日刊スポーツ

朝比奈沙羅が涙「死ぬ気でやっても…」素根に5連敗

日本、柔道混合団体で優勝 韓国との決勝制す

<柔道:アジア・パシフィック選手権>◇23日◇UAE・フジャイラ

混合団体が行われ、日本が優勝した。準決勝でモンゴルを退けると、韓国との決勝を4-2で制した。

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泉真生と増山香補が優勝 柔道アジア選手権

<柔道:アジア・パシフィック選手権>◇22日◇UAE・フジャイラ

女子で78キロ級の泉真生(コマツ)が決勝で中国選手を破って優勝した。78キロ超級の井上あかり(JR東日本)は3位だった。

男子で90キロ級の増山香補(明大)は決勝でタジキスタン選手に勝って優勝。100キロ級の関根聖隆(筑波大)は1回戦で敗退した。

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朝比奈沙羅が涙「死ぬ気でやっても…」素根に5連敗

反則負けで優勝を逃し、悔しそうな表情の朝比奈(撮影・鈴木みどり)

<柔道:世界選手権代表最終選考会兼全日本女子選手権>◇21日◇横浜文化体育館

本当の戦いはこれからだ。18年世界選手権78キロ超級金メダルの朝比奈沙羅(22=パーク24)は決勝で、18年アジア大会同金メダルの素根輝(そね・あきら、18=環太平洋大)に敗れた。延長に突入し、9分5秒の激闘となったが最後は力尽きた。

規定の4分間は素根の左釣り手を封じたが、延長に入ると組み手ばかり意識し過ぎて技出しが遅くなった。最後は素根の大内刈りで腹ばいになり、3つ目の指導をもらい勝負あり。素根に対して5連敗となった朝比奈は「負けは負け。良いところは伸ばして、苦手はつぶしていかないといけない…。東京五輪まで時間もない。死ぬ気でやってもやられるため、(次は)殺す気で勝負しないといけない」と必死に前を向き、気持ちを奮い立たせた。

この日は特別だった。麻酔医の父と歯科医の母を持ち、幼少期からの夢が五輪金メダルと医師になることだった。東京・渋谷教育渋谷高時代から在宅人工呼吸管理患者らとボランティア活動「プロジェクト・パピー」を通じて触れ合ってきた。毎夏のキャンプで一緒にバーベキューをするなど交流を深め、昨年に続き、今大会も患者やその家族を招待した。「柔道家として少しでも元気や勇気を届けたい」と、勝利を届ける覚悟で臨んだ。応援に駆けつけた田川晃夫さん(16)は「沙羅ちゃんの試合を見てパワーをもらった。いつもの優しい笑顔が、真剣な表情で格好良かった」と話していた。

大会後の強化委員会で、朝比奈と素根の2人が世界選手権代表に選出された。女子代表の増地監督は2人の序列について「ない」とした。東京五輪まであと1年3カ月。22歳の世界女王は「前だけを見て、悔いのないようにやるだけ」と自身に活を入れて、涙ながらに会場を後にした。【峯岸佑樹】

優勝した素根(手前)の表彰を浮かない表情で見る朝比奈(撮影・鈴木みどり)
朝比奈沙羅が全日本女子選手兼に招待した田川晃夫さん(中央)ら(撮影・峯岸佑樹)

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素根輝が9分超の激闘制し初世界切符「最後に笑う」

優勝した素根は皇后杯を手に笑顔(撮影・鈴木みどり)

<柔道:世界選手権代表最終選考会兼全日本女子選手権>◇21日◇横浜文化体育館女子78キロ超級

「最重量級のホープ」が、個人で初の世界切符をつかんだ。女子78キロ超級アジア女王の素根輝(あきら、18=環太平洋大)が決勝で、同世界女王の朝比奈沙羅(22=パーク24)を下し、2連覇を達成。

延長の末、9分超の激闘を制し、対朝比奈を5連勝とした。連覇は10年に9連覇を果たした塚田真希以来となった。大会後の強化委員会で世界選手権東京大会(8月25日開幕、日本武道館)の女子代表が発表された。

   ◇   ◇   ◇   

優勝を決めた瞬間、力強く右拳を握った。素根は朝比奈に5連勝とし、初の世界選手権代表に決まった。「ようやく東京五輪のスタートに立った。本当の勝負が始まる」。真っ白な歯を見せながらも、表情を引き締めた。9分5秒の死闘だった。延長戦に突入し、互いに指導2ずつで迎えた8分過ぎ、得意の大外刈りと背負い投げを連発。引き手を持たせてもらえない中、前へ、前へ-。武器の粘り強いスタミナと意地と気持ちで、最後は朝比奈の右足を払ってのけ反らせ、指導3の勝利を引き寄せた。

1年前の悔しさが成長につながった。昨年4月の選抜体重別選手権と全日本選手権でも朝比奈に2連勝したが、世界選手権の個人代表に選出されなかった。それでも腐らずに「前だけ見る」と心に決め、同9月のアジア大会などの国際大会を制して、実績を積みながら世界女王の背中を猛追した。

今年4月には故郷の福岡県を離れ、岡山県の環太平洋大に進学。食事面をサポートする母美香さん、稽古相手の兄勝さんとともに引っ越した。実家の車庫を改造した「虎の穴」で使っていた重さ100キロの筋力トレーニング機器なども全て持ち込んで、あえて環境の変化をなくした。稽古や試合では“平成の三四郎”こと92年バルセロナ五輪男子71キロ級金メダルの古賀稔彦氏から「気持ちを上げる」助言を受け、冷静さを保った。「東京五輪金メダルを絶対に夢で終わらせない。最後に笑うのは自分」。福岡で「無敵女子」と呼ばれた18歳は、さらなる進化を誓った。【峯岸佑樹】

朝比奈(上)を攻める素根(撮影・鈴木みどり)
朝比奈(右)と組み合う素根(撮影・鈴木みどり)

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素根輝が2連覇 同階級世界女王の朝比奈沙羅下す

連覇を達成した素根はメダルを手に笑顔を見せる(撮影・鈴木みどり)

