日刊スポーツ

柔道の阿部一二三、脛腓靱帯損傷で復帰まで1カ月

柔道の阿部一二三、脛腓靱帯損傷で復帰まで1カ月

代表選手の稽古を見つめる井上康生監督(右)と鈴木桂治コーチ(撮影・峯岸佑樹)

柔道男子代表の井上康生監督(41)は14日、11日の世界選手権(8月25日開幕、日本武道館)代表強化合宿で左足首を痛めた66キロ級世界王者の阿部一二三(21=日体大)が稽古を再開するまで約1カ月かかることを明かした。

東京・多摩市の国士舘大で行われた同選手権重量級代表の合宿後、阿部の診断について「脛腓(けいひ)靱帯(じんたい)損傷で、復帰まで4週間弱かかる」と説明。骨には異常なく、16日までの代表合宿は離脱せず、別メニューで上半身を鍛えながら治療に専念するという。

今月下旬からのスペイン合宿は不参加の見通しだが、世界選手権には影響ない。阿部は4月に左脇腹を痛め、5月上旬に稽古を再開したばかりだった。井上監督は「一難去ってまた一難。成長出来る時は、挫折や屈辱、失敗があってこそ。今は1日でも早くけがを治してもらいたい」と話した。

阿部一二三(2019年4月7日撮影)

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阿部詩ゲレンデ300m走1位「負けず嫌いだから」

ゲレンデダッシュする阿部詩(撮影・峯岸佑樹)

柔道の世界選手権(8月25日開幕、日本武道館)女子代表が13日、北海道旭川市のスキー場で強化合宿を行った。

体力強化を目的として、ゲレンデの約300メートルを駆け上がるトレーニングなどを約2時間実施。全3本をトップでゴールした52キロ級世界女王の阿部詩(18=日体大)は「負けず嫌いだから、何でも1番にこだわる。北海道の大自然のパワーをもらって、今年も誰よりも高い場所に立ちたい」と、2連覇への自信をのぞかせた。

ゲレンデダッシュする阿部詩(撮影・峯岸佑樹)

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玉置桃「すごく新鮮」柔道世界選手権の強化合宿参加

練習後に取材に応じる玉置(撮影・浅水友輝)

柔道女子で昨年アジア大会女子57キロ級優勝の玉置桃(24=三井住友海上、岩見沢光陵中)が故郷で奮起を誓った。世界選手権(8月25日開幕、日本武道館)の女子代表強化合宿に参加。3日目の13日は旭川市内のスキー場で急勾配の坂道約250メートルを3本駆け上がるメニューなどをこなした。「普段やらないトレーニングですごく新鮮。楽しくできました」と笑顔だった。

両親がともに指導者の柔道一家に生まれた。幼少期から弟、妹とともに稽古を積み、中3時に全国中学48キロ級で優勝。高校以降は拠点を東京に置き成長を続け、実業団入り後も国際大会で活躍する。現在の世界ランクは国内2番手の12位。前日12日には母方の祖父母にも会い「友人やお世話になった人も来て道産子代表として頑張らないとなって」。2カ月後の大舞台へ気持ちも引き締まった。

世界選手権では20年東京五輪新種目の男女混合団体に出場する。8日の全日本実業団では18年57キロ級世界女王の芳田司(23=コマツ)も破るなど、調整も順調だ。「日本武道館で試合をするのは今回が初めてで、わくわくしている。自分の柔道をアピールしてみんなで金メダルを取りたい」と目標を掲げた。【浅水友輝】

◆玉置桃(たまおき・もも)1994年(平6)9月16日、岩見沢市生まれ。岩見沢光陵中3年の全国中学48キロ級を制し、東京・藤村女高進学後は1年時に全日本ジュニア選手権48キロ級優勝。三井住友海上で57キロ級に階級変更後は15年アジア選手権優勝。17年グランドスラム東京3位。19年全日本選抜体重別選手権2位。162センチ。

約3メートルのビニール製巨大ボール「ゾームボール」の中に入る玉置(撮影・浅水友輝)
練習の合間に旭川市のご当地キャラ「あさっぴー」に技を掛ける玉置(撮影・浅水友輝)

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朝比奈沙羅「意地と誇りを」繊細な柔道で狙う世界一

女子代表の強化合宿に参加する朝比奈沙羅(撮影・峯岸佑樹)

柔道の18年世界選手権女子78キロ超級金メダルの朝比奈沙羅(22=パーク24)が、「繊細な柔道」で2度目の世界一を狙う。

12日、北海道旭川市での世界選手権(8月25日開幕、日本武道館)女子代表の強化合宿に参加。

乱取りでは入念に組み手や投げ技に入る際の体の使い方を確認した。昨秋以降、体重135キロの恵まれた体格に頼るだけでなく、細かい技術にもこだわる。「柔道家らしくなってきた」と自負する両手も「プニプニムチムチから関節が太くなってきた」と手応えを強調。

ライバルの素根輝に5連敗中だが、2カ月後の大舞台で「世界女王としての意地と誇りを見せたい」と気合を入れた。

寝技稽古で押さえ込む朝比奈沙羅(撮影・峯岸佑樹)

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3連覇狙う阿部一二三、乱取り途中に左足首痛める

決勝で丸山に敗れ悔しがる阿部(撮影・梅根麻紀)

柔道の世界選手権(8月25日開幕、日本武道館)男子日本代表が11日、横浜市の国学院大で強化合宿を行った。

66キロ級で3連覇を狙う阿部一二三(21=日体大)は昨年11月から国内外の3大会で優勝を逃し「挑戦者」として、「一番強い自分を作り上げて、再び、大舞台で勝ちきりたい」と意気込みを示した。4月の選抜体重別選手権では左脇腹を痛め、5月上旬から本格的な稽古を再開。「心配ない」とこの日の稽古でもキレのある動きを見せたが、乱取り途中に左足首を痛めるアクシデントに見舞われた。その後はアイシングして、テーピングで固めてから選手らとバスで都内の宿舎へ戻った。状態を確認するため、明日朝にも病院で診断を受けるという。

