収穫「中割り」メラグラーナ/スプリンターズS

 秋のG1開幕戦スプリンターズS(G1、芝1200メートル、10月1日=中山)はロスの少ない競馬をした馬が勝つ。水島晴之記者が独自の視点で分析する「G1前哨戦その一瞬」で注目したのは、セントウルS4着のメラグラーナ(牝5、池添学)だ。春はもまれ弱い印象があったが、狭いスペースをこじ開けて最速上がりをマークした内容に、本番への光が見えた。

心配は天気だけ メラグラーナ

<セントウルS>◇9月10日=阪神◇G2◇芝1200メートル◇3歳上◇出走14頭

セントウルSで猛然と追い込み4着だったメラグラーナ(右から2頭目)
セントウルSで猛然と追い込み4着だったメラグラーナ(右から2頭目)

 セントウルSは1分7秒5の高速決着だった。逃げたフィドゥーシアのラップタイムは12秒2―10秒8―10秒8―11秒1―11秒1―11秒5。直線の坂を駆け上がるまで、まったく緩みがなかった。こうなると少しの不利、コースロスが致命傷になる。100キロで走行している車が、70キロまで減速して、再び100キロまでスピードを上げるのに時間がかかるのと同じ。長距離では挽回できても、短距離では大きく着順を下げる原因になる。

 この点を踏まえてVTRを見直すと、3番手の内からロスなく抜け出したファインニードルより、4着メラグラーナに食指が動く。池添学師が「包まれたり外からかぶされると駄目」という気性を考えて、道中は後方4番手のもまれない位置につけた。しかし、4角ではスノードラゴン、ダンスディレクターに外から押さえられ、やむを得ず馬群の中へ。思い描いた競馬ではなかった。

 さらに、直線はアドマイヤゴッド、ミッキーラブソングが壁になって、追い出しを待たされるロス。ゴール前は狭いスペースに突っ込む形になったが、ひるまずに伸びて2着ラインミーティアとは首+頭差。上がりは最速32秒4の脚を使った。春の高松宮記念は馬場(やや重)もあったが、直線で馬の間を割れず惨敗。精神面の成長が課題とされたが、CBC賞、セントウルSの敗戦を糧に、課題を克服したとみていい。

 スプリンターズSも混戦は必至。少しでもちゅうちょすれば勝ちはない。本番前に「中割り」で結果を出せたのは大きい。

 ◆その他の評価◆

 ファインニードル1着 ポジション、コース取り、仕掛けのタイミングとも完璧だった。あれ以上は疑問。

 ラインミーティア2着 勝ち馬の後ろで進路を切り替えるロス。スムーズならもっと際どかった。力つけており中山でも侮れない。

 ダンスディレクター3着 外枠、大外を回ったことを考えれば価値は大。スタート五分なら差はない。

 スノードラゴン8着 やはり時計に限界がある。道悪になっての大穴候補。

 フィドゥーシア9着 ハナを主張したが、かわされたらやめていた。スピードは通用も気性がネック。

ハイペース粘り4着コウセイ巻き返す

<函館スプリントS>◇6月18日=函館◇G3◇芝1200メートル◇3歳上◇出走13頭

レコードタイムで函館スプリントSを制したジューヌエコール(左)(撮影・村野早祐)
レコードタイムで函館スプリントSを制したジューヌエコール(左)(撮影・村野早祐)

 函館スプリントS 函館開幕週は5度もレコードが更新された。ジューヌエコールの勝ち時計も1分6秒8。前半3ハロン32秒2のハイペースで差し―差しの決着になった。そんな状況の中、2番手から4着に粘ったセイウンコウセイは凡走ではなく、よく走ったというべきだろう。

 逃げたシュウジは10着に敗れ、3番手クリスマスは最下位の13着、4番手のブランボヌールも9着と軒並み馬群に沈んだ。上原師は「時計の速い決着にも対応できたのは収穫」と評価する。晴雨兼用のG1馬。巻き返しが怖い。

4連勝Vダイアナ坂ある中山疑問符

<北九州記念>◇8月20日=小倉◇G3◇芝1200メートル◇3歳上◇出走18頭

北九州記念を制したダイアナヘイロー。右端は2着ナリタスターワン(撮影・栗木一考)
北九州記念を制したダイアナヘイロー。右端は2着ナリタスターワン(撮影・栗木一考)

 北九州記念 ダイアナヘイローが連勝を4に伸ばした。逃げたアクティブミノルの前半32秒8の速い流れに馬なりでついて行くスピードはG1でも通用する。後半も34秒6でまとめたように強い内容を見せたが、1600万クラス、重賞はともに平たんコースの小倉だった。今回は坂のある中山で、速さとタフさが求められる。当然マークもきつくなる。同じポジションで競馬するセイウンコウセイあたりと、競り合いながら粘り込めるか、となると疑問符が付いてくる。