<柔道:世界選手権代表最終選考会兼全日本女子選手権>◇21日◇横浜文化体育館

女子78キロ超級アジア女王の素根輝(18=環太平洋大)が決勝で、同階級世界女王の朝比奈沙羅(22=パーク24)を下し、2連覇を達成した。

素根は朝比奈に対して5連勝となった。

朝比奈(右)を攻める素根(撮影・鈴木みどり)
優勝した素根(手前)の表彰を浮かない表情で見る朝比奈(撮影・鈴木みどり)

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リオ銅中村美里が初戦で敗れる「対応出来なかった」

2回戦敗退で目を真っ赤にして取材に応じる中村美里(撮影・峯岸佑樹)

<柔道:世界選手権代表最終選考会兼全日本女子選手権>◇21日◇横浜文化体育館

08年北京、16年リオデジャネイロ五輪女子52キロ級銅メダルで初出場の中村美里(29=三井住友海上)が初戦の2回戦で、18年世界ジュニア選手権78キロ超級金メダルの児玉ひかる(20=東海大)に敗れた。

中村は巧みな組み手とスピードある足技で、体重差53キロの児玉に対して積極的に攻撃。指導2を受けて延長戦に突入し、試合開始6分13秒に払い腰で優勢負けを喫した。「本気で挑戦する最後の大会として覚悟を持って臨んだが、自分の間合いが取れず、想像以上に対応出来なかった」。試合後、目を真っ赤にしてこう振り返った。

リオ五輪後の17年4月、「柔道以外の視野を広げたい」との理由で筑波大大学院に入学。スポーツ健康システムマネジメントを専攻し、12年ロンドン五輪女子57キロ級金メダルの松本薫さん(31)らを題材に「柔道トップアスリートの妊娠・出産」を研究した。昨年10月の福井国体以降は、本格的に修士論文の執筆に着手し、稽古は12月頃から週1~2日に激減した。論文提出を終えた2月から強度の高い稽古を始め、無差別対策として体重も増量させた。同じ所属で70キロ級世界選手権2連覇の新井千鶴(25)らと組み合い、鍛錬した。3月の東京都予選は8強入りして本戦の出場権を獲得。出場37人中、29歳の最年長で体重57キロの最軽量での挑戦となった。

「皇后杯(=全日本女子選手権)出場は、五輪金メダルと同じぐらい夢だった。(本戦出場が決まった瞬間に)夢はかなったけど、出るとなったら負けず嫌いな性格なので『勝ちたい』という気持ちが出た。正直、悔しい」

世界選手権を3度制し、五輪3大会に出場した中村は、全日本柔道連盟の強化指定選手も外れ、競技との向き合い方も変わった。「強化でトップを目指すだけが全てではない。柔道が好きな気持ち、その思いがある限り『一生現役』の気持ち。面白さも追求したい」。将来は指導者への道も模索しながら、平成元年生まれの29歳の柔道家が、平成最後の大舞台を終えた。

初戦で児玉に敗れた中村(下)(撮影・鈴木みどり)
初戦で児玉(右)に敗れた中村(撮影・鈴木みどり)

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古賀玄暉が優勝 柔道アジア・パシフィック選手権

<柔道:アジア・パシフィック選手権>◇20日◇UAE・フジャイラ

開幕し、男子は60キロ級の古賀玄暉(日体大)が決勝で台湾選手を下して優勝した。66キロ級の田川兼三(了徳寺学園職)は2回戦で敗退した。

女子は57キロ級の富沢佳奈(東海大)が決勝で北朝鮮選手に敗れて準優勝。48キロ級の坂上綾(三井住友海上)と52キロ級の立川莉奈(福岡県警)は3位だった。

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最軽量のリオ銅中村美里、順当勝利で朝比奈と激突も

全日本女子選手権の出場権を獲得した中村美里(撮影・峯岸佑樹)

2つ目の夢に挑む-。08年北京、16年リオデジャネイロ五輪柔道女子52キロ級銅メダルの中村美里(29=三井住友海上)が21日に横浜文化体育館で行われる、体重無差別で争う「全日本女子選手権」に初出場する。

出場37人中、29歳の最年長で56キロの最軽量で夢の大舞台へ挑戦する。中村は「皇后杯(=全日本女子選手権)出場は、五輪金メダルと同じぐらい夢だった。挑戦出来ることが本当にうれしく、心身ともに楽しみたい。柔道は体の大きさだけでないことも証明したい」と意気込みを示した。

リオ五輪後の17年4月、「柔道以外の視野を広げたい」との理由で筑波大大学院に入学。スポーツ健康システムマネジメントを専攻し、12年ロンドン五輪女子57キロ級金メダルの松本薫さん(31)らを題材に「柔道トップアスリートの妊娠・出産」を研究した。昨年10月の福井国体以降は、本格的に修士論文の執筆に着手し、稽古は12月頃から週1~2日に激減した。論文提出を終えた2月から強度の高い稽古を始め、無差別対策として体重も56キロまで増量させた。同じ所属で70キロ級世界選手権2連覇の新井千鶴(25)らと組み合い、鍛錬した。3月の東京都予選では、巧みな組み手とスピードある足技を積極的に繰り出し、「中村らしさ」を貫いた。延長戦が続いたが、8強入りして本戦の出場権を獲得した。軽量級では異例の挑戦だったこともあり、体の回復にこれまで以上の時間を要した。「ダメージが大きすぎて『事故』かというぐらいの疲労感だった」。

本戦では1回戦から18年世界ジュニア選手権78キロ超級金メダルで体重110キロの児玉ひかる(20=東海大)と対戦する。順当に進めば準決勝で東京・渋谷教育渋谷高の後輩で78キロ超級世界女王の朝比奈沙羅(22=パーク24)と激突する可能性もある。

世界選手権の代表争いは事実上、朝比奈とアジア女王の素根輝(そね・あきら、18=環太平洋大)との一騎打ちだ。その一方で、世界選手権を3度制し、五輪3大会に出場した中村は柔道との向き合い方も変わり、もう1つの夢にチャレンジする。「強化でトップを目指すだけが全てではない。柔道が好きな気持ち、その思いがある限り現役を続けたい」。平成元年生まれの29歳の柔道家が、平成最後の大舞台へ挑む。

