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助っ人列伝

近鉄の球団消滅後もメジャーで実績築いたカラスコ

近鉄梨田監督と笑顔で握手するヘクター・カラスコ(2004年8月6日撮影)

2004年を最後に日本のプロ野球史から姿を消した近鉄。球団消滅によって多くの選手たちが野球人生の修正を余儀なくされたが、ラストイヤーに助っ人外国人としてプレーしたヘクター・カラスコもその1人だった。

ドミニカ共和国出身の右腕カラスコは、1994年にレッズでデビュー。1年目は45試合の救援登板で5勝6敗6セーブ、防御率2・24と上々の成績を残す。その後も地味な中継ぎながら各チームで重宝され、ロイヤルズ、ツインズ、レッドソックス、オリオールズと渡り歩き、通算500試合近い登板の実績を買われて2004年に近鉄へとやってきた。

その近鉄では、当初はクローザーとして期待されたカラスコだが、4月に何度もリリーフ失敗を繰り返してあえなく2軍降格。それでも再昇格後は中継ぎとしてまずまずの存在感を発揮し、防御率5・57はいただけないが、8勝8敗5セーブをマークした。

しかしこのシーズン限りで近鉄が消滅したため、カラスコはアメリカへ帰国。ナショナルズと契約した2005年はキャリアハイのシーズンとなり、シーズン終盤の5試合の先発を含めて64試合に登板し、5勝4敗、防御率2・04、被打率1割9分3厘と抜群の安定感を発揮した。

2006年からはエンゼルスで2シーズンを過ごし、2007年を最後にメジャーの舞台からは遠ざかったが、その後も長く独立リーグやメキシカンリーグでプレーを続けていた。メジャー通算647試合で44勝50敗19セーブ、防御率4・00は堂々たるものと言っていいだろう。

エンゼルス時代のヘクター・カラスコ(2007年4月14日撮影)
四竈衛のメジャー徒然日記

菊池雄星「データ」と積み重ねた「経験」で米に順応

キャンプインをし、Vサインを作りマリナーズの同僚と話す菊池雄星(右)(撮影・菅敏=2019年2月12日)

マリナーズ菊池雄星投手(27)の初めてのキャンプが始まりました。岩手・花巻東高時代からメジャーを目標にしていただけに、米国流の投球メカニック、生活習慣だけでなく、英会話を勉強するなど、多岐にわたり、周到な準備を進めた結果、ようやくスタートラインに立ちました。

野球選手である限り、フィジカル面を万全にすることが最優先なのは言うまでもありません。その一方で、メンタル面や思考法の順応も、重要な要素になってきます。菊池の場合、日本で培った技量と、米国レベルとの違いを認識しつつ、冷静に受け入れようとする姿勢が垣間見えます。その一端が、近年の米国で主流となりつつあるデータ重視へのアプローチです。

キャンプ2日目。初めてブルペンに入った際、菊池と捕手の背後には、最先端機器「ラプソード」が設置されていました。同機器は、1球ごとに球速、回転数、変化球の軌道軸などが計測できる「優れもの」で、近年、メジャー各球団が一斉に導入するようになりました。ザックリ言えば、これまで速球の「伸び」や変化球の「キレ」と表現されていた曖昧な部分が、数字としてはじき出されるような印象でしょうか。そんな細かい数字を、菊池はいい意味で、客観的に見ていました。

「データは自分も好きで意識してやってるんですけど、積み重ねることで意味が出てくるのかなと思うので、今のスプリングトレーニング中とシーズン中とかを比べながら、自分では気付かないところを教えてくれるツールかなと思ってます」。

つまり、単純に高水準の数字だけを追い求めるわけではなく、「好不調」を計るバロメーターの一部として考えているのでしょう。たとえ、データ上では高い数字を残しても、少しでも自分の感覚に違和感があれば、必ずしも好結果に結び付くとは限りません。実際、メジャーでは時速160キロ前後の快速球が、瞬時にして本塁打になる光景も珍しくありません。

近い将来、野球の「科学化」「データ化」が、さらに細分化され、発展する可能性は高いでしょう。ただ、グラウンド上の野球は、テレビゲームとは大きく異なります。生身の投手と打者が対決する限り、雌雄を決するうえで、微細な駆け引きやそれまでの経験則が、重要な要素として存在するはずです。菊池の言葉通り、そこにはデータを含めた「積み重ね」のキーワードも見逃せないでしょう。

「ブルペンで毎日チェックして、もう少しこうすればもっと曲がるんじゃないかとか、改善できるんじゃないかとか、確認できるというのは大きいなと思います」。

データや数字と戦うのではなく、いかに有効に活用するか-。

滑るメジャー球、硬いマウンドだけでなく、細分化される膨大なデータへのアプローチを見る限り、菊池はすでに米球界に順応しているような気がします。【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)

キャンプインし、ユニホーム姿でキャッチボールをする菊池雄星(撮影・菅敏=2019年2月12日)

渡辺史敏 American Report

MLB150周年、レッズは記念ユニや開幕パレード

150周年を迎えるシンシナティ・レッズ(AP)

3月28日に開幕する2019年シーズンはMLBにとって、特にレッズにとって特別なシーズンとなる。1869年にシンシナティ・レッドストッキングスが初めて公式に全ての年俸が支払われた、初のプロ・ベースボールチームとなってから150周年にあたるからだ。

これを記念してMLB全チームのユニフォームの右袖には150周年記念パッチがシーズンを通じて付けられることとなる。さらに3月28日の開幕日には、リーグ全体で記念特別帽子が着用されるということだ。

なかでもレッドストッキングスに由来し、シンシナティを本拠とするレッズは特別で特別な記念ロゴの入った帽子とユニフォームを着用する。さらにパイレーツ迎えての開幕戦前にはパレードを行う他、シーズンを通じて15の復刻ユニフォームの着用や記念イベントを行う予定だ。

MLBとしても公式ウェブサイトやソーシャルメディアなどで幅広く記念キャンペーンを行うとしている。

ロブ・マンフレッドMLBコミッショナーはキャンペーンの記者会見で「プロフェッショナル・ベースボールの創立150周年を祝うとともに、その歴史を称え、今日の素晴らしい選手たちを称えられることに興奮している。MLB150周年のパッチは今日のゲームに関わるすべての人がプロベースボールとMLBの歴史とリンクしていることを常に思い起こさせることだろう」と語った。

MLBは100周年だった1969年と125周年の1994年にも同様の記念パッチを採用しており、今回の記念パッチもその歴史を踏襲したものになっているということである。

1869年のレッドストッキングスは初のプロチームというだけでなく、この都市57勝無敗のパーフェクトシーズンを達成したことでも知られる。今シーズン、レッズはヤシエル・プイグ外野手をドジャースからトレードで獲得した。この特別なシーズンでどんな成績を収めるか楽しみである。

室井昌也 韓話☆球題

KIA正田コーチ、王者奪還は「ベテラン休ませながら」

「若手、若手って言うけど、まずベテランのコンディションを整えてあげなきゃ」

KIAの正田耕三打撃コーチはキャンプ地の沖縄・金武町(きんちょう)で世代交代の必要性を求める周囲の声に、自身の考えをこう話した。

KIAは2017年に8年ぶりの優勝を果たすも、昨季は5位。しかし順位低下の要因はチーム防御率リーグ9位(5.40)の投手陣にあって、攻撃陣は好成績を残した。チーム打率、打点、得点はいずれも首位の斗山(トゥサン)に次ぐ2位。今季も主力打者は健在で正田コーチは1~9番をスラスラと言い始めた。

「1番外国人(ヘーゼルベーカー)、2番金善彬(キム・ソンビン)、3番安致弘(アン・チホン)、4番崔炯宇(チェ・ヒョンウ)、5番金周チャン(キム・ジュチャン)、6番羅志完(ナ・ジワン)、7番李ボム浩(イ・ボムホ)、8番崔元準(チェ・ウォンジュン)、9番金ミン植(キム・ミンシク)。新外国人はまだベールを脱いでないけど、このメンバーでほぼ決まり」

上記メンバーの平均年齢は31.1歳。4~7番に限ると35.5歳と確かに高い。しかし正田コーチは「ベテランを抜けるような若手がいないんだから、まずはベテランを(年間)20試合くらい休ませながら使うことを考える」と話す。

「僕らの頃もそうだったけど、若手というのは使える選手が誰もいない時に辛抱して起用するものだよ」

レギュラーと控えの差が大きいKIAの野手陣。しかしベテランは悠然と構えているわけではない。37歳サードの李ボム浩(元ソフトバンク)は体を絞ってキャンプに備えてきた。KIAのキャンプは若手、ベテランともに声が出て活気にあふれている。

「去年は前の年に優勝したので選手に“勝たなきゃ”というプレッシャーが感じられた。しかし今年はみんな元気だよ」と言って正田コーチは笑みを浮かべた。

今年も打線は期待できそうなKIA。KIAの王者奪還への道は投打の歯車ががっちりとかみ合うかにどうかだ。

外国人記者の目 田中将大

田中は2019年の準備万端。だが、ヤンキースに求められるさらなるヘルプ

ヤンキース田中将大(2018年10月9日撮影=菅敏)

