2冠馬が帰ってくる。昨年の皐月賞、ダービーを制したドゥラメンテ(牡4、堀)が骨折による休養を経て、今週の中山記念(G2、芝1800メートル、28日)で戦列に復帰する。秋の凱旋門賞挑戦への指針が決まる、4歳初戦だ。また、菊花賞2着馬リアルスティール(牡4、矢作)にとってはドバイ壮行戦。結果も内容も問われる一戦を前に、両馬の馬主であるサンデーレーシングの吉田俊介代表(41)に聞いた。

 -ドゥラメンテの2冠達成おめでとうございました。

 吉田代表 ありがとうございます。この血統はこれまで牝馬でしか結果が出せなくて、牡馬クラシックを勝てたことがまずうれしい。(曽祖母の)ダイナカールは僕が小学生のときに現役だった馬。昔から大事にしている血統で、牧場にはお墓まである。(近親の)ルーラーシップも種牡馬になったけど、この血が広まっていくのかと思った。

 -あらためてダービーを振り返って

 吉田代表 強い馬がこういう競馬をしたら勝つだろうな、という内容。横綱相撲だったね。あの馬を負かしにいく馬が後ろから行って勝てるのか、という競馬だった。あれを見たら、海外でもいい勝負になると感じた。

 -その後、骨折。復帰への経緯は

 吉田代表 ダービーが終わり、凱旋門賞に行くかどうかで骨折がわかって。そこで手術をするから今年はやめましょう、ということになった。程度としては重いものではなく、経過としても順調。慎重に立ち上げていった。もともとのプランが中山記念。昨年の秋の復帰は目指さなかった。

 -今年は海外挑戦を見据えた1年になる

 吉田代表 昨年も皐月賞のすぐ後に凱旋門賞の登録をした。皐月賞で海外を意識し、ダービーで確信した。能力的には通用すると。3歳の時点では重量も軽いし、そもそも菊花賞は考えていなかった。ただ、難しいのは輸送が長いのと検疫期間がある。知らない場所で過ごすわけなので、そのあたりが難しいですよね。

 -海外遠征は預託先の堀厩舎もノウハウがある

 吉田代表 今すごく成績を残している厩舎ですから。10年も調教師をされている中で、培ってきたものが数字に表れている。馬が乗り運動をしているときも、常に騎乗者と話していたり。内面的なものも含めて馬をよく見ている。育成牧場に求めるものも厳しくて、おかげでこちらも勉強になった。大きな共通の目標は今年の凱旋門賞。そこは変わらない。どう詰めていくかの選択肢にドバイもある。行くとしたらシーマC。国内なら宝塚記念も視野に入るだろうし。堀先生も、いい状態で馬をフランスへ連れて行くためのプランを考えている。

 -凱旋門賞は悲願

 吉田代表 日本馬が勝つのはもう近いのでは。(05年に)アイポッパーがメルボルンCに挑戦する頃から、長距離は日本の馬が強いと常々言っている。オルフェーヴルが4歳のときはほぼ勝ちかけたからね。「あー、本当に勝っちゃったよ。インタビューで何を話せばいいんだろう」みたいな。そこから放心状態で見る(優勝馬の関係者が乗る)馬車はつらかった。

 -今年はどうか

 吉田代表 ドゥラメンテには勝つ力があると思っている。オルフェ級かどうか、そこは他の世代と走っていないからわからないけど。でも、その他にブエナビスタ、ジェンティルドンナもいたけど、ドゥラメンテだって相当な器。あの馬たちと同じくらいだと思っている。もし、今年勝ったらどうなんだろう? 引退はしないだろうね。凱旋門賞を取ったらジャパンCも勝ちたくなるし、1回勝ったらまた勝ちたくなる。

 -期待度はかなり高い

 吉田代表 やっぱり行かないと勝てないですからね。1歳のときからこの馬は普通じゃないものがあった。走る馬はある時期に一気に良くなることがあるけど、この馬は最初からすごかった。1歳の時は少しひょろひょろした感じだったけど、わりと脚長でね。調教、放牧を繰り返して変わっていった。血統的なものもあるけど、うまく成長したね。

 -伸びしろは大きい

 吉田代表 この血統は古馬になってから良くなるイメージがある。エアグルーヴも、アドマイヤグルーヴも3歳時から走っていたけど、古馬になってよりしっかりした。ドゥラメンテにもそういうものを感じる。今は体がひと回り大きくなって、大人になった。今回は馬体に少し余裕を持たせて堀厩舎へ送り出した。

 -そのために、今年初戦の中山記念は落とせない

 吉田代表 詰めの調整は厩舎に任せるけど、送り出すまでの過程は順調にこれた。力を出せる態勢は整いつつある。去年も故障がなければそうだったんだろうけど、ドゥラメンテが今年の競馬の中心になると思う。それだけ皐月賞とダービーはすごいパフォーマンスだった。完成形は競馬でしか見せられないし、自分も早く見てみたい。夢を見させてくれる馬。長い休養を差し引いても、いい勝ち方をしてくれればと思う。【取材・構成=松田直樹、平本果那】

 ◆吉田俊介(よしだ・しゅんすけ) 1974年(昭49)4月13日、北海道生まれ。慶大卒業後、ノーザンファームに入社。ノーザンファーム空港牧場の場長をへて、現在はノーザンファーム副代表。(有)サンデーレーシング代表も兼任する。父はノーザンファーム代表の吉田勝己氏。

<ドゥラメンテの歩み>

 15年5月31日 ダービーで皐月賞に続き2冠制覇。

 6月27日 両前橈骨(とうこつ)遠位端骨折が判明。

 6月29日 骨片摘出手術に成功。

 8月7日 ノーザンF早来で常歩(なみあし)運動を開始。

 9月28日 角馬場での乗り込み再開。

 11月23日 ノーザンF代表の吉田勝己氏が16年の凱旋門賞挑戦を明言。

 12月13日 中山記念での復帰が決定。

 16年1月19日 美浦トレセンに帰厩。

 2月17日 1週前追い切りを消化。

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