全日本女子選手権東京都予選で78キロ超級の選手と対戦する中村美里(右)(撮影・峯岸佑樹)

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素根輝2連覇へ朝比奈投げ誓う「何が何でも一本」

全日本女子選手権2連覇に向けて意気込む素根輝(撮影・峯岸佑樹)

体重無差別で争い、19年世界選手権東京大会(8月25日開幕、日本武道館)女子78キロ超級代表最終選考会を兼ねた柔道の全日本女子選手権は21日、横浜文化体育館で行われる。

2連覇を狙うアジア女王の素根輝(そね・あきら、18=環太平洋大)が20日、会場で会見を行い、18年世界選手権覇者の朝比奈沙羅(22=パーク24)へ5連勝を誓った。

黒のパンツスーツ姿で出席した素根は「世界選手権に向けて結果が大事なので、優勝だけを目指してやる。(朝比奈とは)直接対決で投げて勝つことが一番大きなアピールになるので、(決勝で戦う場合は)何が何でも一本を取る気持ちで試合する」と気合を入れた。

昨年は選抜体重別選手権と全日本女子選手権で朝比奈に連勝したが、それまでの国際大会などの実績により、世界選手権の個人代表にはなれず、2番手として混合団体代表に選出された。「すごく悔しい思いをした。それ以降、来年は(世界選手権に)『絶対に出るんだ』という強い気持ちでやってきた」。

4月から岡山にある環太平洋大に進学した。食事や生活面をサポートする母美香さんと稽古相手の兄勝さんとともに引っ越した。福岡・久留米市の実家と同じように、自宅の2部屋を練習部屋にして、トレーニング器具も持ち込み日々鍛錬する。「良い意味で環境の変化もなく、精神的にも心強い。最後は気持ちで勝ちきる」。世界女王とほぼ横並びとなったアジア女王は、世界選手権代表1番手を奪いに行く。

全日本女子選手権への意気込みを語る素根輝(撮影・峯岸佑樹)

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柔道事故巡り連盟提訴、内部通報窓口は「期待外れ」

記者会見を行った原告の父親(撮影・峯岸佑樹)

柔道事故を巡って、全日本柔道連盟(全柔連)が内部通報の対応義務を怠ったとして、福岡市の男性(18)とその父親(48)が19日、全柔連にそれぞれ165万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。

訴状によると、当時中学生だった男性は14年10月、福岡市にある道場の男性指導者から片羽絞めをかけられて失神した。男性はその後、迷走神経性失神、前頸部(けいぶ)擦過傷の診断を受けた。父親はこの件について、福岡県柔道協会に相談したが、被害者と加害者の説明が食い違い「事実関係を両者で話し合ってから来い」などと言われた。父親は翌11月に全柔連の内部通報窓口(コンプライアンスホットライン)に相談したが、福岡県協会に調査を依頼。事実上無視された形で、全柔連は被害者への聞き取りをせずに「指導者への説明は信用出来る」とした福岡県協会の調査に基づき「問題ない」と判断した。

この日、東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見を行った原告の父親は「全柔連は被害者の話を全く聞かず、自ら調査を行わないなんて本当に頭にくる。裁判は出来ればしたくなかった。あまりにも対話をしてくれなく本当に残念。息子は死の恐怖を味わい『走馬灯を見た』とまで言っている」と述べた。全柔連は13年に女子代表監督らの選手への暴力・ハラスメント行為が問題となり、暴力などの相談を受ける内部通報窓口を設置した。これを受けて父親は「しっかり向き合ってくれる組織で、最初は『こういった窓口があって良かった』と思ったが、全くの期待外れ。本当に信じられない。名ばかりで、こんな看板なら、ない方が良いと思う」と怒りに身を震わせた。

この事故を巡る損害賠償訴訟に関しては18年6月に指導者が4万4000円を支払う判決が確定している。

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村尾三四郎混戦90キロ級で五輪へ「成長とめない」

世界選手権への意気込みを語る村尾三四郎(撮影・峯岸佑樹)

柔道の19年世界選手権東京大会(8月25日開幕、日本武道館)混合団体男子90キロ級代表の村尾三四郎(18=東海大)が18日、横浜市の桐蔭横浜大での強化合宿に参加し、吸収力の高さを伺わせた。

桐蔭横浜大の学生らと打ち込みや乱取りなどを行い、約2時間汗を流した。時折、男子代表の井上康生監督(40)から組み手の指導を受けると、すぐに実行して好感触をつかんでいた。「成長を止めてはいけない」と常々口にする18歳は今春、神奈川・桐蔭学園から20年東京五輪を見据えて柔道の名門の東海大に進学した。「毎日が勉強。高校時代とは違う環境で(東海大の)先輩たちの乱取りを見て、いろいろなことが学べる。多くのことを吸収出来ている」と充実感を漂わせた。

東海大では、卒業後も拠点とする16年リオデジャネイロ五輪男子100キロ級銅メダルの羽賀龍之介(27=旭化成)や、18年世界選手権同金メダルのウルフ・アロン(23=了徳寺学園職)ら実力者たちに頭を下げて、組み手などの指導を受けているという。

今年の世界選手権は個人代表ではなく、団体代表だったが「選ばれたことはラッキー」と前向きに捉え、東京五輪と同じ日本武道館の畳上に立てることで「絶対に良い経験になる。そういう意味でも1試合1試合を大切に、かみしめながら戦いたい」と意気込んだ。

この日の稽古途中には、大学と同じ敷地内にある桐蔭学園柔道部の高松正裕監督が激励に訪れ、村尾はすぐにあいさつへ出向き、アドバイスを求めていた。ある柔道関係者は「これほど賢い柔道家もなかなかいない」と言うほど、日々、自己分析して柔道に取り組んでいるという。東京五輪まで残り1年4カ月。混戦模様の90キロ級において、目の離せない存在になりそうだ。

稽古途中に恩師の高松正裕監督と話し込む村尾三四郎(右)(撮影・峯岸佑樹)

