au版 ワールドベースボール

コラム一覧

外国人記者の目 田中将大

田中は2019年の準備万端。だが、ヤンキースに求められるさらなるヘルプ

ヤンキース田中将大(2018年10月9日撮影=菅敏)

Masahiro Tanaka is ready for 2019, but the Yankees will need more help from their rotation to win a pennant

1月16日、ヤンキースの田中将大はタンクトップ、ショーツ姿で今年初めてブルペンに入ったという映像をインスタグラムで公開した。そして3日後には2度目のブルペン、1月25日には3度目のブルペンの様子をやはりインスタグラムで公開している。今年は2月15日がバッテリー陣の練習初日。田中はほぼ1カ月前からブルペンに入っていることになる。田中にとっては6度目のキャンプだが、ここまでのところ順調に仕上がっているようだ。

ただ、ヤンキースの先発陣の顔ぶれを見ると、やや不安もある。

このオフ、ヤンキースはまず、ダイヤモンドバックスからフリーエージェントになったパトリック・コービン獲得を目指したが、ナショナルズと6年総額1億4000万ドル(約154億円)で契約。ヤンキースが想定していた額をはるかに上回った。ヤンキースはマリナーズからジェームズ・パクストンをトレードで獲得し、J・A・ハップ、CC・サバシアと再契約。ルイス・セベリーノと田中を含めて5人がそろったが、やや心もとない。

というのも、セベリーノは昨季後半、球種がばれていると言われた。サバシアとパクストンは故障が多い。ハップは36歳であまり上積みが期待できない。となると、田中にかかる期待は、必然的に大きくなる。

もっともヤンキースは、先発は5回を投げてくれればいい、と考えているのかもしれない。チャド・グリーン、アダム・オッタビーノ、ザック・ブリトン、デリン・ベタンセス、アロルディス・チャップマンというブルペン陣はおそらくリーグ屈指だろう。昨季のワールドシリーズを制したレッドソックスと比べると先発メンバーでは劣るが、リリーフの戦力では確実に上回る。先発が5回まで試合を作ってくれれば、計算はできる。

ただ、そういう展開に持ち込めるかどうか。

パクストンとサバシアは確実に一定期間、戦列を離れるだろう。しかし現状、その穴を埋める先発投手がマイナーにもいない。プロスペクトがいないことはないが、あと数年かかるのではないか。ヤンキースとしては、トレードが噂されるマディソン・バムガーナー(ジャイアンツ)やコリー・クルバー(インディアンス)らの動きを見ながらのキャンプインとなるだろう。

そんな中で、田中については1年間通して健康で投げてくれることをチームは期待している。田中まで脱落すれば、ヤンキースの先発陣が総崩れになりかねない。彼が背負うものは小さくない。

【ピート・カルデラ】

室井昌也 韓話☆球題

豪キャンプ中の合法カジノ盗撮、ネット公開で理不尽な批判

LGの選手が理不尽な形で批判にさらされる事態が起きた。

韓国野球委員会(KBO)は18日、賞罰委員会を開き、春季キャンプ中にオーストラリア・シドニーでカジノ場に出入りしたLGの選手について審議した。

LGの4選手はキャンプの休日にショッピングモール内のカジノで遊んでいたところを一般客が盗撮。それがインターネット上で公開されたことで物議を醸していた。

KBOは今回の事案は刑法上の処罰対象ではないが、プロ野球選手として品位を損ねた行為だとして、4人のうち実際にお金を賭けた、投手の車雨燦(チャ・ウチャン)、任燦圭(イム・チャンギュ)、内野手の呉智煥(オ・ジファン)に厳重注意。球団には管理者責任として500万ウォン(約49万円)の制裁金を科した。

今回、各選手が訪れたのはオーストラリアで合法のカジノ。しかし韓国の刑法では賭博自体が禁じられている。韓国は「積極的属人主義」を採用していて、行為を行った場所を問わず韓国国民には韓国の刑法が適用されることになる。

ただし、韓国刑法の賭博の禁止は一時的な娯楽を禁じるものではなく、常習性がなければ罪に問われない。ということで今回の件はモラルが問われた形だ。特に3人のうち呉智煥は昨夏のアジア大会に代表入りし金メダルを獲得して兵役免除となった。しかし選出が妥当かどうかで非難され、その末に宣銅烈(ソン・ドンヨル)代表監督が辞任する騒ぎに発展するなど、ひとつひとつの行動が問題視される立場にあった。

選手のキャンプ地での娯楽に関して言うと、日本にキャンプで訪れる多くの選手が休日にパチンコを楽しんでいる。それは合法的なものだが今回のように盗撮され、ネット上で問題化されるとプロ野球選手の余暇まで縛ることになる。

「韓国の選手がキャンプ中に賭博」と伝わるとその刺激的なタイトルだけが一人歩きするが、選手の問題よりもまずネット上のさらし行為自体を問題視すべき事案ではなかっただろうか。

外国人記者の目 大谷翔平

大谷翔平、自分が下した決断に後悔はない

キャンプでのリハビリの現状について話すエンゼルス大谷

Ohtani has no regrets about his decision

昨年9月、およそ3カ月ぶりの復帰登板を果たしたときに右肘靭帯のケガを再発させた大谷翔平(エンゼルス)。その時点でトミー・ジョン手術を勧められたものの、シーズンの最後まで打席に立ち続けたことで、今年のシーズン序盤を犠牲にすることになった。仮に再発が発覚した9月5日の時点でトミー・ジョン手術を受けていれば、今年の開幕から打席に立っていたはずである。

当時もそういう指摘はあった。打者の場合、トミー・ジョン手術をしても6~7カ月で復帰できる。しかしながらキャンプインしてから、改めて9月の決断を問われた大谷は「後悔はない」と話した。

