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韓話☆球題

松坂世代の鄭成勲、古巣KIAで生き残りの条件とは

 中日へのテスト入団が決まった松坂大輔、いまだ去就が決まらない村田修一と、このオフは今年38歳になるプレーヤーの動向に注目が集まっている。一方で韓国の松坂世代も野球人生の岐路に立たされていた。松坂、村田と同じ1980年生まれの鄭成勲(チョン・ソンフン)だ。

 1999年に光州一高からヘテ(現在のKIA)にドラフト1次指名で入団した鄭成勲は、五輪予選やWBCで代表入りし、プロ19年間で放ったヒットは歴代4位の2105本を誇る右の内野手だ。通算1000打点まであと31に迫っている。

 鄭成勲はプロ19年目の昨季も規定打席不足ながら打率3割1分2厘を残し存在感を見せていた。しかし鄭成勲は昨オフ、所属先のLGから戦力外通告を受ける。チームの若返りと一塁手というポジション柄、助っ人打者との併用になることが理由だった。

 鄭成勲は足を高く上げると同時にグリップをグッと下げてタイミングをとる打撃フォームが特徴。ボール球でも難なくヒットにする悪球打ちのその姿は昔ながらの豪快なプレーヤーを想起させる。しかしその素顔は繊細で冷静。このオフは静かに他チームからの誘いを待っていた。

 その鄭成勲に昨年の覇者・KIAが声をかけた。KIAを率いるのは2012年から14年途中までLGで指揮を執った金杞泰(キム・ギテ)監督。金杞泰監督はLG監督当時、それまで5、6番で起用されることが多かった鄭成勲を4番に据えた。左打者が並ぶチームの中で打線の中心に座った鄭成勲はチームトップの打率3割1分、トップタイの12本塁打を残し、監督の期待に応えてみせた。今回、金杞泰監督は当時の功労者に救いの手を伸ばした形となった。

 活動の場を得た鄭成勲だが、彼にとってKIAは安住の地とは言えない。鄭成勲のポジションである一塁、そしてかつての持ち場の三塁ともに金周チャン(キム・ジュチャン)、李ボム浩の両右打者がいるからだ。この2人は鄭成勲の1つ年下の同世代。立場が似ている3人はチームが若返りに舵を切ると、いずれも出場機会が減る可能性もある。鄭成勲としてはKIAが昨年同様に上位争いを続け、経験が求められる局面で力を発揮することが生き残りの条件となりそうだ。

 プロ入り当時の古巣であり故郷のチームで今季を迎える鄭成勲。彼にとって2018年は原点からのスタートとなる。

KIA正田コーチ、王者奪還は「ベテラン休ませながら」

「若手、若手って言うけど、まずベテランのコンディションを整えてあげなきゃ」

KIAの正田耕三打撃コーチはキャンプ地の沖縄・金武町(きんちょう)で世代交代の必要性を求める周囲の声に、自身の考えをこう話した。

KIAは2017年に8年ぶりの優勝を果たすも、昨季は5位。しかし順位低下の要因はチーム防御率リーグ9位(5.40)の投手陣にあって、攻撃陣は好成績を残した。チーム打率、打点、得点はいずれも首位の斗山(トゥサン)に次ぐ2位。今季も主力打者は健在で正田コーチは1~9番をスラスラと言い始めた。

「1番外国人(ヘーゼルベーカー)、2番金善彬(キム・ソンビン)、3番安致弘(アン・チホン)、4番崔炯宇(チェ・ヒョンウ)、5番金周チャン(キム・ジュチャン)、6番羅志完(ナ・ジワン)、7番李ボム浩(イ・ボムホ)、8番崔元準(チェ・ウォンジュン)、9番金ミン植(キム・ミンシク)。新外国人はまだベールを脱いでないけど、このメンバーでほぼ決まり」

上記メンバーの平均年齢は31.1歳。4~7番に限ると35.5歳と確かに高い。しかし正田コーチは「ベテランを抜けるような若手がいないんだから、まずはベテランを(年間)20試合くらい休ませながら使うことを考える」と話す。

「僕らの頃もそうだったけど、若手というのは使える選手が誰もいない時に辛抱して起用するものだよ」

レギュラーと控えの差が大きいKIAの野手陣。しかしベテランは悠然と構えているわけではない。37歳サードの李ボム浩(元ソフトバンク)は体を絞ってキャンプに備えてきた。KIAのキャンプは若手、ベテランともに声が出て活気にあふれている。

「去年は前の年に優勝したので選手に“勝たなきゃ”というプレッシャーが感じられた。しかし今年はみんな元気だよ」と言って正田コーチは笑みを浮かべた。

今年も打線は期待できそうなKIA。KIAの王者奪還への道は投打の歯車ががっちりとかみ合うかにどうかだ。

韓国球界の背番号事情 エースナンバーは“1番”

韓国の各球団も2月1日からキャンプイン。各選手、ユニフォームに袖を通して始動を開始した。

その1日、NCは今季の選手の背番号を発表した。それによると昨季から番号を変えた選手が25人に上る。中でも20番台は26、29を除き、変更または新加入の選手、コーチが新たな番号を背負うことになった。

日本では若手選手が出世すると番号が小さくなるということがあるが、韓国の番号変更を見ると、日本の「法則」とは異なる点が多い。例えば日本では投手の番号とされる10番台だが、韓国では野手がつけることが少なくなく、16、18といったエース級投手の番号をつける野手もいる。

韓国でも18番にエースのイメージがないわけではない。KIAの18番は前身のヘテで大活躍した投手、宣銅烈(ソン・ドンヨル)の背番号で永久欠番になっている。だが韓国のエースナンバーは他にもある。

その1つが61。メジャーリーグで活躍した朴賛浩(パク・チャンホ)がつけていた番号だ。そしてもう1つが1。日本ではアマチュア野球のエース番号であるこの数字。日本の投手で背番号1は斎藤佑樹(日本ハム)、松井裕樹(楽天)だけだが、韓国の場合、昨季は10球団中、8球団で投手が1番を背負った。

昨季、野手で1番をつけていたNCの朴ミン宇(パク・ミンウ)は今年、2017年までつけていた2番にわずか1年で戻すことにした。NCの1番は元々、外野手の金俊完(キム・ジュンワン)がつけていたが、軍入隊により空き番号に。そこで朴ミン宇は心機一転、2から1へと変更した。しかし投手の柳元相(ユ・ウォンサン)が「1番をつけたい」としたため、後輩の朴ミン宇が柳元相に譲ることになったのだ。

その他の球団ではハンファ・河周錫(ハ・ジュソク)、KIA・崔元準(チェ・ウォンジュン)の両内野手が今年から背番号1となる。しかしその他の8球団で1番をつけるのはやはり投手だ。

宮崎、沖縄のキャンプ地。今年の日韓での練習試合は来週11日から中日-ハンファ(北谷)などが行われる。今年も「18番で内野手か」、「1番のピッチャー、プロじゃ珍しいな」といった観客同士の会話が聞かれそうだ。

代表監督に金卿文氏 組閣のポイントはコーチの人選

28日、金卿文(キム・ギョンムン)前NC監督(60)の代表監督就任が発表になった。金監督は2008年の北京オリンピック(五輪)で韓国を金メダルに導いた時の監督。宣銅烈(ソン・ドンヨル)前監督の突然の辞任という、危機的状況を救うべく11年ぶりの代表監督復帰を決断した。

今年11月のプレミア12、来年の東京五輪に向けて金監督が最初に着手するのがコーチ人事。特に五輪に関してはコーチの人選が非常に重要となる。なぜなら五輪ではコーチを3人しか登録できないからだ。少数ゆえにコーチには1人数役をこなせる人材が求められる。

日本は北京五輪で星野仙一監督の下、田淵幸一、山本浩二、大野豊の3コーチがベンチ入りした。しかしこの陣容が機能したとは言い難かった。田淵、山本の両氏ともに専門分野は打撃。山本氏が経験のない三塁コーチを務め、その結果として守備、走塁面で的確な状況判断がされず、日本は「金しかいらない」と臨むも結果は4位に終わっている。

一方の韓国は三塁コーチが本職で、所属チームで金監督の下、ヘッドコーチを務める金光洙(キム・グァンス)コーチが選手と監督とのパイプ役を果たした。また三塁コーチとしては準決勝進出をかけた日本戦の大事な場面で得点につながる好判断を見せた。

そして選手の中にもコーチ的役割を果たせるベテランが複数代表入り。一塁ベースコーチのほか、コーチがいないブルペンでは投手陣のコンディションを控え捕手が首脳陣に伝達し、的確な投手継投に生かされた。

今回の代表チームの組閣にあたり注目されていたのが球界のレジェンド・李承ヨプ(イ・スンヨプ)現KBO広報大使の入閣だ。李氏は代表監督を選ぶ技術委員会入りしたためその可能性が取り沙汰されていた。金監督の就任会見でも李氏のコーチ就任に関する質問が記者から上がったが、金監督は穏やかな口調でこう答えた。