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丸山城志郎、初の大舞台「オール一本で世界王者に」

丸山城志郎(2019年4月7日撮影)

柔道の世界選手権(8月25日開幕、日本武道館)男子日本代表が11日、横浜市の国学院大で強化合宿を行った。

66キロ級で初の大舞台に挑む丸山城志郎(25=ミキハウス)は「一番強い自分を作り上げて、自分の柔道を崩さずにオール一本で世界王者になりたい」と意気込みを語った。

3連覇を狙うライバルの阿部一二三(21=日体大)を下した4月の選抜体重別選手権決勝で右手首を負傷し、今月上旬に本格的な稽古を再開したばかり。拠点の天理大では「大切な存在」とする16年リオデジャネイロ五輪73キロ級金メダルの大野将平から柔道への向き合い方を学ぶ。「大野さんと一緒に2つ持って一本を取る天理柔道で、世界へ強さを示したい」と力を込めた。

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吉田秀彦氏「俺の方が上だね」鈴木氏の現役復帰熱望

日本中央競馬会との決勝で、選手たちに声を張るパーク24の吉田秀彦総監督(左)(撮影・峯岸佑樹)

<柔道:全日本実業団体対抗大会>◇9日◇群馬・高崎アリーナ◇男子1部

92年バルセロナオリンピック(五輪)男子78キロ級金メダルで強豪パーク24の総監督を務める吉田秀彦氏(49)が、8日の同大会男子3部で7年ぶりに実戦復帰した鈴木桂治氏(39)にねぎらいの言葉を贈った。

鈴木氏の1、2回戦を観戦した吉田氏は「当時を思い出して、俺までしんどい気持ちになった。つらさは良く分かるし、頭に体がついていかない。お疲れさまだね」と話した。

吉田氏は、柔道界を盛り上げるために13年の同大会男子3部で11年ぶりに実戦復帰。43歳で決勝までの6試合を5勝1分けと活躍し、チームを準優勝に導いた。一方、39歳の鈴木氏は6試合を4勝2分けで、優勝に貢献した。出場時の年齢と戦績を比べた上で「申し訳ないけど、俺の方が上だね。(鈴木氏は)若いんだからまだまだいけるよ」と、8日に引退宣言したばかりの鈴木氏の現役復帰を熱望した。

男子1部に出場したパーク24Aは、決勝で日本中央競馬会に0-1で敗れた。吉田氏は「これまでは準決勝で負けていたけど、今年は1つ階段を上れた。選手たちは良くやった。来年は、さらにもう1段上がりたい」とリベンジを誓った。

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04年金の鈴木桂治氏「引退する」満点復帰V貢献も

7年ぶりに実戦復帰した鈴木桂治氏(左)(撮影・峯岸佑樹)

<柔道:全日本実業団体対抗大会>◇8日◇群馬・高崎アリーナ◇男子3部

04年アテネ五輪柔道男子100キロ超級金メダルの鈴木桂治氏(39)が、1日限定で7年ぶりに実戦復帰した。

母校の国士舘大OBで構成する「国士舘大柔道クラブ」の次鋒として畳に上がった。初戦から長い手足を生かした足技と多彩な組み手で相手を圧倒。準々決勝までの4試合を払い腰や大外刈りなどでオール一本勝ちを収めた。準決勝と決勝は、1月に手術した右膝の影響などもあって引き分けに終わったが、全6試合を4勝2引き分けで優勝に大きく貢献した。優秀選手賞を獲得した鈴木氏は「優勝という形で終われたことは良かった。一方で、練習はほぼゼロだったため、『柔道をなめているんじゃないか』という葛藤もあった」と振り返った。

今春、大学の後輩に誘われて出場を決意した。しかし、現実は国士舘大男子柔道部監督と男子日本代表重量級コーチを兼務するため、常に選手たちの指導が最優先。稽古後の居残りウエートトレーニングと食生活の改善で肉体改造し、実戦的な乱取りは大会直前に行った5本のみだった。右膝も完治せず、テーピングで固めて、痛み止めを飲んで臨んだ。「現役選手からすれば、もしかしたら(自分の復帰は)面白くないかもしれない。今日も練習を違うコーチに任せているし、練習をしていない自分がどこまで試合に出て良いのか最後まで悩んだ。畳に上がるまで、体がめちゃくちゃ体が震えていた」。

当初は2~3試合で交代する予定だったが、出場するからには「けがをしてでも良いから勝ちたい」と勝負師としての本能もよみがえった。観客席最前列に座った愛娘の長女楓子ちゃん(かこ、3)と次女の琴子ちゃん(1)から「パパー」と大声援を送られ、教え子で18年アジア大会男子100キロ級金メダルの飯田健太郎(21)らも自主的に応援に駆けつけた。「これが団体戦。ムードも雰囲気も良く、自分の気持ちも奮い立った。応援してくれたみんなに感謝だし、終わってみると大会に出て良かった」。

ロンドン五輪代表を逃した12年から第一線を退き、引退宣言をせずにこの日を迎えた。7年ぶりに実戦復帰して、改めて勝負の厳しさを痛感した。「(柔道の試合は)楽しいものではなく、苦しいもの。そんな中でも自分の今ある力を精いっぱい出せた。(自己評価は)100点だったので、この日で引退する」。20年東京五輪まで残り1年2カ月-。39歳の五輪金メダリストが、生涯最後の試合を完全燃焼で終えた。【峯岸佑樹】

7年ぶりの実戦復帰を振り返る鈴木桂治氏(撮影・峯岸佑樹)
会場で鈴木桂治氏を応援する飯田健太郎(撮影・峯岸佑樹)
長女楓子ちゃんや次女琴子ちゃん(前列左から2番目)ら親族らも交えて記念撮影する鈴木桂治氏(撮影・峯岸佑樹)
表彰式後、長女の楓子ちゃんを抱いて記念撮影する鈴木桂治氏(撮影・峯岸佑樹)

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柔道芳田真が強化指定選手外れる「計量失格と同等」

芳田真の処分について説明する金野潤強化委員長(撮影・峯岸佑樹)

