナルチャレンジ」と呼ばれる指定の3大会(福岡国際マラソン、東京マラソン、びわ湖毎日マラソン)で、派遣設定記録(2時間5分49秒)を突破した選手がいない場合に代表権を得る。

   ◇   ◇   ◇

まずは、設楽の勇気に敬意を表したい。練習でも絶好調と聞いていた。よほど逃げ切れる自信があったのだろう。ただ、思った以上に暑かった。それが体力を奪い、最後は失速につながった。力は十分にあるのだから、慎重にいっても良かった。ただ、設楽の飛びだす判断がレースを面白くしたことは間違いがない。

中村の優勝、服部の2位は想定内だった。力のある選手が代表になったことは素晴らしい。中村は能力が高く、最後までスピードが落ちなかった。大迫との争いを制した服部は4強の中の1人。ともに暑い中で走れたことが、真夏の東京五輪への自信になる。

4強、特に大迫には相当なプレッシャーがかかっていたはず。逆に中村はノンプレッシャーだったからこそ、伸び伸び走れた。もっとも、五輪本番は今回以上。中村も今度はプレッシャーと闘う必要がある。

設楽が飛びだし、終盤には激しい競り合いもあり、ファンは楽しめたと思う。もともと、危機感から生まれたMGCだが、日本マラソンの成長は実感できた。ただ、このレースが成功だったかどうかは、東京五輪の成績次第。選ばれた4人は、今すぐに五輪への準備を始めてほしい。(84年ロサンゼルス、88年ソウル五輪代表)

14着でゴールし険しい表情を見せる設楽(撮影・河野匠)

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V前田穂南は推進力ある走りで強さ証明/野口みずき

ガッツポーズしながら1位でゴールする前田(撮影・鈴木みどり)

<陸上:女子マラソングランドチャンピオンシップ>◇15日◇明治神宮外苑発着42・195キロ

前田選手は強かった。ダークホース的な存在かと思っていたが、素晴らしいレースをした。早い段階で積極的に飛び出し、その後ペースも落ちなかった。独走で長い距離を走るのは精神的にも負担があるが、マイペースで押し切った。世界と戦える強さを感じた。

広島・比婆での天満屋のトレーニングは、2キロと3キロのクロカンコースを計50キロ走る。脚力はもちろんだが、鍛えられるのはメンタル。自分のペースで距離をこなすことで、精神面が強くなる。長い手足を生かしたストライド走法。静かに押していくタイプで、1歩1歩に推進力がある。

MGCはゴールではなくオリンピック(五輪)へのスタート。前田選手の走りを見ていると、その思いの強さが伝わってきた。最近は消極的なレースが目立っていただけに、前田選手や一山選手らの積極性は女子マラソンの明るい未来を感じさせた。MGCで、確かに選手は強くなっている。(04年アテネ五輪金メダリスト)

会見後の記念撮影でガッツポーズする前田(撮影・滝沢徹郎)

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前田穂南は腕利きのピアニスト 走るリズムに好影響

会見後の記念撮影でガッツポーズする前田(撮影・滝沢徹郎)

<とっておきメモ>

<陸上:女子マラソングランドチャンピオンシップ>◇15日◇東京・明治神宮外苑発着42・195キロ

女子1号のMGC出場権獲得者だった前田穂南(23=天満屋)が2時間25分15で優勝し、2位に3分47秒差をつける独走で東京オリンピック(五輪)代表切符をつかみ取った。

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前田はピアノを2歳から高3まで続けた。小・中学校の卒業式では学校を代表して「旅立ちの日に」を伴奏。中学2、3年に出場した関西のコンクールでは100人中数人という表彰を受けるほどの実力者だった。母麻理さんは「リズム感が陸上に生きてる部分もあると思います」と話した。

「高校生になってから手足が長くなった」と麻理さん。O脚を直すため、高校時代まで「正座禁止令」を課したことが奏功し、ストライド走法を支える、スラッと長い健脚が備わった。

天満屋の同僚で、今年の世界選手権マラソン代表の谷本観月(24)は前田の意外な一面を披露。「天然ボケ」で「ある子がピンぼけした集合写真を見て、前田だけ過呼吸になるんじゃないかというぐらい笑いこけていた」と明かした。

ゴール後、車いすで引き揚げる1位の前田(撮影・狩俣裕三)

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残り1枠 男子は大迫、設楽、井上「3強」戦いか

東京五輪マラソン代表決定の流れ

男女上位2選手が来年の東京オリンピック(五輪)代表に内定する大一番MGCで、男子は中村匠吾(26=富士通)が2時間11分28秒で優勝した。2位には8秒差で服部勇馬(25=トヨタ自動車)が入った。女子は前田穂南(23=天満屋)と鈴木亜由子(27=日本郵政グループ)が代表権を獲得した。

残された男女1枠は来年3月までの「ファイナルチャレンジ」に委ねられる。男子の設定記録は2時間5分49秒で、日本新記録に相当する。自己ベスト2時間10分台の神野が「現実問題、そう簡単には出せない」と言うように、大半の選手には困難だ。手が届くとすれば2時間6分台のタイムを持つ設楽や井上か。服部が抜け、大迫、設楽、井上の「3強」の戦いが続きそうだ。女子は2時間22分22秒に設定された。今大会出場者では安藤が21分台の自己ベストを持っており、男子に比べれば条件突破のハードルは低い。

◆東京五輪のマラソン代表選考 枠は男女3ずつ。17年夏から今春までの国内指定レースなどで記録や順位の条件を満たした選手がMGC出場権を獲得。MGCの男女2位までが五輪代表に決定。残り1枠は、来年3月までの国内男女各3大会(MGCファイナルチャレンジ)で、日本陸連が定めた設定記録(男子=2時間5分49秒、女子=2時間22分22秒)を突破した最速の選手を代表とする。該当者がいない場合はMGC3位が五輪切符を獲得。

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3位大迫「残り1枠」走るか走らないか「相談して」

服部に競り負け、3着でゴールする大迫(撮影・河野匠)

<陸上:マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)>◇15日◇東京・明治神宮外苑発着の42・195キロ◇男子=晴れ、気温26・5度、湿度63%、女子=晴れ、気温26・9度、湿度63%(スタート前)

優勝候補に挙げられていた大迫傑(28=ナイキ)は3位に終わり、今大会でのオリンピック(五輪)代表切符を逃した。「力負け。真摯(しんし)に受け止めたい」と悔しさをかみ殺した。

最大のライバル設楽が序盤から飛ばしたことで、焦りが出た。「普段ならもう少し後ろにいるところが、前で進めてしまった」。ここでの無理が終盤にたたった。残り2キロを切った後にいったんは先頭に並びかけたが、再び引き離され「足が残っていなくてきつかった。最後に短い坂で出られてしまった」。服部との2位争いにも後れを取った。

今後はMGCファイナルチャレンジの指定3大会で、自らの持つ日本記録2時間5分50秒を更新する選手がいなければ代表権を得る。大迫が3枚目の切符に最も近いことは間違いないが、それでも日本陸連の瀬古リーダーは「設楽も井上も日本記録を出せる力を持っている。大迫は油断できない」と指摘。一方で東京五輪でダメージが残ることを考慮し「自分だったらファイナルには出走しない」とも続けた。