「野球はチームワークのスポーツだ。コーチが目立つと選手よりコーチの色が濃くなるので、李氏のコーチ入りは控えることになるのではないか。人選には入っていない」。

五輪を知り、雰囲気に流されることなく決断できる金監督らしい回答だった。

代表チームの人事では日本、韓国ともに各放送局の解説者をバランスよく選ぶなどの配慮がはたらくことが少なくない。しかし温和ながらはっきりノーと言える金監督は勝つことを第一に考えた人選をするだろう。金監督は2月中にコーチ陣を決めるとしている。

代理人制度が裏目?移籍交渉が難航するFA選手たち

韓国の全10球団は日本同様に来週2月1日に春季キャンプをスタートする。一部のチームでは先発隊が既にキャンプ地入り。球春の訪れを感じさせている。その一方で冬の長い眠りからなかなか覚めないのが、契約交渉が続くFA選手たちだ。

昨季終了後、FA権の行使を宣言したのは15人。そのうち9人が未だに今季の契約を結んでいない。その顔ぶれにはハンファの外野手・李容圭(イ・ヨンギュ)、サムスンの遊撃手・金相竪(キム・サンス)といった代表チームの経験もあるトッププレーヤーが揃っている。

つい4、5年前はFA交渉解禁当日に移籍が発表されるという、事前交渉を疑いたくなるようなスピード契約が続いたが今の状況はそれとは正反対だ。その背景には大きく2つの理由がある。

1つに球団が選手の育成に力を入れるようになったことがある。以前はチームに必要な選手であれば次のFA取得までを保障する4年契約を結ぶケースが多かった。しかし20代後半から30代のFA選手の4年後に投資するより、将来活躍が見込める選手に注力した方が、長期的に見てプラスと考える球団が増えてきている。

そこで球団はFA選手に2年または3年契約での残留を提示しているが、選手の多くは4年契約を望み、その溝は埋まっていない。

もう1つが新たに導入された代理人制度が要因としてある。選手に代わってエージェントが球団と交渉できるようになったものの、そのことが選手にとって交渉に有利にはたらいているケースはあまり見られない。ある球団担当者によると「代理人はいい契約条件を求めるばかりで、選手の価値が高まるような説得資料を用意していない」と話す。

好条件を引き出すことだけを目的とする代理人と客観的なデータから契約内容を提示する球団。その両者で妥協点が見いだせていないことが未契約者の増加に表れている。

契約を済ませたFA6選手のうち移籍したのは斗山(トゥサン)からNCに移った捕手の梁義智(ヤン・ウィジ)のみ。梁義智は4年契約を結び、契約金と4年間の年俸を合わせた総額は125億ウォン(12億1000万円)という大型契約となった。しかしその他の選手の契約交渉は非常にシビアなものとなっている。

キャンプインまであと9日。FA未契約者が今後、移籍交渉を行う機会は限られる。そのためこの数日中に各球団から主力選手の「残留」の知らせが届く可能性は高い。

キウムヒーローズ、波乱と激戦の1年乗り越え新たな門出

スポンサー企業の命名権料で球団運営をしているヒーローズは、昨季限りでネクセンタイヤとの契約が満了。今年からはネット証券会社の最大手・キウム証券と5年契約を結び、「ネクセンヒーローズ」から「キウムヒーローズ」となった。

15日にソウル市内のホテルで行われた出陣式。新しいユニフォームやエンブレムのお披露目が行われたその席で、列席者の心を打つ映像が流れた。昨秋のポストシーズンのハイライトシーンだ。

昨季4位のヒーローズは5位KIAとのワイルドカード決定戦と、4位ハンファとの準プレーオフを勝ち上がりプレーオフに駒を進めた。先に3勝した方が韓国シリーズ進出となるプレーオフでヒーローズは2位SKに連敗。後がない状況に追い込まれた。

しかしヒーローズはそこから巻き返す。ホームの高尺(コチョク)スカイドームで連勝し逆王手をかけた。そして迎えた第5戦。4対9で5点を追う9回表も2死となり、あとアウト1つで敗退決定というところだった。しかしヒーローズはそこから相手のエラーをきっかけに得点を挙げ、4番朴炳鎬(パク・ピョンホ)が2ランを放って土壇場で5得点。9対9の同点に追いついたのだ。

その後試合は延長10回裏、SKが11対10でサヨナラ勝ちし、ネクセンヒーローズがその名を名乗って戦う最後の試合が終わった。映像はうなだれる選手、呆然とするファンを映し出し、昨年のポストシーズンでの「奇跡」を締めくくった。

ヒーローズにとって昨年は選手2名の女性への暴行疑惑、球団前オーナーが横領、背任、詐欺で服役するという波乱の年だった。現場の選手にとって野球に集中できない状況だったが、それを彼らは耐えながら最後まで戦い抜いた。

出陣式を終えた朴炳鎬は今季に向けて、「若い選手たちは昨年いい経験をした。彼らにとって今年はアップグレードする年だと思う。私自身も一生懸命やって、新しくなったチーム名で若手と心を一つにして上を目指したい」と話した。

心機一転、2019年シーズンを迎える新生・キウムヒーローズ。その面々には昨年の厳しさを乗り越えた強さがある。

尾を引く宣銅烈の悲劇 混迷する韓国代表の監督人選

今年は翌年に控えた東京オリンピック(五輪)への出場権をかけた戦い、プレミア12が11月に行われる。

重要な戦いを前に韓国には解決しなければならない大きな問題がある。代表チームの監督選定だ。

昨年11月14日、東京五輪までの任期があった宣銅烈(ソン・ドンヨル)代表監督(56)が突如辞意を表明。韓国野球委員会(KBO)は今月中の新監督選任に向け、調整を続けている。

日本の場合、若年層からアマチュア、プロまで各世代の代表が「侍ジャパン」という総称の下、長期的な観点で小久保裕紀、稲葉篤紀という各世代に通ずるフレッシュな人材に指揮を託してきた。しかし韓国が進めているのはトップチームのみを預かる監督の人選。しかも宣監督の辞任という非常事態からの脱却を目指すことから、経験のある人物を中心に人選が進んでいる。

現在、名前が挙がっているのは2008年の北京五輪で代表監督を務め、9戦全勝で金メダルを手にした金卿文(キム・ギョンムン)前NC監督(60)。そして2010年の広州アジア大会で韓国を金メダルへ導いた曹凡鉉(チョ・ボムヒョン)元KT監督(58)だ。捕手出身の両氏は現在、現場を離れていて代表監督就任に障壁はない。だが今の韓国代表の監督をやりたいと思う人はいないのが実情だ。

宣監督は昨年8月のジャカルタ・アジア大会で金メダルを獲得したにも関わらず、選手選考で非難を浴び、国政監査に証人出席する事態にも発展した。その国政監査では身内であるはずのKBO総裁から心無い言葉が発せられ、宣監督はこれまでにない辛い立場に追い込まれた。

宣監督は辞任の際に、「金メダルと選手のプライドを守れず惨めな思いだ。スポーツと政治は分離すべき。こういう事例は私を最後にして欲しい」とコメントを残している。

現役時代の活躍から「国宝」とまで言われた宣監督は、代表チームを率いたことで過去の実績がかすんでしまう程の屈辱を味わった。その後を継いで監督になる人物は相当な覚悟が必要になる。

候補に挙がっている経験者は火中の栗を拾うことを決意するのか。それとも拒み、新たに託された人材がチャレンジするのか。いずれにしても新監督には球界、世論の強い後押しがなければ、同じ悲劇が繰り返されてしまうだろう。

「打高投低」是正へ規定変更 試合球の反発係数低減

幕を開けた2019年。今年の韓国KBOリーグではリーグ規定に変更がある。それは試合使用球の反発係数の下方調整だ。その背景には長らく続いている「打高投低」の是正がある。

韓国の昨季のリーグ平均打率は2割8分6厘。これはNPB12球団トップの西武が記録した2割7分3厘よりも高い。昨季韓国で規定打席に到達した選手で打率3割を超えるのは34人を数え、リーグトップだった斗山(トゥサン)のチーム打率は3割9厘という驚異的な高さだった。

一方、リーグ防御率は5.17。NPBのリーグワースト防御率は中日の4.36だったが韓国ではリーグ1位のSKでさえ中日を上回る4.67という高い防御率となっている。

1試合5点以上入るが当たり前で打者が有利の韓国。この状況をボールの反発係数を下げることで変えるのが今回の目的だ。

現在の韓国の試合球の反発係数は0.4134から0.4374の間に定められている。「0.4134を反発係数の目標値とする」としているNPBに比べて幅を持たせた数値だ。これを今年からは「0.4034以上、0.4234以下」と基準を下げることになった。

韓国の試合球は2015年まで、かつての日本と同じように球団によって使用するボールのメーカーを選ぶことができた。そのためチーム事情によって「飛ぶボール」、「飛ばないボール」を選ぶことができたが、2016年からはいわゆる「統一球」を採用している。使っているのは自国メーカー・スカイライン社のAAK-100で導入初年度から2年間採用され、昨季の更新で2020年までの使用が決まっている。

