<函館2歳S:追い切り>

 2歳世代最初のJRA重賞・函館2歳S(G3、芝1200メートル、22日)の追い切りが18日行われた。中央勢に負けじと、門別の坂路で抜群の動きを見せたのがホッカイドウ競馬で2戦2勝のエムティアン(牝、山口竜)。地方の名騎手だった山口竜一師(54)は、調教師として初の中央重賞挑戦に向け、万全の対策を施してきた。

 地方の元トップジョッキーが、渾身(こんしん)の仕上げで愛馬を大舞台に送り出す。エムティアンを管理する山口竜師は、ホッカイドウ競馬歴代最多となる通算2850勝(うち中央7勝)を挙げた名手。調教師に転身後、開業5年目でつかんだ初の中央挑戦でビッグタイトルを狙う。

 この日の最終追い切りでも自ら手綱を取り、感触を確かめた。600メートル35秒9の好時計。「途中から併せた馬が遅れてフワッとしたけど、時計も出ているしやっぱり動くよね。やれることはすべてやったし、あとはジョッキーにバトンを渡すだけ」と納得の表情だ。

 新馬戦を6馬身差で圧勝し、ここへの出走権がかかった前走で連勝を決めると、出世レースの栄冠賞などを回避し、ここ一本に絞った。6月末には門別から馬運車で約2時間を要する浦河町のBTC(軽種馬育成調教センター)グラスコース(洋芝)で“出張調教”もこなし、仮想「函館2歳S」対策はばっちり。同師は「輸送も問題なく、芝も気持ちよさそうに走っていた」と自信を見せた。

 函館競馬場は思い入れの深いコースでもある。騎手時代に06年ラベンダー賞をインパーフェクトで制してJRA初勝利を挙げ、続く函館2歳S(2番人気6着)にも騎乗した。「夢の続きが見られないかな。エムティアンは内に秘めた闘争心がすごい。父パドトロワも函館で走ったし小回りの洋芝も合うと思う」。培ってきたノウハウのすべてを注ぎ込んで大一番に向かう。【奥村晶治】

 ◆山口竜一(やまぐち・りゅういち)1964年(昭39)1月26日、栃木県生まれ。81年4月25日に宇都宮競馬所属で騎手デビュー。05年3月に同競馬が廃止になり、ホッカイドウ競馬に移籍した。13年に調教師免許試験に合格し、翌14年1月1日付で同免許を取得。騎手としては地方通算1万9804戦2843勝、中央151戦7勝。中央重賞は06年エルムSのジンクライシス2着が最高。調教師としては通算696戦81勝(18日現在)で、中央は今回が初参戦になる。

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