大迫自身は今後について「コーチと相談してしっかり考えていきたい」と話すにとどめた。しゃにむに走るか、果報は寝て持つか。難しい立場に置かれた。【奥岡幹浩】

MGC男子成績

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「暑さの男」中村匠吾V 猛暑の東京五輪に最適代表

両手を広げて優勝のゴールテープを切る中村(撮影・河野匠)

<陸上:マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)>◇15日◇東京・明治神宮外苑発着の42・195キロ◇男子=晴れ、気温26・5度、湿度63%、女子=晴れ、気温26・9度、湿度63%(スタート前)

男を上げた。中村匠吾(27=富士通)が前評判を覆し、2時間11分28秒で優勝。20年東京オリンピック(五輪)の代表に決まった。残り3キロからのスパートで2位の服部勇馬(25=トヨタ自動車)、3位の大迫傑(28=ナイキ)を振り切った。得意な暑さで実力を遺憾なく発揮し、26歳最後の日にV。駒大時代の恩師で、今も指導を受ける大八木弘明監督(61)を男泣きさせた。箱根駅伝で6度の優勝を誇る名門から初の五輪ランナーとなった。

最後のカーブを曲がると、視界に白のフィニッシュテープを捉えた。五輪へ続く最後の直線。中村は勝利を確信し、右腕を上げた。実感をかみしめるように広げた両腕を、小刻みに動かしながら、最後を駆け抜けた。夢の東京五輪だ。「自分自身のベストなパフォーマンスを出せた」。左腕の時計を止め、膝に手を置いた。大迫、設楽、服部、井上の4強を蹴散らした。

自ら動き、ねじ伏せた。残り3キロ。帽子を路上に投げ捨てた。スパートのスイッチを入れる。上り坂で、集団から前へ。服部と大迫とのサバイバルを仕掛けた。簡単にはいかない。1度引き離すも41キロすぎ、急加速した大迫に追いつかれた。だが、先頭は譲らなかった。残り1キロ。再びギアチェンジ。日本記録保持者にとどめを刺した。35キロすぎでは嘔吐(おうと)もしたが「最後まで自信を持って走れた」。前日朝に試走し残り800メートルが勝負どころと確信した。そのイメージを完璧に遂行した。

まぐれではない。持ちタイムは8番目でも、暑さには天賦の才がある。絶対の自信を持ち、レース前は「暑くなれ」と願い続けた。天は味方した。予報より気温は上がり、フィニッシュ時は28・8度。強い理由は「汗をかかない」(福嶋・富士通監督)。体にたまった熱を外に逃がす力が高い。体温も上がりづらく、パフォーマンスを維持できる特長を持つ。一般的にフルマラソンを走れば、体重の5%以上が減るが「あまり減っていなかった」とわずか0・5キロだけ。MGCの出場権を得た18年びわ湖毎日も最高気温19・5度。出場選手で切符を得たのはただ1人だった。暑さは耐えられるが、寒さは逆。チームスタッフは中村と一緒にいる時、夏も冷房を入れさせてもらえないことが悩み。だが、その体質は猛暑の五輪本番で最上の武器だ。

駒大3年時の13年、東京五輪が決まった。大八木監督の「マラソンで五輪を目指そう。一緒にやらないか」との言葉に胸を打たれた。卒業後も指導を受け続ける。意外にも過去に駒大陸上部OBで五輪に出た人はいない。「男だろ!」の喝で有名な闘将を「夢がかないました」と男泣きさせた。最高の孝行息子になった。【上田悠太】

表彰式でトロフィーを掲げ、笑顔を見せる中村(撮影・狩俣裕三)
中村のマラソン全成績

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井上大仁、まさかの最下位「なぜだか分からない」

27位に終わった井上はうつむきながらゴールする(撮影・鈴木みどり)

<陸上:男子マラソングランドチャンピオンシップ>◇15日◇明治神宮外苑発着42・195キロ

酷暑だった昨年のジャカルタ・アジア大会を制し、4強の一角だった井上大仁が、完走27人中まさかの最下位に沈んだ。「前半からきつくて、いらいらしていた」。

13キロでかぶっていた帽子を脱ぎ捨て、自分へのふがいなさをあらわにした。「なぜだか分からない」と話した。指定3レースで日本記録を更新するしか代表への道はない。「(チャレンジに)向かうしかない」と最後の挑戦にかける。

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小原怜「詰めの甘さ」3位悔やむも代表入りへ望み

3着でゴールし苦しそうな表情を見せる小原(撮影・河野匠)

<陸上:女子マラソングランドチャンピオンシップ>◇15日◇明治神宮外苑発着42・195キロ

女子の小原怜は最後は追い上げ、2位の鈴木と4秒差の3位でゴールした。3枠目の有力候補ではあるが、今後の国内指定3レース後に代表は決まる。

16年リオデジャネイロ・オリンピック(五輪)でも1秒差で代表を逃した。「またやらかした。詰めの甘さ」と悔やんだ。最後は「足がちぎれそうだったが、どうにでもなれと動かした」ことで、代表入りへ希望をもたらした。

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瀬古氏「五輪で通用する選手選ばれた」収穫を強調

五輪代表を決め、表彰式で笑顔を見せる、左から女子2位の鈴木、1位の前田、男子1位の中村、2位の服部(撮影・狩俣裕三)

<陸上:マラソングランドチャンピオンシップ>◇15日◇明治神宮外苑発着42・195キロ

日本陸連は東京オリンピック(五輪)へ向けた収穫を強調した。

気温29度前後と本番と同じような気象条件下で、女子は夏マラソン経験者が代表に決まり、男子優勝者の中村も最終盤にペースを上げたことを評価。瀬古利彦マラソン強化戦略プロジェクトリーダーは「暑さの中のレースで五輪でも通用する選手が選ばれた」とした上で「絶対に負けられないレースでプレッシャーに勝った経験は人間的にも成長する」と、MGCの効果についても言及した。

一方で次回以降のMGCの継続について河野匡長距離・マラソンディレクターは「同じことはできないが、さらに進化させることが我々の課題」と話した。

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MGCでピストル不具合、スタート号砲2分近く遅れ

いっせいにスタートする男子選手たち(撮影・河野匠)

<陸上:マラソングランドチャンピオンシップ>◇15日◇東京・明治神宮外苑発着42・195キロ

東京オリンピック(五輪)のテストイベントを兼ねて行われたMGCで、スタートが遅れるハプニングがあった。

スタートのピストルに不具合が生じ、急いで予備のピストルで対応。「しばらくお待ちください」のアナウンスが流れ、1分54秒遅れて号砲が鳴った。緊張する選手の精神面にも影響しかねないだけに、東京大会組織委員会も「原因をはっきりさせて、本番ではないようにしたい」と説明していた。

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前田穂南が独走V、2位鈴木亜由子/女子MGC詳細

<陸上:女子マラソングランドチャンピオンシップ>◇15日◇明治神宮外苑発着42・195キロ

東京オリンピック(五輪)出場を懸け10人が出場。前田穂南(天満屋)が2時間25分15秒で優勝。2位は鈴木亜由子(日本郵政グループ)で2人が東京五輪に内定した。4秒差で3位小原怜(天満屋)。五輪代表の残り1人は「MGCファイナルチャレンジ」と呼ばれる指定の3大会(さいたま国際マラソン、大阪国際女子マラソン、名古屋ウィメンズマラソン)で、派遣設定記録(2時間22分22秒)を突破した選手。その該当者がいない場合、MGCの3位の小原が代表権を得る。なおこの派遣設定記録は17年8月以降のMGC派遣設定記録対象期間で最も速かった松田の2時間22分23秒を上回るタイム。

