パドックの思い出/坂井コラム

 皆様いかがお過ごしですか? 今回はいよいよダービーですね。やっぱり興奮しますねえー。G1は全部興奮するけど(笑い)

 私がお世話になっていた昆貢先生は芝(日本ダービー)もダート(ジャパンダートダービー)も「ダービー」制覇をされてはるんですよね。私の担当馬ではなかったですが、自分の何馬房か隣にG1馬がいると思うと「いつか私も担当馬と、あの場所に行きたい!」というモチベーションで毎日仕事をしてましたね。私も人生で2回、G1レースに出走させてもらったことがありますが、パドックは興奮しましたね。お客さんは沢山いはるし、パドックの中には関係者がいはるし。「G1の舞台にいるんやー。夢にまで見た世界に立ってる」って感動したのを覚えています。

 ということで、前回までの話とはガラッと変わりますが、今回はパドックの思い出をお話ししたいと思います(G1の話どこいってん、って言われそう)

 みなさんの中にはパドックで馬をみながら「○○番の馬、キレイ!」とか「○○騎手!頼むでー!」とか言いながら馬券を検討してはる人もいはるんではないでしょうか?実は厩務員さんやお馬さんにも、そのような声援は聞こえていますし、みなさんの事も見えているんですよ。

 私が現役のころ、京都競馬場のパドックで娘ちゃん(私は担当馬にニックネームをつけたり、こう呼んだりしてました。ちなみに牡馬は息子ちゃん)と歩いていると「あれ男か? 男やろ?」という声が聞こえてきました。(牡馬か牝馬か知りたいんやな)と思って、その競馬ファンのおじ様の前を通り過ぎました。でもおじ様は私が通るたび何回も「男か?」といわはるんです。しまいには、隣にいるアベックにまで聞いてはりましたね。(アベックは「女性ですよ!」と言うてくれたはりましたけどね。(ははーん、これはウチのことやな)と気がつきました。「いやいや、小さい頃からよく間違えられてたけども、、、ていうか走るんウチちゃうやん。どっちでもえーやん」と大きな声でお返事差し上げたかったのですが、私たち厩務員さんは「公正確保」というルールがあるのでお返事できないんですね。(ごめんね、オジサマ)結局、おじ様に納得していただけたかはわからずですが(笑い)。それにしても、いったいなんで知りたかったんでしょうね。

 そういえば昨年の札幌でも珍しいお声がけがありましたね。私は先輩のお手伝いで2人びきをしていると、これまたパドックでファンのおじ様が、先輩の馬に乗ってはる騎手さんに「○○騎手!! このレースは××騎手が逃げるから、逃げるなよ!」とお声がけがありました。(××さんから相当買うてはるんやろうなー)と思っていたら、何頭か後ろにいはった××騎手に「××!! 俺がちゃんと〇〇に逃げるな!っていうといたったからな!」と(関西弁ではなかった気はするけど)。「言うといたった」って、おとーちゃんかいなと、ついつい心で突っ込みつつ、レースへむかいました。結局レースは先輩のお馬さんとジョッキーさんが素晴らしいスタートを切り、逃げはりました。(その馬は元から逃げて味のある馬なので、そうなりますよね)レースを観戦しながら、私は(きっと、さっきのおじ様は「何で俺の指示通り乗らんのやー!」言うて、怒ってはるかな。でも、こっちも勝負やからごめんやで、と思うてました。

 こんな風に、皆さんのお声がけって聞こえてるんです。私たち厩務員さんにとって(多分これはウチだけちゃうと思いますけど)パドックって自慢の息子ちゃん、娘ちゃんを皆さんに見てもらえる場所なんです。だから「綺麗やねー!」とか「がんばれー!」というお声がけはうれしいですね。それとは反対に悲しくなる様なお声がけは、本当に心に刺さってつらいです。特に命にかかわるような。もちろん、皆さんが「めっちゃ大切なお金」をかけてはるのは、わかります。ですが、騎手さんやお馬さん、このパドックやレースにたどり着くまで、厩務員さんをはじめとする関係者は「命の危険」とも背中合わせで走ってはりますので、ほんの少し、あたたかくパドックをみてもらえるといいなーって私は思います。

 あら、最後は真面目になってしまいましたね。今回はこの辺にしましょう。

 それでは皆様ごきげんよう。

信頼の証し? 愛馬から手荒いイジリを受ける筆者
信頼の証し? 愛馬から手荒いイジリを受ける筆者