Masahiro Tanaka is ready for 2019, but the Yankees will need more help from their rotation to win a pennant

1月16日、ヤンキースの田中将大はタンクトップ、ショーツ姿で今年初めてブルペンに入ったという映像をインスタグラムで公開した。そして3日後には2度目のブルペン、1月25日には3度目のブルペンの様子をやはりインスタグラムで公開している。今年は2月15日がバッテリー陣の練習初日。田中はほぼ1カ月前からブルペンに入っていることになる。田中にとっては6度目のキャンプだが、ここまでのところ順調に仕上がっているようだ。

ただ、ヤンキースの先発陣の顔ぶれを見ると、やや不安もある。

このオフ、ヤンキースはまず、ダイヤモンドバックスからフリーエージェントになったパトリック・コービン獲得を目指したが、ナショナルズと6年総額1億4000万ドル(約154億円)で契約。ヤンキースが想定していた額をはるかに上回った。ヤンキースはマリナーズからジェームズ・パクストンをトレードで獲得し、J・A・ハップ、CC・サバシアと再契約。ルイス・セベリーノと田中を含めて5人がそろったが、やや心もとない。

というのも、セベリーノは昨季後半、球種がばれていると言われた。サバシアとパクストンは故障が多い。ハップは36歳であまり上積みが期待できない。となると、田中にかかる期待は、必然的に大きくなる。

もっともヤンキースは、先発は5回を投げてくれればいい、と考えているのかもしれない。チャド・グリーン、アダム・オッタビーノ、ザック・ブリトン、デリン・ベタンセス、アロルディス・チャップマンというブルペン陣はおそらくリーグ屈指だろう。昨季のワールドシリーズを制したレッドソックスと比べると先発メンバーでは劣るが、リリーフの戦力では確実に上回る。先発が5回まで試合を作ってくれれば、計算はできる。

ただ、そういう展開に持ち込めるかどうか。

パクストンとサバシアは確実に一定期間、戦列を離れるだろう。しかし現状、その穴を埋める先発投手がマイナーにもいない。プロスペクトがいないことはないが、あと数年かかるのではないか。ヤンキースとしては、トレードが噂されるマディソン・バムガーナー(ジャイアンツ)やコリー・クルバー(インディアンス)らの動きを見ながらのキャンプインとなるだろう。

そんな中で、田中については1年間通して健康で投げてくれることをチームは期待している。田中まで脱落すれば、ヤンキースの先発陣が総崩れになりかねない。彼が背負うものは小さくない。

【ピート・カルデラ】

助っ人列伝

制球に不安も三振の取れる元トッププロスペクト

阪神ジョンソン

ドラフト1巡で指名されたからといって、それがプロでの活躍を約束するものではないのは日本のプロ野球でもメジャーリーグでも同じ。ただし、トッププロスペクトとして期待されながら大成できなくとも、環境が変われば花開く可能性は残されている。

阪神が獲得した右腕ピアース・ジョンソンは、2012年のドラフト1巡(全体43位)でカブスから指名されてプロ入り。2Aでは通算2シーズンで34試合に登板(うち33試合に先発)して11勝6敗、防御率2・31と、ここまでは順調だった。しかし2016年に初昇格した3Aでは防御率6点台と通用せず。リリーフに転向した2017年も43試合(うち先発1試合)で防御率4点台と今ひとつで、この年の5月にメジャーデビューしたものの1試合に投げて1回2失点とアピールできず。マイナーのシーズン終了後の9月にウェーバーにかけられてジャイアンツへと移籍した。

ジャイアンツでの2018年はメジャーとマイナーを行ったり来たりしつつ37試合をメジャーでリリーフ登板したが、防御率5・56と振るわず。オフにフリーエージェントとなると、いったんアメリカでのキャリアに区切りをつけて来日することになった。

球速は平均で150キロ近くあり、カーブとの緩急で奪三振率が高いのが持ち味。結果は今ひとつだった3Aでも9イニング平均11・5奪三振だった。その一方で制球力は心もとなく、メジャーでは9イニング平均で4・6与四球。日本の野球にうまくはまれば三振の山を築けるが、なじめないと四球連発で自滅という可能性もちらつく。

恐らくはセットアッパーとして起用されると思われるだけに、彼の出来が阪神の勝利数を大きく左右することになりそうだ。

水次祥子の「書かなかった取材ノート」

無名投手がマイナー契約 きっかけはSNS動画投稿

まったく無名の投手がある日突然脚光を浴び、メジャーの球団からオファーをもらう、あるいはスカウトからのラブコールが殺到するという野球版シンデレラボーイが話題になっている。クリス・ナンという28歳の投手がその1人だ。

ナンは故郷テネシー州のリプスコム大在学中の12年に24巡目でパドレスに指名されプロ経験はあるものの、マイナーリーグで鳴かず飛ばずのまま一時は目の負傷で視力を失いかけた時期があり、それが原因でうつ症状に陥ったこともあったという。

それでも野球を諦めずにトレーニングを積み、速球がMAX99マイル(約159キロ)をマークするまでになった。ブルペンでその剛速球を投げる映像を撮影し、ツイッターに投稿するとそれが野球ツイッターコミュニティーの間で話題となり、メジャー球界関係者の目に触れるまでに拡散。そしてこの1月下旬、ナンはレンジャーズとマイナー契約を結ぶまでにこぎ着けている。

無名の選手がツイッターやインスタグラムなどで誰かの目に留まり、拡散されて大きな話題を呼びスカウトから声がかかるというケースは、今後増えていきそうだ。すでに無名投手の投球動画を投稿することをほぼ専門としている有名なツイッターアカウントも存在する。通称「ピッチング・ニンジャ」と呼ばれているロブ・フリードマン氏のアカウントがそれで、埋もれた逸材に光を当てさせる目的で毎日多くの投球動画をツイートやリツイートで拡散し、無名選手と球団やスカウトの懸け橋となっている。

ナンの投球動画も同氏がリツイートし、元メジャー投手で現在パドレス傘下マイナーのコーチを務めるグレンドン・ラッシュ氏も「誰かこの投手を獲得すべき」とリプライするなどで拡散され、99マイルを計時した動画の再生回数は37万回を超えたという。フリードマン氏のリツイートによって、あるオランダの若い投手は、米国内大学のスカウト20人以上から勧誘の声がかかったという例もあるそうだ。

もちろんSNSの投稿ビデオなので真剣な人ばかりではなく、スピードガンを水増しする等のいたずら投稿もあるかもしれず、その辺の課題はあるだろう。だが同氏の活動は規模を拡大し、選手に対して野球指導も含めた多角的なサポートをする事業になりつつあるという。メジャーでもアストロズはスカウト業務をビデオ偏重に移行しているといわれている。投手は球速があれば将来性を期待されるという点でアピールしやすいので、SNSでのビデオデビューが成功につながる可能性は高そうだ。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)

渡辺史敏 American Report

ナイキ&ファナティクス参入決定でMLBどう変わる

エンゼルスのマイク・トラウト外野手(18年4月27日撮影)

MLBは2020年からスポーツ用品メーカー、ナイキが公式ユニフォームとシューズのサプライヤーとなり、スポーツグッズの製造・販売を行うファナティクスにライセンスと販売の権利を与える10年契約を結んだと発表した。これは2016年に発表されていた2020年からスポーツ用品メーカーのアンダーアーマーがフィールドで着用されるアパレルの製造メーカーになるという契約を置き換えるものだ。

ナイキは全30チームの試合用ユニフォームはもちろん、アウター、トレーニング用アパレルなどの製造を一手に引き受け、デザインも同社のチームが担当することとなる。一方のファナティクスはファン向けグッズのライセンス生産・管理する権利を持ち、さらにナイキの公式コレクションをMLB公式サイトや各チーム、一般小売店などに対して流通・販売していくということだ。

1982年から打撃練習用ジャージを、さらに2005年からは試合用ユニフォームを供給してきたのはアパレルメーカーのマジェスティック・アスレチックスだったが、ナイキと交代することとなる。ただマジェスティックは2017年にファナティクスに買収されており、今後もMLBとの関係は続くということだ。

またアンダーアーマーについてだが経営難に陥っており、現在国内外で戦略見直しがおこなれている最中で、今回の契約放棄もその一環だと見られている。

ナイキはリーグ以外にもエンゼルスのマイク・トラウト外野手やヤンキースのジャンカルロ・スタントン外野手、ナショナルズのマックス・シャーザー投手など500人を超えるMLBとマイナーリーグの選手と契約を結んでもいる。公式ユニフォームとともにこうした選手たちを活用したPRにも力が入れられそうだ。

ロブ・マンフレッドMLBコミッショナーは声明で「マーケティングとイノベーションの推進におけるリーダーとしてグローバルブランドで評価の高いナイキは理想的なパートナーです。さらに、ファナティクスははファンにスピード、高い技術、質の高いサービスを提供することを実践している貴重なパートナーです」とコメントしている。

