<阪急杯>◇25日=阪神◇G3◇芝1400メートル◇4歳上◇出走18頭◇1着馬に高松宮記念優先出走権

 笑顔と涙のフィナーレだった。今月末で定年となる福島信晴調教師(70)が、ダイアナヘイロー(牝5)で自身最後の重賞を制した。武豊騎手(48)の手綱で有終の美を飾り、JRA重賞15勝目。「競馬の神様にお願いした」という鞍上の執念も勝利を呼び込んだ。なお、同じく2月末で定年、勇退する東西計12人の調教師が最後の中央競馬開催を終えた。

 雲に覆われた仁川で、福島師の表情はひときわ明るく映った。これが最後の重賞。好スタートを切ったダイアナヘイローはすぐにハナには立たず、向正面からジワッと主導権を握った。「いい形になった」と武豊騎手。しかし、直線では後続が一気に追い上げてきた。

 「最後はさすがにいっぱいいっぱいだった。なんとか勝ってくれと、競馬の神様にお願いした」。最後は無我夢中で追った。2着とはわずかに首差。執念でリードを守りきった。福島師は「神様より、豊くんにお願いした」。最高のフィナーレを飾り、あふれ出す涙をぬぐった。

 当初は1週前の京都牝馬Sも視野に入れていたが、馬場を考慮して阪急杯にスライド。その采配も当たった。武豊騎手も「なんといっても福島先生の最後。お世話になった先生だから、本当にうれしい。競馬にはこういうこともある。それに携われて幸せです」。そう言って、にっこりと笑った。

 昨年は500万から4連勝で北九州記念を制した逸材。G1初参戦となった昨秋のスプリンターズS(15着)、今年初戦のシルクロードS(16着)と大敗が続いたが、この1勝でまた大舞台への希望が見えてきた。今後は栗東・大根田厩舎に移る予定だが、福島師は「まだ馬は若い。G3と言わずG2、G1と出走していい競馬をしてほしいね」と、今後の活躍を願った。【辻敦子】

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