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柔道向翔一郎 世界王者の「赤ゼッケン取りいく」

世界選手権への意気込みを語る向翔一郎(撮影・峯岸佑樹)

柔道の19年世界選手権東京大会(8月25日開幕、日本武道館)男子90キロ級代表の向翔一郎(23=ALSOK)が18日、世界王者が背負う「赤ゼッケン」を切望した。

横浜市の桐蔭横浜大での強化合宿に参加し、4カ月後の大舞台に向けて「ここで勝ちきらないといけない。赤ゼッケンを取りにいくための練習を積む」と静かに闘志を燃やした。17日には同合宿で書道に挑戦し、好きな言葉として自身の名前の「翔」を繰り返し練習していたが、本番のうちわには世界王者への強い思いを込めて「赤ゼッケン」と書いていた。

枠にはまらないスタイルを貫く「柔道界の異端児」だ。キックボクシング仕込みの頭を左右に振る独特の間合いで相手を揺さぶる。6日の全日本選抜体重別選手権決勝では、18年世界選手権銅メダルの長沢憲大(25=パーク24)から指導3を引き出し、世界選手権個人代表の切符を初めて手にした。18年世界選手権は男女混合団体代表として2連覇に貢献したが、「団体より個人」と何度も口にしていた。

男子代表の井上康生監督(40)は向について「良い意味で勝負師。勝負するものは異常な部分を持つことが大事」と評したが、一方で「日本代表としての責任もある。それを背負って、選手として人間として成長させるようにアプローチをかけていきたい」と話した。この日の稽古では、井上監督が向に熱血指導し、直々に組み合って釣り手の使い方を教えていた。

書道に挑戦し、好きな言葉の「赤ゼッケン」と書いた向翔一郎(撮影・峯岸佑樹)

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高藤、書も「一」こだわる もちろん五輪で1番に

書道に挑戦して、うちわに思いを書いた柔道男子代表(撮影・峯岸佑樹)

書の文字を体現する。柔道男子日本代表が17日、神奈川・平塚市での強化合宿で書道に挑戦した。60キロ級世界選手権2連覇の高藤直寿(25=パーク24)は、うちわに好きな言葉の「一」を豪快に書いた。16日に20年東京オリンピック(五輪)の詳細日程が発表され、日本選手団の「金メダル1号」の期待も懸かり「もちろん(五輪で)1番になりたいから。銭湯やロッカーの番号も1にこだわる」と説明した。

14年に規律違反で強化指定降格処分を受けた時にも自宅で書道に取り組み、心身を清めたという。腰部を負傷して7日の全日本選抜体重別選手権を欠場したが、これまでの実績が加味されて世界選手権代表に選出された。「世間から『けがなんてしていたら駄目』と厳しい言葉をもらった。目の前の試合に勝ち、気を抜かずに戦いたい」と4カ月後の大舞台へ向け、気合を入れた。また、女子代表はこの日、都内でボルダリングを初体験した。

「一」を書く高藤直寿(撮影・峯岸佑樹)

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金と医師の夢追う朝比奈沙羅、柔道全日本に患者招待

18年世界選手権で金メダルを獲得し、笑みを浮かべる朝比奈沙羅(18年9月撮影)

柔道女子78キロ超級世界女王の朝比奈沙羅(22=パーク24)が16日、全日本柔道連盟を通じて体重無差別で争う全日本女子選手権(21日、横浜文化体育館)に在宅人工呼吸管理患者とその家族を招待することを発表した。

朝比奈は麻酔医の父と歯科医の母を持ち、幼少期からの夢が五輪(オリンピック)金メダルと医師になることだった。東京・渋谷教育渋谷高時代から在宅人工呼吸管理患者らとボランティア活動「プロジェクト・パピー」を通じて触れ合ってきた。キャンプで一緒にバーベキューをするなど交流を深め、昨年も患者ら13人を会場に招待した。豪快な柔道を見せることで「少しでも元気や勇気を届けることが出来れば」と話していた。

2連覇を狙った前大会は準決勝でアジア女王の素根輝(18=環太平洋大)に敗れたが、それまでの実績が加味されて世界選手権代表に選出された。6日の全日本選抜体重別選手権決勝でも素根に敗れたが、世界女王としての誇りと挑戦者の気持ちを持ってリベンジに執念を燃やす。朝比奈は「試合に集中し、1戦1戦を大切に戦い抜きます」とコメントした。

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柔道新井千鶴「絶対女王」への道 究極の心技体求め

代表合宿で世界選手権への意気込みを語る新井千鶴(撮影・峯岸佑樹)

柔道女子代表は16日、東京・味の素ナショナルトレーニングセンターでの強化合宿を公開した。女子70キロ級で世界選手権2連覇の新井千鶴(25=三井住友海上)は「絶対女王」となるための進化を誓った。

昨年9月の世界選手権と同11月のグランドスラム(GS)大阪大会を制し、19年世界選手権(8月2日開幕、日本武道館)代表に早期内定した。実戦から約5カ月離れているが「自分と向き合って、どうしたら強くなるかを常に考えていた」と振り返った。究極の心技体を求めて、2月には単身でドイツ合宿に参加したという。

代表を逃した16年リオデジャネイロ五輪前年の15年世界選手権は5位に沈んだ。「五輪前年」の世界選手権の重みを身に染みて感じ、4カ月後の大舞台への気持ちはこれまで以上に強い。「2年前に五輪代表になれなかったことは絶対に忘れない。成長して強くなった自分を見せたい」。世界女王は目の前の3連覇に向けて、静かに闘志を燃やした。

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阿部詩の左肩痛が再発 V2狙う世界選へ状態確認

阿部詩(2018年11月22日撮影)

柔道女子日本代表の増地克之監督(48)は16日、52キロ級世界女王の阿部詩(18=日体大)が2月に負傷した左肩を再び痛めたことを明かした。

都内での女子代表合宿に不参加だった阿部について「稽古中に痛めて違和感があるとのことだったため、無理をさせずにしっかり治すことを優先させた」と説明。2連覇を狙う世界選手権(8月25日開幕、日本武道館)前の5月のグランドスラム・バクー大会に出場の意向を示していたが「良い状態で本番(世界選手権)を迎えられるように、本人や所属と話し合って決めていきたい」と話した。