五輪代表を決め、表彰式で笑顔を見せる2位の鈴木(左)と1位の前田(撮影・狩俣裕三)

◆レース速報

◆ゴール 前田穂南(天満屋)が2時間25分15秒で優勝。2位は2時間29分06秒で鈴木亜由子(日本郵政グループ)で2人が東京五輪内定。4秒差で3位小原怜(天満屋)

【最終成績】

(1)前田穂南(天満屋) 2時間25分15秒

(2)鈴木亜由子(日本郵政グループ) 2時間29分02秒

(3)小原怜(天満屋) 2時間29分06秒

(4)松田瑞生(ダイハツ) 2時間29分51秒

(5)野上恵子(十八銀行) 2時間31分14秒

(6)一山麻緒(ワコール) 2時間32分30秒

(7)福士加代子(ワコール) 2時間33分29秒

(8)安藤友香(ワコール) 2時間36分29秒

(9)岩出玲亜(アンダーアーマー) 2時間41分22秒

(棄権)上原美幸=第一生命グループ

◆40キロ 前田が2時間17分19秒で通過。2分48秒差で2位鈴木。33秒差で3位小原

◆35キロ 前田が1時間58分53秒で通過。2時間23分ペース。2分遅れて2位鈴木、40秒遅れて3位小原、3位から50秒遅れて4位松田。31キロ付近で上原(第一生命グループ)が棄権

◆30キロ 前田が1時間41分20秒で通過。1分以上遅れて2位鈴木、3位小原、4位松田、5位福士

◆25キロ 前田独走。2位鈴木との差は30秒。鈴木と3位小原の差は13秒。3位から40秒ほど遅れて4位松田、5位は福士

◆24キロ 前田独走。2位鈴木との差は30秒。鈴木と3位小原の差は13秒

◆23・3キロ 前田が独走へ。2位鈴木との差は17秒まで開いた

◆中間点 1時間11分05秒で前田が1位通過。独走に入るか。2位鈴木との差は9秒

◆20キロ 1時間7分27秒。1位前田、2秒差で2位鈴木、11秒差で小原、23秒差で4位福士、25秒差で5位安藤

◆18・3キロ 小原も遅れはじめた。1位前田(天満屋)2位鈴木(日本郵政グループ)

◆18キロ 安藤(ワコール)も遅れ始めた。1位前田、2位鈴木、3位小原

◆17・5キロ 37歳福士(ワコール)がやや遅れ始めた

◆17キロ 6位松田(ダイハツ)は先頭から15秒遅れた。苦しいか

◆15・6キロ 前田(天満屋)が再びすーっと前に出た

◆15キロ 50分40秒。1位前田、2位安藤、3位小原、4位鈴木、5位福士が先頭集団。松田は再び遅れ6位。気温はNHK調べで34度に上昇

◆13・3キロ スタート時に集団を引っ張った一山(ワコール)がやや遅れ始めた

◆11・3キロ 集団は縦長に。先頭は前田(天満屋)

◆10キロ 33分34秒。集団の先頭は前田(天満屋)。以下一山、安藤、松田(遅れたが巻き返す)、小原、鈴木、福士。やや遅れて上原。9位岩出、10位野上

◆8・5キロ 前田(天満屋)がすーっと集団の前に出る

◆7・3キロ 神保町交差点。先頭集団は7人遅れているのは岩出、松田、野上

◆5・5キロ 岩出(アンダーアーマー)が集団から遅れ始めた

◆5キロ 16分31秒のハイペース。依然、22歳の一山が集団を引っ張る。松田は9位、野上は大きく遅れ10位

◆3キロ 一山が集団を引っ張る。松田、野上は遅れ集団は8人

◆1・5キロ 松田(ダイハツ)が遅れ始めた。9人は縦長の集団

◆1キロ 3分17秒。一山、安藤、福士のワコールトリオが集団を引っ張る。野上がやや遅れた

◆神宮外苑スタート地点 気温26・3度。午前9時10分、10人全員が帽子をかぶり定刻通りスタート! 一山(ワコール)飛び出す

女子で1位でゴールし両手を広げる前田(撮影・河野匠)

女子1位でゴールする前田(撮影・河野匠)

2着でゴールする鈴木(撮影・河野匠)

女子で2着でゴールする鈴木(撮影・河野匠)

2着でゴールする鈴木(撮影・河野匠)

笑顔でゴールする7着の福士(撮影・河野匠)

笑顔でゴールした7着の福士(撮影・河野匠)

4位でゴールした松田(撮影・鈴木みどり)

5位でゴールした野上(撮影・鈴木みどり)

6位でゴールした一山(撮影・鈴木みどり)

8位でゴールした安藤(撮影・鈴木みどり)

9位でゴールした岩出(撮影・鈴木みどり)

26キロ付近をトップで通過する前田(撮影・滝沢徹郎)

「マラソン・グランドチャンピオンシップ(MGC)」 芝公園付近で松田(右)に迫られる福士(撮影・垰建太)

「マラソン・グランドチャンピオンシップ(MGC)」 東京タワーを背に芝公園付近を女子2位で通過する鈴木(撮影・垰建太)

「マラソン・グランドチャンピオンシップ(MGC)」 東京タワーを背に芝公園付近を女子トップで通過する前田(撮影・垰建太)

15キロ付近の浅草寺の雷門前を通過する前田(右端)ら先頭集団(撮影・狩俣裕三)

一斉にスタートする女子選手たち(撮影・鈴木みどり)

一斉にスタートする女子選手たち(撮影・河野匠)

◆展望

混戦模様だ。マラソン出場は1度だけながら、5000メートルや1万メートルで代表経験を持つ鈴木は大事な場面で外さない。スピードもあり、暑さにも強く、優勝を争う存在だ。バキバキの腹筋がトレードマークの松田は昨年9月のベルリンで2時間22分23秒。実力十分で、あとは調子が合うか。日本歴代4位となる2時間21分36秒の自己記録を持つ安藤は一時期の不調を乗り越え、復活の気配がある。前田穂、小原の天満屋勢は調整能力が高い。トラック含め5大会連続五輪を目指す37歳の福士も充実し、22歳の一山も勢いがある。

