牝馬69年ぶりVなるかファンディーナ/皐月賞

 ベテラン水島晴之記者が皐月賞の出走予定馬を前哨戦の内容から分析します。今回の対象はフラワーC、弥生賞、共同通信杯、スプリングSです。前哨戦の着順だけではない、プロの視点をチェックして下さい。

追うと沈む重心 ファンディーナ

<フラワーC>◇3月20日=中山◇G3◇芝1800メートル◇3歳牝◇出走13頭

2着シーズララバイに5馬身差をつけてゴールするファンディーナ(撮影・柴田隆二)
2着シーズララバイに5馬身差をつけてゴールするファンディーナ(撮影・柴田隆二)

 ファンディーナが馬なりで2着シーズララバイを5馬身突き放した。勝ち時計の1分48秒7も前日のスプリングSより0秒3遅いだけ。規格外の強さを岩田騎手は「完歩数が違う」と表現した。ならば、ラスト1ハロンの完歩を数えてみる。VTRによる目算で26完歩。多少の誤差はあるが、1完歩で約7・7メートル。いっぱいに追っていれば、さらにフットワークは伸びていた。

 実は以前にも完歩を検証したことがある。同馬の父で05年弥生賞を勝ったディープインパクト。結果は同じ26完歩だった。普通は27~28完歩と言われる。少なければそれだけ1完歩で距離を稼げるし、ピッチが同じなら確実に前へ出る。あるジョッキーは「あれだけストライドが伸びればワンペースになりがちだが、あの馬はピッチも上がるからすごい」と証言した。

 それを証明したのが、2走前のつばき賞。追いだすと重心が沈み、四肢の運びが速くなる。4角で5馬身前を行くタガノアスワドを逆転。最後は馬なりで突き放した。上がり3ハロンは33秒0。「怪物の娘」も飛んだ。大跳びだけに窮屈な馬混みは避け、外めをリズム良く走れば牡馬相手でも通用する。

 ◆VTR 逃げるドロウアカードの2番手につけたファンディーナは、岩田騎手が手綱を緩めただけで一気に加速。直線は馬なりのまま後続を5馬身突き放した。3角から大外をまくったシーズララバイが2着に入ったが、勝ち馬の次元が違いすぎた。


タフな流れが心配 カデナ

<弥生賞>◇3月5日=中山◇G2◇芝2000メートル◇3歳◇出走12頭◇3着馬までに皐月賞優先出走権

逃げたマイスタイル(左)を、強烈な末脚でゴール前捕らえたカデナが弥生賞を制した(撮影・酒井清司)
逃げたマイスタイル(左)を、強烈な末脚でゴール前捕らえたカデナが弥生賞を制した(撮影・酒井清司)

 カデナの勝ち時計2分3秒2は、同日の古馬500万マイネルクラフト(2分0秒4)より2秒8も遅い。これをどう見るか。もちろん、流れの違いもある。時計だけで判断するのは早計だが、気になるのは前哨戦を含めてタフな競馬をしてない点だ。

 デビューから5戦連続で最速上がりをマークしたように、瞬発力は世代屈指といえる。しかし、ここ3戦の前半1000メートル通過タイムを見ると、百日草特別が63秒8、京都2歳Sが62秒2、弥生賞が63秒2と超スローばかり。平均以上のペースで脚がたまるか不安はある。

 直線で少し外へもたれたように、急坂もこたえていた。逃げた2着マイスタイルをかわしたのはゴール前の平たん部分。京都2歳Sで見せた上がり33秒6の切れは影を潜めた。本番は荒れた芝、タフな流れと状況が一変する。潜在能力は高いが克服する課題も多い。

 ◆VTR 後方待機のカデナは、4角から大外を進出。早めにまくったコマノインパルスを追いかける形で伸び、ゴール前で逃げたマイスタイルをとらえた。上がりは最速34秒6。内を突いて伸びたダンビュライトが3着。ダイワキャグニーは9着に沈んだ。


突出した瞬発力 スワーヴリチャード

<共同通信杯>◇2月12日=東京◇G3◇芝1800メートル◇3歳◇出走11頭

直線抜け出したスワーヴリチャードが共同通信杯を制した(撮影・山崎哲司)
直線抜け出したスワーヴリチャードが共同通信杯を制した(撮影・山崎哲司)

 スワーヴリチャードの瞬発力が際立った。先行3頭がすべて掲示板(5着以内)を確保した前残りの展開。ラスト200メートルは5、6頭が横一線の「よーい、ドン」。このような展開では、あまり上位の着差は開かない。その証拠に2~5着は頭+鼻+頭差で同タイムだった。そんな中、2着エトルディーニュにつけた2馬身半差は突出している。

 馬混みでもひるまない精神力、狭いスペースを抜ける一瞬の脚。そして末脚の持続性。折り合いも完璧だった。四位騎手が「使うごとに競馬を覚えている」と褒めた学習能力の高さも魅力。気負いが目立った新馬当時とは比べものにならないくらい、競馬の運び方が上手になった。中山は初めてだが、馬群をさばく器用さがあれば問題ない。

 ◆VTR タイセイスターリーの逃げ。スワーヴリチャードは中団の内で折り合い、直線は狭いスペースを割って一気に伸びた。横一線の2着争いは2番手追走エトルディーニュが粘り、ムーヴザワールドは3着、エアウィンザーは5着と伸びを欠いた。

 

能力はそん色なし プラチナヴォイス

 <スプリングS>◇3月19日=中山◇G2◇芝1800メートル◇3歳◇出走11頭◇3着までに皐月賞の優先出走権

ゴール前で抜け出しスプリングSを制したウインブライト(手前)(撮影・柴田隆二)
ゴール前で抜け出しスプリングSを制したウインブライト(手前)(撮影・柴田隆二)

 直線で内ラチまで切れ込んだ3着プラチナヴォイスの巻き返しが怖い。1着ウインブライトとは半馬身+半馬身。時計にしてわずか0秒2差。後続の馬に「差された」印象は悪いが、ちょうど加速した時だけに、見た目以上にロスは大きかった。

 競走馬は手前を替えた時に伸びる。右回りの中山ならコーナーを右、直線で左に替えてトップスピードに乗る。人が片足跳びをして疲れたら足を替えるのと同じ。プラチナヴォイスも右→左にスイッチして加速したが、急激にもたれたことで走りを矯正。外へ立て直す動きが、再び右手前に替えてしまった。

 直線の長いコースでは4角を回って2度替える馬も珍しくないが、今回はアクシデントによって思いがけず替わったもので、走りのリズムが乱れ、勢いもそがれた。真っすぐ走っていれば結果は違ったはず。能力は上位2頭と遜色ない。

 ◆VTR 後方を進んだウインブライトが直線でプラチナヴォイスをかわし、内から伸びたアウトライアーズを半馬身退けて重賞初制覇を飾る。1番人気のサトノアレスはスタートでつまずき、4角では大外へ振られるロスがこたえて4着に敗れた。