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井上康生監督ら安倍首相表敬「強さ世界にアピール」

柔道男子日本代表の井上康生監督ら首脳陣が11日、官邸で安倍晋三首相を表敬訪問し、世界選手権(8月25日~9月1日・日本武道館)と2020年東京オリンピック(五輪)での活躍を誓った。同監督は「着々と準備を進めている。柔道を通じて日本の素晴らしさ、強さを世界にアピールできるよう頑張りたい」と決意を述べた。

東京五輪の柔道も会場は日本武道館。開会式翌日の7月25日から始まる。安倍首相は「柔道ニッポンの強さを世界に発信し、メダルラッシュを期待している。重圧をはねのけて、日本柔道ここにありを示していただきたい」と激励した。

女子日本代表の増地克之監督と全日本柔道連盟の金野潤強化委員長も同席。同強化委員長は、世界選手権をPRするピンバッジを安倍首相に贈った。

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阿部一二三は弱い部分認めて真の強さを/古賀稔彦

優勝した丸山(左)と準優勝の阿部(撮影・梅根麻紀)

<柔道:世界選手権代表最終選考会兼全日本選抜体重別選手権>◇最終日◇7日◇福岡国際センター

世界選手権2連覇の阿部一二三(21=日体大)が、決勝で丸山城志郎(25=ミキハウス)に敗れた。激しい技の攻防が続いた13分23秒、丸山が捨て身でしかけた「浮き技」で技ありを奪われた。

    ◇    ◇    ◇

若さの勢いで勝ち続ける選手が、突然勝てなくなることがある。研究され、通用していた技が効かなくなるのだ。本当に強くなるには、必ず通る道。乗り越えれば1つ上のステージにいける。今の阿部選手には、強くなる可能性がある。

私は金メダルを期待された88年ソウル・オリンピック(五輪)で敗れ、苦しんだ。思い通りに背負い投げが通じず「こんなはずはない」と悩んだ。結局は組み手の種類を増やすことと、技の幅を広げることに取り組んだ。地道な努力でしか、壁は破れない。

勝てなくなったのが五輪直前でなくてよかった。今なら時間はある。十分に1ステージ上にいける。怖いのは相手に研究されている技を力任せにかけること。故障の原因になる。自分の弱い部分を素直に認めて真剣に向き合えば、勢いだけでない真の強さを持てる。

センスはあるものの柔道スタイルが淡泊だった丸山選手は「倒すべき相手がいる」ことで安定した強さを手に入れた。昨年結婚したのも大きかった。「倒すべき」阿部と「守るべき」家族が、この1年で丸山選手を戦う男に変えた。今回は東京五輪代表を占う大事な大会だったが、五輪代表の座を争う戦いは始まったばかりだ。(一般社団法人古賀塾塾長)

◆古賀稔彦(こが・としひこ)1967年(昭42)11月21日、佐賀県生まれ。東京・世田谷学園高-日体大。一本背負い投げなど切れ味抜群の技で「平成の三四郎」と呼ばれ、92年バルセロナ五輪金、世界選手権3回優勝など71キロ級、78キロ級で活躍した。90年には体重無差別の全日本選手権で準優勝。引退後は代表コーチとして金メダリストを育て、現在は環太平洋大女子柔道部総監督。

決勝で丸山に敗れ悔しがる阿部(撮影・梅根麻紀)

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丸山城志郎が阿部破りV2、貫いた「美しい柔道」

ゴールデンスコアのすえ阿部一二三を破って男子66キロ級を制した丸山城志郎は歓喜の表情(撮影・梅根麻紀)

<柔道:世界選手権代表最終選考会兼全日本選抜体重別選手権>◇最終日◇7日◇福岡国際センター

男子66キロ級は丸山城志郎(25=ミキハウス)が決勝で世界選手権2連覇中の阿部一二三(21=日体大)に延長で優勢勝ちし、2年連続2度目の優勝を飾った。

得意の内股で崩す連続攻撃で13分23秒の激闘を制し、初の世界選手権(8月25日開幕、日本武道館)代表に決まった。男子73キロ級は16年リオデジャネイロ・オリンピック(五輪)金メダルの大野将平、女子57キロ級は世界女王の芳田司が制覇。大会後の強化委員会で最重量階級を除く世界選手権代表14人が決定した。

  ◇    ◇    ◇

最後は意地だった-。丸山は序盤から得意の内股で崩す連続技で攻めたが、阿部も耐えて一進一退の攻防が続いた。場外に出て審判の「待て」がかかる度に大きく深呼吸。延長9分23秒。ともえ投げから崩す浮き技で技ありを奪って、勝負に終止符を打った。「最後は意地と意地のぶつかり合いだった。遅咲きだけど(世界選手権代表への)気持ちの勝負で勝ったことは大きな自信になる」と胸を張った。

これまで阿部の陰に隠れ、昨年8月のアジア大会の敗戦を機に柔道スタイルを変えたことで急成長を遂げた。相手に合わせる柔道から自身の柔道を貫くことに決め、鋭い内股を軸とした「美しい柔道」を追求した。相手の中に入り込んで左足を大きく上げる得意技で、そのキレ味の良さから母校天理大の穴井監督は「日本刀のような鋭さ」と表現した。さらに、投げきる力をつけるために90キロ級の選手らとも組み合って柔道力を強化し、同11月のグランドスラム(GS)大阪大会決勝で阿部に勝利するなど国際大会3連勝。昨年の世界選手権以降、優勝を逃していた世界王者を猛追するライバルとして急浮上した。

昨秋に結婚したことで精神的にも成長した。妻が食事面のサポートをしてくれることで「柔道により集中出来る環境になった」と言う。今大会は「柔道人生を左右する大事な試合」と位置づけ、5日の最終調整では珍しく、81キロ級の兄剛毅の胸を借りた。阿部との直接対決を制し、1番手で世界選手権代表に選出されたが慢心はない。「ここからが本番。世界中の人に強い姿を見せて、東京五輪で勝ちきりたい」。柔和な表情を見せる25歳の苦労人が、1年3カ月後の大舞台を見据えて強い決意を示した。【峯岸佑樹】