この契約によって2020年からMLBにどんな変化が起き、我々がどんなグッズを手にすることになるのか楽しみにしたい。

室井昌也 韓話☆球題

韓国球界の背番号事情 エースナンバーは“1番”

韓国の各球団も2月1日からキャンプイン。各選手、ユニフォームに袖を通して始動を開始した。

その1日、NCは今季の選手の背番号を発表した。それによると昨季から番号を変えた選手が25人に上る。中でも20番台は26、29を除き、変更または新加入の選手、コーチが新たな番号を背負うことになった。

日本では若手選手が出世すると番号が小さくなるということがあるが、韓国の番号変更を見ると、日本の「法則」とは異なる点が多い。例えば日本では投手の番号とされる10番台だが、韓国では野手がつけることが少なくなく、16、18といったエース級投手の番号をつける野手もいる。

韓国でも18番にエースのイメージがないわけではない。KIAの18番は前身のヘテで大活躍した投手、宣銅烈(ソン・ドンヨル)の背番号で永久欠番になっている。だが韓国のエースナンバーは他にもある。

その1つが61。メジャーリーグで活躍した朴賛浩(パク・チャンホ)がつけていた番号だ。そしてもう1つが1。日本ではアマチュア野球のエース番号であるこの数字。日本の投手で背番号1は斎藤佑樹(日本ハム)、松井裕樹(楽天)だけだが、韓国の場合、昨季は10球団中、8球団で投手が1番を背負った。

昨季、野手で1番をつけていたNCの朴ミン宇(パク・ミンウ)は今年、2017年までつけていた2番にわずか1年で戻すことにした。NCの1番は元々、外野手の金俊完(キム・ジュンワン)がつけていたが、軍入隊により空き番号に。そこで朴ミン宇は心機一転、2から1へと変更した。しかし投手の柳元相(ユ・ウォンサン)が「1番をつけたい」としたため、後輩の朴ミン宇が柳元相に譲ることになったのだ。

その他の球団ではハンファ・河周錫(ハ・ジュソク)、KIA・崔元準(チェ・ウォンジュン)の両内野手が今年から背番号1となる。しかしその他の8球団で1番をつけるのはやはり投手だ。

宮崎、沖縄のキャンプ地。今年の日韓での練習試合は来週11日から中日-ハンファ(北谷)などが行われる。今年も「18番で内野手か」、「1番のピッチャー、プロじゃ珍しいな」といった観客同士の会話が聞かれそうだ。

四竈衛のメジャー徒然日記

イチローの休みは1日だけ?超シビアなキャンプ事情

マリナーズ・イチロー(2018年3月19日)

2月に入り、日本各地のキャンプ地からは「球春便り」が耳に届く季節になりました。プロ野球選手にとって、キャンプインの2月1日は新しいシーズンの「正月」とも言われていますが、メジャーの場合、少しばかり趣が異なります。

基本的に、バッテリー組と野手組のキャンプインが異なるだけでなく、各チームによっても「初日」の設定はバラバラです。日本のように、全員でキャンプ地へ移動後、整列して歓迎セレモニーを行うことなどなく、基本的には指定された集合日までにキャンプ地入りしていることが確認されていればOK。昨オフ終了後、「トミー・ジョン」と呼ばれる右肘手術を受けたエンゼルス大谷のような故障者を除けば、オフ期間の自主トレ、調整などの強弱は、ほぼ各個人の判断に任されています。

その一方で、いざキャンプがスタートすれば、極めてシビアな現実、いわば「サバイバル」が待ち受けています。

たとえば、今季のマリナーズの場合、開幕までの日程は、かなり切迫しています。

▼2月12日 バッテリー組キャンプイン

▼同16日 野手組キャンプイン

▼同21日 オープン戦スタート

▼3月13日 オープン戦最終戦

▼同20~21日 日本開幕戦(対アスレチックス=東京ドーム)

各チームとも、キャンプインした直後、一定の調整期間はありますが、チームの全体練習は、ごくわずかです。球団にもよりますが、それらの内容は、反復や徹底というより、確認程度と言ってもいいでしょう。裏を返せば、個人の調整遅れは致命傷でもあり、場合によっては戦力外通告にも直結しかねません。今季のマリナーズの場合、この間、東京滞在時を除くと、完全休養日は3月4日だけ。日米間の移動もあるだけに、選手への負担は、そう簡単には算出できません。それでも、当落線上にいる選手は、目の前の試合で結果を出さない限り、最終的にはメジャーで生き残れない現実が待ち受けています。

つまり、好条件で契約した菊池のみならず、大ベテランのイチローにとっても、春季キャンプは、極めて大切な期間です。

つまずいたり、出遅れれば、すぐに補強もすれば、隙を狙われる世界-。

常に、生き残りをかけて挑み続けるメジャーリーガーのプレーや結果だけでなく、その言葉の重みを、あらためて考える季節が近づいてきました。【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)

外国人記者の目 大谷翔平

大谷は、今年の開幕に間に合わない

エンゼルス大谷翔平

Ohtani won’t be ready for Opening day

大谷翔平(エンゼルス)も人間だったということか。

昨年9月、大谷は右ひじの靭帯を痛めたまま出場を続け、打率3割1分、7本塁打、18打点、19得点、OPS1・003という非凡な数字を残し、ひょっとしたら大谷は極めて高い回復能力を持っており、であるとすれば、来年の開幕にも間に合うのでは、という期待もあったが、先週、エンゼルスのビリー・エプラーGMが電話会見に応じると、それを否定した。

「リハビリの進行を考えれば、大谷が開幕の日に間に合わないことは明らかだ」

では、いつ復帰するのか?

エプラーGMは「それ以上のことはわからない」と明言を避けたが、開幕には間に合わなくても、4月の早い段階で復帰することもまた、否定していない。

一般的に考えて、トミー・ジョン手術からの復帰は、投手の場合で12から18カ月。打者の場合で6から12カ月。2017年6月に利き手ではない方の肘を手術したヤンキースのグレイバー・トーレスは4カ月後に打撃練習を開始し、2018年のキャンプでは一切の制限がなかった。

また、元ドジャースとエンゼルスのチームドクターだったルーガ・ポデスタ医師はこう話す。

「6カ月で復帰できるのではないか。投手のリハビリなら話が変わってくるが、彼の投手としての復帰は2020年。投げる必要がないのであれば、そんなに時間はかからない」

ただ、エンゼルスとしては慎重だ。

仮に大谷が二刀流選手でなく、野手であるならば6カ月で復帰していたかもしれないが、投手と打者のリハビリを並行して行っているため、制限がかかっている。

例えば投手としての新たなリハビリメニューを開始した週は、打者としての新たなメニューを加えることはないという。結果としてどうしてもそれぞれのリハビリが遅れてしまう。

ただそれは彼の回復が遅いとかそういうことではなく、エンゼルスが前例のない二刀流選手のリハビリを、試行錯誤しながら行っている結果でもある。

それもまた想定内ではあったが、残念ながら打者・大谷を見ることができるのは早くても4月半ばか。遅ければ、5月半ばになるかもしれない。【マイク・ディジオバンナ】

助っ人列伝

エップラー、コントロール重視型で化ける可能性も

メジャーデビューまであと1歩まで迫ったとしても、その一歩がすぐ届くとは限らない。場合によっては「急がば回れ」が正解のこともある。年明けにオリックスと契約した右腕タイラー・エップラーもそうした心境だったのかもしれない。

エップラーは2014年のドラフト6巡でパイレーツから指名。先発として順調にマイナーをステップアップし、2017年には3Aまで昇格。2018年には28試合の登板(うち25試合先発)で13勝6敗、防御率3・59の好成績をマークした。ただしメジャー昇格の声はかからず、オフのルール5ドラフト前にもプロテクトを意味するメジャーの40人枠入りはしなかった。これはパイレーツからの評価がそこまで高くなかったことを示唆している。

その理由を推察するならば、まず思い当たるのは被打率の高さだ。球速が140キロ台半ばで制球力で勝負するタイプのため、少しでも甘くなると痛打されがち。昨季も153イニングで160本のヒットを浴びている。

もっとも日本では十分に通用する球速ではあり、コントロール重視型の投手のほうがフィットする可能性もある。今年1月で26歳の若さならばまだ成長の余地もあり、本人も日本での活躍をアピール材料にメジャーデビューという青写真を描いているだろう。高いモチベーションはプラスに働くはずだ。

渡辺史敏 American Report

ドジャースがラムズ念願のNFLタイトルを後押し?