柔道の18年世界ジュニア選手権女子48キロ級銀メダルで、5月のグランプリ・フフホト大会(中国)を減量失敗により棄権した芳田真(さな、18)が、5月28日付で全日本柔道連盟(全柔連)の強化指定選手から外れた。

4日、東京・講道館で行われた全柔連の理事会後、金野潤強化委員長(52)が取材に応じ「強化委員会で審議した結果、外すことに決めた。今回、芳田は(計量の)体重計に乗っていないが、総合的に見て計量失格と同等の判断とした」と説明した。

芳田は体調不調も重なり、大会前から減量に苦しんでいたという。現地での調整や風呂などで減量を試みたが、試合前日の計量日朝に49・7キロあって、棄権を決めた。金野氏は「日本代表である以上、体重管理は最低限のマナー。試合の勝ち負けは仕方ないが、体重管理して試合するのは選手の責任でもある」と指摘。その一方で、「高校卒業したばかりの成長期で、体調を崩したのだと思う。非常に良い選手なので、今後どのような階級でやるとかも考えて、再起してほしい」と期待を込めた。

全柔連の規定では、国際大会でけがを除く計量失敗などの過失で失格となった選手は強化指定から外れる。今回の芳田は失格ではなく、棄権だが、強化委員会が「計量失格と同等」と判断を下し、強化指定から外れた。

芳田は57キロ級世界女王の芳田司(つかさ、23=ともにコマツ)を姉に持つ、24年パリオリンピック(五輪)世代の期待の星。昨年11月の講道館杯では16年リオデジャネイロ五輪銅メダルの近藤亜美(24=三井住友海上)らを下して初制覇した。今春に滋賀・比叡山高を卒業し、姉と同じ実業団の強豪コマツに入社。姉の練習パートナーとして稽古に励んでいた。今後、強化指定選手に復活するには、全日本ジュニア選手権などで実績を積む必要があるという。

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阿部一二三 実業団の強豪パーク24へ 来年卒業後

阿部一二三(2018年11月21日撮影)

柔道男子66キロ級世界選手権2連覇の阿部一二三(21=日体大)が3日、大学卒業後の20年4月から実業団の強豪パーク24に進むことを明らかにした。

阿部が所属するマネジメント会社「Nextend(ネクステンド)」が、公式インスタグラムで発表。「自分自身の最大の目標でもあり、夢でもある『オリンピックで優勝する』ということをかなえるために、柔道に打ち込む最高の環境とサポート体制を整えていただきましたことをたいへんうれしく思います。また、パーク24株式会社様の柔道部には、世界で活躍する選手も沢山おられます。自分自身にとっても大きな刺激となり、共に高め合える環境に仲間入りし、さらなる成長ができることをとても楽しみにしています。20年東京オリンピックで最高の結果を残せるように努力を積み重ねていきますので、これからもご声援よろしくお願いいたします」とコメントした。

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柔道の東京五輪代表11月にも決定 異例の前年選考

東京五輪柔道代表の選考基準

全日本柔道連盟(全柔連)は27日、都内で常務理事会を開き、20年東京オリンピック(五輪)の代表選考方針を固めた。選手の準備期間確保へ向けて3段階に分け、早ければ11月のグランドスラム(GS)大阪大会後に五輪代表が決まる。柔道代表が五輪前年に決まるのは異例。6月4日の理事会で正式に承認される見通し。これまで最重量級の最終選考会を兼ね、4月に体重無差別で争う男女の全日本選手権は選考対象から外れる。

第1段階は世界選手権(8月25日開幕、日本武道館)優勝者がGS大阪大会を制し、強化委員会で出席者の3分の2以上の賛成を得れば代表入りが決定。次は来年2月のGSデュッセルドルフ大会(ドイツ)終了時点で1、2番手の差が圧倒的に開いていると強化委の3分の2以上が判断すれば決まり、4月の全日本選抜体重別選手権が最終選考会となる。代表決定に絡む強化委は報道陣に公開される予定。

全柔連は一昨年から世界選手権で早期の代表決定を導入。昨年は男子で66キロ級の阿部一二三(日体大)、60キロ級の高藤直寿(パーク24)が大会前年に代表を決め、2連覇につなげた。

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柔道井上康生監督が鈴木桂治氏を激励「応援したい」

鈴木桂治氏にエールを送る井上康生監督(撮影・峯岸佑樹)

柔道男子日本代表の井上康生監督(41)が27日、全日本実業団体対抗(6月8~9日、群馬・高崎アリーナ)に出場する04年アテネ五輪男子100キロ超級金メダルで男子日本代表重量級コーチの鈴木桂治氏(38)にエールを送った。

グランプリ・フフホト大会(中国)から成田空港に帰国した井上監督は、7年ぶりに実戦復帰する鈴木氏について「柔道界を盛り上げる要素になると思う。一度引退して指導者の道を歩む鈴木先生が、現役の世界で楽しく柔道をする姿を見せてくれたら素晴らしいと思う。先生もやる気満々とのことなので、応援したい」と激励した。

鈴木氏は大会初日の6月8日、国士舘大OBの「国士舘大柔道クラブ」の選手として男子3部に出場する。井上監督は「ただ残念なのが…私が行けるのは(大会2日目の)日曜日のみで(会場では)応援出来ない」と肩を落とした。

13年の全日本実業団体対抗では、92年バルセロナ五輪男子78キロ級金メダルで強豪パーク24の総監督を務める吉田秀彦氏(49)が男子3部で11年ぶりに実戦復帰した。スター不在の柔道界を盛り上げるために一役買い、決勝までの6試合で5勝1分けの活躍を見せた。 現役時代の鈴木氏は、長い手足を生かした小外刈りや大外刈りなどの足技を武器に、井上監督の「最大のライバル」として知られていた。12年ロンドン五輪代表を逃し、同7月に現役引退。同年に日本代表のコーチに就任した。今年1月に右膝の手術をし、リハビリを経て本格的な稽古で追い込んでいる。「出るからには優勝」と気合十分の様子だ。

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全戦一本勝ち阿部詩が凱旋帰国「自信につながった」

半年ぶりの実戦となったグランプリ・フフホト大会を振り返る阿部詩(撮影・峯岸佑樹)

