サトノダイヤモンド 本番へ不安なし/菊花賞

 ベテラン水島晴之記者が菊花賞の出走予定馬を前哨戦の内容から分析します。今回の対象は神戸新聞杯、セントライト記念、兵庫特別と札幌日刊スポーツ杯です。前哨戦の着順だけではない、プロの視点をチェックして下さい。

サトノダイヤモンド 着差以上に強い競馬

<神戸新聞杯>◇9月25日=阪神◇G2◇芝2400メートル◇3歳◇出走15頭

ゴール前、ミッキーロケットとの叩き合いを制したサトノダイヤモンド(手前)(撮影・渦原淳)
ゴール前、ミッキーロケットとの叩き合いを制したサトノダイヤモンド(手前)(撮影・渦原淳)

 単勝1・2倍のサトノダイヤモンドは、首差の辛勝だった。内からミッキーロケットに迫られた内容には正直「?」がつくが、前哨戦の仕上げを考えれば合格点が与えられる。中間は本番を見据えて、6ハロンの追い切りは2本。馬体重こそダービーと変わらずの500キロでも、中身は8分からせいぜい9分。並ばれてもうひと伸びするあたりが底力。着差以上に強い競馬で、本番へ不安なしとみたい。

 大本命馬を追い詰めたミッキーロケットは、上がり最速となる34秒0の脚を使った。中距離の切れ味が武器で3000メートルへの距離延長がどうかだが、立ち回りは上手。内々をロスなく運べば克服も可能だ。3着レッドエルディストは、本番へ脚を計る競馬をした。瞬発力勝負を挑んで上位2頭には離されたが、こちらはスタミナ型の追い込み馬。京都の下り坂を味方にできるタイプで逆転がある。

 ゴール前の脚が目立った4着カフジプリンスは、勝負どころでの手応え以上によく伸びた。典型的なステイヤーで、消耗戦になれば出番がありそう。5着エアスピネルは後方からしまいに懸けたが、手応えほどはじけなかった。この敗戦を武豊騎手がどうみたかで乗り方は変わってくる。本来の先行策か、それとも追い込みか。名手の手綱さばきに注目だ。

<レース後コメント>

 1着サトノダイヤモンド(ルメール騎手) 休み明けで少し掛かったし、早めに先頭に立って止まりかけたけど、内から馬が来たら反応が良かった。ゴールまでファイトしていい経験。

 2着ミッキーロケット(和田騎手) 並んだら相手のエンジンが違った。本番で内枠でも引けばチャンス。

 3着レッドエルディスト(四位騎手) ひと夏越して馬が良くなった。距離が延びても良さそうだし、楽しみだ。

 4着カフジプリンス(矢作師) 最後はものすごい脚を使った。距離は延びるほどいいし、菊花賞に出走させるつもりでやっていく。

 5着エアスピネル(武豊騎手) レース前は今までで一番、落ち着いていた。初めてこの馬らしい脚が使えなかった。本番で巻き返したい。

 7着アグネスフォルテ(松山騎手) 少し力むところがあったので、馬の後ろに入れたかった。

 8着イモータル(浜中騎手) イレ込みがきつかったね。馬はいい。精神面の成長があれば。

 10着ジョルジュサンク(幸騎手) 最後の最後で脚色が一緒になった。

違い見せつけた ディーマジェスティ

<セントライト記念>◇9月18日=中山◇G2◇芝2200メートル◇3歳◇出走12頭

直線抜け出したディーマジェスティ(左から2頭目)がセントライト記念を制した(撮影・酒井清司)
直線抜け出したディーマジェスティ(左から2頭目)がセントライト記念を制した(撮影・酒井清司)

 ディーマジェスティが力の違いを見せつけた。蛯名騎手は不利のないように馬群の外々を回る。ラスト600メートルからマクリ気味にスパート。直線を向いて早めに先頭に並ぶと、追い出しを待つ余裕があった。プロディガルサンの強襲をしっかり受け止めてから、再度突き放した。内を回った2着馬と通ったコースを考えれば首差以上の楽勝。折り合いにも問題なく、万全の態勢で本番を迎える。

 3着プロディガルサンはディーマジェスティに動きを封じられた。向正面で外からブロックされ、位置取りが逆転。4角でも後ろから外を回る形に。皐月賞馬に対して、あれでは勝負にならない。国枝師は「マサヨシ(蛯名騎手)にうまく乗られた」と語ったが、それで0秒2差なら「メドは立った」というのもうなずける。乗り方次第でチャンスはある。

 4着のネイチャーレットは、1戦ごとに力を付けている。4角最後方から馬群を縫うように抜けてきた脚が光った。まだ成長途上で本当に良くなるのは来年だろうが、相手なりに走る勝負根性は買える。7着マウントロブソンは、スタートで他馬と接触してハミをかんだのが痛い。18キロ増の数字が示すように太めで、たたいた上積みは見込める。

<レース後コメント>

 1着ディーマジェスティ(蛯名騎手) できるだけ馬にダメージがないように外を回ったが、馬も耐えてくれた。とにかく順調に本番を迎えられたら。

 3着プロディガルサン(田辺騎手) 今日はポジションよりリズムを大事に乗った。勝った馬にうまくやられたが頑張っている。

 4着ネイチャーレット(野中騎手) 定量戦でこのメンバー相手に、よく頑張ってくれた。もう少しスムーズに加速できたら、権利が取れていたかも。

 7着マウントロブソン(川田騎手) ゲートを出て他馬に接触。終始ハミをかみながらで、苦しい競馬になってしまいました。

ウムブルフ 時計かかれば台頭も

札幌日刊スポーツ杯を圧勝したウムブルフ(撮影・村野早祐)
札幌日刊スポーツ杯を圧勝したウムブルフ(撮影・村野早祐)

<その他のレース>

【兵庫特別】

 シュペルミエールが、息の長い末脚を繰り出して差し切った。前半は先行集団から離れた中団待機。ラスト800メートルから前へ接近するも、勝負どころの手応えはあまり良くない。最後も2着馬にしぶとく粘られたが、ゴール前できっちりかわした。スパッと切れる脚はないが、どこまでも伸びていく。2400メートルでも短い印象で、距離延長はプラスに出そうだ。

<レース後コメント>

 1着シュペルミエール(北村宏騎手) 内の馬もしぶとかったが、根気よく伸びてくれた。

【札幌日刊スポーツ杯】

 ウムブルフは前半こそ少し掛かっていたが、2周目向正面では外からマクられても我慢できた。このあたりが精神面の成長か。3角から大外をマクって、直線は2着に5馬身差の完勝。湿りがちの(重)馬場も合っていたが、スタミナは豊富。時計がかかれば台頭の余地もある。

<レース後コメント>

 1着ウムブルフ(モレイラ騎手) スタートが良かったし、すぐに折り合いもついた。競馬の流れも向いたが、最後までしっかり脚を使ってくれた。距離は延びても大丈夫だ。