<G1プレーバック:2013年ジャパンC>

 プレーバック日刊スポーツ! 過去のジャパンCを紙面で振り返ります。2013年はジェンティルドンナがレース史上初の連覇を飾りました。

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<ジャパンC>◇2013年11月24日=東京◇G1◇芝2400メートル◇3歳上◇出走17頭

 1番人気のジェンティルドンナ(牝4、石坂)が鼻差の激戦を制し、レース史上初の連覇を飾った。初コンビを組んだライアン・ムーア騎手(30=英国)が巧みな騎乗でパートナーをエスコートし、栄光をつかみ取った。勝利にも笑顔ひとつ見せない姿は、まさに仕事人。2着は7番人気の3歳牝馬デニムアンドルビー(牝3、角居)が入り、2番人気ゴールドシップ(牡4、須貝)は15着に惨敗した。

 ムーアは願った。馬上で念じた。「粘れ!」。押し切りを狙ったジェンティルドンナに、外からデニムアンドルビーが襲いかかった。内と外。2頭の牝馬が横一線に並ぶ。連覇か? 新星誕生か? 約24センチの鼻差を制したのは、昨年の覇者。「ゴールの瞬間は勝ったと思った。でも、過去の教訓から油断はしなかった」。写真判定の末、電光掲示板に浮かんだのは「7」の数字。33回目にして、連覇は史上初の快挙だ。

 世界トップクラスの技量を、存分に見せつけた。石坂師から受けた「人馬でリラックスして」の指示を守り、スムーズに馬を導くことだけを考えた。1000メートル通過は62秒4。未勝利並みのスローペースにも動じない。向正面でハミを取りかけると、巧みに馬と馬の間に押し込んだ。勝負どころでは馬の気持ちを最優先し、早めのゴーサインも出した。あめとムチを織り交ぜた好騎乗。ノーザンファームの吉田勝己代表も「完璧だった」と絶賛だった。

 大一番を前にしての乗り替わり。石坂師は「勝負の世界ですからね。天皇賞の後、オーナーと協議をして決めました」と内幕を明かす。並の人間なら重圧に押しつぶされる状況下だが、世界を股に掛けて活躍する男には縁がない。騎乗依頼はブリーダーズCのために滞在中の、米国で受けた。日本からの電話がかかってきたのは午前3時。「うれしいとかよりも、早く寝たいと思った」。この太い神経がなければ、世界のトップではいられない。

 歓喜の渦巻く検量室前でも、顔色ひとつ変えなかった。唯一、喜びを表現したのは右手を掲げた小さな敬礼ポーズ。これとて普段のレース後と変わりない。共同会見でも神妙な表情のまま「凱旋門賞はかなり厳しいし、アスコット(キングジョージ)は少しましだろうけど、きつい2400メートルになる」。夢を見る外野の声を冷静に封じた姿は、まさに仕事人だった。

※記録と表記は当時のもの

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