柔道のグランプリ・フフホト大会(中国)で優勝した女子52キロ級世界女王の阿部詩(18=日体大)が27日、成田空港に帰国した。

冬場に左肩を負傷し、昨年11月のグランドスラム・大阪大会以来の実戦となったが、初戦の2回戦から4試合をオール一本勝ち。左肩は完治しておらず、「8~9割の状態」と不安が残る中で勝ちきった。「やるべきことをやれば、けがをしていても大丈夫。最初は怖さもあったけど自信につながった」と振り返った。

2連覇を狙う世界選手権(8月25日開幕、日本武道館)に向け、得意の担ぎ技の強化を図る方針だ。今大会は万全でない中での戦い方を学び、「投げきる練習をしないと試合で出ないことが分かった。残り3カ月は投げきることを一番の課題に置いて追い込みたい」と気を引き締めた。

女子代表の増地克之監督は「けがも悪化せず、良い内容だった。現状の力を出し切れたのではないかと思う。世界選手権に向けて弾みもついたと思う」と話した。

半年ぶりの実戦となったグランプリ・フフホト大会を振り返る阿部詩(撮影・峯岸佑樹)

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鈴木桂治氏が現役復帰へ 04年アテネ五輪で金

04年8月、アテネ五輪で獲得した金メダルを手に笑顔を見せる鈴木桂治

04年アテネオリンピック(五輪)柔道男子100キロ超級金メダルで男子日本代表重量級コーチの鈴木桂治氏(38)が、全日本実業団体対抗(6月8~9日、群馬・高崎アリーナ)に出場することが24日、分かった。男子3部の国士舘大柔道クラブから出場し、7年ぶりの現役復帰となる。

関係者によると、4月ごろから実戦復帰に向け、本格的なトレーニングを始めた。全日本コーチと国士舘大男子柔道部監督を兼任する多忙の中、肉体改造にも励んでいるという。

現役時代は、長い手足を生かした小外刈りや大外刈りなどの足技を武器とした。男子日本代表の井上康生監督(41)の最大のライバルとして切磋琢磨(せっさたくま)した。100キロ超級で制したアテネ五輪の他、100キロ級と無差別で世界選手権を制覇し、前人未到の3階級制覇を達成。12年ロンドン五輪代表を逃し、同7月に現役引退した。

13年の全日本実業団体対抗では、92年バルセロナ五輪男子78キロ級金メダルで強豪パーク24の総監督を務める吉田秀彦氏(49)が、男子3部で11年ぶりに実戦復帰した。スター不在の柔道界を盛り上げるために一役買った。決勝までの6試合で5勝1分けと活躍し、準優勝に貢献した。

鈴木氏も同じように柔道界のカンフル剤となり、さらに、不調が続く担当の最重量級選手たちに向けて、本気の柔道を披露することで活を入れる考えがあるのかもしれない。東京五輪まであと1年2カ月。38歳の五輪金メダリストが、強烈なメッセージを送る。

◆鈴木桂治(すずき・けいじ)1980年(昭55)6月3日、茨城県常総市生まれ。3歳から柔道を始める。国士舘高-国士舘大-平成管財。12年に国士舘大柔道部監督、男子日本代表コーチに就任。現役時代は全日本選手権4度制覇。04年アテネ五輪100キロ超級金メダル。12年7月に現役引退。18年3月に早大大学院スポーツ科学研究科修士課程修了。趣味はサーフィン。184センチ。血液型AB。

04年8月、アテネ五輪でガッツポーズする鈴木桂治

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藤原崇太郎GP大会気合 ハードなニューヘア披露

グランプリ・フフホト大会への意気込みを語る藤原崇太郎(撮影・峯岸佑樹)

柔道の18年世界選手権男子81キロ級銀メダルの藤原崇太郎(21=日体大)が22日、グランプリ(GP)フフホト大会(24~26日、中国)に出場するため羽田空港を出発した。

3カ月後に迫る世界選手権(8月25日開幕、日本武道館)前の重要な大会に向け「結果も大事だけど、それ以上に内容にこだわりたい。自分が優位に組み手を進めて、世界選手権につながる試合をしたい」と意気込みを示した。直近の2試合では組み手と技出しの遅さを課題とし、組み手を重点的に練習してきた。担ぎ技の精度も磨き、実戦でも試す考えだ。

試合前は、お気に入りの理髪店で散髪してから臨む。髪形はいつも「お任せ」でお願いして、この日はパーマ頭にサイドを五厘程度に刈り上げたハードなニューヘアを披露。気合十分の表情で、関係者からもらったホットアイマスクを片手に機上の人となった。

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阿部詩、左肩痛から久々実戦へ「集中すれば大丈夫」

阿部詩(2019年4月3日撮影)

柔道女子52キロ級世界女王の阿部詩(18=日体大)が21日、グランプリ・フフホト大会(24~26日、中国)に出場するため成田空港を出発した。

冬場に左肩を痛め、昨年11月のグランドスラム大阪大会以来の実戦となる。まだ完治してなく、今月に入ってから本格的な稽古を再開。急ピッチで仕上げ、状態は「7~8割」とするが自身の柔道の感覚を取り戻した。2連覇を狙う世界選手権(8月25日開幕、日本武道館)に向けて「(東京)五輪前も同じことが考えられる。我慢しなければならない場面が多くなると思うが、集中すれば大丈夫」と半年ぶりの勝利を誓った。

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柔道日本代表が帰国 井上監督は向と村尾に成長期待

井上監督(2019年3月11日撮影)

柔道のグランドスラム(GS)バクー大会に出場した日本代表が14日、成田空港着の航空機で帰国した。

男子90キロ級の向翔一郎(23=ALSOK)、村尾三四郎(19=東海大)はともに2回戦で敗れた。男子を指揮する井上康生監督(40)は「あらためて厳しい現状を突き付けられた。しかし、やるべきことは明確になった。しっかりと次の大会へ準備を進めていきたい」と述べた。