◆女子出場選手◆

※タイムは自己記録

安藤友香(25=ワコール) 2時間21分36秒「自分に勝ち笑顔でゴールする」

福士加代子(37=ワコール) 2時間22分17秒「調子は少しずつ上がってきた」

松田瑞生(24=ダイハツ) 2時間22分23秒「笑顔テーマに合宿やってきた」

小原怜(28=天満屋) 2時間23分20秒「自信を持ってスタートしたい」

前田穂南(22=天満屋) 2時間23分48秒「しっかりと切符勝ち取りたい」

岩出玲亜(24=アンダーアーマー) 2時間23分52秒「いかに自分がばかになれるか」

上原美幸(23=第一生命グループ) 2時間24分19秒「挑戦する気持ちで五輪決める」

一山麻緒(22=ワコール) 2時間24分33秒「若さあふれる走りを見せたい」

野上恵子(33=十八銀行) 2時間26分33秒「自分の力をどれだけ出せるか」

鈴木亜由子(27=日本郵政グループ) 2時間28分32秒「淡々とレース進めて勝負する」

※関根花観(23=日本郵政グループ)が右足第2中骨疲労骨折、前田彩里(27=ダイハツ)は右太もも裏の腱(けん)損傷で欠場

MGC公式記者会見で記念撮影する出場選手。前列左から前田、松田、安藤、岩出、野上、鈴木、小原、福士、上原、一山、中列左から村沢、大迫、上門、竹ノ内、園田、設楽、井上、木滑、宮脇、山本憲、佐藤、中村、岡本、谷川、大塚、後列左から中本、藤本、服部、福田、橋本、岩田、堀尾、今井、藤川、神野、山本浩、河合、高久、荻野、鈴木(撮影・滝沢徹郎)

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2位死守の鈴木亜由子、母は知ってた白い歯のサイン

2着でゴールし苦しそうな表情を見せる鈴木(撮影・河野匠)

<陸上:女子マラソングランドチャンピオンシップ>◇15日◇明治神宮外苑発着42・195キロ

30キロ過ぎ、2位につけていた鈴木亜由子(27=日本郵政グループ)は時折白い歯を見せ、笑顔のような表情になった。余裕かと思われたが、実は苦しさのサインだった。「口角が上がって笑ってるように見えるだけ。足が動かなかった。今までで1番長い10キロでした」。40キロで33秒あった3位との差がゴール時は4秒。1人で歩けないほどになり、心配で駆けつけた母由美子さんは「あの白い歯が出たらいつもダメなんですよ。ヒヤヒヤしてました」とホッと胸をなで下ろした。

学生時代からトラック競技で日本を引っ張り、16年リオ・オリンピック(五輪)にも出場。その後、所属先の高橋監督から東京五輪の可能性を広げるため、マラソン転向を勧められた。才能はすぐに開花。昨年初マラソンの北海道で独走Vを飾り、MGC出場を決めた。転向後わずか2戦での五輪出場に「苦しい展開の中、2位だったのは練習の成果」と振り返った。

「亜由子計画」を掲げ、寮に高圧酸素カプセルと栄養士を付けてもらうよう頼み込み、サポートしてくれた高橋監督が今春、甲状腺ホルモンが過剰に作られ、身体に不調が起きるバセドー病で休養。1カ月前に復帰した恩師に五輪切符獲得が、これ以上ない良薬となったはずだ。

それでも優勝した前田とは約4分差。世界と戦うには後半の失速が課題だ。「追い付こうと思ったけど全然ダメ。マラソンの怖さを知った。質の高い練習をしないと」と反省。高橋監督も「前田さんみたいな走りじゃないとメダルは取れない」と厳しい表情を見せた。恩師と2人で本番での表彰台を目指す。【松熊洋介】

◆鈴木亜由子(すずき・あゆこ)1991年(平3)10月8日、愛知県豊橋市生まれ。時習館高-名大-日本郵政グループ。小学生で陸上を始める。名大4年時のユニバーシアードで1万メートル金、5000メートル銀。15年世界選手権では5000メートル9位。旧帝大出身女子初の出場となった16年リオ五輪は5000メートルに出場。初マラソンとなった18年北海道では2時間28分32秒で優勝し、MGC出場権を獲得。154センチ、38キロ。

2着でゴールする鈴木(撮影・河野匠)

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暑さ強い中村匠吾Vで初五輪 恩師大八木監督男泣き

五輪代表が内定し、笑顔で報道陣の質問に答える中村(撮影・狩俣裕三)

<陸上:マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)>◇15日◇東京・明治神宮外苑発着の42・195キロ◇男子=晴れ、気温26・5度、湿度63%、女子=晴れ、気温26・9度、湿度63%(スタート前)

男を上げた。中村匠吾(27=富士通)が前評判を覆し、2時間11分28秒で優勝。

20年東京五輪の代表に決まった。残り3キロからのスパートで2位の服部勇馬(25=トヨタ自動車)、3位の大迫傑(28=ナイキ)を振り切った。得意な暑さで実力を遺憾なく発揮し、26歳最後の日にV。駒大時代の恩師で、今も指導を受ける大八木弘明監督(61)を男泣きさせた。箱根駅伝で6度の優勝を誇る名門から初の五輪ランナーとなった。

   ◇   ◇   ◇

最後のカーブを曲がると、視界に白のフィニッシュテープを捉えた。五輪へ続く最後の直線。中村は勝利を確信し、右腕を上げた。実感をかみしめるように広げた両腕を、小刻みに動かしながら、最後を駆け抜けた。夢の東京五輪だ。「自分自身のベストなパフォーマンスを出せた」。左腕の時計を止め、膝に手を置いた。大迫、設楽、服部、井上の4強を蹴散らした。

自ら動き、ねじ伏せた。残り3キロ。帽子を路上に投げ捨てた。スパートのスイッチを入れる。上り坂で、集団から前へ。服部と大迫とのサバイバルを仕掛けた。簡単にはいかない。1度引き離すも41キロすぎ、急加速した大迫に追いつかれた。だが、先頭は譲らなかった。残り1キロ。再びギアチェンジ。日本記録保持者にとどめを刺した。35キロすぎでは嘔吐(おうと)もしたが「最後まで自信を持って走れた」。前日朝に試走し残り800メートルが勝負どころと確信した。そのイメージを完璧に遂行した。

まぐれではない。持ちタイムは8番目でも、暑さには天賦の才がある。絶対の自信を持ち、レース前は「暑くなれ」と願い続けた。天は味方した。予報より気温は上がり、フィニッシュ時は28・8度。強い理由は「汗をかかない」(福嶋・富士通監督)。体にたまった熱を外に逃がす力が高い。体温も上がりづらく、パフォーマンスを維持できる特長を持つ。一般的にフルマラソンを走れば、体重の5%以上が減るが「あまり減っていなかった」とわずか0・5キロだけ。MGCの出場権を得た18年びわ湖毎日も最高気温19・5度。出場選手で切符を得たのはただ1人だった。暑さは耐えられるが、寒さは逆。チームスタッフは中村と一緒にいる時、夏も冷房を入れさせてもらえないことが悩み。だが、その体質は猛暑の五輪本番で最上の武器だ。

駒大3年時の13年、東京五輪が決まった。大八木監督の「マラソンで五輪を目指そう。一緒にやらないか」との言葉に胸を打たれた。卒業後も指導を受け続ける。意外にも過去に駒大陸上部OBで五輪に出た人はいない。「男だろ!」の喝で有名な闘将を「夢がかないました」と男泣きさせた。最高の孝行息子になった。【上田悠太】

<中村匠吾(なかむら・しょうご)アラカルト>

◆誕生日 1992年(平4)9月16日。26歳最後の日のVは「自分自身の最高のプレゼントになった」

◆出身 三重県四日市市 ◆経歴 上野工(現伊賀白鳳)、駒大→富士通。高校時代の恩師で12年に亡くなった町野英二さんから、よく言われた「激流を流れる木の葉のごとく、うまくレースを進めなさい。最後のポイントで勝負をしなさい」は今も心に刻む。

