<G1プレーバック:2011年安田記念>

 プレーバック日刊スポーツ! 過去の安田記念を紙面で振り返ります。2011年は、リアルインパクトが3歳馬として史上初めて頂点に立ちました。また、戸崎圭太騎手にとっても初のJRA・G1制覇となりました。


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<安田記念>◇2011年6月5日=東京◇G1◇3歳上◇芝1600メートル◇出走18頭

 南関東の名手・戸崎圭太騎手(30)が、リアルインパクト(牡3、堀)とのコンビでJRAのG1初制覇を達成した。08年フェブラリーSの初騎乗以来9度目の挑戦は、3番手から押し切る横綱相撲。史上初となる3歳馬の安田記念制覇に一役買った。2着にも同じ堀厩舎のストロングリターンが入り、1番人気のアパパネは伸びを欠いて6着に終わった。

 ゴール前、戸崎の耳には一完歩ごとに大きくなる後続の足音が聞こえた。「頑張ってくれ!」。そう祈ると同時にパートナーの手応えの良さに励まされた。自信を持ってゴールしたはずだが、我に返ると実感がわかなかった。「勝ったのか」。周囲を見渡した。馬を止める時に勝った事実だけがわかった。テレビやモニターでしか見ることがなかった東京競馬場でのウイニングラン。「大きなスタンドを前にして、馬の背中にいられたのは光栄」。手を挙げ、何度も頭を下げて歓声に応えた。

 好スタートから3番手をキープ。残り300メートルで追い出すと、古馬を引き連れたディープインパクト産駒の3歳馬を鼓舞し続けた。地方ジョッキーらしい“剛腕”ではない。力ではなくスマートに馬を追う。地方の騎手は追える、という定説に「僕自身はそうじゃない。だからこそ、馬のリズムを崩さないように、邪魔をしないように乗りたい」。1600メートルを1度もブレーキをかけることなく、スムーズに走らせることで持ち味を引き出した。

 戸崎の左?には今でもアザがある。デビューしたてのころに落馬し、?骨(きょうこつ)を骨折。その時の手術痕だ。デビュー後から順調に経験を重ねていた矢先の出来事だった。「落馬の怖さ自体が出ることはなかった」が、競馬そのものの怖さを知った。小学校時代は栃木県壬生町の野球チームに所属。当時は毎年、県でベスト4に名を連ねる強豪だった。中学でも野球を続け、レギュラーではなかったがキャプテンに指名された。当然のようにプロ野球選手を目指したが、近所の競馬好きの人からジョッキーという職業を勧められた。「なぜか全く迷いなく」願書を提出し入学したことが、大きなターニングポイントとなった。

 今後のJRA移籍への思いについては「今は地方の騎手。1つ1つ大事に乗りたい」と目の前のレースに全力を傾ける。「今週は大井開催。地方競馬のダービーウイークなので、よろしくお願いします」。この日のヒーローは祝杯をあげることなく、笑顔で大井競馬場の調整ルームへと向かった。


※記録と表記は当時のもの

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