それは決して9月の最後の24試合で7本塁打、18打点を記録したことで新人王のタイトルを確実にした、ということが念頭にあるわけではない。あくまでも感覚的な部分で、あの1カ月で得たものが大きかったのだという。

「もちろん、あのままプレーを続ければ、今年の開幕に間に合わないということは知っていました。でも、チームドクターからトミー・ジョン手術が必要と言われたとき、ボールが良く見えていたし、スイングも悪くなかった。だからシーズンの最後までそれを続けたかった」

肘に痛みはあっても、シーズン最後までプレーし、それなりの結果を残せば自信となる。なにより掴みかけた感覚を確かなものにしておきたかった。

「そのことは結局、今季に生きてくる。最初の1カ月は試合に出られないかもしれませんが、長い目で見れば、(昨年9月の経験が)自分にとってもチームにとっても助けになる」

多少の犠牲を払ってでも、それは手にする価値のあるものだったようだ。

なお、リハビリの方は「順調です」と大谷。「肘に関しては全く問題ない。むしろ少し抑えて、トレーナーの言うことを聞かなければならないぐらい」。

現在は素振りしかしていないが、今週中にもティー打撃をする見込みという。その次のステップは「前から来た軽いボールを打つ」そうで、まだすぐに本格的な練習ができるわけではないが、本来、素振りから通常の打撃練習まで、それほど時間はかからない。

開幕は無理でも、今後の経過次第で4月中の復帰もあるのではないか。早く復帰したい大谷と、慎重にリハビリを進めたいチームの医療チームが今後どう折り合うのか。そこは注目である。

【マイク・ディジオバンナ】

キャンプ地を訪れたエンゼルス大谷の右肘には手術の痕が痛々しく残っていた(2019年2月9日=撮影・菅敏)
助っ人列伝

剛速球サウスポー、中日で化けるか

中日エンニー・ロメロ(19年2月15日撮影)

近年は外国人補強の精度に定評がある中日。昨季に13勝したオネルキ・ガルシアが残留交渉のもつれで退団したのは痛かったが、その後釜として目をつけたのが同じ左腕のエンニー・ロメロだ。

ドミニカ共和国出身のロメロは2008年にレイズ傘下のマイナーでプロデビュー。荒れ球なれど速球派の若手有望株として台頭し、2013年に2Aで11勝7敗、防御率2・76をマークすると、1試合のみながらメジャーデビューも果たした(先発して4回2/3を1安打零封で勝ち負けつかず)。

しかし飛躍が期待された2014年は3Aで5勝11敗、防御率4・50と振るわずマイナー暮らし。2015年からはリリーフに転向し、2016年はメジャーで52試合に登板するも防御率5・91と結果を出せなかった。

2017年はナショナルズへ移籍し、53試合に投げて防御率3・56とキャリアハイの活躍。だが2018年はナショナルズ、パイレーツ、ロイヤルズと渡り歩くも合計8試合しか投げられず、防御率12点台に終わった。

2017年に103マイル(約165キロ)を計時したように球速は抜群。一方で9イニング平均で与四球4・56個と制球には不安が残る。また左打者に通算被打率3割1分6厘と、サウスポーにもかかわらず左対左で分が悪かった。

ただし、これらはほぼリリーフでの成績(先発はデビュー戦1試合のみ)。先発となればピッチングスタイルも多少の変化が生じるはずで、実際に今オフのドミニカでのウインターリーグでは11試合の登板(うち先発10試合)で防御率1・33、9イニング平均9奪三振の2・5与四球とまとまっていた。

中日でも先発起用が見込まれており、制球難の剛腕タイプという先入観と実際のピッチングは食い違ってくるかもしれない。

水次祥子の「書かなかった取材ノート」

凄まじいMLB年俸調停 罵倒の連続で人間不信も…

インディアンス・バウアー(2017年10月5日撮影=菅敏)

メジャーではキャンプインとほぼ同時期に年俸調停が行われるのだが、今年2度目の調停を行ったインディアンスのトレバー・バウアー投手(28)によって、あまり知られていなかった調停現場の様子が明らかになった。これが選手にとっては相当シビアで、辛辣(しんらつ)な言葉で責め立てられ、人間不信に陥るくらいのすさまじいものらしい。

調停に出席するのは選手本人と代理人、選手会の担当者、球団フロント、大リーグ機構の労務担当者、それに裁定人が3名。裁判に例えると代理人と選手会担当者が選手の弁護団、機構の労務担当者が球団側弁護団のようなもの。調停はまず、代理人が裁判の冒頭陳述のようなスピーチを行うことでスタートするという。当然のことながら球団側は低い金額を提示しているため、それを正当化するために選手の欠点をあげつらうことになり、調停室は殺伐とした雰囲気になる。

2017年のヤンキースと救援右腕デリン・ベタンセス(30)の年俸調停がまさにそうだった。調停1年目だった同投手は500万ドルを要求、球団は300万ドル提示だったが、当時の報道によると代理人が強気だったため罵倒がエスカレートした。ベタンセスは後に「1時間半、球団からボロクソにけなされ続けた」と閉口し、代理人のジム・マレー氏は「球場の観客動員が落ちたことや、ポストシーズンで敗退したこともベタンセスのせいにされた」と不満をもらしていた。