◆丸山城志郎(まるやま・じょうしろう)1993年(平5)8月11日、宮崎県生まれ。3歳から柔道を始める。福岡・沖学園高-天理大-ミキハウス。18年選抜体重別優勝、同GS大阪大会優勝、同マスターズ優勝。左組み。得意技は内股。趣味はドライブと釣り。父は92年バルセロナ五輪65キロ級代表の顕志氏、兄は81キロ級の剛毅。167センチ。血液型A。

◆柔道世界選手権の男女代表選考 男女14階級のうち最重量級を除く12階級は、今年の欧州国際大会などの成績と最終選考会の今大会の順位が加味され、7日の強化委員会で決定した。最重量級はともに無差別で争う全日本女子選手権(21日)と全日本選手権(29日)の結果を踏まえて決める。原則、各階級1枠だが2階級で1人ずつ追加できる。20年東京五輪代表候補は各階級2~3人程度に絞られ、選考方法は6月の理事会で決まる見通し。

阿部一二三の足技に返し技を決める丸山城志郎(撮影・梅根麻紀)

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阿部兄妹、大野ら14人 柔道世界選手権代表一覧

決勝で丸山に敗れ悔しがる阿部(撮影・梅根麻紀)

全日本柔道連盟(全柔連)は7日、19年世界選手権東京大会(8月25日開幕、日本武道館)男女個人日本代表14人を発表した。

福岡市で行われた世界選手権の最終選考を兼ねた全日本選抜体重別選手権後に強化委員会が行われ、男子66キロ級で世界選手権2連覇の阿部一二三(日体大)、男子73キロ級で16年リオデジャネイロ五輪金メダルの大野将平(旭化成)、女子57キロ級で世界女王の芳田司(コマツ)らを選出した。

全柔連の金野潤強化委員長は会見で20年東京五輪を見据える上で「重要な大会となる。五輪で戦う上でも(五輪会場と同じ日本武道館で行われる)世界選手権を経験することは大きなアドバンテージとなる。出場選手はしっかりとそれをいかしてつなげてもらいたい」と話した。

昨年の世界選手権と同11月のグランドスラム(GS)大阪大会を制した女子52キロ級の阿部詩(日体大)と同70キロ級の新井千鶴(三井住友海上)は既に代表を決めていた。女子78キロ超級は21日の全日本女子選手権、男子100キロ超級は29日の全日本選手権後に決定。男女とも各階級2人を上限に計9人ずつ派遣でき、女子の残り2枠は21日に発表される。

また、3連覇を狙う男女混合団体メンバーには、男子73キロ級の橋本壮市(パーク24)、同90キロ級の村尾三四郎(東海大)が選ばれた。代表選手は以下の通り。

▼男子 60キロ級高藤直寿(パーク24)、永山竜樹(了徳寺学園職)、66キロ級丸山城志郎(ミキハウス)、阿部、73キロ級大野、81キロ級藤原崇太郎(日体大)、90キロ級向翔一郎(ALSOK)、100キロ級ウルフ・アロン(了徳寺学園職)

▼女子 48キロ級渡名喜風南(パーク24)、52キロ級阿部、57キロ級芳田、63キロ級田代未来(コマツ)、70キロ級新井、78キロ級浜田尚里(自衛隊)

男子73キロ級 橋本壮一の足技を上手くかわす大野将平(右)(撮影・梅根麻紀)

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大野将平3年ぶり3度目V「我慢の柔道で勝てた」

男子73キロ級 橋本壮一の足技を上手くかわす大野将平(右)(撮影・梅根麻紀)

<柔道:世界選手権代表最終選考会兼全日本選抜体重別選手権>◇最終日◇7日◇福岡国際センター

男子73キロ級決勝はリオ五輪金メダルの大野将平(27=旭化成)が9分30秒の長期戦で17年世界王者の橋本を下し、3年ぶり3度目の優勝を果たした。

激しい組み手争いを制し「我慢の柔道で勝てたことは成長。勝利をモノに出来て安心した」と振り返った。同五輪後は、母校の天理大大学院に進むために第一線を離れた。再び、世界代表に復帰し「勝てば勝つほど苦しさが増す。自分を追い詰め、その先の世界を見たい」と話した。

橋本壮一を隅落としで決める大野将平(撮影・梅根麻紀)

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阿部一二三「踏ん張り時」研究され圧倒的強さに陰り

決勝で丸山に敗れ悔しがる阿部(撮影・梅根麻紀)

<柔道:世界選手権代表最終選考会兼全日本選抜体重別選手権>◇最終日◇7日◇福岡国際センター

世界選手権2連覇の阿部一二三(21=日体大)が、決勝で丸山城志郎(25=ミキハウス)に敗れた。激しい技の攻防が続いた13分23秒、丸山が捨て身でしかけた「浮き技」で技ありを奪われた。

雄たけびをあげるライバルの横で、目の前に広がる国際センターの天井をみつめた。「警戒はしていたけれど、投げられてしまった」。悔しさを押し殺すように淡々と言った。

1回戦、準決勝と一本勝ちして丸山と激突した。1回戦で痛めた左脇腹にテーピンをしていたが、序盤から積極的に攻めて相手に指導2がいった。10分には内股で相手を投げ、一度は技ありが宣告されたが取り消し。「なかったらなかったで、仕方ない」。試合を振り返りながら言った。

昨年の世界選手権2連覇で、妹詩(うた、18)との兄妹優勝も果たした。東京オリンピック(五輪)の金メダル候補として期待も高まったが、そこから勝てなくなった。昨年11月に行われたグランドスラム(GS)大阪大会決勝では丸山にこの日と同じような捨て身技で敗れた。さらに、今年2月のGSパリ大会では初戦でまさかの一本負けを喫した。

圧倒的な強さに陰りにみえているのは確か。国内外で注目され、対戦相手から徹底的に研究されているからだ。思うような組み手にならず、技を出す間合いがとれない。そして、勝てなくなる。全日本柔道連盟の金野潤強化委員長は「今の阿部は研究され、丸裸になっている。ここで頑張らないと」と話した。