◆駅伝 3年時は出雲、全日本とも1区区間賞、箱根は1区2位。4年時は出雲が中止で、全日本は4区、箱根は1区で区間賞。

◆休日の過ごし方 服や家電の買い物。「今は洗濯機を探しています」。

◆好きなマンガ 週間少年サンデーで連載していた「MAJOR」。三船リトルなど茂野吾郎の幼少期の話が好き。

◆好きな食べ物 焼き肉、すし。

◆サイズ 身長173センチ、体重55キロ。

者会見を終え福嶋監督(右)と握手を交わす中村(撮影・滝沢徹郎)

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五輪決めた兄ちゃん服部勇馬、3人の弟妹ら支え力に

記者会見で質問を忘れて笑顔で聞き返す服部(左)。右は佐藤監督(撮影・滝沢徹郎)

<陸上:男子マラソングランドチャンピオンシップ>◇15日◇明治神宮外苑発着42・195キロ

服部勇馬(25=トヨタ自動車)が2時間11分36秒で2位となり、念願の東京五輪出場を決めた。

優勝した中村匠吾に次ぎ、40キロ以降は日本記録保持者の大迫傑とのデッドヒートを制した。4月に虫垂炎を患うなど調整に狂いが出ながらも、ピークを合わせて勝負強さを発揮。3人の弟妹ら家族の後押しも受け、“服部家の長男”が学生時代から夢見た大舞台の切符を勝ち取った。

   ◇   ◇   ◇

最後は執念だった。ラスト約200メートルで迎えた最後の上り坂。3位だった服部が一時は遠ざかった大迫の背中を一気にとらえ、抜き去った。「大迫さんが後ろを振り返ったので、チャンスがあると思った」。何度仕掛けられても食らいつき、東京五輪出場が決まる2位以内に土壇場で飛び込んだ。

自信があった。チームの練習拠点は愛知にあるが、昨年12月にMGCの出場権を得て以降は東京を訪れる度にコースを試走。課題だったレース終盤の失速を防ぐため、日々の練習では40キロ走の翌日に山岳コースを走るなど距離を積んだ。同時に苦手だった上り坂の走り方も見直し、足の後ろ側の筋肉を使って地面を蹴るよう改善。この日も37キロ付近から足の前側に疲労を感じていたが、最後の上り坂で鍛えた走法が功を奏し「足が残っている自信があった」。弱点を克服して起こした逆転劇だった。

つらい時は家族の姿も思い浮かべた。ユニホームの左胸につけたお守りは10歳下の妹葉月さんから。中には一昨年に亡くなった祖父母の写真が入っていた。弟風馬(ふうま)さん(22)は競技に専念できるよう実家の建設業を継いでくれた。大迫とデッドヒートを繰り広げた41キロ地点には地元新潟から訪れた約80人の応援団とともに声援を送る弟弾馬(はずま、24)の姿もあった。「その思いをしっかり持って走れたのがゴールまでつながった」。前を追う足を止めるわけにはいかなかった。

東京五輪を夢見てマラソンを始めた。MGCへの調整を本格化させた今年4月には虫垂炎で入院。約2週間、練習ができない苦難も乗り越えた。「いろんな経験をしてようやくスタートラインに立つことができた。五輪でも最後まで諦めない今日みたいな走りをしたい」。スッキリとした表情で1年後の大舞台を見据えた。【松尾幸之介】

◆服部勇馬(はっとり・ゆうま)1993年(平5)11月13日、新潟県十日町市生まれ。中里中から陸上とスキー距離を始める。仙台育英高-東洋大。大学2年時に30キロで1時間28分52秒の学生新記録を樹立。18年の福岡国際マラソンで日本歴代8位の2時間7分27秒で14年ぶりの日本人優勝。5000メートル13分36秒76、1万メートル28分9秒02。176センチ、63キロ。血液型O。

ピースしながら2位でゴールする服部(撮影・鈴木みどり)
五輪代表を決め、表彰式でそれぞれトロフィー、シャーレを掲げ、笑顔を見せる1位の中村(左)と2位の服部(撮影・狩俣裕三)

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決断難しい3位大迫傑に「自分なら出ない」瀬古氏

ゴール後、2位の服部に5秒差の2時間11分41秒で敗れ、ひざに手をつき、悔しがる大迫(撮影・狩俣裕三)

<陸上:男子マラソングランドチャンピオンシップ>◇15日◇東京・明治神宮外苑発着42・195キロ

優勝候補に挙げられていた大迫傑(27=ナイキ)は3位に終わり、今大会での五輪代表切符を逃した。「力負け。真摯(しんし)に受け止めたい」と悔しさをかみ殺した。

最大のライバル設楽が序盤から飛ばしたことで、焦りが出た。「普段ならもう少し後ろにいるところが、前で進めてしまった」。ここでの無理が終盤にたたった。残り2キロを切った後にいったんは先頭に並びかけたが、再び引き離され「足が残っていなくてきつかった。最後に短い坂で出られてしまった」。服部との2位争いにも後れを取った。

今後はMGCファイナルチャレンジの指定3大会で、自らの持つ日本記録2時間5分50秒を更新する選手がいなければ代表権を得る。大迫が3枚目の切符に最も近いことは間違いないが、それでも日本陸連の瀬古リーダーは「設楽も井上も日本記録を出せる力を持っている。大迫は油断できない」と指摘。一方で東京五輪でダメージが残ることを考慮し「自分だったらファイナルには出走しない」とも続けた。

大迫自身は今後について「コーチと相談してしっかり考えていきたい」と話すにとどめた。しゃにむに走るか、果報は寝て待つか。難しい立場に置かれた。【奥岡幹浩】

ゴール後、悔しそうな表情でインタビューに応じる大迫(撮影・狩俣裕三)

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前田穂南、天満屋厳しい練習と類いまれな集中力でV

表彰式で優勝カップを手に笑顔を見せる前田(撮影・狩俣裕三)

<陸上:女子マラソングランドチャンピオンシップ>◇15日◇東京・明治神宮外苑発着42・195キロ

女子1号のMGC出場権獲得者だった前田穂南(23=天満屋)が2時間25分15で優勝し、2位に3分47秒差をつける独走で東京オリンピック(五輪)代表切符をつかみ取った。

全国高校駅伝では3年間控え。そこから類いまれな集中力でマラソンの才能を花開かせた。00年シドニー五輪から4連続で五輪代表を輩出した天満屋は、8年ぶり5人目となる代表内定で名門の底力を見せつけた。

   ◇   ◇   ◇

知らぬ間に、ひとりぼっちだった。15キロから1人、2人、3人、前田の背中を離れていく。日本橋から銀座へ向かう20キロ付近、粘っていた鈴木までもが脱落。日本一の繁華街が長い、長い1人旅の出発点になった。

増上寺前の折り返し付近でついに気がつく。誰もいない。「仕掛けたつもりはなかった」予期せぬ20キロ以上の独走。暑さもある。大都会東京のど真ん中で1人、支えになったのは天満屋の厳しい練習だった。

4月から月間1000キロをこなし、30キロ走の最後1キロをペースアップさせる練習では、その1キロで3分を切った。芝生のクロスカントリー50キロ走では、27キロで脱水症状となりストップしたが「それ以外は100%に近い達成率。これでダメなら諦めがつくぐらいに練習した」(武冨豊監督)と、自信の裏付けになった。