今回のバウアーも「球団側は調停最後の10分間、僕の人格否定に集中した。人としての僕を“抹殺”した」と振り返っている。批判はバウアーが昨年行ったチャリティーに対するものだったのだが、それは「69日間寄付計画」と銘打った個人的な活動で、最初の68日で420ドル69セントをある慈善事業に寄付し、69日目に別の慈善事業に6万9420ドル69セントを寄付するという内容だった。ところが「69」は性的なものを連想させる数字、「420」は大麻使用を示す隠語であるため、調停で品性を問われるなどしたようだ。後で球団幹部から「あれは機構の労務担当者が独断でやったこと」と弁明されわだかまりは拭い去ったようだが、人格攻撃を受けるのはやはりきつい。

このところ若い選手が年俸調停を避け長期契約を結ぶケースが目立っているが、これは調停での罵倒を避けたいという理由もあるようだ。今年から調停権を得たヤンキースの先発右腕ルイス・セベリーノ(24)が先日、4年総額4000万ドルで調停を回避し契約延長したがに「調停室での体験は非常にきついと聞いているので避けたかった」と明かしている。FA市場の冷え込みと調停の壮絶さが周知されてきたことで、調停を避けた長期契約延長を望む選手は増えるかもしれない。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)

四竈衛のメジャー徒然日記

菊池雄星「データ」と積み重ねた「経験」で米に順応

キャンプインをし、Vサインを作りマリナーズの同僚と話す菊池雄星(右)(撮影・菅敏=2019年2月12日)

マリナーズ菊池雄星投手(27)の初めてのキャンプが始まりました。岩手・花巻東高時代からメジャーを目標にしていただけに、米国流の投球メカニック、生活習慣だけでなく、英会話を勉強するなど、多岐にわたり、周到な準備を進めた結果、ようやくスタートラインに立ちました。

野球選手である限り、フィジカル面を万全にすることが最優先なのは言うまでもありません。その一方で、メンタル面や思考法の順応も、重要な要素になってきます。菊池の場合、日本で培った技量と、米国レベルとの違いを認識しつつ、冷静に受け入れようとする姿勢が垣間見えます。その一端が、近年の米国で主流となりつつあるデータ重視へのアプローチです。

キャンプ2日目。初めてブルペンに入った際、菊池と捕手の背後には、最先端機器「ラプソード」が設置されていました。同機器は、1球ごとに球速、回転数、変化球の軌道軸などが計測できる「優れもの」で、近年、メジャー各球団が一斉に導入するようになりました。ザックリ言えば、これまで速球の「伸び」や変化球の「キレ」と表現されていた曖昧な部分が、数字としてはじき出されるような印象でしょうか。そんな細かい数字を、菊池はいい意味で、客観的に見ていました。

「データは自分も好きで意識してやってるんですけど、積み重ねることで意味が出てくるのかなと思うので、今のスプリングトレーニング中とシーズン中とかを比べながら、自分では気付かないところを教えてくれるツールかなと思ってます」。

つまり、単純に高水準の数字だけを追い求めるわけではなく、「好不調」を計るバロメーターの一部として考えているのでしょう。たとえ、データ上では高い数字を残しても、少しでも自分の感覚に違和感があれば、必ずしも好結果に結び付くとは限りません。実際、メジャーでは時速160キロ前後の快速球が、瞬時にして本塁打になる光景も珍しくありません。

近い将来、野球の「科学化」「データ化」が、さらに細分化され、発展する可能性は高いでしょう。ただ、グラウンド上の野球は、テレビゲームとは大きく異なります。生身の投手と打者が対決する限り、雌雄を決するうえで、微細な駆け引きやそれまでの経験則が、重要な要素として存在するはずです。菊池の言葉通り、そこにはデータを含めた「積み重ね」のキーワードも見逃せないでしょう。

「ブルペンで毎日チェックして、もう少しこうすればもっと曲がるんじゃないかとか、改善できるんじゃないかとか、確認できるというのは大きいなと思います」。

データや数字と戦うのではなく、いかに有効に活用するか-。

滑るメジャー球、硬いマウンドだけでなく、細分化される膨大なデータへのアプローチを見る限り、菊池はすでに米球界に順応しているような気がします。【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)

キャンプインし、ユニホーム姿でキャッチボールをする菊池雄星(撮影・菅敏=2019年2月12日)

渡辺史敏 American Report

MLB150周年、レッズは記念ユニや開幕パレード

150周年を迎えるシンシナティ・レッズ(AP)

3月28日に開幕する2019年シーズンはMLBにとって、特にレッズにとって特別なシーズンとなる。1869年にシンシナティ・レッドストッキングスが初めて公式に全ての年俸が支払われた、初のプロ・ベースボールチームとなってから150周年にあたるからだ。

これを記念してMLB全チームのユニフォームの右袖には150周年記念パッチがシーズンを通じて付けられることとなる。さらに3月28日の開幕日には、リーグ全体で記念特別帽子が着用されるということだ。

なかでもレッドストッキングスに由来し、シンシナティを本拠とするレッズは特別で特別な記念ロゴの入った帽子とユニフォームを着用する。さらにパイレーツ迎えての開幕戦前にはパレードを行う他、シーズンを通じて15の復刻ユニフォームの着用や記念イベントを行う予定だ。

MLBとしても公式ウェブサイトやソーシャルメディアなどで幅広く記念キャンペーンを行うとしている。

ロブ・マンフレッドMLBコミッショナーはキャンペーンの記者会見で「プロフェッショナル・ベースボールの創立150周年を祝うとともに、その歴史を称え、今日の素晴らしい選手たちを称えられることに興奮している。MLB150周年のパッチは今日のゲームに関わるすべての人がプロベースボールとMLBの歴史とリンクしていることを常に思い起こさせることだろう」と語った。

MLBは100周年だった1969年と125周年の1994年にも同様の記念パッチを採用しており、今回の記念パッチもその歴史を踏襲したものになっているということである。

