【アジア杯】南野拓実2ゴール1アシスト「チームとしての強さを見せられた」自ら誕生日前祝い
<アジア杯:日本4-2ベトナム>◇14日◇1次リーグD組◇第1戦◇ドーハ
【ドーハ14日=佐藤成】MF南野拓実が、初戦ベトナム戦で日本の今大会第1号を含む2ゴール1アシストをマークし、プレーヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれた。明日16日に迎える29歳の誕生日を前祝い。同じトップ下にMF久保建英(22=Rソシエダード)ら定位置を争うライバルがいる中で先発し「20代ラストイヤー」へ弾みをつけた。日本を優勝に導き、海外挑戦10年目を自ら彩っていく。
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2日早い誕生日プレゼントを、自身に贈った。最も欲していた得点だ。前半11分、左CKを相手GKがはじいた、こぼれ球に南野が反応した。右足で間隙(かんげき)を縫う先制点を挙げると、まさかの1-2とされた後の同45分には、冷静に相手の股を抜く。自らの森保ジャパン最多得点記録を更新する20点目。大台に載せて同点に追いつき、その5分後にMF中村へ反転しながらパスを出し、決勝ゴールをお膳立てした。
「逆転されて難しい展開だったけど、何とか前半のうちに逆転して、チームとしての強さを見せられて良かった。初戦は非常に重要だったので、勝ち点3を取って終えられて良かった」
2日後に29歳。この時期になると、思い出す。9年前の誕生日。19歳でオーストリア1部ザルツブルクへ移籍し、渡欧した直後。成人式を楽しむ地元の友人の笑顔が続々SNSにアップされる中、異国で孤独に練習した。ビッグになる覚悟を決めた宿命。寂しさを紛らわすため、ホテルのバーで「1人成人式」をした。
代表歴は10年目。15年10月のイラン戦でデビューしたが、ボールにすら触れなかった。「ゼロタッチ…実力を試す間もなかった」。狙っていた23歳でのW杯ロシア大会を逃す。それでも「考えても考えても答えは一緒。俺が選んだ道や。間違ってへん」と腐らなかった。UAEでの前回19年大会は、森保ジャパンの新エースとして迎えた。6試合1得点。1-3で敗れた決勝カタール戦で一矢報いただけだった。翌20年から背番号10。代表の「顔」になっても満足できなかった。
欧州チャンピオンズリーグ(CL)を経て、世界最高峰プレミアリーグのリバプールでもプレー。ところが、肝心の22年W杯カタール大会で調子を崩し、出場時間は56分に終わった。決勝トーナメント1回戦クロアチア戦では、PK戦の1番手に出て失敗し「人生最悪の日」と肩を落とした。
それでも立ち上がる。今季は序盤からモナコで本領を取り戻して16試合5得点4アシスト。フランスで月間MVPに輝き、昨年10月に代表復帰。2度目のアジア杯で2発スタートした。
20代ラストイヤーへ、感慨にふける暇はない。「この大会をいい形で終えて初めて、ゆっくり振り返りたい。いま思えば長いヨーロッパ生活だけど、こういう時、一番重要なのはチームがこういう展開でも勝つこと」。日本を5度目のアジア王座に押し上げ、あの日に1人で乾杯した成人の選択を、正解にしてみせる。
- 日本対ベトナム 前半、先制ゴールを決め笑顔を見せる南野(右)。左は板倉(撮影・足立雅史)
- 日本対ベトナム 前半、ゴールを決めガッツポーズする南野(右)(撮影・足立雅史)
- 日本対ベトナム 前半、ゴールを決め喜ぶ南野(中央)(撮影・足立雅史)
- 日本対ベトナム 前半、先制ゴールを決め歓喜する南野(中央右)。同左は菅原(撮影・足立雅史)
- 日本対ベトナム 前半、先制ゴールを決め、腕に巻いた喪章に手を添える南野(撮影・足立雅史)(撮影・足立雅史)
- 日本対ベトナム 前半、この日、自身2点目のゴールを右足で決める南野(中央)(撮影・足立雅史)
- 日本対ベトナム 前半、この日、自身2点目のゴールを決めた南野(右)。左は中村(撮影・足立雅史)
- 日本対ベトナム 勝利し笑顔を見せる南野(手前左から2人目)ら(撮影・足立雅史)
- 日本対ベトナム 勝利し笑顔でタッチを交わす南野(中央左)ら(撮影・足立雅史)
- 日本対ベトナム 後半、ボールカットに向かう南野(左)(撮影・足立雅史)