「自分の感覚で走った」と細かいタイム設定もなし。五輪本番でも必ず鍵となる35キロからの上り坂では、2位に2分差以上をつける余裕を持ちながら、東京五輪は一切想像せず、邪念を断ち切った。

その集中力が「1番すごい」と武冨監督。子どもの頃からそうだった。ピアノ、そろばん、バスケットボール、水泳。習い事に多忙だった小学時代も「全てちゃんとできた。『これをする』と決めた時の集中力はすごかった」と父哲宏さん(45)。

高校時代、日の目を浴びなかった前田が天満屋に入る前、母麻理さん(45)に初めて示した五輪への夢。「マラソンで五輪に出て、世界で戦いたいという気持ちでずっと練習してきた」。ゴールテープを切った時だけ「ちょっとホッとしました」と気が緩んだ。

それもつかの間。武冨監督は「ここからは地元開催が重圧になる。僕も、本人も。それに負けない練習をしたい」と、東京五輪への戦いはもう始まる。新たなヒロインは曇りなく言った。「金メダルを目指す」。自ら重圧を背負い、覚悟は決まった。【三須一紀】

◆天満屋(てんまや)女子陸上部◆ 江戸後期に創業した老舗百貨店が1992年(平4)4月に岡山市を拠点に創部。10年全日本実業団対抗女子駅伝で悲願の初優勝。五輪女子マラソン代表は00年シドニー大会に山口衛里が初選出され、今回の前田穂南で5人目。選手は主に岡山市で社業と兼務。武冨豊監督(65)

◆前田穂南(まえだ・ほなみ)1996年(平8)7月17日、兵庫県尼崎市生まれ。大阪薫英女学院高を卒業後、15年に天満屋入社。17年1月に初マラソン。同8月の北海道マラソンで優勝し、MGC出場権を獲得した。自己ベストは18年1月の大阪国際で出した2時間23分48。両親がドラマ「東京ラブストーリー」のファンで、ヒロイン役だった女優鈴木保奈美と同じ読み方の「穂南」と名付けた。家族は両親、弟。166センチ、46キロ。

21キロ付近をトップで通過する前田(撮影・滝沢徹郎)

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松田瑞生、涙の4位 超ハイペースについていけず

4位でゴールし、悔し泣きする松田(撮影・狩俣裕三)

<陸上:女子マラソングランドチャンピオンシップ>◇15日◇明治神宮外苑発着42・195キロ

女子で優勝候補の松田瑞生はスタートわずか1・5キロで先頭集団から脱落した。一山が仕掛けた5キロ16分31秒の超ハイペースについていけず、中盤にかけて4位に順位を上げるのが精いっぱい。

「速かった。最後に落ちてくると思っていたけど、先に自分が落ちてしまった」と意気消沈。自己ベストは2時間22分23秒でファイナルで逆転する実力はあるが「まだ気持ちが落ち着いていないので休んで考え直します」と涙声を絞りだした。

4位でゴールする松田(撮影・河野匠)

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岩出、沿道の声援励みに完走「涙出た。嬉しかった」

9位でゴールする岩出(撮影・河野匠)

<陸上:女子マラソングランドチャンピオンシップ>◇15日◇明治神宮外苑発着42・195キロ

男女を通じて最後にゴールした岩出玲亜(24=アンダーアーマー)は、ラスト約1キロは沿道の観客とハイタッチをしながら完走。「涙が出た。嬉しかった」。9位に終わったとはいえ、充実感に浸った。

序盤5キロが予想以上に速かったことで、「気持ちで引いてしまった。5キロを過ぎてもペースが落ち着かず、守りに入ってしまった」と反省した。

東京オリンピック(五輪)出場へ残り1枠分の可能性がある「MGCファイナルチャレンジ」に万全の状態で臨むため、途中棄権する選択肢もあった。それでも沿道の声援を励みに最後まで走り切り、「今日は応援のおかげでゴールにたどり着けた」と感謝した。

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小池知事がMGC視察「いかにして日差しを遮るか」

来年の東京五輪のテストイベントと位置づけた「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」で、医療救護活動の説明を受ける東京都の小池百合子知事(撮影・近藤由美子)

東京都の小池百合子知事(67)が15日、20年東京オリンピック(五輪)のテストイベントと位置づけた「マラソングランドチャピオンシップ(MGC)」を視察した。

この日、都が行った医療救護活動や暑さ対策などの実証実験を視察した。小池氏は「いかにして太陽の日差しを遮るのもテーマ。いくつか新しい取り組みを含め、実験していただいている。より良い暑さ対策を確保していく」と話した。

沿道には休憩所やミストが設置され、かちわり氷やネッククーラーなど800個が配布された。一部では小型扇風機も配布された。小池氏は「まずは皆さんに暑さグッズがある。傘、氷、ネッククーラーなど、そして小型扇風機。これは今年ずいぶんはやりましたね。いろんなものがありますし、どういった形で暑さ対策ができるかも大事」と、観客自身の暑さ対策も含めた万全な検証を行うと示唆した。

来年の東京五輪のテストイベントと位置づけた「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」で、D-MATカー前で医療救護活動の説明を受ける東京都の小池百合子知事(撮影・近藤由美子)

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22歳一山悔いなし「積極的に走れたのはいい経験」

6着でゴールする一山(撮影・河野匠)

<陸上:女子マラソングランドチャンピオンシップ>◇15日◇東京・明治神宮外苑発着42・195キロ

今年マラソンデビューした出場最年少22歳の一山麻緒(ワコール)が、スタートから一気に飛び出した。最初の5キロが16分31秒という2時間20分を切るハイペースになったことで、2時間22分23秒の記録を持つ優勝候補の松田瑞生(24=ダイハツ)が1・5キロすぎに遅れ始めるなど、出場10人の争いに混乱を生じさせた。

後半から遅れて6位に終わったが「集団を小さくするために最初からハイペースで前に出て走ろうと思いましたが、ちょっと早すぎました。抑えようと思ったのですが、体が動いていたので無理にストップをかけずに、そのままいった。離れてから余裕がなくなりましたが、マラソン3回目で、積極的に走れたのは今後のいい経験になった」と、力を出し切ったレースに悔いはなさそうだった。

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設楽悠太、宣言通り「大逃げ」も撃沈「休みたいです」

14着でゴールし険しい表情を見せる設楽(撮影・河野匠)

<陸上:男子マラソングランドチャンピオンシップ>◇15日◇明治神宮外苑発着42・195キロ

設楽悠太(27=ホンダ)は、会見で宣言したとおり、スタートから飛び出した。一時は、第2集団に2分以上の差をつけ、35キロまでは独走状態。しかし、35キロ過ぎ、がくっとスピードが落ち、37キロ過ぎに、第2集団にのみ込まれ、そのままあっという間に抜き去られた。

結果は14位で、タイムも2時間16分9秒と惨敗。それでも「やりきった」と言葉少なに語った。足に疲れを感じたのは「25キロです」。何とか踏みとどまろうとしたが、そこら辺は「覚えていない」。レースを終えて「休みたいです」。

まだ、設定記録、2時間5分49秒を破り、東京五輪代表3枠目を狙う方法もあるが「今は考えたくない」。「これまでの中で、1番、きつい経験か」という問いには「そうですね、はい」と答えるのが精いっぱい。