1869年のレッドストッキングスは初のプロチームというだけでなく、この都市57勝無敗のパーフェクトシーズンを達成したことでも知られる。今シーズン、レッズはヤシエル・プイグ外野手をドジャースからトレードで獲得した。この特別なシーズンでどんな成績を収めるか楽しみである。

室井昌也 韓話☆球題

KIA正田コーチ、王者奪還は「ベテラン休ませながら」

「若手、若手って言うけど、まずベテランのコンディションを整えてあげなきゃ」

KIAの正田耕三打撃コーチはキャンプ地の沖縄・金武町(きんちょう)で世代交代の必要性を求める周囲の声に、自身の考えをこう話した。

KIAは2017年に8年ぶりの優勝を果たすも、昨季は5位。しかし順位低下の要因はチーム防御率リーグ9位(5.40)の投手陣にあって、攻撃陣は好成績を残した。チーム打率、打点、得点はいずれも首位の斗山(トゥサン)に次ぐ2位。今季も主力打者は健在で正田コーチは1~9番をスラスラと言い始めた。

「1番外国人(ヘーゼルベーカー)、2番金善彬(キム・ソンビン)、3番安致弘(アン・チホン)、4番崔炯宇(チェ・ヒョンウ)、5番金周チャン(キム・ジュチャン)、6番羅志完(ナ・ジワン)、7番李ボム浩(イ・ボムホ)、8番崔元準(チェ・ウォンジュン)、9番金ミン植(キム・ミンシク)。新外国人はまだベールを脱いでないけど、このメンバーでほぼ決まり」

上記メンバーの平均年齢は31.1歳。4~7番に限ると35.5歳と確かに高い。しかし正田コーチは「ベテランを抜けるような若手がいないんだから、まずはベテランを(年間)20試合くらい休ませながら使うことを考える」と話す。

「僕らの頃もそうだったけど、若手というのは使える選手が誰もいない時に辛抱して起用するものだよ」

レギュラーと控えの差が大きいKIAの野手陣。しかしベテランは悠然と構えているわけではない。37歳サードの李ボム浩(元ソフトバンク)は体を絞ってキャンプに備えてきた。KIAのキャンプは若手、ベテランともに声が出て活気にあふれている。

「去年は前の年に優勝したので選手に“勝たなきゃ”というプレッシャーが感じられた。しかし今年はみんな元気だよ」と言って正田コーチは笑みを浮かべた。

今年も打線は期待できそうなKIA。KIAの王者奪還への道は投打の歯車ががっちりとかみ合うかにどうかだ。

助っ人列伝

制球に不安も三振の取れる元トッププロスペクト

阪神ジョンソン

ドラフト1巡で指名されたからといって、それがプロでの活躍を約束するものではないのは日本のプロ野球でもメジャーリーグでも同じ。ただし、トッププロスペクトとして期待されながら大成できなくとも、環境が変われば花開く可能性は残されている。

阪神が獲得した右腕ピアース・ジョンソンは、2012年のドラフト1巡(全体43位)でカブスから指名されてプロ入り。2Aでは通算2シーズンで34試合に登板(うち33試合に先発)して11勝6敗、防御率2・31と、ここまでは順調だった。しかし2016年に初昇格した3Aでは防御率6点台と通用せず。リリーフに転向した2017年も43試合(うち先発1試合)で防御率4点台と今ひとつで、この年の5月にメジャーデビューしたものの1試合に投げて1回2失点とアピールできず。マイナーのシーズン終了後の9月にウェーバーにかけられてジャイアンツへと移籍した。

ジャイアンツでの2018年はメジャーとマイナーを行ったり来たりしつつ37試合をメジャーでリリーフ登板したが、防御率5・56と振るわず。オフにフリーエージェントとなると、いったんアメリカでのキャリアに区切りをつけて来日することになった。

球速は平均で150キロ近くあり、カーブとの緩急で奪三振率が高いのが持ち味。結果は今ひとつだった3Aでも9イニング平均11・5奪三振だった。その一方で制球力は心もとなく、メジャーでは9イニング平均で4・6与四球。日本の野球にうまくはまれば三振の山を築けるが、なじめないと四球連発で自滅という可能性もちらつく。

恐らくはセットアッパーとして起用されると思われるだけに、彼の出来が阪神の勝利数を大きく左右することになりそうだ。

水次祥子の「書かなかった取材ノート」

無名投手がマイナー契約 きっかけはSNS動画投稿

まったく無名の投手がある日突然脚光を浴び、メジャーの球団からオファーをもらう、あるいはスカウトからのラブコールが殺到するという野球版シンデレラボーイが話題になっている。クリス・ナンという28歳の投手がその1人だ。

ナンは故郷テネシー州のリプスコム大在学中の12年に24巡目でパドレスに指名されプロ経験はあるものの、マイナーリーグで鳴かず飛ばずのまま一時は目の負傷で視力を失いかけた時期があり、それが原因でうつ症状に陥ったこともあったという。

それでも野球を諦めずにトレーニングを積み、速球がMAX99マイル(約159キロ)をマークするまでになった。ブルペンでその剛速球を投げる映像を撮影し、ツイッターに投稿するとそれが野球ツイッターコミュニティーの間で話題となり、メジャー球界関係者の目に触れるまでに拡散。そしてこの1月下旬、ナンはレンジャーズとマイナー契約を結ぶまでにこぎ着けている。

無名の選手がツイッターやインスタグラムなどで誰かの目に留まり、拡散されて大きな話題を呼びスカウトから声がかかるというケースは、今後増えていきそうだ。すでに無名投手の投球動画を投稿することをほぼ専門としている有名なツイッターアカウントも存在する。通称「ピッチング・ニンジャ」と呼ばれているロブ・フリードマン氏のアカウントがそれで、埋もれた逸材に光を当てさせる目的で毎日多くの投球動画をツイートやリツイートで拡散し、無名選手と球団やスカウトの懸け橋となっている。

