親ロシア、プーチン親衛隊の独裁者として悪名高きチェチェン共和国首長のラムザン・カディロフ氏(41)は、プライベート動物園を作るほどの無類の動物好きで、たくさんの競走馬を所有する馬主という別の顔を持っています。

 その、カディロフ氏を狂喜乱舞させる出来事が10日、ドバイのメイダン競馬場でありました。

 31日のドバイワールドC(G1、ダート2000メートル)の最終ステップとして、同舞台で行われたマクトゥーム・チャレンジ・ラウンド3(G1)を2分1秒71のコースレコードのおまけつきで逃げ切ったノースアメリカ(せん6、父ドバウィ)は赤地に緑が配されたチェチェン国旗を勝負服にしたカディロフ氏の愛馬でした。

 前哨戦には本番で本命視されているウエストコーストを筆頭とする米国勢や欧州からの挑戦がうわさされるタリスマニックなどの強豪の参加はなく、地元勢主体の一戦でしたが、R・マレン騎手がロケットスタートを決めると追走に苦労する後続集団を尻目に直線で2段ロケットを噴射。ゴールでは本番でも有力視されるサンダースノーに5馬身1/4差をつけました。

 この結果を受けてブックメーカーはノースアメリカの本番での単勝オッズを30倍以上から一気に10倍から13倍に見直し。モハメド殿下所有のサンダースノーと肩を並べる2番手グループに入れています。

 カディロフ氏はこれまで11年のドバイWCでヴィクトワールピサの6着に入線したジターノエルナンド、12年はザズーで5着するなどドバイ最高のレースに挑み続けていますが、これだけの手応えを感じさせる馬は初めてです。本番は同脚質の馬も多く熾烈(しれつ)な主導権争いは避けられそうにありませんが、16年にカリフォルニアクロームが出した2分1秒83を上回るタイムは出色。前哨戦の再現があれば軽視出来ない存在になりました。

 カディロフ氏の主義は「欲しいものはすべて手に入れる」。独裁者とて競馬だけは思い通りになりませんが、欲しいものを手にいれる絶好のチャンスが巡ってきたことは間違いないようです。【奥野庸介】(ニッカンスポーツ・コム/極ウマコラム「ワールドホースレーシング」)

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