「韓国のボールは飛ぶ」。日本人コーチ、そして日本球界を知る選手たちは昨季までの統一球についてそう口を揃える。韓国の打高投低は投手と打者の実力差だけではなく、ボールが原因というのが球界の共通認識だ。

しかし今季は試合球の反発係数の低減で投手の不利な状況が改善される可能性が出てきた。それによって好結果を得る投手が出てくれば、有望な若手投手不在に悩む韓国球界にとって大きな収穫だ。

今回の試合球の変更が当初の目的通り、打高投低の是正となり、球界全体に良い影響を与えることを期待したい。

韓国から見た近本らプロ入り4選手のアジア大会評価

今年8月にインドネシア・ジャカルタで行われた4年に1度の「アジア版オリンピック」アジア大会。

トッププロで挑んだ野球韓国代表は3大会連続の金メダルを獲得した。しかし大会終了後、兵役免除に関わる選手の選考方法をきっかけに宣銅烈代表監督が批判にさらされ、大会後に宣監督が辞意を表明するという後味の悪い大会となってしまった。

一方、社会人野球代表でチームを構成した日本は、決勝戦で韓国に敗れるも3大会ぶりの銀メダルを獲得。24選手のうち4人が10月のプロ野球ドラフト会議で指名を受けた。今回、彼らのアジア大会での姿を韓国側の評価などで振り返る。

阪神にドラフト1位で指名された近本光司(大阪ガス)は韓国のスコアラーが最も警戒した打者だった。確実性の高い打撃と俊足が持ち味の左打者を韓国バッテリーは力で押し、7度の対戦で1安打に抑えた。

近本は大会後、「実戦で試したいことで結果を知ることができたのは収穫」と話し、ヒットという成果だけではない経験が、次のステージでも生かされると実感した。

また投手ではリリーフとして活躍を見せた荒西祐大(ホンダ熊本)がオリックスに3位指名された。サイド気味のスリークォーターから切れのあるボールを投げ込む荒西に、韓国からは「荒西は先発で投げないのか?先発だと手強い」という声が上がった。それを聞いた石井章夫侍ジャパン社会人代表監督(東京ガス)も「さすがよく見ている」と話す程、荒西のレベルは投手陣の中で群を抜いていた。

大会で好投した荒西は、「(アジア大会は)相当な自信になった。一球の重さと長打の怖さは国際大会ならでは。日本では経験できないものだった」と興奮気味に話した。遅咲きの26歳にとって韓国、台湾の強打者を抑えた実績は、即戦力としての活躍を予感させる。

そして代表チーム最年少だった21歳の勝野昌慶(三菱重工名古屋)と富山凌雅(トヨタ自動車)はそれぞれ中日3位、オリックス4位でプロ入りが決まった。「韓国という強いチームに久々に好投出来た。アジア大会にはいい思い出しかない」という勝野。また韓国戦で先発するも結果には結びつかなかった左腕の富山も「いろんな意味でいい経験になった」と振り返った。

今年の夏、日の丸を背負って韓国としのぎを削り、プロへのきっぷをつかんだ近本、荒西、勝野、富山の4選手。その経験がNPBの舞台で発揮される日は近づいている。

日本人コーチに変化「でもいい」から「やりたい」へ

今年、韓国KBOリーグでプレーした日本人はゼロ。2011年の門倉健(元SK、サムスン)を最後に7シーズンの間、韓国に日本人選手はいない。一方で日本人コーチの往来は活発だ。2015年には日本との結びつきが強い金星根・現ソフトバンクコーチングアドバイザーがハンファの監督に就任したこともありその数は14人に上った。現在は減少傾向にはあるが今年も6人のコーチが活動。後に日本球界に戻るというケースが続いている。

今年、斗山(トゥサン)で打撃コーチを務めた後藤孝志は古巣・巨人に1軍打撃コーチとして復帰。KIAの2軍バッテリーコーチだった中村武司もプロ入り時に所属した中日の1軍バッテリーコーチに就任した。その中日は与田新監督就任でコーチ陣が一新され、伊東勤ヘッドの他、赤堀元之(投手)、門倉健(2軍投手)、立石充男(巡回野手コーチ)、勝崎耕世(コンディショニング)とKBOでのコーチ経験者が6人を数える。

2008年の北京オリンピック、翌09年のWBCでの躍進によって日本球界における価値が高まった韓国。その後、渡韓した多くのコーチがNPBで現場復帰していることもあり、所属先を求める指導者にとって韓国は優先度の高い選択肢となっている。

また待遇面も魅力の一つだ。KBOリーグの日本人コーチの平均年俸は1200万円程。加えて住居、活動手当、家族の往復航空券(年1、2回)などが提供される。ソウルの球団の場合、市内一等地の高級レジデンスを提供されることもあり、役職によってはNPBよりも好条件になることも少なくない。独立リーグのコーチ職と比べるとその差は歴然だ。

またNPBを経てKBOへの再復帰というパターンもある。今年楽天で寮長とテクニカルアドバイザーを務めた芹澤裕二(元楽天、ヤクルトコーチ)は以前サムスンで仕えた柳仲逸(リュ・ジュンイル)監督が率いるLGのバッテリーコーチ就任が決まった。

「韓国でもいいからやりたい」から「韓国でやれるならやりたい」へ。日本の球界OBが発する言葉がこの10年の変化を表している。

韓国No1捕手梁義智がFA 過去最高額で最下位NCへ

先週のコラムで韓国国内の先発投手不足について紹介したが、他にも人材難のポジションがある。それはキャッチャーだ。そのため捕手がフリーエージェント(FA)権を取得するとFA市場の大きな目玉となる。

今オフは斗山(トゥサン)の正捕手・梁義智(ヤン・ウィジ、31)が権利の行使を宣言。交渉の末、11日にNCが梁義智を迎えることを発表した。4年契約で契約金60億ウォン(約6億円)、年俸は4年間で65億ウォン(約6億5000万円)となり総額125億ウォン(約12億円)という大型契約だ。これは海外から復帰した選手の契約を除くとこれまでのFA移籍最高額となる。

「他のポジションだったら日本から声が掛かったかな?」

梁義智は冗談めかし、笑顔でそう話した。捕手という言語コミュニケーションが重要なポジションでは海外でのプレーは難しいが、「打撃だけなら勝負できる」という梁義智の自信の表れだ。

今季の梁義智はリーグ2位の打率3割5分8厘を記録。自身4度目の20本超えとなる23本のアーチをかけた。梁義智について今季斗山で打撃コーチを務め、来季は巨人に復帰する後藤孝志コーチは「ボールカウントによって対応を変えられる状況ごとの判断力と自己分析が素晴らしい。直球と変化球を同じタイミングで打てるのでいい結果を残している」と評価する。

長打力があるが韓国の他のパワーヒッターに見られるような大きなスイングはせず、三振は40個で規定打席到達者の中で最も少ないのも特徴だ。

捕手としては投手によって対応を変える柔軟性がある。盗塁阻止率3割7分8厘、守備率9割9分6厘はともにリーグトップだった。

梁義智を獲得したNCは今季、チームの正捕手だった金泰君(キム・テグン、28)が入隊。捕手を固定できず、チーム成績も創設6年目で初の最下位に転落した。来秋には金泰君が復帰するがNCにとって来季は新球場元年という特別な年を迎える。その象徴と成績アップに梁義智の存在は欠かせないとNCは決断した。

今季、2位に14.5ゲーム差をつけ1位を独走したチームをけん引した梁義智。韓国ナンバーワン捕手は来季最下位脱出を目指すフレッシュなチームで新たなスタートを切る。

先発不足…韓国球界の願いは次代を担う投手

先週のコラムで林昌勇(元ヤクルト)の「以前は柳賢振(リュ・ヒョンジン=ドジャース)、金広鉉(キム・グァンヒョン=SK)のような“怪物”と呼ばれる投手が何年かに1人はいたが、彼らの後はリーグを代表するような投手が全く出てきていない」という発言を紹介した。

今季の投手成績を見ても、防御率トップ3は外国人投手が占め、10位までのうち7人が助っ人。国内投手の人材不足を表している。各球団、世代交代に積極的で野手では切り替えに成功するチームがあるも、投手に関しては先発を任せられる存在が不足。実績のある中堅、ベテラン投手に頼らざるを得ない現状がある。

LGは11月23日、それぞれサムスン、ハンファを自由契約となっていた通算121勝左腕、張ウォン三(チャン・ウォンサム/35歳)と37歳沈秀昌(シム・スチャン)の獲得を発表した。また先週30日、斗山もハンファを退団となった通算137勝で歴代5位の裵英洙(ペ・ヨンス/37歳)の入団を発表した。