NFLスーパーボウル進出を決めたラムズ(AP)

現地2月3日、ジョージア州アトランタでプロアメリカンフットボールNFLの優勝決定戦、第53回スーパーボウルがロサンゼルス・ラムズとニューイングランド・ペイトリオッツによって行われる。25日にそのラムズの練習場を激励に訪れたのが同じロサンゼルスを本拠とするドジャースの選手たちだった。

ジャスティン・ターナー内野手やウォーカー・ビューラー投手、コディ・ベリンジャー一塁手などがラムズのロッカールームを訪問し、居合わせた選手たちと交歓を交わした。ラムズの守備の中心選手でディフェンシブタックルのアーロン・ドナルドは「握手をした。彼らはグッドラックとおめでとうと言ってくれた。こうしたサポートが好きだ」と感謝の言葉を述べている。

また素直にデビッド・フリース三塁手への憧れの念を現したのが走りのエース、ランニングバックのトッド・ガーリーだった。「彼らが来てくれたことに感謝している。フリースを見て、『おー、あれはデビッド・フリースだ』と思ったよ。彼がカージナルスにいたときのことを覚えていたんだ。サプライズだった。でも彼らが来てくれてサポートしてくれたことに感謝している」とコメントしている。フリースは2013年までカージナルスに所属していた。

実際、ドジャースの激励はラムズにとって大きな助けになるかもしれない。ラムズが最後にスーパーボウルに進出したのは2001年シーズン以来で、そのときはセントルイスを本拠としており敗退している。さらに優勝したのは1999年シーズンだけだ。またロサンゼルスに本拠を置くチームがスーパーボウルに優勝したのも、現在はカリフォルニア州オークランドに移転したレイダースが83年シーズンに第18回が最後となっているのである。

対してワールドシリーズを6回制しているドジャースは最後にチャンピオンになったのは88年であるものの、近年もポストシーズンの経験は豊富だ。2年連続でワールドシリーズに進出しており、昨シーズンも第5戦までレッドソックスと覇を争った。2017年もアストロズに最終第7戦で敗れている。

ドジャースが念願のNFLタイトル奪取の後押しになってくれたら、と思うロサンゼルスのファンは多いことだろう。

外国人記者の目 ダルビッシュ

4度オールスター出場の男は、昨年より居心地よさげで自信を持っている

Four-time All-Star seems more comfortable and more confident

ちょうど去年の今頃、6年総額1億2600万ドル(約138億6000万円)でカブスと契約したダルビッシュ有。昨年は故障が続き、わずか1勝に終わった。今年にかける思いは人一倍強く、言葉の端々に自信が滲む。

「僕は常に、自分を信じている」

先日、米メディアの取材に応じると、そう話した。昨年痛めた右肘に関しては「もう問題ない」とのこと。

「もし、故障さえなければ、僕はチームに貢献できる」

不安が消え、余裕も窺える。昨季までは通訳を通して米メディアの取材に応じていたが、今年は通訳を介さず、英語で取材に応じるそうだ。

なにより、居心地が良さそう。昨年感じていたようなストレスもない。

「色んな意味で、昨年とは違う。あなた達(シカゴのメディア)のことも知っているし、チームメイトのこともよく分かっている。もうここが、自分の居場所だと言える」

ただ、昨年、故障以外に不振だった要因はあるのか? と聞かれると、「わからない」と答えている。

「何かはわからないけど、僕ではなかったことは確か。ダルビッシュ有ではなかった。何かがおかしかった」

しかし、こう続けている。

「メンタルかもしれない。去年は、常に何かをしなければならない、と考えていた。ストライクを投げなくちゃいけないとかーー。とにかく、何々をしなければいけない、という考えが強すぎた」

ダルビッシュがメンタルの問題を認めたのは初めてだったが、今季はその悔しさもモチベーションとなる。

「大きな意味を持つ。でも、チャレンジは大好き」

昨季、ダルビッシュがいれば、という場面はあった。特にプレーオフでは不在が響いた。チームはこのオフ、ほとんど補強ができなかった。昨年、ダルビッシュと大きな契約を結んだため、予算がないのだ。そんな意味でも今年、チームもファンも、ダルビッシュにかける期待は大きい。それは同時に彼にとって大きなプレッシャーになるが、それに打ち勝つだけの自信が今の彼にはあるようだ。

彼の復活は今季のチームのカギを握る。応えられるか。彼の言葉を信じたい。【ゴードン・ウィッテンマイヤー】

室井昌也 韓話☆球題

代表監督に金卿文氏 組閣のポイントはコーチの人選

28日、金卿文(キム・ギョンムン)前NC監督(60)の代表監督就任が発表になった。金監督は2008年の北京オリンピック(五輪)で韓国を金メダルに導いた時の監督。宣銅烈(ソン・ドンヨル)前監督の突然の辞任という、危機的状況を救うべく11年ぶりの代表監督復帰を決断した。

今年11月のプレミア12、来年の東京五輪に向けて金監督が最初に着手するのがコーチ人事。特に五輪に関してはコーチの人選が非常に重要となる。なぜなら五輪ではコーチを3人しか登録できないからだ。少数ゆえにコーチには1人数役をこなせる人材が求められる。

日本は北京五輪で星野仙一監督の下、田淵幸一、山本浩二、大野豊の3コーチがベンチ入りした。しかしこの陣容が機能したとは言い難かった。田淵、山本の両氏ともに専門分野は打撃。山本氏が経験のない三塁コーチを務め、その結果として守備、走塁面で的確な状況判断がされず、日本は「金しかいらない」と臨むも結果は4位に終わっている。

一方の韓国は三塁コーチが本職で、所属チームで金監督の下、ヘッドコーチを務める金光洙(キム・グァンス)コーチが選手と監督とのパイプ役を果たした。また三塁コーチとしては準決勝進出をかけた日本戦の大事な場面で得点につながる好判断を見せた。

そして選手の中にもコーチ的役割を果たせるベテランが複数代表入り。一塁ベースコーチのほか、コーチがいないブルペンでは投手陣のコンディションを控え捕手が首脳陣に伝達し、的確な投手継投に生かされた。

今回の代表チームの組閣にあたり注目されていたのが球界のレジェンド・李承ヨプ(イ・スンヨプ)現KBO広報大使の入閣だ。李氏は代表監督を選ぶ技術委員会入りしたためその可能性が取り沙汰されていた。金監督の就任会見でも李氏のコーチ就任に関する質問が記者から上がったが、金監督は穏やかな口調でこう答えた。

「野球はチームワークのスポーツだ。コーチが目立つと選手よりコーチの色が濃くなるので、李氏のコーチ入りは控えることになるのではないか。人選には入っていない」。

五輪を知り、雰囲気に流されることなく決断できる金監督らしい回答だった。

代表チームの人事では日本、韓国ともに各放送局の解説者をバランスよく選ぶなどの配慮がはたらくことが少なくない。しかし温和ながらはっきりノーと言える金監督は勝つことを第一に考えた人選をするだろう。金監督は2月中にコーチ陣を決めるとしている。

助っ人列伝

昨季メジャーデビューの大型右腕が日本ハムに加入

27歳だった昨季にメジャーで10試合ながら防御率1・46をマーク。これだけを聞けば今季以降にメジャーで飛躍も期待できそうなほどの投手が日本ハムに加わった。ジャスティン・ハンコックだ。

2011年のドラフト9巡でパドレスに指名されたハンコックは当初、先発としてマイナーでキャリアを重ねた。2015年には3Aまで昇格するもメジャーからはお呼びがかからず。リリーフへ転向した2017年途中にはカブスへとトレードされる。

そして昨年5月に待望のメジャーデビュー。初戦こそ2失点したものの2試合目以降は無失点に抑えていたが、6月末に右肩の炎症で離脱。そのままメジャーに戻ることなくシーズン終了となってしまった。

193センチの長身から150キロ台後半に達する速球を投げ込むパワー型。制球力に難があるのが大成を阻んできた要因だけに、日本のストライクゾーンに早く対応できるかが活躍のカギとなりそうだ。

水次祥子の「書かなかった取材ノート」

ストの可能性も、米プロスポーツが直面する労使問題

ナショナルズFAのブライス・ハーパー(左)とドジャースFAのマニー・マチャド

もしかしたら1995年以来のストライキが起こるのは、避けられないかもしれない。

最近、MLB周辺でそんな話が噴出している。理由はFA市場が2年連続で異常に停滞しているからだ。今オフFAの目玉だったブライス・ハーパー外野手(26=ナショナルズFA)とマニー・マチャド内野手(26=ドジャースFA)はキャンプインまで1カ月を切っても所属先が決まらず、大型複数年契約を得る選手も少なく、決まったとしても単年契約の選手が多い。しかし一方で、球団経営は今も収益を増やし続けている。メディアの中には「現在の労使協定が失効する2021年までにMLB選手会はストライキの準備をするべき」とはっきり提言しているものもある。

現状に憤慨しているのは選手だけでなく、代理人も同じだ。球界屈指の実力と名声を誇るスーパーエージェント、スコット・ボラス氏はニューヨーク・デーリーニューズ紙で「球界が史上最高の収益を記録しているのに4年連続で観客動員が減少し、球団は勝つことを目指さず再建にうつつを抜かす。3年前はステージ1のガンだったが、今はステージ2に悪化している」とMLBと経営側を批判。別の有力代理人は、水面下で経営側への対抗策を練っているという話もある。選手がMLB主催の行事参加をボイコットしたり、MLBが経営する専門テレビ局MLBネットワークのインタビューや出演を拒否するなどを提案し、選手間でひそかにメモを回しているそうだ。ストライキの可能性を口にする選手も多いという。

