<エリザベス女王杯:追い切り>

 雨水をしたたらせディアドラが坂路に姿を現した。湿ったウッドチップをものともせず、外ラチ沿いを駆け抜ける。たくましく、走りがブレない。ゴール前で右ムチ1発が入り、ラスト1ハロン12秒2と力強く脚を伸ばした。見守った橋田師は「しまいだけ強めの指示で、その通り。(前走の)消耗も少なかった。至極順調」と目を細めた。

 少女から大人へ。岩田騎手は「夏を越して“大成長”した」と表現する。前走時の馬体重は過去最高の490キロ。デビュー時の452キロから38キロ増。もちろん、ただ太ったわけではなく、胸前や腰周りが盛り上がり、グラマラスな体形になった。その成長は走りにも表れている。鞍上は春と比較して「重心がグッと下がって、すばらしい走りになった。切れ味を増している」と証言する。

 男勝りのタフネスだ。だから、まだ上積みが見込める。重馬場での激闘となった秋華賞の5日後には乗り込みを再開した。8月から1カ月1走ペースで今回が4走目。普通の牝馬なら体調を落としたり、精神的に追い詰められてもおかしくない。それでも「全然へたらないのが、この馬のすごいところ。体力が高い。競馬を使っても、肉が落ちたりしない」と評するトレーナーは「反応が速くなってるように思う」と前走以上の手応えも口にする。

 牝馬NO・1決定戦にふさわしい豪華メンバーだ。桜花賞馬レーヌミノルやオークス馬ソウルスターリングこそ不在だが、G1馬4頭が集結。11年ぶりに秋華賞1~3着馬が顔をそろえた。岩田騎手は「秋華賞(ルメール騎手が騎乗)もすごく強いレースをしていた。乗りやすいので、どういうレースでもできる。いい走りをしてくれるのでは」と好勝負を見込む。

 1000万クラスだった3カ月前から、4連勝で女王の座へ。シンデレラ物語にはまだ続きがある。【太田尚樹】

 ◆秋華賞VTR 3番人気のディアドラはスタートが決まらず、後方を追走。3~4角では重馬場でも特に悪い内ラチ沿いを取って前との差を詰め、上がり最速で差し切った。中団待機から脚を伸ばしたリスグラシューが2着。3着には好位から早めに動いたモズカッチャンが入った。重賞2連勝中で1番人気に支持されたアエロリットは2番手から伸びず7着に敗れた。

 ◆3歳馬が活躍 過去10年のエリザベス女王杯で3歳馬は【4 4 3 36】。勝率8・5%、連対率17%は世代別1位と活躍している。4歳馬もここ10年で4勝、現在3連勝中だが、最近2年は3歳の秋華賞馬が出走していなかった。今年は秋華賞馬ディアドラに加え、同2着リスグラシュー、3着モズカッチャンが参戦。秋華賞1、2、3着馬が3歳時にそろって出走するのは06年以来11年ぶりとなる。

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