泥臭さと無縁で、その振る舞いから「宇宙人」、「異端児」と呼ばれた設楽だが、その時は、普通に疲労とショックの色が隠せなかった。

25キロ過ぎで首位を独走する設楽(撮影・小沢裕)

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今井正人25位「前は向いています」再挑戦切り替え

25位でゴールする今井(撮影・鈴木みどり)

<陸上:男子マラソングランドチャンピオンシップ>◇15日◇明治神宮外苑発着42・195キロ

25位に終わった箱根駅伝の『元祖山の神』今井正人(35=トヨタ自動車九州)は、再挑戦に気持ちを切り替えた。

前半から第2集団から後れる苦しいレースで、後半も追い上げ切れなかった。「ズルズルといってしまった。やっとゴールした感じで本当に悔しい。気持ちは切れなかったけど、体がついていかなかった」。

オリンピック(五輪)出場を期待されながらロンドン、リオデジャネイロと選考レースで敗れて悔しい思いをしてきただけに、あきらめるつもりはない。

「今後は冷静になって考えたいけど、前は向いています。まだチャンスはありますから、その準備をしっかりしたい」と、早くもラストチャンスに目を向けていた。

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中村優勝、服部2位で東京五輪内定/男子MGC詳細

<陸上:男子マラソングランドチャンピオンシップ>◇15日◇明治神宮外苑発着42・195キロ

中村匠吾(26=富士通)が1位、服部勇馬(25=トヨタ自動車)が2位となり五輪出場が内定した。大迫傑(27=ナイキ)は3位で、「MGCファイナルチャレンジ」と呼ばれる指定の3大会(福岡国際マラソン、東京マラソン、びわ湖毎日マラソン)で、派遣設定記録(2時間5分49秒)を突破した選手がいない場合に代表権を得る。

◆レース速報

(※記録は速報値)

◆最終順位

(1)中村匠吾(26=富士通)2時間11分28秒

(2)服部勇馬(25=トヨタ自動車)2時間11分36秒

(3)大迫傑(27=ナイキ)2時間11分41秒

ガッツポーズしながら1位でゴールする中村(撮影・鈴木みどり)

ピースしながら2位でゴールする服部(撮影・鈴木みどり)

3着でゴールし苦しそうな表情を見せる大迫(撮影・河野匠)

(4)大塚祥平(24=九電工)2時間11分58秒

(5)橋本崚(25=GMO)2時間12分7秒

(6)竹ノ内佳樹(27=NTT西日本)2時間12分31秒

(7)鈴木健吾(23=富士通)2時間12分44秒

(8)中本健太郎(36=安川電機)2時間12分46秒

(9)藤本拓(29=トヨタ自動車)2時間13分58秒

(10)岡本直己(35=中国電力)2時間14分55秒

(11)上門大祐(25=大塚製薬)2時間15分8秒

(12)山本浩之(33=コニカミノルタ)2時間15分52秒

(13)河合代二(27=トーエネック)2時間15分56秒

(14)設楽悠太(27=ホンダ)2時間16分9秒

(15)堀尾謙介(22=トヨタ自動車)2時間16分21秒

(16)山本憲二(29=マツダ)2時間16分44秒

(17)神野大地(25=セルソース)2時間17分40秒

(18)木滑良(28=MHPS)2時間18分51秒

(19)谷川智浩(30=コニカミノルタ)2時間18分56秒

(20)岩田勇治(31=MHPS)2時間19分45秒

(21)村沢明伸(28=日清食品グループ)2時間19分52秒

(22)福田穣(28=西鉄)2時間19分55秒

(23)佐藤悠基(32=日清食品グループ)2時間20分13秒

(24)藤川拓也(26=中国電力)2時間20分35秒

(25)今井正人(35=トヨタ自動車九州)2時間21分15秒

(26)園田隼(30=黒崎播磨)2時間21分51秒

(27)井上大仁(26=MHPS)2時間22分10秒

  DNF 高久龍(26=ヤクルト)

  DNF 荻野皓平(29=富士通)

  DNF 宮脇千博(27=トヨタ自動車)

◆ゴール 明治神宮外苑 中村が優勝。2位に服部がゴールし五輪内定

◆41・9キロ 服部が大迫をとらえ2位浮上。中村は引き離す

◆41・3キロ 中村がスパートし大迫を引き離しにかかる。大迫はやや遅れる

◆41・2キロ 大迫が仕掛け先頭の中村をとらえ並走

◆40キロ 富久町西交差点 先頭の中村が2時間5分10秒で通過。服部、大迫は4秒差。橋本は10秒差。大塚は12秒差

◆39・2キロ 中村がスパートをかけ集団先頭に

◆38・9キロ 中本、竹ノ内が先頭集団から遅れる。集団先頭に橋本が立つ

◆38・1キロ 先頭集団は横に大きく広がり勝負の駆け引きに入ったか

◆37・8キロ 先頭集団から藤本が遅れ、8人に

◆37・4キロ 上りに入ったところで2位集団が独走の設楽をとらえる。先頭は鈴木。設楽は集団から遅れる

◆36・0キロ 先頭の設楽に2位集団が迫る。設楽は振り返って確認するが足どりは重く1キロ3分20秒のペース

◆35キロ 神保町交差点付近 トップ独走の設楽が1時間48分40秒で通過。5キロのラップは16分54秒と大幅ダウン。9人の2位集団は35秒差に迫る

◆32・8キロ トップ独走の設楽のペースがダウン。1キロのラップは3分19秒。竹ノ内佳樹が追いついき9人となった2位集団とは56秒差

◆31・0キロ 中本が2位集団に追いつき先頭に立つ

◆30キロ 淡路町交差点 トップ独走の設楽のペースは落ち1時間31分41秒で通過。2位集団は1分17秒差で通過

◆28・4キロ 日本橋 トップ独走の設楽が1時間26分30秒で通過。2位集団は橋本が先頭で1分31秒差で通過。

◆26・4キロ 大塚、橋本が2位集団に追いつき7人に。中本、竹ノ内も迫る

◆25キロ 芝郵便局前交差点 トップ独走の設楽が1時間15分32秒で通過。

25キロ過ぎで首位を独走する設楽(撮影・小沢裕)

◆24・5キロ 2位集団から服部が先頭に立ちペースをあげる。大塚、橋本、中本、佐藤らの7位集団が5秒差まで追い上げる

◆24・0キロ 2位集団に藤本が追いつき5人に。先頭の設楽とは1分50秒差

◆20キロ 日本橋高島屋前 トップ独走の設楽が1時間4秒で通過。鈴木が先頭を走る大迫、服部、中村の4人の2位集団は1分56秒差で通過。井上は3分8秒差で通過

◆18・0キロ 設楽のトップ独走続く

◆17・5キロ 2位集団は鈴木、大迫、服部、中村の4人。神野は遅れ6位。井上も遅れた

◆15キロ 吾妻橋交差点付近 トップ独走の設楽が45分6秒で通過。ペースは落ちたが日本最高を1秒上回るペース。大迫、服部、神野ら17人の2位集団は2分13秒差。井上、今井はやや遅れている