しかしもし本当にストライキにでもなったら、SNS時代に入って初めての米プロスポーツ界の労使決裂によるシーズン休止。過去と比べて計り知れないダメージを負う可能性もあり、慎重論も当然ある。

そんな折も折、プロスポーツ界の労使闘争を描いた映画が間もなくNetflixで公開される。野球界ではないがNBAプロフットボールを舞台に、闘争のため施設閉鎖の最中、1人の代理人が経営側と選手の間で板挟みになり翻弄(ほんろう)されるのだが、最終的にはプロスポーツ界のパワーバランスを完全に壊すような大変なことを起こすらしい。「High Flying Bird(ハイ・フライング・バード)」のタイトルで、スポーツ界を支配するのは誰か、支配すべきなのは誰かを考えさせられる内容だという。こんなタイムリー過ぎる映画が制作されるのは、MLBだけでなく他のプロスポーツ界でも同じような労使問題に直面しており、米国社会の縮図化しているという背景があるのかもしれない。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)

大リーグ選手会のストライキに反対するボードを掲げるファン(2002年8月21日撮影)

四竈衛のメジャー徒然日記

薬物使用疑惑の選手、将来的に殿堂入りする可能性は

ロジャー・クレメンス氏(左)とバリー・ボンズ氏

本年度のメジャー「野球殿堂入り」の各4氏が、このほど発表されました。とりわけ、史上最多となる公式戦通算652セーブ(ポストシーズン42セーブ)を記録したマリアーノ・リベラ氏(元ヤンキース)が、史上初となる満票(全425票)で選出されたことが、大きな話題を集めました。過去の最多得票でもある16年のケン・グリフィーJr氏(元マリナーズなど)の99・3%を上回ったことで、あらためて時代の変遷が浮き彫りになったような気がします。

リベラ氏以外、選出された3氏の得票(75%以上が選出)も公表されました。

エドガー・マルティネス氏(元マリナーズ) 85・4%

ロイ・ハラデー氏(元ブルージェイズ、フィリーズ) 85・4%

マイク・ムシーナ氏(元オリオールズ、ヤンキース) 76・7%

殿堂入りの資格に関して、かつては救援投手、指名打者への評価に関して「?」を付ける傾向があったことは否定できません。投手であれば「先発・完投」、または多くの投球回数を投げることが美徳とされていました。打者に関しても、打つだけでなく、守備を含めて評価される時代が、長く続いていました。その一方で、分業制の時代が定着し、クローザーを含めた救援投手の重要性が認識され、同時に指名打者への認識も少しずつ変化してきました。その結果が、リベラ氏の満票と、資格最終年の10年目でのマルティネスの選出だったような気がします。

では、禁止薬物使用疑惑のある選手が、将来的に殿堂入りする可能性はあるのでしょうか。メジャー最多の762本塁打を放ったバリー・ボンズ氏、サイ・ヤング賞7回、通算354勝を挙げたロジャー・クレメンス氏は、今回も選出されませんでした。もっとも、初年度の30%台から今回は約60%近くまで得票率を伸ばしており、最終年の2022年まで75%に到達する可能性は残されています。

ステロイドがまん延した時代を球界全体の「悪」として捉えるか、あくまでも使用した選手の個人的な「罪」として捉えるか。依然としてスポーツマンシップに反するとして、投票に否定的な記者も数多くいます。その一方で、薬物使用が判明したアレックス・ロドリゲス氏らの場合、出場停止処分を受けたことで「贖罪(しょくざい)」は済んだとする意見もあります。

投票するのは全米野球記者協会(BBWAA)の記者ですが、将来的にはファンをはじめとする社会全体の声が、影響するのではないでしょうか。【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)

渡辺史敏 American Report

マリアノ・リベラ氏が史上初の満票で米野球殿堂入り

マリアノ・リベラ氏(13年7月撮影)

現地22日、今年の米野球殿堂入り選手が発表され、元ヤンキースのマリアノ・リベラ氏が資格1年目で史上初の満票で選出された。

殿堂入りは全米野球記者協会(BBWAA)に10年以上在籍する記者による投票で75%以上の得票が条件となっている。今回は425人が投票し、その全員がリベラ氏に入れたことになる。これまでの最高得票率は元マリナーズのケン・グリフィー氏の440票中437得票の99.32%だった。

リベラ氏は1995年からヤンキース一筋で19シーズンにわたってクローザーとして活躍した。代名詞ともなったカットボールを武器に史上最多の通算652セーブを挙げている。その間にワールドシリーズチャンピオンに5回導き、99年のワールドシリーズではMVPにも輝いた。プレーオフでの防御率0.70は驚異的で、どれほどの絶対的守護神であったかを示している。オールスターにも13回選出されている。

そんな大スター選手だっただけに今回の殿堂入りは本人も自信があったようだが、満票というのは考えていなかったようだ。そのことがわかるのがFNTSYネットワークのマルチノ・プシオ記者が撮影した自宅で家族とともに殿堂入りの知らせをスマートフォンで受けるリベラ氏の様子を撮影したビデオ。殿堂入りが知らされた段階では、本人を含め皆ソファに座ったまま拍手をする程度の喜び方だったのだが、もう一つ知らせがある史上初の満票だったと言われると、全員が叫び声を上げて跳び上がって喜びを爆発させたのだ。やはり格別なのであろう。

リベラ氏以外では3人が殿堂入りする。元マリナーズで首位打者2度、通算2247安打、309本塁打のエドガー・マルティネス氏が殿堂入りの資格最終年の10年目で85.4%の得票率だった。元ヤンキースとオリオールズのマイク・ムシーナ氏は18シーズンで270勝、2813奪三振を挙げ、76.7%となっている。ブルージェイズとフィリーズでエースとして活躍し、通算203勝、サイ・ヤング賞2回ながら17年11月に小型機の墜落事故で40歳で死去したロイ・ハラデー氏は1年目で85.4%を得ている。

一方で禁止薬物の使用が取りざたされた、元ジャイアンツなどで歴代トップの762本塁打のバリー・ボンズ氏と、レッドソックスなどで354勝のロジャー・クレメンス氏はいずれも7年目だったが、共に得票率は59%台で落選となった。依然厳しい目が向けられているのだ。

室井昌也 韓話☆球題

代理人制度が裏目?移籍交渉が難航するFA選手たち

韓国の全10球団は日本同様に来週2月1日に春季キャンプをスタートする。一部のチームでは先発隊が既にキャンプ地入り。球春の訪れを感じさせている。その一方で冬の長い眠りからなかなか覚めないのが、契約交渉が続くFA選手たちだ。

昨季終了後、FA権の行使を宣言したのは15人。そのうち9人が未だに今季の契約を結んでいない。その顔ぶれにはハンファの外野手・李容圭(イ・ヨンギュ)、サムスンの遊撃手・金相竪(キム・サンス)といった代表チームの経験もあるトッププレーヤーが揃っている。

つい4、5年前はFA交渉解禁当日に移籍が発表されるという、事前交渉を疑いたくなるようなスピード契約が続いたが今の状況はそれとは正反対だ。その背景には大きく2つの理由がある。

1つに球団が選手の育成に力を入れるようになったことがある。以前はチームに必要な選手であれば次のFA取得までを保障する4年契約を結ぶケースが多かった。しかし20代後半から30代のFA選手の4年後に投資するより、将来活躍が見込める選手に注力した方が、長期的に見てプラスと考える球団が増えてきている。

そこで球団はFA選手に2年または3年契約での残留を提示しているが、選手の多くは4年契約を望み、その溝は埋まっていない。

もう1つが新たに導入された代理人制度が要因としてある。選手に代わってエージェントが球団と交渉できるようになったものの、そのことが選手にとって交渉に有利にはたらいているケースはあまり見られない。ある球団担当者によると「代理人はいい契約条件を求めるばかりで、選手の価値が高まるような説得資料を用意していない」と話す。

好条件を引き出すことだけを目的とする代理人と客観的なデータから契約内容を提示する球団。その両者で妥協点が見いだせていないことが未契約者の増加に表れている。

契約を済ませたFA6選手のうち移籍したのは斗山(トゥサン)からNCに移った捕手の梁義智(ヤン・ウィジ)のみ。梁義智は4年契約を結び、契約金と4年間の年俸を合わせた総額は125億ウォン(12億1000万円)という大型契約となった。しかしその他の選手の契約交渉は非常にシビアなものとなっている。

キャンプインまであと9日。FA未契約者が今後、移籍交渉を行う機会は限られる。そのためこの数日中に各球団から主力選手の「残留」の知らせが届く可能性は高い。

助っ人列伝

日本では珍しい兄弟プレーヤー揃い踏み

兄弟でプロ野球選手となる例は日本ではまだまだ少ないが、今季は外国人選手の兄弟がそろって日本でプレーすることになった。ソフトバンクの右腕ロベルト・スアレスの兄であるアルバート・スアレスがヤクルトと契約したからだ。