その「課題」としては「ペース配分が慎重になりすぎた。先手を取る試合展開が必要」「印象がいい試合の流れをつくっていく必要がある」を挙げた。積極的に攻めの姿勢を貫くことを求めた。同階級は世界でもレベルが拮抗(きっこう)しているだけに「十分にチャンスはあるのではないか」と奮起を促した。

世界選手権(東京)までは残り約3カ月。井上監督は「東京五輪へ向けて重要」と位置付けを強調し「1日1日を大事にしていきながら、1つ1つの練習、大会を大事にして、危機感を感じながらやらないといけない」と話した。90キロ級代表の向に関しては「今までは研究されていない身で思い切りできたと思うが、これからは細かいことも研究される中で戦っていかないといけない」。その上で世界選手権、その先の東京五輪(オリンピック)へ向け、今後の成長に期待を寄せた。

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ゴジラジャパン本格始動 高藤直寿と永山竜樹が火花

世界選手権に向けて、意気込みを語る高藤直寿と永山竜樹(右)(撮影・峯岸佑樹)

「ゴジラジャパン」が本格始動する。世界選手権東京大会(8月25日開幕、日本武道館)に向け、「ゴジラジャパン」こと男女日本代表が5日、都内で記者会見を行った。

選手18人はこの日初お披露目されたゴジラジャージーを着用して登壇。2人代表となる男子60キロ級で3年連続4度目の世界王者を狙う高藤直寿(25=パーク24)は、18年世界選手権銅メダルの永山竜樹(23=了徳寺大職)を強烈にライバル視し、「外国人選手よりも一番に永山選手の対策を考えたい。直接対決で勝って、がめつく4度目の世界一を目指したい」と意気込みを示した。一方、永山も「高藤先輩の対策を万全にして、全力で倒しにいく」と下克上を宣言。男子代表の井上康生監督は20年東京五輪を見据え、「(各階級とも)層の厚い形になっている。世界選手権をしっかり勝ちきって、来年につなげたい」と自信を漂わせた。

世界選手権に出場する(下段左から)高藤直寿、永山竜樹、丸山城志郎、阿部一二三、(上段左から)大野将平、藤原崇太郎、向翔一郎、ウルフ・アロン、原沢久喜(撮影・峯岸佑樹)
ゴジラジャージーをお披露目する(下段左から)芳田司、志々目愛、阿部詩、渡名喜風南、(上段左から)朝比奈沙羅、素根輝、浜田尚里、新井千鶴、田代未来(撮影・峯岸佑樹)

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リネールが日本合宿 世界柔道は「体と相談して」

全日本男子柔道強化合宿に参加し、練習後に汗をかいたまま取材に応じるリネール(撮影・大野祥一)

柔道男子日本代表強化合宿に参加中の、100キロ超級テディ・リネール(フランス)が4日、都内で取材に応じ、世界選手権(8月・東京)出場についてコメントした。オリンピック(五輪)2連覇中のリネールは「あくまで目標は東京五輪で3連覇すること。今の状態では(世界選手権に)出場しないが、体と相談してどうしても出たくなったら出るかも」と含みを持たせた。

リオ五輪後、休養を宣言、8連覇中だった昨年の世界選手権を欠場した。4カ月前に練習を開始し、調子は40~50%。「国際大会に2年も出ていないのでまだまだ。他の選手に比べてゆっくり調整している。スケジュールは決まっていない。試合に出られる体になってから出場する」とあくまで東京五輪に向けた調整を第一に考え、世界選手権にはこだわらない。

自身が出場していないため、100キロ超級の構図も変わった。原沢ら強豪がひしめく中での争いとなるが「原沢だけでなく(五輪で)優勝できる強い選手がたくさんいる。準備をしっかりして挑む」と話す。東京五輪の後には地元フランスでのパリ五輪も視野に入れており「東京で優勝し、パリで出場できたら間違いなくそれが最後になる」と語った。

世界選手権に出場するか否かで日本柔道界にとっても大きな影響を及ぼす。日本代表の井上監督は「これだけの選手が日本に来てくれるだけでもありがたい」と感謝した上で「急に出るとなったらダメージは大きい。出場すると思ってそのための準備をしたい」と話した。

「今は東京五輪しか考えていない」(リネール)とスタンスは変わらないが、日本柔道界にとって今後の動向が注目される。日本にとって最大のライバルとなる世界王者が五輪3連覇へ向けいよいよ始動した。【松熊洋介】

全日本男子柔道強化合宿に参加し、乱取りで技を仕掛けるリネール(右)(撮影・大野祥一)
練習前、カメラを手に被写体を探すテディ・リネール(中央)(撮影・大野祥一)

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ウルフ験担ぎ胸毛剃りや~めた、圧巻初Vで方針転換

胸毛をそらずに全日本選手権に臨んだウルフ・アロン(撮影・峯岸佑樹)

<柔道:全日本選手権兼世界選手権男子100キロ超級代表最終選考会>◇29日◇東京・日本武道館◇体重無差別

体重無差別で争う、柔道の全日本選手権を初制覇した、17年世界選手権男子100キロ級覇者のウルフ・アロン(23=了徳寺学園職)が30日までに、トレードマークの胸毛を生やす意向を示した。

29日、東京・日本武道館で行われた全日本選手権後、ウルフは「胸毛を剃(そ)ると、生やすのに力が必要と聞いたため剃らないようにした」と説明した。近年、大舞台前には、験かつぎと清潔感を求めて剃っていた。しかし、4度目の挑戦となった全日本選手権は最重量級の強豪と対戦するためか、体力温存の意味も込めて剃らずに臨んだ。そのかいあってか、初戦の2回戦から準決勝まで4試合連続で一本勝ちするなど圧巻の勝利を見せ「今後も名前の通り、ワイルドな感じでいく」と生やす方針を示した。

17年世界選手権前にバリカンで胸毛を刈って初優勝。周囲からも高性能の脱毛クリームを勧められ、験かつぎとして18年世界選手直前も剃るべきか悩んだ。最終的に剃って5位に沈んだが、「結果と胸毛は関係ない」としていた。