92年バルセロナ五輪金メダリストで切れ味鋭い豪快な背負い投げで「平成の三四郎」と呼ばれた古賀稔彦氏は「強い選手なら誰でも経験すること。ここを越えれば、さらに1ステージ上の柔道ができる。真の強さを手にするチャンスでもある」と話す。

大会後の強化委員会で66キロ級で丸山に続く2番手として世界選手権代表に選ばれた。「今が踏ん張りどきだと思う。ここを乗り越えて五輪の金メダルを目指したい」と阿部。「令和の三四郎」への道は、この壁を乗り越えることから始まる。

優勝した丸山(左)と準優勝の阿部(撮影・梅根麻紀)

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原沢久喜が3年ぶりVも反省「最後は気合いだけ」

決勝で果敢に佐藤を攻める原沢(右)(撮影・梅根麻紀)

<柔道:世界選手権代表最終選考会兼全日本選抜体重別選手権>◇第1日◇6日◇福岡国際センター

3試合すべて延長で3年ぶりの優勝を果たした男子100キロ超級の原沢久喜(26)は「優勝はできたけれど、反省点が多い大会でした」と振り返った。

決勝は日大の後輩で普段けいこもする佐藤が相手。「お互い分かっていて、やりにくかった」。それでも10分21秒の長丁場を制し「1つでも多く技をかけることを考えた。最後は気合だけです」と苦笑いしながら話した。

優勝した原沢久喜(撮影・梅根麻紀)

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「異端児」向翔一郎が90キロ級V、素行猛省し成長

男子90キロ級で優勝を飾った向翔一郎は賞状を手にする(撮影・梅根麻紀)

<柔道:世界選手権代表最終選考会兼全日本選抜体重別選手権>◇第1日◇6日◇福岡国際センター

男子90キロ級決勝で向翔一郎(23=ALSOK)が18年世界選手権銅メダルの長沢憲大(25=パーク24)に指導3の反則勝ちを収め、2年ぶり2度目の優勝を飾った。

独特の柔道スタイルと強靱(きょうじん)なスタミナを武器に1回戦から3試合連続で延長戦を制し、世界選手権(8月25日開幕、日本武道館)代表に大きく前進した。男子100キロ超級は原沢久喜、女子78キロ超級は素根輝が制覇。大会最終日の7日に最重量級を除く男女6階級の代表が決まる。

   ◇   ◇   ◇

「柔道界の異端児」が進化を遂げた。向は頭を左右に振るキックボクシングの間合いで、隙を狙って猛獣のように襲いかかった。得意の背負い投げと多彩な足技を中心とした連続攻撃で圧力をかけ続けた。決勝延長1分44秒、長沢の3つ目の指導を引き出して勝負あり。両膝を畳につけ、両手で顔を覆って感極まった。「ここで負けたら東京オリンピック(五輪)はないと覚悟していた。初心に戻ったことで正解が分かった。支えてくれた人に感謝しかない」と涙した。

2月のグランドスラム(GS)パリ大会3位決定戦で長沢に敗れた。世界選手権代表の可能性も薄れて「食事が喉に通らなかった」。拠点とする母校日大の金野潤監督からも大学1年の時の方が「もっと練習していた」と指摘された。「凡事徹底」(当たり前のことを徹底的に行うこと)を合言葉に、練習量を増やして稽古に没頭した。今大会は、代表争いでほぼ横並びの長沢やリオ五輪金メダルのベイカー茉秋らライバルの対策をあえてせず、己の柔道だけに徹して優勝を手にした。

天真らんまんな性格で、柔道のみならず向流のスタイルを貫いてきた。発言や髪形なども個性的で周囲を驚かせることもあった。大学4年の夏には度々遅刻を繰り返したことで柔道部に出入り禁止。退寮も余儀なくされ、警視庁や国士舘大などでの1人出稽古生活が続いた。仲間の助けで3カ月後に金野監督に謝罪し、再び柔道部に受け入れられ、素行を猛省した。

学生時代は自身のことを「天才」と豪語していた23歳が今では、仲間への感謝の気持ちを常々口にする。初の個人での世界選手権代表も近づき「これまで迷惑をかけてきた人たちのためにも五輪で恩返ししたい。柔道で成長した姿を見せたい」と前を向く。混戦の90キロ級代表へ、あとは吉報を待つだけだ。【峯岸佑樹】

長沢憲大(右)を攻める向翔一郎(撮影・梅根麻紀)

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国内特有の難しさ「相性」どう良くするか/古賀稔彦

女子78キロ超級で今大会3連覇の素根輝はメダルを手に笑顔(撮影・梅根麻紀)

<柔道:世界選手権代表最終選考会兼全日本選抜体重別選手権>◇第1日◇6日◇福岡国際センター

東京五輪に向けて盛り上がる日本柔道を「平成の三四郎」が解説します。92年バルセロナ五輪金メダルの古賀稔彦氏(51)が、リオデジャネイロ五輪以来3年ぶりに評論家として日刊スポーツに登場。選手、指導者としての豊富な経験と確かな目で、読者に柔道を分かりやすく伝えます。

   ◇   ◇   ◇

海外の大会とは違った意味で、国内で勝つのは難しい。何度も同じ相手と対戦するうちに「相性」が生まれるからだ。組み手やスタイルで「得意」「苦手」ができる。いかに相手との相性をよくするかは、国内を勝ち抜く上で必須だ。

女子78キロ超級の素根選手は、昨年まで朝比奈選手に3連敗と「相性」がよくなかった。昨年のこの大会で勝ってからは、逆によくなった。素根選手に「勝ちパターン」ができたのだ。

2人の試合は常に「釣り手争い」。右組み(右手で相手の襟をとり、左手で袖をとる)の朝比奈選手と左組みの素根選手は「ケンカ四つ」になる。かつての素根選手は朝比奈選手に上から襟をとられ、何もできなくなっていた。逆に朝比奈選手の右手の上から自分の左手で襟をとることで逆の展開を可能にしたのだ。