この3人ともに実績は申し分ないがピークは過ぎたというのが大方の見方だ。しかしいずれも自由契約となったことで年俸が抑えられ、球団としてはお買い得な選手となった。今季の年俸が5億ウォン(約5000万円)だった裵英洙が斗山と交わした契約は年俸1億ウォン(約1000万円)。球団とすれば2けた勝利は難しくても5~6勝でもしてくれれば費用対効果としては申し分ないという計算が成り立つ。

世代交代と勝利。どのリーグでも抱える課題だが特に韓国は投手において解決の糸口が見つかっていない。柳賢振、金広鉉ら若き投手が金メダルを手にした北京オリンピックから10年が経ち、来年は東京五輪の予選となるプレミア12が行われる。次代を担う投手の出現。それはチームだけではなく韓国球界全体の願いだ。

42歳林昌勇いまだ健在も来季25年目の行方は

9月28日、中日の岩瀬仁紀(44)が日本プロ野球史上初の1000試合登板を達成。岩瀬は今季限りで現役を引退した。その10日前、韓国では林昌勇(42)が日・米・韓通算での1000試合登板を果たしている。林昌勇は今季を中継ぎでスタートしたが、7月20日、11年ぶりに先発登板するとその後は先発ローテーション入り。1000試合登板も先発での達成だった。今季の成績は37試合5勝5敗4セーブ、防御率5.42だ。

林昌勇は先発転向後、「打者との駆け引きが面白い」と生き生きとしていた。一方で球界の現状をこう嘆いていた。

「韓国はストライクゾーンが狭くて、球場はフィールドシートが増えてファールグラウンドが狭い。昔は逆方向にホームランを打てるのは一部の選手に限られていたが、飛ぶボールを使っているから誰でも打てるようになった。だから(打率)3割打つ打者が30人以上もいる。以前は柳賢振(リュ・ヒョンジン=ドジャース)、金広鉉(キム・グァンヒョン=SK)のような“怪物”と呼ばれる投手が何年かに1人はいたが、彼らの後はリーグを代表するような投手が全く出てきていない。圧倒的に投手が不利な中で私はこの歳でもやっているんだからすごいでしょ?」

日本では強気の速球で勝負するのが持ち味だった林昌勇。その姿は今も健在だ。今季の直球の平均球速はリーグ平均と同じ142キロで、40代ながら140キロ台後半の速球も連発している。直球の比率は56.7%で以前より変化球の割合は増えたものの、林昌勇には「まだまだやれる」という自負がある。

しかし所属チームのKIAは10月24日、林昌勇に対して来季の契約を結ばない旨を伝えた。林昌勇は国内での現役続行を希望しているが今のところ所属先は決まっていない。年齢、そしてチームに与える影響を考えるとどのチームも林昌勇を容易に受け入れられないのが現状だ。

今年、先発として再びやりがいを見つけた林昌勇。しかし来年、43歳25年目のシーズンを迎えられるかはわからない状況だ。

笑顔なきMVPキム・ジェファンに見えた切ない決意

斗山(トゥサン)とSKが対戦した今年の韓国シリーズ。その第1戦終了後、球団関係者とメディアが集まった席で、ある新聞記者が斗山の広報担当者にこう提案した。

「金宰煥(キム・ジェファン)を医者に診てもらって、その診断書をみんなに公開した方が良い。“僕は今、薬物を摂取していません”って」。

30歳の金宰煥は斗山の不動の4番打者だ。2016年、金賢洙(現LG)のメジャー移籍をきっかけにレギュラーの座をつかみ、以後、3年連続3割、30本、100打点をマーク。チームの1位独走に大きく貢献した球界屈指の左の長距離砲である。しかしひとつの「汚点」が彼にはついてまわっている。それは7年前の薬物反応だ。

金宰煥は2011年10月の野球ワールドカップ韓国代表に選ばれた際、ドーピング検査でテストステロンの代謝物が検出された。本人は意図して摂取したものではないとし、韓国野球委員会(KBO)からは10試合の出場停止処分を受けた。金宰煥はそれ以降、シーズン中のドーピング検査、今夏のアジア大会でも薬物は検出されていない。しかし7年経過した今でもアンチファンを中心に金宰煥は疑いの目で見られている。

現場で金宰煥から受ける印象。それは努力と工夫を欠かさない誠実な選手だ。中堅125m、両翼100mの広い本拠地で一発を量産するパワーだけではなく、状況に応じた軽打も出来る。後藤孝志打撃コーチは金宰煥について「休みの日でもいつも球場に来て練習をしている」と話す。最初に記した記者の提案はそんな金宰煥の姿を知ってのものだった。

金宰煥は19日に発表になった今年の最優秀選手(MVP)に選ばれた。その受賞スピーチで金宰煥は「誠実」という言葉を2度使い、「いい姿だけ見せられるよう頑張りたい」と神妙な面持ちで語った。笑顔なきMVP金宰煥。彼の表情にはこれからも重い十字架を背負い続けるという切ない決意が見えた。

韓国も下克上 SKが劇的V ヒルマン監督有終の美

今年の韓国シリーズはプレーオフを勝ち上がった公式戦2位のSKが1位の斗山(トゥサン)を破り、8年ぶり4度目の優勝を手にした。決着したのは第6戦。その結末はSKらしい劇的なものだった。

SKは3-4で迎えた9回表2死、あとアウト1つで第7戦に持ち込まれるところ、シリーズ成績15打数1安打だった3番の崔廷(チェ・ジョン)が同点のソロホームラン。試合は延長戦へと突入した。

そして13回表、試合を決めたのも20打数3安打と低迷していた2番韓東旻(ハン・ドンミン)のどでかい一発だった。

SKはプレーオフ第5戦でも延長10回裏、9-10で金杠ミン(キム・ガンミン)、韓東旻の連続ソロにより韓国シリーズ進出を決めている。チーム本塁打数リーグトップで2年続けて230本を超えているSK。土壇場でもその特徴が発揮され、下剋上優勝を果たした。

SKを率いるトレイ・ヒルマン監督(元日本ハム監督)はこの2年間、チームに長打力のある選手が多く、ホーム球場が狭いという特性を生かして攻撃的な野球を進めた。その一方で短期決戦では回の先頭打者が出塁すると、再三送りバントを指示。失敗も少なくなかったがその采配には勝利への執念が感じられた。

またヒルマン監督はベテラン、若手を問わず選手を常に信頼し、明るい雰囲気作りを重視してチームを束ねてきた。しかしヒルマン監督は家族の健康状態を理由に今季限りで退任する。その指揮官に選手たちは感謝の言葉を惜しまない。

SKは2007年から6年続けて韓国シリーズに進出し、うち3度制覇。当時は金星根(キム・ソングン)監督の下、管理野球と繊細なプレーで黄金時代を築いていった。しかし6年ぶりのシリーズ進出となった今回は以前とは違う、明るくのびのびとしたヒルマン野球が結実した。

日韓で優勝監督になったのはヒルマン監督が初めて。それはかつてヒルマン監督が発した言葉通り、まさに「シンジラレナーイ」偉業達成となった。

チェ・ジュファン韓国S躍動!理想は柳田と吉田正尚

今週4日にスタートした今年の優勝チームを決める韓国シリーズは初戦をプレーオフを勝ち上がったSKが取り、2戦目は公式戦1位の斗山(トゥサン)が勝利し1勝1敗のタイとなっている。

1、2戦のスコアはいずれも7-3。2試合で両チームとも計10得点しているが、そのうち1人で6打点を叩き出している選手がいる。斗山の崔周煥(チェ・ジュファン)だ。

13年目30歳の崔周煥は打力に高い評価を受けながらも、選手層の厚いチームでなかなかレギュラーをつかめずにいた。しかし昨年、初めて規定打席に到達し打率3割をマーク。今年は打率3割3分3厘、26本塁打、108打点と自己最高の成績を残した。シーズン中は主に2番DHでチームの勝利に貢献し、韓国シリーズでは6番打者としてここまで7打数5安打1本塁打と打ちまくっている。

身長178cm体重73kgと韓国の選手の中では小柄な崔周煥。しかし持ち前の高いミート力に加えて今年はパワーも増し、長打力がアップしている。理想とするのは日本の2人のバッターだ。

「ヤナギタ(柳田悠岐=ソフトバンク)の攻撃的なフルスイングに憧れる。あんなにパワーがあってホントにニホンジン?ヨシダマサタカ(吉田正尚=オリックス)は小さいのにあれだけ飛ばせるのはスゴイヨ」。

崔周煥は知っている日本語を混ぜながら、同じ左打ちの強打者たちへの賞賛を明るいトーンで繰り返す。「動画で彼らのプレーはいつもチェックしている。見るのもベンキョウネ」。

今年崔周煥がやたらと日本語を話したがるのは柳田や吉田に影響を受けたことだけが理由ではない。「後藤(孝志)コーチともっと深い会話をしたい。去年の秋にインストラクターとして練習を見てもらった時から、自分を信じて任せてくれて今年は大きく成長出来た」。30歳には見えない童顔の崔周煥はつぶらな瞳で後藤コーチへの感謝を語った。