男性アスリートの脱毛は決して珍しくない。近年、男性の美意識の高まりなどを受け、全国的に男性専用の脱毛サロンは増加傾向にある。脱毛するスポーツ選手も多く、競泳選手は水の抵抗を減らすため、サッカーやラグビー選手はテーピングをはがす際の予防や、毛による摩擦から肌を守るためなどの理由で脱毛している。

ちなみに、ウルフのライバルであるアジア王者の飯田健太郎(20=国士舘大)は「男らしさ」を出すために胸毛を生やしている。“体毛問題”に関しては、競技の特性や個人の問題などさまざまな事情があるが、格闘技である柔道において、容姿から「強さ」を表すのは重要なのかもしれない。

胸毛をそって18年世界選手権に臨んだウルフ・アロン(撮影・峯岸佑樹)

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動けて技ある100キロ級ウルフが無差別制し日本一

全日本選手権関東予選前日にJR宇都宮駅近くで大量のギョーザを食べるウルフ・アロン

<柔道:全日本選手権兼世界選手権男子100キロ超級代表最終選考会>◇29日◇東京・日本武道館◇体重無差別

17年世界選手権男子100キロ級覇者のウルフ・アロン(23=了徳寺学園職)が、決勝で12年全日本王者の加藤博剛(千葉県警)に延長の末、技ありで優勢勝ちし、初優勝を果たした。持ち味のスタミナを武器に準々決勝では過去3度制覇の王子谷剛志、準決勝では小川雄勢と最重量級の強敵を撃破。大会後の強化委員会では世界選手権(8月25日開幕、日本武道館)100キロ超級代表に原沢久喜(百五銀行)が選出された。

4度目の挑戦で「オオカミ」が悲願の全日本王者となった。準決勝まで4試合連続で一本勝ち。“寝業師”加藤との決勝で、延長に突入した5分29秒。組み手争いを制し支え釣り込み足で技ありを奪って、勝負を決めた。右手を力強く握り、観客席にいた両親に向かって指で「1」をさした。「100キロ級が日本一を証明することができて大きな自信になった。令和時代に向けて最高のスタートが切れた」。珍しく、感極まって涙した。

夢だった。中学時代に100キロ級の井上康生男子監督らが全日本王者になるのを目にし「再び、100キロ級の時代を築く」との強い思いがあった。17年大会決勝では王子谷に敗れてあと1歩だった。昨年1月に左膝を手術し、4カ月後の世界選手権を考慮すると故障リスクもあったが「日本の最重量級に勝てないと、世界の100キロ級には通用しない」として、準備に万全を期した。恩師の東海大の上水監督は「馬力だけに頼らず、勝負の駆け引きも出来ていた」。グルメであり、通常は110キロ超で体重管理が悩みだったが、今回は減量なし。「一番動ける」とする108キロで臨んだ。強みのスタミナ強化を図るため、3月の関東予選(宇都宮市)前日には大量のギョーザを平らげた。

全日本、世界選手権、オリンピック(五輪)の「3冠」を最終目標とする。平成最後の伝統ある大会で、初めてカタカナ表記の優勝者の名を残した。「これで20年東京五輪に3冠の王手をかけられた。名前の通り、ワイルドに突き進みたい」。野性味あふれる23歳の柔道家の進化は止まらない。【峯岸佑樹】

◆ウルフ・アロン 1996年(平8)2月25日、東京都生まれ。6歳で柔道を始める。千葉・東海大浦安高時代は高校選手権、金鷲旗、高校総体などで優勝。東海大時代は15、16年講道館杯を連覇。17年全日本選手権準優勝、同世界選手権優勝。世界ランク5位。左組み。得意技は大外刈りと内股。米国人の父と日本人の母を持つ。181センチ。

平成の柔道全日本選手権の結果

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王子谷剛志「柔道楽しい・・・奥深い」敗戦も手応え

全日本選手権準々決勝敗退し、試合を振り返る王子谷剛志(撮影・峯岸佑樹)

<柔道:世界選手権男子100キロ超級代表最終選考会兼全日本選手権>◇29日◇東京・日本武道館◇体重無差別

「不器用な柔道家」が、確かな手応えをつかんだ。昨年準優勝で2年ぶり4度目の全日本王者を狙った王子谷剛志(26=旭化成)は、準々決勝で17年世界選手権100キロ級覇者のウルフ・アロン(23=了徳寺学園職)に延長の末、内股で一本負けした。

しかし、王子谷は試合後、落胆しながらも晴れ晴れした表情も見せた。開口一番、乱れる呼吸を整えながらこう言った。「強かった。それだけです」。全日本を3度制した元王者が、潔く負けを認めた。

2年前の全日本選手権決勝で対戦して以来、東海大を拠点とする両者は稽古で1度も組まず、この日を迎えた。普段は仲の良い先輩後輩だが、“勝負師”として試合前になると口も利かず、戦闘モードに突入する。「久々に柔道が楽しいと思った。そういった意味ではウルフに感謝。これまでの(得意の)大外刈りだけでなく、やりたいことも出来て、自分の伸びしろも感じた」と前を向いた。

7歳から柔道を始めた。基本の前回り受け身が出来ず、自宅で布団を敷いて猛特訓した。ジャガイモの皮をむけば指を切るなど1つのことを習得するのに周りよりも時間を要した。太くて短い腕を生かすために組み手を研究し、ひたすらコツコツと大外刈りを磨いてきた。体の成長とともに186センチ、145キロの恵まれた体から放つ大外刈りの破壊力は増し、国内外の大会で実績を残した。

しかし、国際柔道連盟(IJF)のルール改正やライバルに研究され、近年は「指導3負け」が多く、不完全燃焼で終わっていた。昨年は「苦しい年」で個人優勝なし。負けが続き、思うような結果が残せず、大好きな「柔道が楽しくない…」と自問自答する日々が続いた。現状を打破するために自身の柔道と向き合い、稽古で小内刈りや袖釣り込み腰などにも挑戦した。「これまでの自信が過信になっていることに気づいた。腐っても前に進まない。何が答えか分からないが、何かをきっかけに自分が変われると思ったし、変わらないといけないと思った」。26日にはともに丸坊主にして、“全日本モード”となった付け人が稽古中に負傷する不運にも見舞われた。