ナンの投球動画も同氏がリツイートし、元メジャー投手で現在パドレス傘下マイナーのコーチを務めるグレンドン・ラッシュ氏も「誰かこの投手を獲得すべき」とリプライするなどで拡散され、99マイルを計時した動画の再生回数は37万回を超えたという。フリードマン氏のリツイートによって、あるオランダの若い投手は、米国内大学のスカウト20人以上から勧誘の声がかかったという例もあるそうだ。

もちろんSNSの投稿ビデオなので真剣な人ばかりではなく、スピードガンを水増しする等のいたずら投稿もあるかもしれず、その辺の課題はあるだろう。だが同氏の活動は規模を拡大し、選手に対して野球指導も含めた多角的なサポートをする事業になりつつあるという。メジャーでもアストロズはスカウト業務をビデオ偏重に移行しているといわれている。投手は球速があれば将来性を期待されるという点でアピールしやすいので、SNSでのビデオデビューが成功につながる可能性は高そうだ。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)

渡辺史敏 American Report

ナイキ&ファナティクス参入決定でMLBどう変わる

エンゼルスのマイク・トラウト外野手(18年4月27日撮影)

MLBは2020年からスポーツ用品メーカー、ナイキが公式ユニフォームとシューズのサプライヤーとなり、スポーツグッズの製造・販売を行うファナティクスにライセンスと販売の権利を与える10年契約を結んだと発表した。これは2016年に発表されていた2020年からスポーツ用品メーカーのアンダーアーマーがフィールドで着用されるアパレルの製造メーカーになるという契約を置き換えるものだ。

ナイキは全30チームの試合用ユニフォームはもちろん、アウター、トレーニング用アパレルなどの製造を一手に引き受け、デザインも同社のチームが担当することとなる。一方のファナティクスはファン向けグッズのライセンス生産・管理する権利を持ち、さらにナイキの公式コレクションをMLB公式サイトや各チーム、一般小売店などに対して流通・販売していくということだ。

1982年から打撃練習用ジャージを、さらに2005年からは試合用ユニフォームを供給してきたのはアパレルメーカーのマジェスティック・アスレチックスだったが、ナイキと交代することとなる。ただマジェスティックは2017年にファナティクスに買収されており、今後もMLBとの関係は続くということだ。

またアンダーアーマーについてだが経営難に陥っており、現在国内外で戦略見直しがおこなれている最中で、今回の契約放棄もその一環だと見られている。

ナイキはリーグ以外にもエンゼルスのマイク・トラウト外野手やヤンキースのジャンカルロ・スタントン外野手、ナショナルズのマックス・シャーザー投手など500人を超えるMLBとマイナーリーグの選手と契約を結んでもいる。公式ユニフォームとともにこうした選手たちを活用したPRにも力が入れられそうだ。

ロブ・マンフレッドMLBコミッショナーは声明で「マーケティングとイノベーションの推進におけるリーダーとしてグローバルブランドで評価の高いナイキは理想的なパートナーです。さらに、ファナティクスははファンにスピード、高い技術、質の高いサービスを提供することを実践している貴重なパートナーです」とコメントしている。

この契約によって2020年からMLBにどんな変化が起き、我々がどんなグッズを手にすることになるのか楽しみにしたい。

室井昌也 韓話☆球題

韓国球界の背番号事情 エースナンバーは“1番”

韓国の各球団も2月1日からキャンプイン。各選手、ユニフォームに袖を通して始動を開始した。

その1日、NCは今季の選手の背番号を発表した。それによると昨季から番号を変えた選手が25人に上る。中でも20番台は26、29を除き、変更または新加入の選手、コーチが新たな番号を背負うことになった。

日本では若手選手が出世すると番号が小さくなるということがあるが、韓国の番号変更を見ると、日本の「法則」とは異なる点が多い。例えば日本では投手の番号とされる10番台だが、韓国では野手がつけることが少なくなく、16、18といったエース級投手の番号をつける野手もいる。

韓国でも18番にエースのイメージがないわけではない。KIAの18番は前身のヘテで大活躍した投手、宣銅烈(ソン・ドンヨル)の背番号で永久欠番になっている。だが韓国のエースナンバーは他にもある。

その1つが61。メジャーリーグで活躍した朴賛浩(パク・チャンホ)がつけていた番号だ。そしてもう1つが1。日本ではアマチュア野球のエース番号であるこの数字。日本の投手で背番号1は斎藤佑樹(日本ハム)、松井裕樹(楽天)だけだが、韓国の場合、昨季は10球団中、8球団で投手が1番を背負った。

昨季、野手で1番をつけていたNCの朴ミン宇(パク・ミンウ)は今年、2017年までつけていた2番にわずか1年で戻すことにした。NCの1番は元々、外野手の金俊完(キム・ジュンワン)がつけていたが、軍入隊により空き番号に。そこで朴ミン宇は心機一転、2から1へと変更した。しかし投手の柳元相(ユ・ウォンサン)が「1番をつけたい」としたため、後輩の朴ミン宇が柳元相に譲ることになったのだ。

その他の球団ではハンファ・河周錫(ハ・ジュソク)、KIA・崔元準(チェ・ウォンジュン)の両内野手が今年から背番号1となる。しかしその他の8球団で1番をつけるのはやはり投手だ。

宮崎、沖縄のキャンプ地。今年の日韓での練習試合は来週11日から中日-ハンファ(北谷)などが行われる。今年も「18番で内野手か」、「1番のピッチャー、プロじゃ珍しいな」といった観客同士の会話が聞かれそうだ。

