<高松宮記念>◇29日=中京◇G1◇芝1200メートル◇4歳上◇出走18頭

 香港のスプリント王は強かった。エアロヴェロシティ(せん7)が、ザカリー・パートン騎手(32)の好騎乗に導かれ、混戦G1を勝った。雨で緩んだ馬場の外に進路をとり、ハクサンムーン、ミッキーアイルとの激しいたたき合いを制した。12年ぶりに高松宮記念に参戦した外国馬の優勝は初めて。ポール・オサリバン調教師(55)は、89年ジャパンCをホーリックスで制したデイヴ・オサリバン師(81)との史上初、外国人調教師による親子JRA・G1勝利を飾った。

 鞍上の激しいアクションに応え、鹿毛の馬体が2頭の間を割って出た。ゴール前、3頭の激しいたたき合いを制したのは、香港の短距離王だった。P・オサリバン師は戦前、「大きな差で勝つ馬ではない。この馬の1番の特徴は、並ばれて絶対に負けないところ」と誇らしげに話していた。その勝負根性を見せつけた。

 レース前に激しく降った雨が、展開に影響した。直線は荒れた内を避け、ほとんどの馬が外に進路をとった。最後の競り合いで、パートン騎手が選択したのはハクサンムーンとミッキーアイルの間。「直線に入ったところで馬場も荒れていたので、1度バランスを崩した。340メートル地点で苦しんでいるところがあって、私たちのレースはここで終わりかなと思ったけど、坂を上りきったところで再びギアが入った。勝とうとする馬の信念を感じた」。闘争心を信じた騎乗だった。

 この日の馬体重は、前走からマイナス16キロ。ぎりぎりの仕上げを施したP・オサリバン師はヨン・オーナーやパートン騎手と抱き合って喜んだ。「カイバは食べていたし状態は悪くなかった。この馬は勇気と粘り強さがある。本当にうれしい」。89年ジャパンCをホーリックスで勝った父とJRA史上初の快挙も刻んだ。「(89年JCから)間があったので、今聞かれて初めて気が付いた。今夜(優勝を)報告します」と笑顔で言った。

 「飛行機のように速くなるように」という思いを込めてつけられた馬名の通り、昨年の香港スプリントに次いで2つ目のスプリントG1タイトルを獲得した。パートン騎手は「スプリンターズSにも帰ってきたいとオーナーが言っている。また良いレースをお見せしたい」と再会を誓った。日本の短距離馬に、新たな強敵が出現した。【辻敦子】

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