10年以上かけ控え野手からレギュラーへ。そして大舞台でチームをひっぱる活躍を見せるまでになった崔周煥。第2戦終了後、崔周煥ははしゃぐ気持ちを抑えてこう話した。「平常心を大事にしたい」。その落ち着きぶりに崔周煥のさらに成長した大人の姿が見えた。

ポストシーズンPOで目に付くスタンド空席のワケ

今年の韓国・KBOリーグの王者を決めるポストシーズンは現在プレーオフ第3戦まで進み、SKとネクセンが韓国シリーズ進出をかけ熱戦を繰り広げている。その一方で目に付くのがスタンドの空席だ。

27、28日の土日にSKの本拠地・仁川(インチョン)で行われた1、2戦は25000席で満員のところ、1戦が24219人、2戦が23642人だった。すべての座席が埋まらなかった原因として今年はアジア大会期間中、公式戦を中断したこともありポストシーズンが例年より遅くスタート。デーゲームとはいえ寒さがファンの足を遠ざけたようだ。

もう一つの理由としてネット予約分の直前キャンセルの多発がある。第1戦は前売りの時点では売り切れとなったものの、試合当日までのキャンセル分は1700枚に上った。ネット予約はポストシーズンのように直前に対戦カードが決まる試合の場合、非常に利便性が高いが安易な購入と取消の横行によって円滑なチケット販売が妨げられてもいる。当日券が発売となったのは試合開始2時間前。1700枚という枚数はさばき切るにはあまりに多かった。

また第3戦は天候に左右されないネクセンの本拠地、ソウル・高尺(コチョク)スカイドームで行われたが、発売数の16300席に対し入場者は13839人に留まった。その要因としてネクセンは球団誕生から10年と新しく、ソウルには斗山(トゥサン)、LGの人気球団があることから集客に苦戦しているという背景がある。ネクセンは公式戦でも1試合平均6314人で10球団中9位と低調だった。

例年であればリーグの「ポストシーズン○試合連続大入り札止め」という報道資料が当たり前のように配信されていた。しかし今年はそれが途絶え、秋風がより身に染みる状況となっている。

プレーオフではいくつかの要因から途絶えている大入り満員。11月4日からの韓国シリーズは観客がぎっしりと埋まった中で行われることを期待したい。

韓国S待つ斗山に李HCら流出情報も選手に動揺なし

公式戦1位の斗山(トゥサン)は全日程を9月14日に終え、韓国シリーズまでの約3週間、ポストシーズンを勝ち上がってくるチームのことを待っている。実戦感覚の低下という不安要素も宮崎県で行われるフェニックスリーグに参加することで解消中だ。

一方で斗山にちょっとした雑音が聞こえ始めてきた。その一つがコーチ陣の異動だ。シーズンを下位で終えたチームは既に来季に向けて大きく動き出し、3球団で監督の交代が発表された。その中で9位KTの新監督が斗山に影響を与えた。なぜなら新たにKTを率いるのは斗山の李強喆(イ・ガンチョル)ヘッドコーチだからだ。

KTの立場として韓国シリーズ終了後に発表するのが斗山への配慮と思われるが、憶測によって斗山の選手に不安を与えるよりも早めに公表することで騒ぎを鎮静化させるという手法もある。KTが選択したのは後者だった。それを如実に表しているのが、KTの発表が「新監督就任」ではなく「内定」という表現だったことだ。

また斗山からは金泰均(キム・テギュン)走塁コーチが李強喆コーチと共にKTに移ることが明らかになっている。

加えて22日には後藤孝志打撃コーチの巨人への復帰が発表された。斗山は3コーチの退団が決まっているという異例の状況下で韓国シリーズを迎えようとしている。

シーズン王者から3コーチの流出。斗山には痛手だが見方を変えると斗山の首脳陣には優れた人材が揃っているとも言える。今季3位で11年ぶりのポストシーズン進出を果たしたハンファの韓容悳(ハン・ヨンドク)監督も昨季まで斗山でヘッドコーチを務めていた。斗山は2年続けてヘッドコーチが他球団の指揮官に就くことになった。

さらに斗山には助っ人流出の可能性も出てきた。リーグ唯一の2点台の防御率を記録しタイトルを手にしたジョシュ・リンドブロム、18勝を挙げ最多勝のセス・フランコフの両右腕に対し、日本の球団スカウトが熱い視線を送っている。もし今年限りで退団となればこちらも斗山にとって痛手だが、韓国シリーズに関しては両投手にとって「アピールの場」となるため、より一層気合の入った投球を見せることだろう。

決戦を前にチーム内に生まれた変化。しかし宮崎でプレーする選手に動揺は見られない。今季を独走で制した斗山の面々は韓国シリーズで「それぞれの有終の美」を飾ろうとしている。

ネクセン若きスター!イ・ジョンフから目が離せない

ニューヒーロー不足と言われる韓国球界の中で存在感を示す20歳の選手がいる。ネクセンの外野手・李政厚(イ・ジョンフ)だ。イ・ジョンフは球界のスーパースターでかつて中日でもプレーした李鍾範の長男で、昨季は新人最多安打を記録。2年目の今年はリーグ3位の打率3割5分5厘を残した。8月のアジア大会では代表入りを果たすなどプロ入り以来、実力を発揮し続けている左打者だ。

選手としての能力だけではなく、長い手足に精悍な顔つきという整った容姿も備えた李政厚は、初のポストシーズン出場となった16日のKIAとのワイルドカード決定戦第1戦でスター性を存分に発揮した。

7回表、KIAは1点を挙げ5-5の同点とし、なおも無死1塁で3番崔炯宇(チェ・ヒョンウ)という場面。ここで崔炯宇は左中間を破ろうかという飛球を放った。レフトとセンターが共にボールを追い、両者が交錯しそうになったところでレフトのイ・ジョンフは足からスライディング。右投げのイ・ジョンフにとってグラブがフェンス側となる難しい体勢だったが地面すれすれでボールをキャッチ。するとすぐさま内野へ送球し飛び出した走者がタッチとなり併殺を完成させた。もし抜けていれば勝ち越しを許し、さらにピンチが続く場面をイ・ジョンフのスーパープレーが封じた。

またイ・ジョンフは攻撃で運の強さも見せた。2点を追う5回裏無死満塁で打席に入ると、2ボールから内野フライを打ち上げてしまった。審判がインフィールドフライを宣告したがここで珍しいことが起きる。捕手と3塁手がお見合いし打球はフィールドでワンバウンド。捕手がボールをつかむもその場所は3塁線を割っていたため記録は捕手のエラーでファールとなりイ・ジョンフは打ち直しとなった。

ここでイ・ジョンフはKIAのエース・梁ヒョン種(ヤン・ヒョンジョン)に体勢を崩されながらも打球をレフトに運び、犠牲フライで1点差とした。この回ネクセンは得点を重ね、5点を挙げてリードを奪いKIAに傾きかけた流れを引き寄せた。

イ・ジョンフは7回裏には先頭打者としてライト前ヒットで出塁。続く徐建昌(ソ・ゴンチャン)の右中間への2塁打でダイヤモンドを駆け抜け決勝点となるホームも踏んでいる。

KIAを10-6で破り準プレーオフに駒を進めたネクセン。この先も続く短期決戦で若きスター・イ・ジョンフがどんな輝きを見せるのか目が離せない。

ポストシーズン進出へ三つ巴の争い 5位はどの球団に

1リーグ10球団制の韓国では5位までに入れば、ポストシーズンに進出できる。韓国では古くからプレーオフ制度が導入され準プレーオフ、プレーオフを行い、優勝チームを決める韓国シリーズへと進む流れは1989年から始まっている。

シーズンの終わりが近づいた現在、ポストシーズンへの滑り込みを目指す5位争いがとても激しい。5位KIAと6位ロッテのゲーム差はなし。勝率は4毛差だ。そのロッテを7位サムスンも0・5ゲーム差で追っている。

混戦の要因は後半戦に追い上げを見せるロッテにある。9月18日以降、3つの敗戦を挟み4連勝、3連勝、3連勝、4連勝と勢いづき、15あった借金は4まで減った。その原動力は李大浩をはじめとした30代以上の実力者が揃う打線が軒並み好調なことだ。加えてプロ4年目の右の内野手、全炳佑(チョン・ビョンウ)の活躍が目立っている。全炳佑は9月4日に初出場を果たすと、21試合に出場し打率4割1分3厘、3本塁打、11打点を記録している。

一方、追われる立場のKIAは昨年の覇者としての維持を見せたいところだが、投手陣が不安定で9日のロッテ戦でもリードを守れず延長11回11対10でサヨナラ負けを喫した。

3チームで争われている5位争い。5位が出場出来るのは4位チームとのワイルドカード決定戦だ。チーム数が9から10に増えた2015年から導入のワイルドカード決定戦。2戦制で2勝した方が準プレーオフ進出となるが4位に1勝のアドバンテージがあり、4位は初戦に勝つか引き分ければワイルドカード決定戦突破が決まる。過去3回はいずれも4位チームが制していて、連勝が求められる5位チームにとって勝ち上がるのは難しい制度だ。しかしポストシーズンに進出するかしないかではチームの評価に大きな差を生むことから、最後まで必死の5位争いが行われている。