リリーフ投手である弟と違い、兄のスアレスは先発右腕。ベネズエラ出身で2006年にデビルレイズ(現レイズ)と契約してプロ入りしたが、マイナー時代にトミー・ジョン手術を受けたこともあって、なかなかメジャーデビューには至らず。エンゼルスを経て2016年にジャイアンツでようやく大舞台にたどり着いた。

この年は先発12試合を含む22試合に登板して3勝5敗、防御率4・29という成績。翌年はリリーフのみ18試合で0勝3敗1セーブ、防御率5・12と、メジャーでは大成できなかった。

先発メインということもあって弟ほどの球速はないが、それでも150キロ前後のツーシームは日本では強力な武器になり得る。そのピッチングの特性上、奪三振率は高くないがコントロールはまずまずで、ホームランをあまり浴びないのが特徴か。先発の駒不足に悩むヤクルトにとって頼れるローテーション投手となる可能性は秘めている。

水次祥子の「書かなかった取材ノート」

元横浜マホームズ息子はNFLスター MLBも注目

横浜時代のパット・マホームズ(1998年4月14日撮影)

昨年ドラフトでアスレチックスから1巡目全体9位指名を受けたカイラー・マレー外野手(21=オクラホマ大)が、アメフットの大学最優秀選手に贈られる「ハイズマントロフィー」を獲得し、MLBよりNFLへ進む可能性が高まっているという。

米国では学生時代に野球とアメフットの両方でスター選手となり、MLBとNFL両方のプロリーグから勧誘される選手が多い。アメフットを選んでNFLで活躍している選手には、野球界から「もし野球を選んでくれていれば」と惜しむ声が上がることもある。

現在NFLカンザスシティー・チーフスで活躍しているQBパトリック・マホームズ(23)もその1人だ。どこかで聞いた名前。そう、97、98年に横浜ベイスターズでプレーしたあのパット・マホームズ投手の息子さんだ。父が日本でプレーしていた当時、Jr.は2~3歳だった。

マホームズ父は横浜時代、1軍で2年間計21試合に登板し3勝8敗の成績に終わったが、親しみやすいキャラで記憶に残る選手だった。メジャーでは92年にツインズでデビューし、11年間で6球団を渡り歩き最後は独立リーグでプレーした苦労人だった。しかしマホームズJr.の方は、17年のNFLドラフトで1巡目に指名され、2年目の今季はレギュラーQBに抜てきされてNFLの記録をいくつも更新するほど実績を作り、あっという間にスター街道を駆け上がった。現在行われているポストシーズンでもチームが快進撃を続けており、日本時間21日に行われるカンファレンス・チャンピオンシップに進出した。

そんなマホームズJr.も学生時代は野球とアメフットの二刀流で、高校卒業時にはドラフト37巡目にタイガースから指名を受けた。当時は野手兼投手で、高校生ですでに96マイル(約155キロ)の剛速球を投げていたという。しかし下位指名だったため大学進学を選び、大学ではアメフットに夢中になった。

幼い頃のマホームズJr.は父にいつも球場に連れて行かれ、A・ロッドやジーターに野球の相手をしてもらったこともあるそうだ。そんな息子は自分と同じように野球選手になると思っていたという父は昨年、ニューヨーク・ニューズデー紙のインタビューで「息子は野球の世界で育った。1巡目指名を受ける可能性だってあったと思う。本人にも『お前ならメジャーリーガーになれる』と言ったよ。しかし息子の意志が固いと知り、今は毎試合観戦し応援している」と話している。

父がメジャーリーガーだったことから、米野球メディアもマホームズJr.に熱視線を送り、盛り上がっている。「Jr.は野球界が育てたようなもの」という論調の記事や、野球ジャーナリストの意見も見かける。チーフスがスーパーボウルまで進めば、さらに盛り上がりそうだ。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)

渡辺史敏 American Report

MLBと教育機関提携 理系離れ防止とファン獲得へ

フェンウェイパークの左翼フェンス「グリーンモンスター」

K-12と呼ばれる幼稚園年長から高校までの学童に対する科学教育の促進のため、MLBは大手メディア企業、ディスカバリー傘下のディスカバリー・エデュケーションと提携としたと発表した。

アメリカでもいわゆる理系離れが進んでおり、IT分野などでの人材不足が深刻となっている。そこで近年取り組まれているのがSTEM教育の重要性だ。STEMとは科学、技術、工学、数学の頭文字を組み合わせたもので、K-12の時期にこれらに触れていると将来、理系や理系の職業に進む率が上がるというのである。

そしてそんなSTEMに触れる入り口として近年スポーツを利用しようという動きが活発になっている。スポーツの科学的要素をクイズやゲームにし、そこから身近に学びの機会を与えようというのだ。

今回の提携ではすでにアメリカとカナダで560万人の生徒が使うディスカバリーの科学学習本を元に専用デジタルコンテンツが作成されるということだ。例えば「スタジアムの高度がホームランの数にどう影響しているか?」、「フィールドの表面が選手の速度にどう影響しているか?」といった疑問に対するビデオが制作され、学校などで利用される予定だという。

MLB側としても子供達がプレーに興味をもってくれるだけでなく、ビデオでグラウンドキーパーやデータアナリスト、運営役員といったMLBやチームでのキャリアを紹介することで将来の職業候補に入れてもらえる可能性が高まる。MLBのバーバラ・マクヒュー副社長は「この高品質のデジタルメディア学習ツールは、特にスポーツにおけるキャリアへの応用において、科学者とSTEMについての理解を深める機会を教育者に提供し、学生が私たちのゲームの美しさを一年を通して発見する手助けになるでしょう」とコメントしている。

MLBはコンテンツ制作のため、様々なプレーのデータやビデオ、画像などを提供するということだ。

こうしたSTEMへの取り組みを行っているのはリーグだけではない。学術都市ボストンを拠点とするレッドソックスは地元科学博物館と提携し、独自の科学教材本を制作配布した他、本拠地フェンウェイパークでの試合で小中学生を招待したSTEMデーも開催している。このイベントでは外野フェンス、グリーンモンスターから卵を割れないように落とす実験やコンコースでの科学実験アトラクションなどが展開され、多くの子供達が楽しんだということだ。

このようにリーグやチームが教育機関や企業と手を組み、社会的課題を解決しつつ人気も高めようというまさにウィンウィンを狙った取り組みが進められているのである。

室井昌也 韓話☆球題

キウムヒーローズ、波乱と激戦の1年乗り越え新たな門出

スポンサー企業の命名権料で球団運営をしているヒーローズは、昨季限りでネクセンタイヤとの契約が満了。今年からはネット証券会社の最大手・キウム証券と5年契約を結び、「ネクセンヒーローズ」から「キウムヒーローズ」となった。

15日にソウル市内のホテルで行われた出陣式。新しいユニフォームやエンブレムのお披露目が行われたその席で、列席者の心を打つ映像が流れた。昨秋のポストシーズンのハイライトシーンだ。

昨季4位のヒーローズは5位KIAとのワイルドカード決定戦と、4位ハンファとの準プレーオフを勝ち上がりプレーオフに駒を進めた。先に3勝した方が韓国シリーズ進出となるプレーオフでヒーローズは2位SKに連敗。後がない状況に追い込まれた。

しかしヒーローズはそこから巻き返す。ホームの高尺(コチョク)スカイドームで連勝し逆王手をかけた。そして迎えた第5戦。4対9で5点を追う9回表も2死となり、あとアウト1つで敗退決定というところだった。しかしヒーローズはそこから相手のエラーをきっかけに得点を挙げ、4番朴炳鎬(パク・ピョンホ)が2ランを放って土壇場で5得点。9対9の同点に追いついたのだ。

その後試合は延長10回裏、SKが11対10でサヨナラ勝ちし、ネクセンヒーローズがその名を名乗って戦う最後の試合が終わった。映像はうなだれる選手、呆然とするファンを映し出し、昨年のポストシーズンでの「奇跡」を締めくくった。

ヒーローズにとって昨年は選手2名の女性への暴行疑惑、球団前オーナーが横領、背任、詐欺で服役するという波乱の年だった。現場の選手にとって野球に集中できない状況だったが、それを彼らは耐えながら最後まで戦い抜いた。

出陣式を終えた朴炳鎬は今季に向けて、「若い選手たちは昨年いい経験をした。彼らにとって今年はアップグレードする年だと思う。私自身も一生懸命やって、新しくなったチーム名で若手と心を一つにして上を目指したい」と話した。

心機一転、2019年シーズンを迎える新生・キウムヒーローズ。その面々には昨年の厳しさを乗り越えた強さがある。

四竈衛のメジャー徒然日記

日米球界新時代 細かい制度を考え直す時期に

巨人岩隈久志

昨季までマリナーズで活躍した岩隈久志が、今季は巨人のユニホーム姿で8年ぶりに日本球界へ復帰することになりました。米ロサンゼルス郊外で自主トレ中の岩隈は、過去数年間、故障で苦しんだこともあり、いつも以上に明るい表情でシーズンへの意気込みを語りました。