「憧れ」とする7度目の挑戦となった伝統と権威ある全日本選手権。平成最後の大舞台となったが、「やりたい」という技を出せて完全燃焼した。「やっぱり柔道は楽しい。そして奥深い」。6分14秒。不器用な26歳の柔道家にとって、特別な時間だった。【峯岸佑樹】

ウルフ(右)に敗れ、肩を落とす王子谷(撮影・河田真司)
2回戦 中野(左)を小内刈り一本で破る王子谷(撮影・河田真司)

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ウルフ「大きな自信に」4度目の挑戦で悲願の初V

全日本柔道選手権大会初優勝を果たし、ガッツポーズするウルフ(撮影・河田真司)

<柔道:世界選手権男子100キロ超級代表最終選考会兼全日本選手権>◇29日◇東京・日本武道館◇体重無差別

17年世界選手権男子100キロ級覇者のウルフ・アロン(23=了徳寺学園職)が、決勝で12年全日本王者の加藤博剛(千葉県警)に延長の末、技ありで優勢勝ちし、初優勝を果たした。持ち味のスタミナを武器に準々決勝では過去3度制覇の王子谷剛志、準決勝では小川雄勢と最重量級の強敵を撃破した。

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4度目の挑戦で「オオカミ」が悲願の全日本王者となった。準決勝まで4試合連続で一本勝ち。“寝業師”加藤との決勝で、延長に突入した5分29秒。組み手争いを制して支え釣り込み足で技ありを奪って、勝負を決めた。右手を力強く握り、観客席にいた両親に向かって指で「1」を差した。「100キロ級が日本一を証明することができて大きな自信になった。令和時代に向けて最高のスタートが切れた」。珍しく、感極まって涙した。

夢だった。中学時代に100キロ級の井上康生男子監督らが全日本王者になるのを目にし「再び、100キロ級の時代を築く」との強い思いがあった。17年大会決勝では王子谷に敗れてあと1歩だった。昨年1月に左膝を手術し、4カ月後の世界選手権を考慮すると故障リスクもあったが「日本の最重量級に勝てないと、世界の100キロ級には通用しない」として、準備に万全を期した。恩師の東海大の上水監督は「馬力だけに頼らず、勝負の駆け引きも出来ていた」。グルメであり、通常は110キロ超で体重管理が悩みだったが、今回は減量なし。「一番動ける」とする108キロで臨んだ。強みのスタミナ強化を図るため、3月の関東予選(宇都宮市)前日には大量のギョーザを平らげた。

全日本、世界選手権、五輪の「3冠」を最終目標とする。平成最後の伝統ある大会で、初めてカタカナ表記の優勝者の名を残した。「これで20年東京五輪に3冠の王手をかけられた。名前の通り、ワイルドに突き進みたい」。野性味あふれる23歳の柔道家の進化は止まらない。【峯岸佑樹】

◆ウルフ・アロン 1996年(平8)2月25日、東京都生まれ。6歳で柔道を始める。千葉・東海大浦安高時代は高校選手権、金鷲旗、高校総体などで優勝。東海大時代は15、16年講道館杯を連覇。17年全日本選手権準優勝、同世界選手権優勝。世界ランク5位。左組み。得意技は大外刈りと内股。米国人の父と日本人の母を持つ。181センチ。

決勝 加藤博(左)を攻めるウルフ(撮影・河田真司)

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阿部一二三、ウルフら9人 世界選手権の男子代表

全日本柔道選手権大会初優勝を果たし、ガッツポーズするウルフ(撮影・河田真司)

全日本柔道連盟(全柔連)は29日、19年世界選手権東京大会(8月25日開幕、日本武道館)男子100キロ超級代表に16年リオデジャネイロ五輪銀メダルの原沢久喜(26=百五銀行)を選出したことを発表した。

原沢は同日、東京・日本武道館で行われた体重無差別で争う全日本選手権で準々決勝敗退したが、2月の欧州国際大会などの実績が評価されて代表に決まった。

大会後、全柔連の強化委員会が開かれ、世界選手権男子代表が出そろった。記者会見に出席した井上康生監督は「日本代表としての自覚と誇りを持って、まずは世界選手権でしっかりと結果を残したい」。金野潤強化委員長は「全階級金メダル、混合団体戦での3連覇を目標にして取り組んでいきたい」と抱負を語った。

代表選手は以下の通り。

▼男子 60キロ級高藤直寿(パーク24)、永山竜樹(了徳寺学園職)、66キロ級丸山城志郎(ミキハウス)、阿部一二三(日体大)、73キロ級大野将平(旭化成)、81キロ級藤原崇太郎(日体大)、90キロ級向翔一郎(ALSOK)、100キロ級ウルフ・アロン(了徳寺学園職)、100キロ超級原沢久喜(百五銀行)

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ウルフ初優勝、平成の三四郎が平成最後の全日本評論

古賀稔彦氏(2018年11月3日撮影)

<柔道:世界選手権男子100キロ超級代表最終選考会兼全日本選手権>◇29日◇東京・日本武道館◇体重無差別

体重無差別で柔道日本一を決める、伝統の全日本選手権が行われ、平成最後の大会で、17年世界選手権男子100キロ級覇者のウルフ・アロン(23=了徳寺学園職)が、決勝で12年全日本王者の加藤博剛(千葉県警)を延長の末、優勢勝ちし、初優勝を果たした。

日刊スポーツ評論家の古賀稔彦氏、“平成の三四郎”による、平成最後の全日本の評論をお届けする。

無差別で戦うからこそ、階級の相性が出てくる。ウルフ選手はその利点を最大限生かして戦った。超級の選手は超級同士の戦いのリズムがある。体力の減りも同様で、それが同階級なら問題にはならない。だが、無差別で下の階級、体力的には遜色がない100キロ級と組むと、組み手争いや技出しが速く、呼吸のリズムも崩されて体力消耗が速くなる。スタミナ自慢で1回の組み手で仕留める技があるウルフ選手にとっては、逆に自分のリズムも作りやすく、後半勝負という戦略を立てやすかった。

