<天皇賞・春>◇29日=京都◇G1◇芝3200メートル◇4歳上◇出走17頭

 懸命の盾制覇だ。2番人気レインボーライン(牡5、浅見)が10度目のG1挑戦で初Vを果たした。岩田康誠騎手(44)に導かれ、インから首差で栄冠をつかんだ。ゴール後に右前脚の歩様が乱れて鞍上が下馬。馬運車でコースを去り、ウイニングランはできず表彰式にも出られなかった。周囲の心配を集めたが「右前肢ハ行」と診断され、最悪の事態は免れた。今後は患部の経過次第になる。

 全身全霊のラスト1完歩だった。青いメンコから出た両耳を絞り、歯を食いしばったレインボーラインが前へ出た。メンバー最小タイ452キロの馬体を目いっぱいに伸ばし、外のシュヴァルグランを首差かわしたゴールの瞬間、首を下げてつんのめったように見えた。いったん頬を緩めた岩田騎手がすぐさま異変を感じ、右前脚をのぞき込んで顔をこわばらせる。1コーナー付近で止めて下馬。7万人近い観衆の大歓声がどよめきに変わった。

 ウイニングランはない。検量室前に勝者は帰ってこない。不安げな視線に包まれ、馬運車に乗せられてターフを去った。表彰式は優勝馬不在のまま行われた。

 岩田騎手 うれしいのはうれしいけど、馬のことが心配で・・・。(喜びの)涙も出ない。ゴールを過ぎて歩様が乱れて、すぐに下馬した。小さいけどちゃんと走ってくれる頑張り屋さん。出入りが激しかったけど、直線は絶対にいい脚で来てくれると思って、我慢できるだけ我慢した。

 殊勲の鞍上は眉間にしわを寄せたままだった。中団後方で脚をため、直線は得意のイン突き。G1制覇は15年桜花賞以来3年ぶりだ。「もう(G1を)勝てないかも」。06~09年、11~15年と達成した年間100勝も途絶え、そんな思いまで頭をよぎったという。表彰後は駆け足で厩舎地区へ向かい、相棒を見舞った。

 最悪の事態は免れた。ゴールの約1時間半後に発表された診断は右前肢ハ行。浅見師はJRAを通じ「着順は最高でしたが、レース後の馬の状況が状況なので心苦しいです。次に向けて何とかケアしてあげたいと思います」と胸の内を明かした。

 常に真面目で全力疾走。昨年は極悪馬場の天皇賞・秋で3着に好走した後、やや本調子を欠いたが、若松厩務員は「苦しい中で頑張ってくれた」とねぎらっていた。ふだんから従順で、乗り手が人の背後に忍び寄らせて驚かせることも。愛されし頑張り屋は、文字通り懸命の走りで10度目のG1挑戦を実らせた。

 今後は患部の症状次第になる。岩田騎手は「無事にターフへ戻ってきてほしい。今度は笑顔でG1を勝ちたい」とエールを送った。父ステイゴールド譲りの魂の走り。再び雄姿が見られる日を誰もが待っている。【太田尚樹】

  1. お得な新入会プラン登場! 競馬情報サイト【極ウマ・プレミアム】
  2. 競馬予想に【ニッカンAI予想アプリ】