「日本の野球をまた勉強するというか、選手も変わってきてると思うので、いろいろと研究しながら投げたいなと思っています」

今回の岩隈のみならず、メジャーで経験を積み、再び日本球界にプレー機会を求めるケースは、近年、頻繁になってきました。

かつて、パイオニアの野茂英雄がメジャーへの扉を開けた際、これほど多くの選手が日米両球界を行き来することをイメージできる人は、おそらく限られていたのではないでしょうか。当時、メジャー挑戦は退路を断った日本球界との「決別」であり、極端な言い方をすれば「裏切り者」とみられるような雰囲気すら漂っていました。選手心理からすれば、米国に骨をうずめる覚悟で太平洋を渡るような時代でした。

その後、メジャーへ挑戦することは、選手にとって手の届かない「夢」ではなく、具体的な「目標」に変わってきました。今オフ、マリナーズ入りした菊池雄星、エンゼルス大谷翔平らは、高校卒業時にメジャー入りを熱望するなど、メジャーとの距離は着実に変わってきました。

ただ、選手の思考、球界全体の風潮が変化した一方で、移籍システム自体はさほど変わっていません。海外フリーエージェント(FA)権を取得するまでには9年、それ以前であればポスティング制度を利用するしかありません。そのポスティング制度にしても、これまで何度となく規約が修正され、入札、譲渡金の規定も目まぐるしく変わってきました。

昨年、中学を卒業した直後の16歳、結城海斗投手がロイヤルズとマイナー契約を交わしたように、プロアマを問わず、今後も米国志向は強くなるはずです。確かに、優秀な人材が流出すれば、日本球界として一時的には危機感を感じるかもしれませんが、選手が海外で実績を積み、最終的にそれらの経験を日本に広めるようになれば、必ず発展につながるはずです。

昨季、復活した中日松坂が大人気を集めたように、元メジャーリーガーの存在感は、日本のファンにとっても別格です。昨年、メジャーを経験した指導者としてロッテに井口監督が就任しました。戦術、戦略面だけでなく、トレーニング法、施設面、ファンサービスなど、米国に学ぶ部分が、まだまだ多いことは間違いありません。将来的には、今現在、メジャーでプレーしているダルビッシュ、田中らが日本球界に復帰する可能性もゼロではありません。

今年で終わる平成の約30年間は、日米両球界にとっても、大きな変化をもたらした時代でした。新しい時代へ向けて、より多くの選手がメジャーへ挑戦できるようになるためにも、今後はFA権取得年数の短縮をはじめ、「田沢ルール」の撤廃など、今1度、球界全体の在り方、細かい制度を考え直す時期に来ているような気がします。【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)

渡辺史敏 American Report

ぜいたく税対策でMLB報酬額減少、FA市場停滞か

18年10月15日、リーグ優勝決定戦第3戦のセレモニーで整列したドジャースナイン、左から3人目が前田(撮影・菅敏)

AP通信は2018年のMLBにおける選手への報酬支払総額が42億2704万1948ドルとなり、2010年以降で初めて前年を下回ったと報じた。2017年は42億4505万ドルで約1800万ドルの減少となった。成長を続けてきたMLBにおいて支払総額が前年割れすること自体が珍しく、2002年の約300万ドル、2004年の約3200万ドル以来3回目となる。

減少の直接的な原因だが、薬物問題とシーズン半ばでの引退が上げられている。マリナーズのロビンソン・カノー二塁手とホワイトソックスのウェリントン・カスティーヨ捕手は薬物検査で陽性となったことでそれぞれ約1170万ドルと約350万ドルの報酬を減額されることとなった。ロベルト・オスーナ投手は家庭内暴力でブルージェイズとアストロズから210万ドルの報酬を失っている。またオリオールズのコルビー・ラスムス外野手は臀部の怪我による引退で150万ドルの減額となってしまった。

ただこれらはあくまでも目先のもので、支払総額の上昇にブレーキがかかっている主な要因はぜいたく税対策が進んでいることにあるという指摘が多いようだ。ぜいたく税は定められた額以上の選手報酬を支払うチームに対し、超過分の数パーセントを税金のように支払わせる制度だ。これを嫌い、支払額を基準以下にするチームが増えているのである。

今回最も支払い額が多かったのはワールドシリーズを制したレッドソックスで約2億3000万ドルだった。ぜいたく税を支払ったのはレッドソックスとナショナルズの2チームだけで、30チーム中24チームは支払い額が約1億ドルと均衡している。

2015年に2億9100万ドルを支払い、4年連続で最高額を記録したこともあるドジャースは1億9600万ドルで、2017年から4800万ドルも減少、これは2012年以来最少だった。ただそれでも2年連続でナ・リーグを制覇している。

金満球団といわれたヤンキースも1億8300万ドルで前年より2500万ドル減少、2003年以降最少となった。

これに対し、MLBのダン・ヘイレム副コミッショナーはメジャーとマイナーにおける収入に対する選手への支払いは54.2%で2012年と変わらないと反論している。

ただ昨年大物FA選手の多くが契約がなかなか決まらず、開幕直前の駆け込み契約になったことなどはこのぜいたく税対策普及の大きな影響だといえるだろう。今オフもFA市場は停滞傾向となっており、この問題は今後大きくなっていくかもしれない。

室井昌也 韓話☆球題

尾を引く宣銅烈の悲劇 混迷する韓国代表の監督人選

今年は翌年に控えた東京オリンピック(五輪)への出場権をかけた戦い、プレミア12が11月に行われる。

重要な戦いを前に韓国には解決しなければならない大きな問題がある。代表チームの監督選定だ。

昨年11月14日、東京五輪までの任期があった宣銅烈(ソン・ドンヨル)代表監督(56)が突如辞意を表明。韓国野球委員会(KBO)は今月中の新監督選任に向け、調整を続けている。

日本の場合、若年層からアマチュア、プロまで各世代の代表が「侍ジャパン」という総称の下、長期的な観点で小久保裕紀、稲葉篤紀という各世代に通ずるフレッシュな人材に指揮を託してきた。しかし韓国が進めているのはトップチームのみを預かる監督の人選。しかも宣監督の辞任という非常事態からの脱却を目指すことから、経験のある人物を中心に人選が進んでいる。

現在、名前が挙がっているのは2008年の北京五輪で代表監督を務め、9戦全勝で金メダルを手にした金卿文(キム・ギョンムン)前NC監督(60)。そして2010年の広州アジア大会で韓国を金メダルへ導いた曹凡鉉(チョ・ボムヒョン)元KT監督(58)だ。捕手出身の両氏は現在、現場を離れていて代表監督就任に障壁はない。だが今の韓国代表の監督をやりたいと思う人はいないのが実情だ。

宣監督は昨年8月のジャカルタ・アジア大会で金メダルを獲得したにも関わらず、選手選考で非難を浴び、国政監査に証人出席する事態にも発展した。その国政監査では身内であるはずのKBO総裁から心無い言葉が発せられ、宣監督はこれまでにない辛い立場に追い込まれた。

宣監督は辞任の際に、「金メダルと選手のプライドを守れず惨めな思いだ。スポーツと政治は分離すべき。こういう事例は私を最後にして欲しい」とコメントを残している。

現役時代の活躍から「国宝」とまで言われた宣監督は、代表チームを率いたことで過去の実績がかすんでしまう程の屈辱を味わった。その後を継いで監督になる人物は相当な覚悟が必要になる。

候補に挙がっている経験者は火中の栗を拾うことを決意するのか。それとも拒み、新たに託された人材がチャレンジするのか。いずれにしても新監督には球界、世論の強い後押しがなければ、同じ悲劇が繰り返されてしまうだろう。

水次祥子の「書かなかった取材ノート」

試合前マー君もレスターも…近年重視のメンタルトレ

ヤンキース田中将大(2018年10月9日撮影=菅敏)

野球選手が試合前にどんなルーティンをしているのかというのは、普段我々の目に触れないだけに興味深い部分だが、先日、ヤンキース田中将大投手がイベントの席で、登板当日の試合前のルーティンについて明かしてくれた。

例えばホームで夜7時過ぎ開始のナイトゲームに登板する場合「朝食はもちろん取るんですけど、昼食をしっかりとって、それが1時半~2時くらい。家を出るのが3時」。4時までに球場に到着し「ラインアップが出ていればそれと照らし合わせて映像やデータを見ながら時間をつぶす」。4時半前から投手コーチ、捕手とのミーティングを行い「5時くらいから湯船につかって体を温めて、それからウオーミングアップ。6時くらいから肩のストレッチをトレーナーさんにやってもらって、クリームとかを塗ったりして、6時20分過ぎくらいから自分のモチベーションビデオみたいなのを観る」という。それから試合開始約30分前にフィールドに出てキャッチボール、ブルペンでウオーミングアップを行い、マウンドへと上がる。