四竈衛のメジャー徒然日記

イチローの休みは1日だけ?超シビアなキャンプ事情

マリナーズ・イチロー(2018年3月19日)

2月に入り、日本各地のキャンプ地からは「球春便り」が耳に届く季節になりました。プロ野球選手にとって、キャンプインの2月1日は新しいシーズンの「正月」とも言われていますが、メジャーの場合、少しばかり趣が異なります。

基本的に、バッテリー組と野手組のキャンプインが異なるだけでなく、各チームによっても「初日」の設定はバラバラです。日本のように、全員でキャンプ地へ移動後、整列して歓迎セレモニーを行うことなどなく、基本的には指定された集合日までにキャンプ地入りしていることが確認されていればOK。昨オフ終了後、「トミー・ジョン」と呼ばれる右肘手術を受けたエンゼルス大谷のような故障者を除けば、オフ期間の自主トレ、調整などの強弱は、ほぼ各個人の判断に任されています。

その一方で、いざキャンプがスタートすれば、極めてシビアな現実、いわば「サバイバル」が待ち受けています。

たとえば、今季のマリナーズの場合、開幕までの日程は、かなり切迫しています。

▼2月12日 バッテリー組キャンプイン

▼同16日 野手組キャンプイン

▼同21日 オープン戦スタート

▼3月13日 オープン戦最終戦

▼同20~21日 日本開幕戦(対アスレチックス=東京ドーム)

各チームとも、キャンプインした直後、一定の調整期間はありますが、チームの全体練習は、ごくわずかです。球団にもよりますが、それらの内容は、反復や徹底というより、確認程度と言ってもいいでしょう。裏を返せば、個人の調整遅れは致命傷でもあり、場合によっては戦力外通告にも直結しかねません。今季のマリナーズの場合、この間、東京滞在時を除くと、完全休養日は3月4日だけ。日米間の移動もあるだけに、選手への負担は、そう簡単には算出できません。それでも、当落線上にいる選手は、目の前の試合で結果を出さない限り、最終的にはメジャーで生き残れない現実が待ち受けています。

つまり、好条件で契約した菊池のみならず、大ベテランのイチローにとっても、春季キャンプは、極めて大切な期間です。

つまずいたり、出遅れれば、すぐに補強もすれば、隙を狙われる世界-。

常に、生き残りをかけて挑み続けるメジャーリーガーのプレーや結果だけでなく、その言葉の重みを、あらためて考える季節が近づいてきました。【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)

外国人記者の目 大谷翔平

大谷は、今年の開幕に間に合わない

エンゼルス大谷翔平

Ohtani won’t be ready for Opening day

大谷翔平(エンゼルス)も人間だったということか。

昨年9月、大谷は右ひじの靭帯を痛めたまま出場を続け、打率3割1分、7本塁打、18打点、19得点、OPS1・003という非凡な数字を残し、ひょっとしたら大谷は極めて高い回復能力を持っており、であるとすれば、来年の開幕にも間に合うのでは、という期待もあったが、先週、エンゼルスのビリー・エプラーGMが電話会見に応じると、それを否定した。

「リハビリの進行を考えれば、大谷が開幕の日に間に合わないことは明らかだ」

では、いつ復帰するのか?

エプラーGMは「それ以上のことはわからない」と明言を避けたが、開幕には間に合わなくても、4月の早い段階で復帰することもまた、否定していない。

一般的に考えて、トミー・ジョン手術からの復帰は、投手の場合で12から18カ月。打者の場合で6から12カ月。2017年6月に利き手ではない方の肘を手術したヤンキースのグレイバー・トーレスは4カ月後に打撃練習を開始し、2018年のキャンプでは一切の制限がなかった。

また、元ドジャースとエンゼルスのチームドクターだったルーガ・ポデスタ医師はこう話す。

「6カ月で復帰できるのではないか。投手のリハビリなら話が変わってくるが、彼の投手としての復帰は2020年。投げる必要がないのであれば、そんなに時間はかからない」

ただ、エンゼルスとしては慎重だ。

仮に大谷が二刀流選手でなく、野手であるならば6カ月で復帰していたかもしれないが、投手と打者のリハビリを並行して行っているため、制限がかかっている。

例えば投手としての新たなリハビリメニューを開始した週は、打者としての新たなメニューを加えることはないという。結果としてどうしてもそれぞれのリハビリが遅れてしまう。

ただそれは彼の回復が遅いとかそういうことではなく、エンゼルスが前例のない二刀流選手のリハビリを、試行錯誤しながら行っている結果でもある。

それもまた想定内ではあったが、残念ながら打者・大谷を見ることができるのは早くても4月半ばか。遅ければ、5月半ばになるかもしれない。【マイク・ディジオバンナ】

助っ人列伝

エップラー、コントロール重視型で化ける可能性も

メジャーデビューまであと1歩まで迫ったとしても、その一歩がすぐ届くとは限らない。場合によっては「急がば回れ」が正解のこともある。年明けにオリックスと契約した右腕タイラー・エップラーもそうした心境だったのかもしれない。

エップラーは2014年のドラフト6巡でパイレーツから指名。先発として順調にマイナーをステップアップし、2017年には3Aまで昇格。2018年には28試合の登板(うち25試合先発)で13勝6敗、防御率3・59の好成績をマークした。ただしメジャー昇格の声はかからず、オフのルール5ドラフト前にもプロテクトを意味するメジャーの40人枠入りはしなかった。これはパイレーツからの評価がそこまで高くなかったことを示唆している。

その理由を推察するならば、まず思い当たるのは被打率の高さだ。球速が140キロ台半ばで制球力で勝負するタイプのため、少しでも甘くなると痛打されがち。昨季も153イニングで160本のヒットを浴びている。

もっとも日本では十分に通用する球速ではあり、コントロール重視型の投手のほうがフィットする可能性もある。今年1月で26歳の若さならばまだ成長の余地もあり、本人も日本での活躍をアピール材料にメジャーデビューという青写真を描いているだろう。高いモチベーションはプラスに働くはずだ。

渡辺史敏 American Report

ドジャースがラムズ念願のNFLタイトルを後押し?