もちろん、相手も上から襟をとろうとするから激しい「釣り手争い」になる。ただ、後半になって相手が根負けすると、素根選手が上から襟をとれるようになる。「長引けば勝てる」イメージができあがり、それが結果につながった。世界女王の朝比奈選手との「相性」がよくなったから、素根選手は優勝できた。(一般社団法人古賀塾塾長)

◆古賀稔彦(こが・としひこ)1967年(昭42)11月21日、佐賀県生まれ。東京・世田谷学園高-日体大。一本背負い投げなど切れ味抜群の技で「平成の三四郎」と呼ばれ、92年バルセロナ五輪金、世界選手権3回優勝など71キロ級、78キロ級で活躍した。90年には体重無差別の全日本選手権で準優勝。引退後は代表コーチとして金メダリストを育て、現在は環太平洋大女子柔道部総監督。

女子78キロ超級 必死に攻める素根輝に声をかける古賀稔彦氏(撮影・梅根麻紀)

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柔道素根輝が朝比奈下し3連覇 21日全日本に弾み

女子78キロ超級で今大会3連覇の素根輝はメダルを手に笑顔(撮影・梅根麻紀)

<柔道:世界選手権代表最終選考会兼全日本選抜体重別選手権>◇第1日◇6日◇福岡国際センター

女子78キロ超級決勝は素根輝が8分55秒の長期戦で朝比奈を下し、3連覇を果たした。激しい組み手争いにどちらも攻め手がなかったが、最後はアジア女王の素根が小外刈りで世界女王の朝比奈から技ありを奪取し、これで直接対決4連勝。

「体が自然に動いた。直接対決で勝ったのは(世界選手権代表への)アピールになる」と話した。もっとも、この階級の代表選考は21日の全日本女子選手権(横浜)に続く。「まだ次(全日本)があるので」と素根が言えば、朝比奈も「世界女王のプライドと挑戦者の気持ちを持って、臨みたい」と最終決戦に向けて話していた。

女子78キロ超級 決勝で朝比奈沙羅を必死に攻める素根輝(撮影・梅根麻紀)

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東京五輪仕様の薄青畳を使用、選手らに違和感なし

柔道の全日本体重別選手権で披露された新しい色合いの畳(撮影・梅根麻紀)

<柔道:世界選手権代表最終選考会兼全日本選抜体重別選手権>◇第1日◇6日◇福岡国際センター

今大会は来年の東京オリンピック(五輪)用の畳で行われた。国際柔道連盟(IJF)が観客やテレビ視聴者から見やすい色を検討。

試合場内は黄から青色柔道着と区別できるような薄い青色に変わった。中国企業の畳で、当初は「滑る」とも言われていたが、この日の選手たちに違和感はなし。男子100キロ超級優勝の原沢は「特に滑ることもなく、問題はなかった」と話した。五輪用畳は、8月に五輪会場の日本武道館で行われる世界選手権でもテストされる。

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山下会長がゴジラ愛披露、JOC次期会長は「まだ」

ゴジラと握手をかわす山下全日本柔道連盟会長(撮影・梅根麻紀)

全日本柔道連盟の山下泰裕会長が、日本代表の愛称「ゴジラジャパン」にちなみ、ゴジラの着ぐるみと対面した。

「私が子どものころは悪役だったけれど、シン・ゴジラは2回見た」とゴジラ愛を披露。「相手を尊敬しながら、畳に上がったら荒々しく戦ってほしい」と代表選手に期待した。日本オリンピック委員会(JOC)次期会長が確実な情勢になっているが、正式決定は7月のため「まだ何も決まっていない。仮定の話はできない」と話していた。

ゴジラと握手をかわす山下全日本柔道連盟会長(撮影・梅根麻紀)

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90キロ級村尾一本負け、東京五輪代表への重要大会

<柔道:世界選手権代表最終選考会兼全日本選抜体重別選手権>◇第1日◇6日◇福岡国際センター

男子90キロ級の期待のホープ、村尾三四郎(18=東海大)は準決勝で、向翔一郎(ALSOK)に一本負けを喫した。

指導2ずつで迎えた延長43秒、向の腕挫腋固を受けて勝負あり。初対戦だった村尾は「直接対決で負けたので完敗。向選手の方が攻めていたし、経験値の差が出た」と肩を落とした。

米国人の母と日本人の父を持ち、昨年11月のグランドスラム(GS)大阪大会で負傷欠場選手の“代打出場”でチャンスをつかみ、主要国際大会のデビュー戦で銅メダルを獲得。今年2月のGSデュッセルドルフ大会(ドイツ)でも銀メダルを獲得するなど急成長を遂げていた。

90キロ級は、16年リオデジャネイロ五輪金メダルのベイカー茉秋と18年世界選手権銅メダルの長沢憲大との三つどもえで、19年世界選手権代表最終選考会を兼ねる今大会が、20年東京五輪代表に向けて重要な大会となっていた。

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山下泰裕氏「仮定の話できない」JOC次期会長確実

映画のキャンペーンで訪れた?ゴジラと握手をかわす山下泰裕全日本柔道連盟会長(撮影・梅根麻紀)

日本オリンピック委員会(JOC)の次期会長就任が確実になった全日本柔道連盟の山下泰裕会長(61)は6日、全日本選抜体重別選手権が行われている福岡国際センターで「まだ何も決まってはいない」と話した。6月に退任するJOC竹田恒和会長(71)の後任が正式に決定するのは、新理事による理事会で互選が行われる7月4日。すでに就任に向けての調整は進んでいるが、正式決定前だけに「理事会までは何も決まらない。仮定の話はできない」と繰り返した。

山下会長は、会場で柔道日本代表の愛称に決まったゴジラと握手。その後、集まった報道陣に、自ら「ちょっといいですか」と切り出した。「非常に困惑しています」と過熱する次期会長報道にくぎをさしながらも「7月4日、私が会長になっても、他の方がなられても、必ず記者のみなさんの前でいろいろな質問に対してお答えしたいと思っています」と、誠実な性格そのままに真摯(しんし)に対応していた。

映画のキャンペーンで訪れた?ゴジラと握手をかわす山下泰裕全日本柔道連盟会長(撮影・梅根麻紀)

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