公式戦残り試合はKIA4、ロッテ6、サムスン1。うちKIAとロッテは直接対決が3試合も残っている。シーズン終盤、異様な盛り上がりを見せる5位争いはどんな結末となるか。

国際大会「日本キラー」と呼ばれたサウスポーの引退

韓国にはこれまでの国際大会で「日本キラー」と呼ばれたサウスポーがいた。

2000年シドニーオリンピック(五輪)での具台晟(元オリックス)、08年北京オリンピックでの金広鉉(キム・グァンヒョン)。そして09年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で日本戦に3度先発し、2勝を挙げた奉重根(ポン・ジュングン、38)だ。その奉重根が今季限りでの引退を決めた。

奉重根は信一高在学中の97年にアトランタブレーブスと120万ドルで契約を結び渡米。02年から3シーズン、メジャーリーグでプレーした。2007年に帰国するとLGに所属し、先発投手として08年から3年連続2けた勝利。12年、クローザーに転向すると通算109セーブを挙げ、低迷するチームで孤軍奮闘した。

高校時代は外野手として注目された奉重根。同じ左打ちの外野手であるイチロー(マリナーズ)に憧れ、信一高では背番号51番を背負った。それ以後、投手としてプロで大成してからも奉重根の背中には51番があった。

奉重根にとって尊敬する存在のイチロー。しかし奉重根のある行動が韓国のファンの中では奇しくも「イチローに恥をかかせた」として強く印象に残っている。09年WBCでの日韓戦。1塁走者のイチローに対し、奉重根は牽制の構えだけを見せたところ、イチローは手から急いでベースに戻ったからだ。完璧なはずのイチローが慌ててベースに戻った姿が韓国人には痛快だった。

9月29日の引退セレモニー。始球式のマウンドに上がった奉重根はホームに投じる前に、一度牽制の構えを見せてスタンドを沸かせた。そして投じた最後の一球。そのボールは緩やかに捕手のミットに収まった。奉重根の引退決断の理由。それは17年6月の左肩手術後、リハビリが順調に進まなかったからだ。

再び戦いの場に戻ることは出来なかった奉重根。しかし気持ちの整理がついたのかその表情は晴れやかだった。奉重根に「WBCでの投球は日本の多くのファンも覚えている」と話すと、彼は大きく喜びを表現して力強くこう話した。「野球は国境を超えるスポーツだ。今後、機会があれば日本で野球を学んでみたい」。

日本の前に立ちはだかった心優しきサウスポー。その姿は今後も多くの人の心に残り続けるだろう。

斗山が貯金40首位確定 原動力は優れた攻撃陣

斗山(トゥサン)ベアーズが公式戦1位決定マジック1で迎えた25日のネクセン戦に勝利し、2年ぶりの韓国シリーズ直行を決めた。ちなみに現地の一部メディアでは「優勝」の文字も見られるが、KBOリーグでは公式戦1位の表彰はない。韓国シリーズの勝者をその年度の優勝チームとし、敗者を2位。そして3位以下は公式戦の勝率順としている。そのため韓国では公式戦を制しても優勝扱いとしていない。

斗山は2位に13ゲームをつける独走で貯金は40を数える。その原動力は優れた攻撃陣だ。チーム打率はリーグで唯一3割を超える3割9厘。得点は2位に80点近く差をつけ867点を記録している。その打線の中心的存在がリーグトップの43本塁打、129打点を記録する4番・金宰煥(キム・ジェファン)だ。キム・ジェファンは長打だけではなく状況に応じた打撃を見せ、打率も3割5分近く残している。

その他にも正捕手の梁義智(ヤン・ウィジ)をはじめ、自分が何をすべきかをわかっている能力の高い打者が並んでいるのが斗山の特徴だ。

今季の斗山は攻守の要だった外野手・閔炳憲(ミン・ビョンホン)がロッテへFA移籍。その穴を新助っ人のジミー・パラデス(元千葉ロッテ)に託したが、結果を残せず6月に自由契約となった。その後、スコット・バンスライクを獲得するもこちらも9月に退団と、外国人打者が不在同然だったが、それをまったく感じさせない程、既存のメンバーは強力だった。

一方の投手陣は新加入の両外国人が牽引した。セス・フランコフはリーグトップの18勝を挙げ、ロッテから移籍のジョシュ・リンドブロムは15勝。リンドブロムはリーグでただ1人、防御率2点台を維持している。加えて今季抑えから先発に再転向した李庸燦(イ・ヨンチャン)が14勝。この3人の右腕での勝ち越し37がほぼチームの貯金となっている。

また上位チームとは互角の戦いになる一方で得意とするチームからは取りこぼすことなく白星を重ねていった。LGには13戦全勝。対ロッテ12勝3敗、サムスン12勝4敗、NC11勝4敗とこの4チームとの勝差も貯金の大半を占める37だ。

斗山が駒を進める韓国シリーズはアジア大会期間中の公式戦中断の影響で、例年より約10日遅い11月初旬の開始が予定されている。投手陣は十分な休息を挟むことになり勝ち上がっていく相手に比べて圧倒的に有利な状況となる。

斗山は公式戦残り12試合。加えてポストシーズン期間中の練習試合などでコンディションを整え、満を持して2年ぶり6度目のシリーズ王者の座を獲りにいく。

外国人新ルールと税法改正でリーグレベル低下を懸念

「韓国は今後、いい外国人選手が獲りにくくなるだろうね」。

在京パ・リーグの国際部門担当者はある一報をいち早く耳にし、そう話した。

韓国野球委員会(KBO)は先週11日、理事会を開き、新たに契約する外国人選手との契約時の年俸(オプション含む)、契約金、移籍料の総額を100万ドル(約1億1231万円)に制限すると発表したからだ。

韓国の外国人選手の年俸はかつて上限が定められていた。しかし実際はほとんど守られていなかったことから2014年に撤廃され、その後は高騰が続いていた。

今季の外国人選手では開幕時点での30選手中、契約金と年俸の総額が100万ドルに達する選手は、総額200万ドルのヘクター・ノエシ(KIA)を筆頭に約半分の14人。今回の新ルールを順守すると、今後は現在と同水準の選手の獲得は難しいということになる。

また助っ人選手にとってさらに厳しい制度がスタートした。それは韓国の税法の改正だ。これまで韓国で働く外国人は22%の源泉徴収税を納付していた。しかし今回の改正では韓国に年間183日以上居住した外国人には自国民同様に総合所得税の納付も義務づけられることになった。これにより高額所得者である外国人選手の場合、源泉徴収税と合わせて所得の40%近くの税金を収める可能性もある。

この法案は2015年の施行令制定までさかのぼることから、既に韓国球団との契約が終了し、母国に戻っている選手に対しても追加納付請求が送られているという。これでは海外のプレーヤーにとって韓国は魅力を感じない働き先にもなりうる。

前出の担当者は「実際の年俸額は以前のようにごまかせるとしても、移籍料も含めた金額も制限されているから、選手獲得は相当厳しくなる」という見解を示した。

韓国の多くの球団は10年以上、先発投手の柱を外国人選手が担ってきた。しかし今回の変更でメジャーでの実績がある選手の獲得が難しくなり、結果としてリーグ全体のレベル低下につながることも考えられる。

高校生渡米し30歳前に母国プロ入り選手の活躍期待

「メジャーリーグはひとつの成功例をきっかけに多くの球団が一気に動く」

パ・リーグの球団の国際部門担当者はそう話す。韓国にはその言葉を裏付けるデータがある。

2006年、高卒ルーキーの柳賢振(現・ドジャース)が投手のタイトルを総なめする大活躍を見せた。するとその19歳左腕の存在は海外にも知れ渡り、メジャー各球団は韓国の高校球児から逸材を発掘するため、翌年から多くの高校生と契約を結んでいった。2007~09年の3年間に米球団と契約を結んだ韓国の高校生は18人。06年の2人と比較すると激増ぶりがうかがえるだろう。しかしその中からメジャーリーガーは一人も誕生しなかった。

その彼らは帰国してもすぐには韓国でプロ野球選手にはなれない。日本の「田沢ルール」同様に、自国のプロに入るには海外球団との契約終了から2年経たないとその資格を得られないからだ。

今週10日、KBOリーグの新人ドラフトで当時の高校生たちが韓国球団から指名を受けた。そのうちの一人が2015年から2年間、千葉ロッテでもプレーし、今回KTから指名されたイ・デウン(29歳)だ。イ・デウンは14年にカブス傘下を退団後、日本に渡り、その間に韓国代表としてプレミア12、第4回WBCに出場。そして2年間の軍入隊を経て今回の韓国プロ入りに至った。