この中で特に興味深かったのは、試合開始45分前にモチベーションビデオを観るというメンタルトレーニングの部分だ。お風呂につかるのも癒やし効果があるので、メンタル面に効果のあるルーティンともいえるかもしれない。メジャーでは近年、メンタルトレーニングが重視されており、昨季は30球団中26球団がスポーツ心理学の専門家やメンタルスキル・コーチと呼ばれる精神面の指導者を雇っている。8年前と比べると1・3倍増だという。

選手の中には非常にユニークなメンタルトレーニング法を取り入れているケースもあり、カブスのベテラン先発左腕ジョン・レスターもその1人だ。同投手は登板当日の試合数時間前、「00」から「99」までの数字を並べるパズルをして集中力を高める。クラブハウスでそれをやりながら、同時に1球1球への集中力を高める音声プログラムを聞き、さらに仮眠室でヘッドホンを付け呼吸エクササイズを行う。試合前には1回から2~3イニングを実際に投げるシミュレーションを頭の中でするそうだ。

レスターがメンタルトレーニングに関して影響を受けたのが、レッドソックスで長年スポーツ心理学担当コーチを務めた元投手のボブ・テュークスベリー氏。同氏は現役引退後にボストン大学で心理学の修士号を取得し、昨年「90%メンタル」という野球心理学の本も出版し、その道の専門家として名をはせている。その恩師が、今季からカブスのメンタル技術責任者に就任し、再びレスターを身近で指導することになった。カブスの他の選手たちにもどんな影響があるのか、注目したいところだ。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)

ヤンキース田中将大(2018年10月6日撮影=菅敏)

助っ人列伝

メジャー2年目で球宴もその後は苦労

アスレチックス時代のライアン・クック

メジャー2年目からオールスター選出となれば、若くしてスターの一員。将来に渡って長い活躍が期待される。巨人に入団が決まった右腕ライアン・クックもそうしたスター街道へ足を踏み出したはずだったが、現実は甘くはなかった。

クックは2008年にドラフト27巡でダイヤモンドバックスから指名。カレッジの名門であるUSC(南カルフォルニア大学)出身ではあるが、この指名順からはあまり高く評価されていなかったことがうかがえる。それでもマイナーでは先発として2010年に3Aまで駆け上がる順調な出世。そして2011年からはリリーフに転向し、メジャーデビューも果たした(結果は12試合で防御率7・04と振るわず)。

すると、そのオフにはダイヤモンドバックスが先発右腕トレバー・ケーヒルらを獲得するための2対3のトレードに絡んでアスレチックスへと移籍。これがキャリアの転機となる。

2012年は開幕からセットアッパーとして起用されたクックは、4月27日のオリオールズ戦で1イニング4奪三振の珍記録を達成するなど、5月末まで22試合連続無失点。6月からは一時的にクローザーも務め、見事にオールスター初選出も果たした。この年は71試合に投げて6勝2敗14セーブ、21ホールド、防御率2・09の活躍ぶりだった。

2013年も71試合で防御率2・54と安定していたクック。だが2014年は54試合で防御率3・42と成績が落ち込み、2015年以降は不振や相次ぐ故障で全くと言っていいほど結果を出せないシーズンが続いた。

トミー・ジョン手術から復帰した今季はマリナーズのマイナーで開幕を迎え、5月に3年ぶりのメジャー復帰。19試合で防御率5・29という成績だった。

全盛期に比べると球速は落ちているが、それでも150キロ台前半はまだ計時している。巨人のブルペンは世代交代の過渡期にあるため、クックが重要な戦力になる可能性は十分にあるだろう。

四竈衛のメジャー徒然日記

菊池雄星、ガチンコの英語会見で「つかみはOK」

記者の質問に答える菊池雄星(撮影・菅敏=2019年1月3日)

マリナーズ入りが決まった菊池雄星投手(27)が3日(日本時間4日)、本拠地シアトルで入団会見を行いました。とりわけ注目を集め、「つかみはOK」との印象を与えたのが、50人を超える日米報道陣の前での英語会見でした。

冒頭、「Hi everyone」で始まり、名前を名乗った自己紹介は、ある意味で想定内でした。ところが、菊池は台本を見ることもなく、家族、関係者、マリナーズ関係者、さらに新しいチームメートへのメッセージなどを、文字通りサラサラと英語で伝えました。ここまでなら、あらかじめ準備して記憶していれば、何とか可能なのかもしれません。

ただ、そこからが驚きでした。米国人記者の質問に対し、菊池はひと言ずつうなずいていました。通訳が正確な意味を訳していたこともあり、日本語で話すと思いきや、菊池はほぼ考え込む間もなく、すぐに英語で応答し始めました。もちろん、国会の政治家の答弁ように、あらかじめ閣僚が作成した「想定問答」が用意されているわけではありません。1問だけ「英語で説明するのが難しいので日本語でもいいですか」と断ったうえで、通訳の力を借りましたが、まさに「アッパレ」の会見でした。

個人差があるとはいえ、長年、メジャーでプレーをしている選手の場合、年月を重ねるにつれ、日常会話ではほぼ通訳なしでコミュニケーションを取れるようになっています。たとえば、イチローの場合、英語だけでなく、スペイン語でもある程度の会話はできていると言われています。ダルビッシュにしても、発音を含め、ほぼ不自由なく、日常会話をこなしています。それでも、いわゆる公式会見などでは、通訳を介しています。というのも、繊細なテーマなどに関して、細かいニュアンスを、誤解なく、より正確に伝えるため、バイリンガルの通訳を通して、メディアに対してコメントを残しています。

雑談、あいさつなどは別として、それぞれ状況次第で通訳を介することが必要になる場合もあると思います。その一方で、今回の菊池の「ガチンコ会見」は、かなりのチャレンジだったでしょうが、米国人側には「大ウケ」でした。多国籍、多人種が居住する米国社会では、必ずしも文法的に正しい英語を話す人ばかりではありません。

多少、言葉足らずだったり、たどたどしくとも、英語で対応するという、難解なことにチャレンジした菊池の姿勢と人間性が、何よりも共感を呼んだような気がします。【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)

マリナーズのユニホームに袖を通し、ディポトGM(左)、代理人のボラス氏(右)と記念写真に納まる菊池雄星(撮影・菅敏=2019年1月3日)
渡辺史敏 American Report

史上初のロンドン開催で注目Rソックス対ヤンキース

3月29、30日に予定されているアスレチックスとマリナーズの2019シーズン開幕2連戦は2012年以来の日本開催となる。昨シーズンマリナーズの会長付特別補佐に就いていたイチロー外野手の出場が確実とあって元々これまで以上の注目を集めていたが、さらに菊池雄星投手が契約に合意したという報道もあり、いきなり凱旋登板があるかもとさらにその注目度は上がりつつある。

そんな日本での2試合と同等の注目を集めているのが、6月29、30日にイギリス・ロンドンで開催されるレッドソックスとヤンキースの2連戦だ。MLBのレギュラーシーズンゲームがイギリス、さらにはヨーロッパで開催されるのは史上初である。

昨年5月の開催発表でロブ・マンフレッドMLBコミッショナーは「野球を成長させるために現在行っているの努力において、ライブゲームや優れた選手をファンにもたらすほどのインパクトはありません。これはヨーロッパに対しこれまでで最も重要な取り組みであり、世界の大都市の1つでメジャーリーグの野球を紹介することを楽しみにしています」とその意気込みを語っている。

しかもそのカードがMLBで最も知名度が高いライバル対決なのだ。コミッショナーも「MLBは、スポーツ界で最も有名なライバルの1つをロンドンの熱狂的ファンに紹介することに興奮しています」と語っていた。しかもレッドソックスは昨シーズンのワールドシリーズチャンピオンという肩書きまで手に入れている。

レッドソックスのジョン・ヘンリー主席オーナーによればこのロンドン開催について「克服しなければならない重大な課題」があったため、数年の議論の末開催にこぎ着けたということだ。そしてヨーロッパでの開催だけでなく、レッドソックスとヤンキースがボストンとニューヨーク以外で対決すること自体が史上初だとしている。一方ヘンリー・オーナーが筆頭オーナーを務めるフェンウェイ・スポーツグループはサッカー・プレミアリーグのリバプールFCの親会社でもあることからロンドン開催に前向きだったようだ。

試合会場となるのは、2012年のロンドンオリンピック(五輪)でメインスタジアムとして使われたロンドン・スタジアム。ロンドン五輪では野球が開催されなかったこともあり、ロンドンに大型の野球用スタジアムがなく、この2試合のために仮設で野球仕様に改装されるという。収容人数は5万7000人となっている。

MLBは既にインスタグラムやフェイスブックにチケット情報やニュースを伝えるアカウントを開設し、情報発信を続けている力の入れようだ。こちらの歴史的海外開催試合にも注目したい。

なお、カードは未発表ながら2020年もロンドンで2試合の開催が決定している。