今年の日本ダービー(G1、芝2400メートル、28日=東京)の主役は、4戦3勝のレイデオロ(牡3)を送り出す藤沢和雄調教師(65)だ。先週のオークスをソウルスターリングで制し、史上2人目の重賞100勝を達成。現役最多のJRA通算1348勝を挙げる美浦の天才ホースマンも、不思議とダービーには縁がない。19頭目の挑戦で初制覇へ。その心中に迫った。

 日本競馬の歴史を塗り替えてきた巨人が、ついに「ダービートレーナー」へ。藤沢和雄調教師はレイデオロへの期待を隠さない。

 「オーナー、牧場がずっとダービーを意識してきた馬で、早くからこのローテを組んできた。俺もおばあさんから管理させてもらっていて、なんとか種牡馬にしたいと思っている」

 先週は牝馬のソウルスターリングでオークスを制したが、牡馬クラシック(皐月賞、ダービー、菊花賞)は無縁。これまでは1冠目の皐月賞にこだわらず、トライアルの青葉賞から臨む馬がほとんどだった。皐月賞からの参戦は本気度の高さとも受け取れる。

 「シンボリクリスエス、ゼンノロブロイも完成したのは古馬になって。トライアルで強い競馬をしてダービーに出走できたけど、王道を走ってきた馬にその時点ではかなわなかった。レイデオロだって来年になればもっと良くなる馬で無理はさせたくない。ただ、2歳の葉牡丹賞、ホープフルSが強かったし、余裕を持って皐月賞を使えた」

 常に馬に合わせたレース選択をしてきた師だが、今年は春先から「春のメインターゲットはダービー」「クラシックを取りたい」と力強い言葉が続いた。心境の変化があったのか。

 「若いときに英国へ行ったが、俺は英国ダービーは生で見たことがない。当時は担当馬を世話するので精いっぱいだった。だから、ダービーにこだわりはないのかもな。特別なレースではあるけど、だからといって、目先の一戦にとらわれて、無理に目標にしてはいけない。基本的な姿勢は今までと変わらない」

 重賞100勝の大記録を打ち立てた信念は不変。ただ、ソウルやレイデオロには、今までの管理馬以上に完成度の高さを感じる。

 「牧場時代からずっと健康にきているからクラシックを目指せる。レイデオロは春に中山を2回も走らせたくないから皐月賞は直行になったが、負けたけど10回の下手な調教より1度のレース。前走も良かったけど、その後の様子を見て、あらためてそれを感じている。順調に上向いている」

 急激な上昇カーブで本番へ。競馬界の七不思議にピリオドが打たれるか。

 「引退まであと何年(※22年2月で定年予定)って言われるけど、それは関係ない。桜花賞、皐月賞は無敗だったから重圧はあったけど、少し楽になった。先週はソウルが勝ってくれたし、レイデオロにも頑張るように言っておきますよ」

 名伯楽はあくまで自然体だ。【木南友輔】

 ◆調教師 JRAでは関東98人、関西95人。免許制で試験に合格すると、馬房が与えられ、厩舎を開業できる。厩舎スタッフを雇用する経営者であり、馬の管理や仕入れ、馬主との連絡などプロの作業が求められる。収入はレース賞金の10%と、馬の預託料(1頭あたり月に数十万)。16年に藤沢和厩舎がレースで獲得した総賞金は10億9271万7000円だった。一方でスタッフの給料、馬の飼育代(餌など)、厩舎の設備投資などさまざまな経費がかかる。

 ◆同一年にオークス&ダービーを勝った調教師 過去4例がある。尾形藤吉師は1943年に牝馬のクリフジで両レースを優勝(当時はオークスは秋開催)。51年は田中和一郎師がキヨフジとトキノミノルで勝っている。オークスが春になって以降は、73年に稲葉幸夫師がナスノチグサ、タケホープで優勝。直近では松田国英師が04年にダイワエルシエーロとキングカメハメハで制している。

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