イ・デウンは11年前のカブスとの契約時に81万ドル(約9030万円)を手にした。しかし韓国では契約金はなく、年俸はリーグ最低額の2700万ウォン(約270万円)からのスタートとなる。まさに新人としての再出発だ。

またイ・デウンの他にも2016年にヤクルトに在籍し、今季四国アイランドリーグplusの徳島でプレーしたハ・ジェフン(27歳)らも高校生の時に米球団と契約し、今回のドラフトでKBO入りが決まった選手だ。

時代の流れに乗って若くして海を渡るも、成功には手が届かず、30歳を前に母国のプロ入りとなった彼ら。彼らの新しい野球人生は輝かしいものとなるだろうか。

韓国代表アジア大会3連覇も失われた「韓国らしさ」

インドネシア・ジャカルタで行われたアジア大会の野球は、韓国が3大会連続の金メダルを獲得し幕を下ろした。

オールプロの韓国が社会人野球代表の日本、プロと社会人の混成チームの台湾より好成績を残すというのは当然とも言える。しかし韓国は台湾に1-2で敗れ、日本には2勝したものの5-1、3-0と楽勝ではなかった。なぜか。

かつて国際大会で韓国と幾度も対戦した稲葉篤紀・侍ジャパントップチーム監督は、韓国についてこう話した。「何をしてくるかわからない」。しかしそれは少し前の話で今の韓国代表にガツガツした怖さはない。

韓国は自国のプロからメジャー入りする選手が現れ、国内のスター選手は高額でFA契約を結ぶようになった。プロ野球の人気は安定して高く、国家代表の結果が盛り上がりを左右する状況ではない。

また日本に対して1枚上のライバルであることは認めるものの、豊かになった韓国の選手にとって日本は、「絶対に負けられない嫉妬の対象」ではなくなってきている。そのためかつてのように、勝ちたいという気持ちが実力以上のものを生み出す姿は減ってきた。相手が社会人の選手であればなおさらだ。

一方の実力だが大会で3、5番を務めた金宰煥(キム・ジェファン=斗山)は日本の社会人投手陣についてこう話した。「韓国のプロの1軍で投げていてもおかしくないレベルだったが、繰り返し対戦したら打ち込まれるだろう」。

実際、韓国の打者は日本の投手との二巡目以降は失投を逃さず一撃で仕留めるケースが目立った。その反面、決勝戦で4回以降、毎回のように変わった4投手からはヒット1本しか残せなかった。今回の結果は以前の韓国の選手にあった気持ちの面のプラスαはなく、実力がそのまま表れたと考えていいだろう。

韓国はプロ公式戦を約3週間中断して今回のアジア大会に臨んだ。だが次回22年の中国・杭州大会では公式戦を休まないことが既に決まっている。韓国がアジア大会にトッププロで挑む動機づけとなっている兵役免除の適用も次回は変わる可能性もある。

来年はプレミア12、再来年は東京五輪とトップチームが参加を予定する国際大会が続く。そこで構成されるメンバーに日本人がイメージする「韓国らしさ」は再び見られるだろうか。韓国代表は今、転換期を迎えている。

人生かける韓国と中継なし関心薄の日本、対極の一戦

インドネシアのジャカルタなどで行われている第18回アジア競技大会(アジア大会)。26日からスタートした野球は韓国で大きな話題となっている。その理由は韓国が予選リーグ初戦の台湾戦に1-2で敗れたからだ。

韓国は「アジア大会にトッププロで参戦し、金メダル獲得で得られる兵役免除を狙う」とこのコラムでは紹介してきた。他の出場チームに比べ圧倒的な戦力を揃えた韓国。その韓国がアマチュア主体の台湾に敗れたことが大きな波紋を呼んでいる。韓国メディアは代表チームに対して選手選考の問題点や首脳陣の采配などの批判を展開。加えて3選手が腸炎と高熱でダウンとなり管理不足も指摘している。

予選B組を2位で通過した韓国。次に進むスーパーラウンド初戦では予選A組1位の日本と対戦することになった。アジア大会に社会人野球代表が出場している日本は、予選でパキスタン、中国、タイにいずれもコールド勝ちしている。その3連勝という結果と日本選手への情報がない韓国メディアは韓国代表への非難と共に、過剰なまでの日本への脅威を展開中だ。

日本への警戒心、それはメディアだけではない。予選の戦いを見た韓国の戦力分析チーム・李鍾烈(イ・ジョンヨル)氏も「6月の大分での合宿の時とは見違える程、戦力が上がってきた」と話す。韓国のスコアラー陣は日本チームの強化合宿、そして予選リーグ3試合も視察。自国が台湾に敗れたことで責任感が増し、日本選手の調査に一層力が入っている。

一方の日本だが韓国のように偵察隊を派遣するようなバックアップ体制はない。事前調査も含めた分析チームは構成されておらず、日本首脳陣は大会現地で韓国-台湾戦を視察するも、杉浦正則コーチが自ら相手選手をビデオ撮影するという手弁当ぶりだ。

何から何までプロ集団の韓国とその対極にある日本。チームを率いる石井章夫監督はスーパーラウンド進出の成果を「選手のチャレンジとチームワーク」と話した。

30日、日本時間の午後2時から行われる日韓戦。背水の陣の韓国と挑戦者の日本の対戦はどちらも決勝進出に向けた大事な一戦となる。この試合に日本ではまったく関心がなく中継もないが注目に値する戦いとなりそうだ。

「兵役免除狙いだ」オ・ジファンが助かるすべは…

 いつの時代もプロ野球選手にはファンとアンチが存在する。アンチファンになるにはいくつかの理由があると推測されるが、その一つにあるのが「嫉妬」。その嫉妬によって攻撃を受けている選手がいる。LGの遊撃手でアジア大会の韓国代表選手でもある呉智煥(オ・ジファン)だ。

 オ・ジファンはプロ10年目の28歳。リストが強い左打者でパンチ力がある。積極的な走塁とヘッドスライディングも特徴のチームの中心選手だ。その一方で過去に打率3割を記録したことはなく、守備面ではフィールディングがうまいとは言えない。ショートと言うポジションもあるがエラーの数は毎年20個近くを数え、これまでにトップチームでのプレー経験はない。

 そんなオ・ジファンが今回初めて代表チームに選ばれた。その役割は控え野手だ。しかし呉智煥はショート以外守れないため、複数ポジションが求められる役割に適任とは言い難い。そのことから「兵役を目前に金メダル獲得による免除特例を受けさせるための選出ではないか?」と考える野球ファンは多い。

 オ・ジファンはこれまでに幾度もドラマチックな場面での活躍を見せてきた。またミスをした後のまっすぐ前を見つめる姿はとても画になる。スター性という点では代表候補としてもそん色ない魅力的な選手だ。だが国民としての「義務」の免除対象として見た場合、世間の視線はとても厳しい。

 オ・ジファンはいつもひたむきにプレーに取り組み、技術面を尋ねればしっかりとした答えが返って来る。彼と接した人は「かわいい奴」そんな印象を持つだろう。そんな真面目なオ・ジファンに代表チームを率いる宣銅烈(ソン・ドンヨル)監督は「あまり世の中の声を気にするな」と声を掛けたという。

 26日からインドネシア・ジャカルタで行われるアジア大会の野球競技。金メダル獲得が必須とされるこの大会で金を獲ってもオ・ジファンには厳しい意見が上がるだろう。韓国は日本以上にネットを中心とした誹謗中傷で行きつくところまでやり込めてしまう傾向があるからだ。

 大会前から決して良くないムードが漂う中でオ・ジファンに出来ること。それは与えられた場面で結果を残すことしかない。

首位独走の斗山 元巨人後藤Cが考案の打順が原動力

 14日現在、2位に10ゲーム差をつけ首位を独走している斗山(トゥサン)。その原動力が好調な打線だ。チーム打率はリーグで唯一3割を超え、3割8厘を記録している。しかし打撃部門を担当している後藤孝志コーチ(元巨人)はこう言う。「もっと点を取らなきゃダメですよ」。

 後藤コーチが自身の役割として第一に掲げるのは選手への技術指導ではない。いかに得点を挙げられるか。言わば「得点コーディネーター」だ。

 韓国の多くの球団では試合ごとの打順をヘッドコーチが決めて監督に打診。またヘッドコーチが投手出身の場合は、監督自らが決めている。しかし斗山の場合は打撃コーチの後 後藤が打順を決め、捕手出身の金泰亨(キム・テヒョン)監督に提出するスタイルだ。

 「監督から“ここは入れ替えた方がいいんじゃないか?”とか組んだ打順の理由を聞かれることもありますが、その都度、根拠のある説明をしています」と後藤コーチは話す。

 4月21日のKIA戦では相手の先発、右のサイドスロー・林起映(イム・ギヨン)に対し、斗山は1~9番すべて左打者を並べた。右の主力打者の休養も兼ねたこのオーダーで斗山は林起映を攻略。13安打10得点で勝利した。