NFLスーパーボウル進出を決めたラムズ(AP)

現地2月3日、ジョージア州アトランタでプロアメリカンフットボールNFLの優勝決定戦、第53回スーパーボウルがロサンゼルス・ラムズとニューイングランド・ペイトリオッツによって行われる。25日にそのラムズの練習場を激励に訪れたのが同じロサンゼルスを本拠とするドジャースの選手たちだった。

ジャスティン・ターナー内野手やウォーカー・ビューラー投手、コディ・ベリンジャー一塁手などがラムズのロッカールームを訪問し、居合わせた選手たちと交歓を交わした。ラムズの守備の中心選手でディフェンシブタックルのアーロン・ドナルドは「握手をした。彼らはグッドラックとおめでとうと言ってくれた。こうしたサポートが好きだ」と感謝の言葉を述べている。

また素直にデビッド・フリース三塁手への憧れの念を現したのが走りのエース、ランニングバックのトッド・ガーリーだった。「彼らが来てくれたことに感謝している。フリースを見て、『おー、あれはデビッド・フリースだ』と思ったよ。彼がカージナルスにいたときのことを覚えていたんだ。サプライズだった。でも彼らが来てくれてサポートしてくれたことに感謝している」とコメントしている。フリースは2013年までカージナルスに所属していた。

実際、ドジャースの激励はラムズにとって大きな助けになるかもしれない。ラムズが最後にスーパーボウルに進出したのは2001年シーズン以来で、そのときはセントルイスを本拠としており敗退している。さらに優勝したのは1999年シーズンだけだ。またロサンゼルスに本拠を置くチームがスーパーボウルに優勝したのも、現在はカリフォルニア州オークランドに移転したレイダースが83年シーズンに第18回が最後となっているのである。

対してワールドシリーズを6回制しているドジャースは最後にチャンピオンになったのは88年であるものの、近年もポストシーズンの経験は豊富だ。2年連続でワールドシリーズに進出しており、昨シーズンも第5戦までレッドソックスと覇を争った。2017年もアストロズに最終第7戦で敗れている。

ドジャースが念願のNFLタイトル奪取の後押しになってくれたら、と思うロサンゼルスのファンは多いことだろう。

外国人記者の目 ダルビッシュ

4度オールスター出場の男は、昨年より居心地よさげで自信を持っている

Four-time All-Star seems more comfortable and more confident

ちょうど去年の今頃、6年総額1億2600万ドル(約138億6000万円)でカブスと契約したダルビッシュ有。昨年は故障が続き、わずか1勝に終わった。今年にかける思いは人一倍強く、言葉の端々に自信が滲む。

「僕は常に、自分を信じている」

先日、米メディアの取材に応じると、そう話した。昨年痛めた右肘に関しては「もう問題ない」とのこと。

「もし、故障さえなければ、僕はチームに貢献できる」

不安が消え、余裕も窺える。昨季までは通訳を通して米メディアの取材に応じていたが、今年は通訳を介さず、英語で取材に応じるそうだ。

なにより、居心地が良さそう。昨年感じていたようなストレスもない。

「色んな意味で、昨年とは違う。あなた達(シカゴのメディア)のことも知っているし、チームメイトのこともよく分かっている。もうここが、自分の居場所だと言える」

ただ、昨年、故障以外に不振だった要因はあるのか? と聞かれると、「わからない」と答えている。

「何かはわからないけど、僕ではなかったことは確か。ダルビッシュ有ではなかった。何かがおかしかった」

しかし、こう続けている。

「メンタルかもしれない。去年は、常に何かをしなければならない、と考えていた。ストライクを投げなくちゃいけないとかーー。とにかく、何々をしなければいけない、という考えが強すぎた」

ダルビッシュがメンタルの問題を認めたのは初めてだったが、今季はその悔しさもモチベーションとなる。

「大きな意味を持つ。でも、チャレンジは大好き」

昨季、ダルビッシュがいれば、という場面はあった。特にプレーオフでは不在が響いた。チームはこのオフ、ほとんど補強ができなかった。昨年、ダルビッシュと大きな契約を結んだため、予算がないのだ。そんな意味でも今年、チームもファンも、ダルビッシュにかける期待は大きい。それは同時に彼にとって大きなプレッシャーになるが、それに打ち勝つだけの自信が今の彼にはあるようだ。

彼の復活は今季のチームのカギを握る。応えられるか。彼の言葉を信じたい。【ゴードン・ウィッテンマイヤー】

室井昌也 韓話☆球題

代表監督に金卿文氏 組閣のポイントはコーチの人選

28日、金卿文(キム・ギョンムン)前NC監督(60)の代表監督就任が発表になった。金監督は2008年の北京オリンピック(五輪)で韓国を金メダルに導いた時の監督。宣銅烈(ソン・ドンヨル)前監督の突然の辞任という、危機的状況を救うべく11年ぶりの代表監督復帰を決断した。

今年11月のプレミア12、来年の東京五輪に向けて金監督が最初に着手するのがコーチ人事。特に五輪に関してはコーチの人選が非常に重要となる。なぜなら五輪ではコーチを3人しか登録できないからだ。少数ゆえにコーチには1人数役をこなせる人材が求められる。

