<2016年11月4日付日刊スポーツ紙面掲載>

 川崎で行われたJBC競走は、盛大な盛り上がりを見せて幕を閉じた。ただ、競馬は今日もやっている。南関東競馬といえば的場文男騎手(60)を忘れてはならない。リュウグウノツカイで挑んだJBCレディスCは11着に敗れたが、この日までに積み上げた勝ち星は6930勝。還暦を迎えた今もなお、第一線で活躍を続ける。

 騎手の道を歩み始めて43年、長きにわたって南関東競馬をリードしてきた。常々「次は7000勝っていう目標があるから頑張れる」と話すように、目標こそがパワーの源。南関担当になって1年ほどの私にも、それが強く伝わってくる。ただ、勝負の世界で戦い続けているからには目標以外の何かがあるはず。それを知りたかった。

 なにしろ「帝王」の異名を取る人物だ。恐る恐る取材をお願いすると、忙しい合間を縫って時間をつくってくれた。「結果が出なくなったらもうやめなきゃならないけど、まだ結果が出てるからね」。表情は穏やかで、自信に満ちていた。

 話題が騎乗論になると、口調は熱を帯びる。「馬乗りは締める力がないと駄目。締めるのはここ。馬と接触してる10センチぐらい」。そう言って指をさしたのは、くるぶしのあたり。「例えば運動会でわが子をおんぶして競走するとして、上でぶらぶらしてたら走りづらいでしょ。それこそテープでガチっと縛り付けられるとしたら、その方が走りやすい」。くるぶしを締めて乗ることが、テープの役割を果たすという。「そうすると55キロの馬を55キロで乗れる」。締める力がないと、55キロは60キロになる。「みんなが簡単に言う『あたりがいい』ってのは、俺に言わせれば『締まっている』ってこと。これが騎手の技術」。重量以上の負担をかけない秘訣(ひけつ)だ。

 たこ焼きのように腫れ上がったくるぶしが、締めて乗ってきた証しだ。代名詞ともいえる豪快なアクションに応えて馬が伸びてくるのも、負担をかけない道中があってこそ。馬を走らせたことのない私にも帝王の秘密が少し分かったような気がした。7000勝がますます楽しみになった。

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