◆12・7キロ 神野、山本が集団から抜け出すが、大迫、服部らの集団に追いつかれる。集団は縦長になり、分裂し始める

◆12・5キロ 村沢が給水で転倒し集団から遅れる

◆10キロ コレド日本橋前 トップ独走の設楽が29分52秒で通過。日本最高を上回るペース。沿道の声援に左手を上げて応えた。2位集団とは1分44秒差。集団先頭は井上。谷川が遅れ集団は28人

◆7・5キロ 設楽の独走続く。集団先頭に藤本が出てペースを上げる。大迫、堀尾らが集団先頭。井上は集団後方。

◆5キロ 飯田橋交差点手前 トップ独走の設楽が14分55秒で通過。集団とは1分差。集団後方の谷川が給水の際に転倒

◆3キロ 設楽がトップ独走。集団先頭は佐藤、村沢。大迫は集団前方に位置。

◆1キロ トップ独走の設楽が3分で通過。集団とは15秒差。設楽は宣言通りに「先行逃げ切り」を仕掛けた

スタートから積極的に前に出る設楽(右から2人目)(撮影・河野匠)

◆500メートル 設楽がトップ独走。集団から追走する選手はない。

◆100メートル 設楽が集団から飛び出し独走。一気に引き離す

一斉にスタートする男子選手たち(撮影・鈴木みどり)

◆スタート地点 明治神宮外苑 スタートは予定より遅れ、午前8時52分、五輪切符を目指し、30選手が一斉にスタート。ほとんどの選手が帽子をかぶっているが、設楽はかぶらず。天候は晴れ、気温25度、湿度72%、風速2メートル。ゴール時には気温は27度まで上昇するもよう。

◆展望

大迫、設楽、井上、服部の「4強」を中心に争われそうだ。2時間5分50秒の日本記録を持つ大迫はスピードとスタミナを兼ねる。ただ、記録は関係ないレースだけに、他選手からマークをされる存在だ。設楽は7月のゴールドコーストで2時間7分50秒と好調。18年ジャカルタ・アジア大会金メダリストの井上は暑さに強く、耐久戦が予想されるMGCにも向く。服部は課題の終盤で粘れるかが、ポイント。トラックで実績がある佐藤も好調。37キロ以降に上りが続くだけに3代目山の神こと神野も中盤で粘れば、一発ある。

◆男子出場選手◆

※タイムは自己記録

大迫傑(27=ナイキ) 2時間5分50秒「ラスト5キロからレースが動く」

設楽悠太(27=ホンダ) 2時間6分11秒「前半10キロ自分のリズムで走る」

井上大仁(26=MHPS) 2時間6分54秒「坂の仕掛けに耐えて勝負する」

服部勇馬(25=トヨタ自動車) 2時間7分27秒「安定した結果を出すのが強み」

今井正人(35=トヨタ自動車九州) 2時間7分39秒「勝負どころで攻めの走りする」

藤本拓(29=トヨタ自動車) 2時間7分57秒「それなりに楽しみ見い出し走る」

木滑良(28=MHPS) 2時間8分8秒「最後5キロ走り切れば勝機ある」

中村匠吾(26=富士通) 2時間8分16秒「最後の2・195キロが勝負になる」

中本健太郎(36=安川電機) 2時間8分35秒「最年長。国際大会経験生かす」

山本憲二(29=マツダ) 2時間8分42秒「30人いるので気を抜かず集中」

宮脇千博(27=トヨタ自動車) 2時間8分45秒「最後まで気を引き締めて走る」

佐藤悠基(32=日清食品グループ) 2時間8分58秒「ラスト1メートルまで優勝争いする」

山本浩之(33=コニカミノルタ) 2時間9分12秒「MGC獲得した粘りを見せる」

上門大祐(25=大塚製薬) 2時間9分27秒「前半と後半の坂が勝負になる」

橋本崚(25=GMO) 2時間9分29秒「今大会はしっかり調整できた」

岩田勇治(31=MHPS) 2時間9分30秒「どんな状況でも引かない走り」

園田隼(30=黒崎播磨) 2時間9分34秒「仕掛けがある上り坂の勝負に」

荻野皓平(29=富士通) 2時間9分36秒「粘りで五輪出場権を獲得する」

村沢明伸(28=日清食品グループ) 2時間9分47秒「一発勝負。最初から最後まで」

福田穣(28=西鉄) 2時間9分52秒「いつも通り粘り生かして走る」

竹ノ内佳樹(27=NTT西日本) 2時間10分1秒「1キロ1キロ大切にして走りたい」

高久龍(26=ヤクルト) 2時間10分2秒「ゴールまで集中力切らさない」

大塚祥平(24=九電工) 2時間10分12秒「35キロ過ぎ疲れるので準備する」

神野大地(25=セルソース) 2時間10分18秒「積み重ねた成果を発揮したい」

堀尾謙介(22=トヨタ自動車) 2時間10分21秒「2回目だがスタミナ自信ある」

鈴木健吾(23=富士通) 2時間10分21秒「しっかり走り込み準備できた」

藤川拓也(26=中国電力) 2時間10分35秒「ケガなくタフなレースが得意」

河合代二(27=トーエネック) 2時間10分50秒「余計なことを考えず無でいく」

岡本直己(35=中国電力) 2時間11分29秒「最後5キロの上り勝負できれば」

谷川智浩(30=コニカミノルタ) 2時間11分39秒「水道橋の上り坂が大事になる」

※一色恭志(25=GMO)が調整不足のため欠場

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大迫傑「足が残っていなくて…」最後に力尽き3位

3位でゴールし膝に手をつく大迫(撮影・鈴木みどり)

<陸上:男子マラソングランドチャンピオンシップ>◇15日◇明治神宮外苑発着42・195キロ

大迫傑(27=ナイキ)は最後に力尽きて3位。「力負け。真摯に受け止めたい」と振り返った。

残り2キロを切ったあたりで一旦は先頭に並びかけたが、再び引き離され、「足が残っていなくてきつかった。最後に短い坂で出られてしまった」。2位争いでも後れを取った。

東京オリンピック(五輪)出場は当確とならなかったが、「MGCファイナルチャレンジ」と呼ばれる指定3大会(福岡国際マラソン、東京マラソン、びわ湖毎日マラソン)で、設定タイム(2時間5分49秒)を突破した選手がいなければ代表権を得る。

自身のファイナルチャレンジ出走については「コーチと相談してしっかり考えていきたい」と話した。

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神野大地は失速し17位「まだまだ自分の力不足」

26キロ付近を通過する神野(撮影・滝沢徹郎)

<陸上:男子マラソングランドチャンピオンシップ>◇15日◇明治神宮外苑発着42・195キロ

青山学院時代に15年の箱根駅伝で5区区間新記録を樹立した『山の神』と呼ばれた神野大地(26=セルソース)は17位に終わった。

スタートから設楽が独走するレース展開の中、第2集団で積極的に先頭に出て仕掛けたが、中盤以降は失速した。東京五輪を目指すために、実業団を辞めてプロになって準備してきた。

今回のレースでは結果は出なかったが「力は出し切ったので結果は受け入れたい。力及ばなかったけど、何もできなかったわけじゃない。悔しいけど、また次の目標を見つけてやっていきたい。今回の選考レースも難なくクリアしていくような強い選手にならないと世界で勝負できない。まだまだ自分の力不足。もっと上を目指して力をつけていく必要がある」と、今回の結果も次へ糧にする決意だ。

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