 また8月11日のロッテ戦では左わき腹痛で戦線離脱中の3番打者・朴健祐(パク・コンウ)に加え、現在打点と本塁打部門で2位の4番・金宰煥(キム・ジェファン)、打率2位の5番・梁義智(ヤン・ウィジ)を外すオーダーを組んだ。キム・ジェファンは腰痛、ヤン・ウィジは調整のための欠場だった。

 この日の試合前、後藤コーチは今季初めて試合前の円陣に加わり、選手にこう言ったという。「いるメンバーで勝てないと意味がない。苦しい時にファイティングポーズがとれるか、それとも3、4、5番がいないからと言い訳するのか、どっちを選ぶ?」。

 これ聞いた選手たちは発奮。一致団結し9番を除く8人がヒットを放った。また7月途中にチームに合流し、それまで27打数3安打だったスコット・バンスライクにも初アーチが飛び出し5-2で快勝。クリーンアップを欠いても勝つという、斗山の地力を見せつけたゲームだった。

 斗山の得点は702点でリーグトップだ。しかし後藤コーチの欲求は満たされていない。「理想は走塁コーチと相談してさらにどうやって点を取るかを考える、オフェンスコーチになることです。そうすればディフェンスのコーチに“きょうは5点取るから4点まで取られてもいいよ”って言えますよね」と生き生きと話す後藤コーチ。後藤コーチはアメリカマイナーリーグでの豊富なコーチ経験を下地に、韓国でチームをナイスコーディネートしている。

韓国代表に故障者続出、アジア大会Vに向け人選は

韓国代表の宣銅烈監督(2017年11月17日撮影)

 今月26日からインドネシア・ジャカルタで行われるアジア大会の野球競技。大会まであと3週間を切る中、代表メンバーに変更の可能性が出てきた。

 それは以前、本コラムでも記した兵役の有無に関する人選ではなく故障が理由だ。

 三塁手の崔廷(チェ・ジョン=SK)は左太もも痛で7月25日に戦列から離脱した。また外野手の朴健祐(パク・コンウ=斗山)は今月2日の試合で左わき腹を痛め治療している。崔廷は2010年の広州大会の金メダルで兵役免除となり、朴健祐は兵役義務を果たしているため、この2人の離脱は兵役とは関係ない純粋な戦力ダウンだ。

 しかし三塁手、外野手に関して代替の候補者は多い。サードでは今年メジャーから帰って来た黄載鈞(ファン・ジェギュン=kt)、昨春のWBCでも代表入りした許敬民(ホ・ギョンミン=斗山)らがいる。

 外野手では4年前の仁川(インチョン)大会で兵役免除恩恵を手にした羅成範(ナ・ソンボム=NC)、そしてまもなく20歳を迎える李政厚(イ・ジョンフ=ネクセン)が入替候補だ。李政厚はリーグ4位の打率3割5分をマークし、兵役も残っていることから周囲の代表招集への期待は高まっている。

 一方で悩みどころは投手だ。梁ヒョン種(ヤン・ヒョンジョン=KIA)、車雨燦(チャ・ウチャン=LG)の両左腕は韓国先発陣の2枚看板だが、車雨燦は7月以降の5試合で4敗。防御率は14・51と序盤に大量失点し、5回を持たず降板する試合が続いている。しかし不調が原因でメンバーの交代は出来ない。車雨燦は8月3日まで10日間、左股関節を痛めてエントリーを外れていたがそれが原因ということであれば入れ替えもありうる。

 今回のアジア大会での大事な戦いは26日の台湾戦、30日または31日にスーパーラウンドで顔を合わせるであろう日本戦。そして9月1日の決勝戦だ。この3試合に登板する2人の先発投手の存在が金メダルに向けた大きなポイントとなる。

 車雨燦の代替には代表経験豊富な金広鉉(キム・グァンヒョン=SK)の参加に期待が高まるが、今季の金広鉉は左ひじ手術後ということもあり、チームの徹底した球数管理の下でプレーしている。10年前の北京五輪で兵役免除恩恵を手にした金広鉉は「代表から呼ばれたら行く」という立場だが、現在2位のSKはポストシーズン進出の可能性が高く、チームとしては無理をさせたくないという考えもある。

 韓国代表を率いる宣銅烈(ソン・ドンヨル)監督は8月10日の時点で代替選手の方針を固めるとしている。金メダルに向け宣監督以下、首脳陣は最終的にどのような人選をするだろうか。

トレード4選手今後の活躍に期待 大きな転機なるか

 トレードの最終期限となった7月31日。そこに駆け込むように30日に斗山(トゥサン)とNCから、31日にLGとSKからそれぞれ1対1のトレードが発表になった。

 斗山からNCに移籍した李遇成(イ・ウソン)はプロ6年目、24歳の右の外野手。今季初めて1軍でのまとまった出場機会を得ると32試合に出場。2本塁打、打率3割を記録し能力の高さを見せていた。

 しかし斗山は野手の選手層がとても厚いチーム。控え選手がチャンスをつかみバットで結果を残したとしても、守備や走塁のプラスαがないと1軍定着は容易ではない。イ・ウソンは斗山で機会が限られたが、NCでは外野の他、指名打者で能力を発揮する可能性もある。

 またLGからSKには右の内野手カン・スンホが移籍した。今年カン・スンホはセカンドのレギュラーとして期待されるも結果には結びつかず、5月からは2軍生活が続いていた。パンチ力のある打撃に積極的なプレーが持ち味のカン・スンホ。しかし正確さに欠くことが難点だった。

 そのカン・スンホもトレードが吉と出るかもしれない。それはLGにまつわるある事例。「LGで芽が出なかった選手が途中移籍すると大ブレイクする」というものだ。

 2009年途中、LGからKIAに移籍した金相賢(キム・サンヒョン)は同年に本塁打、打点のタイトルを獲得し優勝に貢献。リーグMVPとなった。また11年途中にネクセン入りした朴炳鎬(パク・ピョンホ)はチームの4番打者となり翌年から4年連続本塁打、打点の2冠王に。さらにメジャー進出も果たした。そして15年途中にSKに移った鄭義潤(チョン・ウィユン)も移籍後、4番に定着。翌年には全144試合に出場し3割20本100打点の自己最高の成績を叩き出した。

 LG印の途中移籍選手が活躍するという球界の七不思議。その理由をあるOBは「ソウルがホームのLGの選手は周りにチヤホヤされて勘違いする。だからあと一歩の努力が足りない」と話す。しかし選手層が厚く、育成に長ける斗山の本拠地もLGと同じソウルのチャムシル球場だ。大都市がホームであることだけが選手が伸び悩む理由ではないようだ。

 選手にとって大きな転機となるトレード。今回移籍の4選手にとってこれが好機になることを願いたい。

アジア大会12年ぶり日韓戦は波乱を呼ぶ可能性も

 来月、インドネシアのジャカルタで行われるアジア大会野球競技の日程が先週発表された。

 2010年の中国・広州、14年の韓国・仁川(インチョン)大会に続き金メダルを狙う韓国。一方、日本は2大会連続の銅メダルから上を目指すことになるが、過去2大会では両者が顔を合わせることはなかった。しかし今大会では日韓の対戦が濃厚だ。

 韓国と日本は前回、前々回同様に予選は別グループ。しかし今回は各組上位2チームが進むスーパーラウンドの対戦方式がこれまでとは異なる。過去2大会では別組の1位対2位で準決勝2試合が行われたが、今回は4チーム総当たり制のスーパーラウンドが設けられている。

 A組は日本、中国、パキスタンと事前予選を行うタイ、スリランカ、ラオスの勝者を加えた4チーム。B組は韓国、台湾、インドネシア、香港で構成される。日韓共に各組の1または2位になるのは確定的で8月30、31日に行われるスーパーラウンドで相まみえる可能性が非常に高い。

 過去2大会で韓国と日本はいずれも予選グループを1位通過し、準決勝で韓国は中国と、日本は台湾と対戦。中国に勝った韓国は決勝戦に進み、台湾に敗れた日本は3位決定戦に出場した。

 今大会の各チームの顔ぶれだが韓国はトッププロで構成。台湾は海外組を含むプロ選手と社会人が参加する。そして日本は社会人代表で挑む。各チームの選手の実績は過去2大会の結果通り、韓、台、日の順だが3大会ぶりとなる日韓の対戦は波乱を呼ぶ可能性もある。

 2006年のカタール・ドーハ大会では長野久義(巨人。当時日大)が呉昇桓(現ブルージェイズ)からサヨナラ弾を放ち、社会人、大学生で構成の日本がプロ主体の韓国を破るという番狂わせがあった。

 代表24人全員(補強選手4人含む)が都市対抗野球に参加した社会人日本代表は7月24日に大会が終わり、今後は強化合宿などで結束を高めていく。一方の韓国は来月16日にプロ野球公式戦を一時中断し、18日から代表練習を開始する。

 過去2大会では見られなかった韓国と日本の顔合わせ。実に12年ぶりとなる日韓の激突は今回のアジア大会の見どころの一つとなるだろう。