<G1プレーバック:1998年ダービー>

 プレーバック日刊スポーツ! 過去のダービーを紙面で振り返ります。1998年は武豊騎手がスペシャルウィークで初めてダービーを制覇しました。

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<ダービー>◇1998年6月7日=東京◇G1◇芝2400メートル◇4歳◇出走18頭

 1番人気スペシャルウィーク(牡、栗東・白井)が直線で豪快に抜け出し、2着に5馬身差をつけて4歳NO・1に輝いた。

 皐月賞3着の雪辱を果たした武豊騎手(29)は悲願の初優勝。父邦彦師(59)に続くダービー騎手となり、史上二人目の8大競走制覇も達成。皐月賞2着のキングヘイロー(牡、栗東・坂口正大)は逃げて失速し14着惨敗、皐月賞馬セイウンスカイは4着で3強が明暗を分けた。2着には伏兵ボールドエンペラーが入り、馬連は万馬券となった。

 これで夢が実る。ダービー制覇だ。大観衆が待ち受ける直線入り口で、武豊は勝利を確信していた。しびれるような手ごたえが、スペシャルウィークの手綱越しに伝わってくる。皐月賞で苦杯をなめたセイウンスカイとの3馬身差は、もはや問題ではない。「直線はどこを抜け出すか、それだけを考えていた」。はやる気持ちを抑え、じっと仕掛けのタイミングをうかがった。

 坂下で前を走るエスパシオとダイワスペリアーの間が一瞬あく。「よし、行くぞ」。左ステッキ一発が合図だった。セイウンスカイをかわすと、あとは独走。2着ボールドエンペラーに5馬身差をつけゴールへ飛び込むと、右こぶしを2回振りおろす派手なガッツポーズで喜びを爆発させた。「子供のころからの夢でした。ホント叫びたいぐらいです」と、クールなユタカが珍しくホオを紅潮させた。

 史上3組目の父子制覇。父邦彦師がダービー制覇したのは、今から26年前の1972年(昭47)ロングエース。ユタカが3歳の時だ。「おぼろげだが覚えています」。幼少のころから偉大な父の背中を見て育ち、ジョッキーを志しただけに、ダービーを勝つことは父に追いつくことでもあった。「騎手としてダービージョッキーは一番のあこがれです。父のダービーを見て、いつか僕も勝ちたいと思っていた」と実感をこめる。

 皐月賞で3着に敗れた後、「負けたから余計に巻き返したい」と周囲に話し、自らプレッシャーをかけてきた。オレの馬が一番強い。絶対勝つんだ、と暗示もかけた。また、2年前の教訓も生きている。1番人気のダンスインザダークで、直線先頭に立ったところをフサイチコンコルドに差されている。同じミスは繰り返さない。この日はスペシャルの力を信じ、ギリギリまで追い出しを我慢した。

 これで保田隆芳元調教師に次ぐ、8大競走制覇の偉業も達成した。「ダービーだけは、特別な意識がありましたからね。スペシャルウィークと巡り会えたことがラッキーでした。成し遂げたという感じです」。今後は日本だけでなく、海外クラシック制覇の期待もかかる。「世界のユタカ」の夢は、この1勝でさらに大きく広がった。

※記録と表記は当時のもの

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