日本は北京五輪で星野仙一監督の下、田淵幸一、山本浩二、大野豊の3コーチがベンチ入りした。しかしこの陣容が機能したとは言い難かった。田淵、山本の両氏ともに専門分野は打撃。山本氏が経験のない三塁コーチを務め、その結果として守備、走塁面で的確な状況判断がされず、日本は「金しかいらない」と臨むも結果は4位に終わっている。

一方の韓国は三塁コーチが本職で、所属チームで金監督の下、ヘッドコーチを務める金光洙(キム・グァンス)コーチが選手と監督とのパイプ役を果たした。また三塁コーチとしては準決勝進出をかけた日本戦の大事な場面で得点につながる好判断を見せた。

そして選手の中にもコーチ的役割を果たせるベテランが複数代表入り。一塁ベースコーチのほか、コーチがいないブルペンでは投手陣のコンディションを控え捕手が首脳陣に伝達し、的確な投手継投に生かされた。

今回の代表チームの組閣にあたり注目されていたのが球界のレジェンド・李承ヨプ(イ・スンヨプ)現KBO広報大使の入閣だ。李氏は代表監督を選ぶ技術委員会入りしたためその可能性が取り沙汰されていた。金監督の就任会見でも李氏のコーチ就任に関する質問が記者から上がったが、金監督は穏やかな口調でこう答えた。

「野球はチームワークのスポーツだ。コーチが目立つと選手よりコーチの色が濃くなるので、李氏のコーチ入りは控えることになるのではないか。人選には入っていない」。

五輪を知り、雰囲気に流されることなく決断できる金監督らしい回答だった。

代表チームの人事では日本、韓国ともに各放送局の解説者をバランスよく選ぶなどの配慮がはたらくことが少なくない。しかし温和ながらはっきりノーと言える金監督は勝つことを第一に考えた人選をするだろう。金監督は2月中にコーチ陣を決めるとしている。

助っ人列伝

昨季メジャーデビューの大型右腕が日本ハムに加入

27歳だった昨季にメジャーで10試合ながら防御率1・46をマーク。これだけを聞けば今季以降にメジャーで飛躍も期待できそうなほどの投手が日本ハムに加わった。ジャスティン・ハンコックだ。

2011年のドラフト9巡でパドレスに指名されたハンコックは当初、先発としてマイナーでキャリアを重ねた。2015年には3Aまで昇格するもメジャーからはお呼びがかからず。リリーフへ転向した2017年途中にはカブスへとトレードされる。

そして昨年5月に待望のメジャーデビュー。初戦こそ2失点したものの2試合目以降は無失点に抑えていたが、6月末に右肩の炎症で離脱。そのままメジャーに戻ることなくシーズン終了となってしまった。

193センチの長身から150キロ台後半に達する速球を投げ込むパワー型。制球力に難があるのが大成を阻んできた要因だけに、日本のストライクゾーンに早く対応できるかが活躍のカギとなりそうだ。

水次祥子の「書かなかった取材ノート」

ストの可能性も、米プロスポーツが直面する労使問題

ナショナルズFAのブライス・ハーパー(左)とドジャースFAのマニー・マチャド

もしかしたら1995年以来のストライキが起こるのは、避けられないかもしれない。

最近、MLB周辺でそんな話が噴出している。理由はFA市場が2年連続で異常に停滞しているからだ。今オフFAの目玉だったブライス・ハーパー外野手(26=ナショナルズFA)とマニー・マチャド内野手(26=ドジャースFA)はキャンプインまで1カ月を切っても所属先が決まらず、大型複数年契約を得る選手も少なく、決まったとしても単年契約の選手が多い。しかし一方で、球団経営は今も収益を増やし続けている。メディアの中には「現在の労使協定が失効する2021年までにMLB選手会はストライキの準備をするべき」とはっきり提言しているものもある。

現状に憤慨しているのは選手だけでなく、代理人も同じだ。球界屈指の実力と名声を誇るスーパーエージェント、スコット・ボラス氏はニューヨーク・デーリーニューズ紙で「球界が史上最高の収益を記録しているのに4年連続で観客動員が減少し、球団は勝つことを目指さず再建にうつつを抜かす。3年前はステージ1のガンだったが、今はステージ2に悪化している」とMLBと経営側を批判。別の有力代理人は、水面下で経営側への対抗策を練っているという話もある。選手がMLB主催の行事参加をボイコットしたり、MLBが経営する専門テレビ局MLBネットワークのインタビューや出演を拒否するなどを提案し、選手間でひそかにメモを回しているそうだ。ストライキの可能性を口にする選手も多いという。

しかしもし本当にストライキにでもなったら、SNS時代に入って初めての米プロスポーツ界の労使決裂によるシーズン休止。過去と比べて計り知れないダメージを負う可能性もあり、慎重論も当然ある。

そんな折も折、プロスポーツ界の労使闘争を描いた映画が間もなくNetflixで公開される。野球界ではないがNBAプロフットボールを舞台に、闘争のため施設閉鎖の最中、1人の代理人が経営側と選手の間で板挟みになり翻弄(ほんろう)されるのだが、最終的にはプロスポーツ界のパワーバランスを完全に壊すような大変なことを起こすらしい。「High Flying Bird(ハイ・フライング・バード)」のタイトルで、スポーツ界を支配するのは誰か、支配すべきなのは誰かを考えさせられる内容だという。こんなタイムリー過ぎる映画が制作されるのは、MLBだけでなく他のプロスポーツ界でも同じような労使問題に直面しており、米国社会の縮図化しているという背景があるのかもしれない。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)

大リーグ選手会のストライキに反対するボードを掲げるファン(2002年8月21日撮影)