現在のルールをうまく利用していることも大きい。引き手で相手の袖口を持つが、以前は反則だった規則が今は技を出せば許容されることになっている。ここを確保することで自分の組み手を作り、相手に重圧をかけることができている。

最後に、令和の全日本選手権には地方からの猛者の出現を期待したい。超級ではなく90、81、73キロ級などの出場者が出れば、初戦からワクワクするようなカードがそろう。私が90年大会に中量級で出場し、決勝に進んだ時は非常に盛り上がっていただいた。無差別だからこその魅力が見られる令和の時代になってほしい。(一般社団法人古賀塾塾長)

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原沢久喜、8強敗戦も100キロ超級代表決定 柔道

太田(左)に敗れ肩を原沢(撮影・河田真司)

<柔道:世界選手権男子100キロ超級代表最終選考会兼全日本選手権>◇29日◇東京・日本武道館◇体重無差別

今月上旬の選抜体重別を制して100キロ超級の世界選手権代表を濃厚にしていた原沢久喜は、準々決勝で太田に敗れた。

指導2つでリードも、延長戦で奇襲の袖釣り込み腰で技ありを奪われ「もうちょっといい戦い方があった」。大会後の強化委員会では異論無しで代表に決まった。「これから外国人が相手になる。試合のスピード感、審判のやり方も変わる。対応したい」と調整を進める。

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小川雄勢、平成元年から5連覇した父の前で一本負け

準決勝でウルフ(右)に敗れ、前をぼうぜんと見つめる小川(撮影・河田真司)

<柔道:世界選手権男子100キロ超級代表最終選考会兼全日本選手権>◇29日◇東京・日本武道館◇体重無差別

平成の始まりと終わりを「小川家」で制することはできなかった。父直也氏が平成元年大会から5連覇している小川雄勢は、準決勝でウルフに一本負けした。

奥襟を握られ劣勢、後がなくなった終盤に組みにいき、逆に大内刈りの餌食になった。「勝ちたい気持ちが相手のほうが強かった」と肩を落とした。

準決勝に臨む長男雄勢にげきを飛ばす父の小川直也氏(撮影・河田真司)
2回戦 古居(左)の反則負けにより初戦突破する小川(撮影・河田真司)

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柔道 伝統の全日本選手権で初の「両者反則負け」

3回戦 両者反則負けジャッジを受ける佐藤和(左)と熊代(撮影・河田真司)

<柔道:世界選手権男子100キロ超級代表最終選考会兼全日本選手権>◇29日◇東京・日本武道館◇体重無差別

1948年に始まった伝統の日本一決定戦、平成最後の舞台で、史上初の「両者反則負け」の審判が下った。

3回戦の佐藤和哉(24=日本製鉄)と熊代佑輔(30=ALSOK)との対決で、両者が積極的に組み合うことがなく組み手争いが続き、延長戦の1分43秒に両者に3回目の指導が与えられ、ともに反則負けとなった。勝者なしで準々決勝進出者はいない結果となった。

佐藤が「悔しいより情けない気持ち。とにかく引き手でどっちが先行するかだった。勇気を出して1つ深い所を取りにいくのができなかった」と肩を落とせば、熊代は「互いによく分かっているので…。周りの人には申し訳ない。なかなか柔道の魅力、投げることを追求できなかった」と反省した。練習で組み合うこともある関係から、手の内を知り尽くしており、互いに慎重な姿勢を変えることができなかった。

大迫審判長は「ルール通りですが、断腸の思い。全日本では初めてになると思う」と説明した。審判が攻めるように促したが、改善が見られなかったという。

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故斉藤仁氏の次男、立が3回戦敗退「ホンマ悔しい」

全日本選手権3回戦で敗退し、試合を振り返る斉藤立(撮影・峯岸佑樹)

<柔道:世界選手権男子100キロ超級代表最終選考会兼全日本選手権>◇29日◇東京・日本武道館◇体重無差別

五輪2大会連続金メダルで初出場の故斉藤仁氏(享年54)の次男、斉藤立(たつる、17=東京・国士舘高)が3回戦で、12年全日本王者で11回目の出場となる加藤博剛(33=千葉県警)に敗れた。

序盤から190センチ、155キロの恵まれた体格で元全日本王者に突進したが、加藤の巧みな関節技などに苦戦。最後は、後ろけさ固めで一本負けを喫した。試合後、斉藤は「経験値のなさが出た。練習不足で悔しさしか残らない。ホンマ悔しい…」と言葉を振り絞った。

東京予選では4試合で一本勝ちして8強入り。史上最年少の17歳1カ月で本戦出場を決めた。3月に痛めた左の肘や手首は完治してなく「出来ることはやってきた」と話していた。

3回戦 加藤博(上)に後ろけさ固めで敗れる斉藤(撮影・河田真司)

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柔道ウルフ・アロン「何としても」全日本王者へ誓い

全日本選手権への意気込みを語るウルフ・アロン(撮影・峯岸佑樹)

柔道の17年世界選手権男子100キロ級覇者のウルフ・アロン(23=了徳寺学園職)が28日、全日本王者になることを誓った。

東京・講道館で行われた体重無差別で争う全日本選手権(29日、日本武道館)の前日記者会見に出席。2年前の準優勝超えを目指すウルフは「中学時代に100キロ級の井上康生、鈴木桂治先生らの優勝を見た。今回は僕がその立場になれるように、何としても優勝を勝ち取る」と、4度目の挑戦で100キロ級時代を築く決意を示した。

今月上旬には世界選手権(8月25日開幕、日本武道館)代表に選出された。無差別の試合は故障リスクも高まるが「大きな相手に勝たないと世界の100キロ級に通用しない。(聖地の)日本武道館で勝つことで自信にもつながる。欠場は一切、考えなかった」。

普段の減量前の体重は110キロ程度あるが、今回は108キロで臨む。「受けや技の威力、スタミナを考えても一番良い体重。(世界選手権に向けて)弾みをつける意味でも全日本で勝っておきたい」と力を込めた。

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