日本では規則で不可能ですが、欧米では種牡馬になった牡馬、繁殖に上がった牝馬が再び競馬場に戻ってくることが可能です。ディープインパクトの母ウインドインハーヘアが子供を身ごもって臨んだドイツのG1アラルポカルで牡馬を破ったことは広く知られています。

 昨年暮れに現役に復帰して約3年8カ月ぶりの勝ち星を挙げたトーストオブニューヨーク(牡7、父ザウェイユーアー)も父の役目を離れて競走馬として再出発した1頭です。英国のJ・オズボーン厩舎に所属する同馬は、今から4年前の14年3月にドバイで行われたUAEダービー(G2)に優勝。同年11月のG1ブリーダーズCクラシック(ダート2000メートル)でバイエルンの鼻差2着し、本命馬カリフォルニアクロームに先着した実力馬です。

 BCで好走したトーストオブニューヨークは即戦力を探していたカタールのジョアン殿下に引き抜かれてG1ドバイワールドCを目指しましたが、遠征を目前にして屈腱炎(けんえん)を発症。その後、カムバックに向けた努力が続けられましたが、競馬場に戻ることなく16年春からジョアン殿下の持つカタールのアルシャカブステーブルに運ばれて種牡馬になりました。

 現在のカタールの競馬は純血アラブが過半数を占めてサラブレッドの繁殖牝馬の数は不足気味。現地報道によると一昨年の交配によって生まれたトーストオブニューヨークの子供は10頭前後と伝えられています。種牡馬として不遇な状況にあったトーストオブニューヨークに持ち上がったのが現役復帰プランでした。

 昨年3月には復活に向けてのプランが立てられて馬体を絞り、1130日ぶりの実戦となった昨年12月6日の英国リングフィールド競馬場の一般戦(オールウエザー2000メートル)でL・デットーリ騎手を背に2着馬に1馬身差をつけて優勝。格の違いをアピールしました。

 これで自信を得た陣営は今月27日に米国フロリダで行われる「世界最高賞金競走」のG1ペガサスワールドC(ガルフストリームパーク、ダート1800メートル)に駒を進めることを表明しています。

 日本ではロゴタイプが一昨年のG1安田記念で約3年2カ月ぶりの勝利をかなえましたが、異色のキャリアを背景とするトーストオブニューヨークのこれからに注目が集まっています。(ターフライター)【奥野庸介】(ニッカンスポーツ・コム/極ウマコラム「ワールドホースレーシング」)