東京マイルなら侮れない ソウル/ヴィクトリアM

 ヴィクトリアMは流れが勝敗を左右する。水島晴之記者が分析する「G1前哨戦その一瞬」は、阪神牝馬Sで10着に敗れたソウルスターリング(牝4、藤沢和)に注目した。前走は上がり33秒台の瞬発力勝負で切れ負けしたが、東京マイルの高速決着ならオークスを制した底力が生きる。昨秋から4連敗中の「樫の女王」は、まだ終わってはいない。

瞬発力よりタフさ ソウルスターリング

<阪神牝馬S>◇4月7日=阪神◇G2◇芝1600メートル◇4歳上牝◇出走13頭◇

ソウルスターリング勝負レースラップ比較
ソウルスターリング勝負レースラップ比較
阪神牝馬Sでソウルスターリング(右から3頭目)は10着に沈んだが・・・
阪神牝馬Sでソウルスターリング(右から3頭目)は10着に沈んだが・・・

 阪神牝馬Sは前半1000メートル通過が61秒0のスローペースだった。13頭中12頭が上がり33秒台という究極の瞬発力勝負の中、34秒3で10着に敗れたのがソウルスターリングだ。向正面で折り合いを欠き、途中からポジションを上げたものの直線は馬群に沈んだ。この結果をどう捉えるか。結論から言えば参考外。巻き返しはある。

 気負って失速。これが直接の敗因だろうが、スムーズなら勝てたのか、は疑問だ。その理由は過去10戦の上がり3ハロンの時計にある。34~35秒台7回に対して、33秒台はアイビーS=33秒9、チューリップ賞=33秒8の2回だけ。不良馬場の天皇賞・秋を除いた9戦の平均も34秒5と、それほど「切れる」印象はない。

 ルメール騎手が「決め手勝負は良くないのかもしれない」と話したように、スローの「よーい、ドン」では厳しかった。逃げ切ったミスパンテールが33秒8で上がり、追い込み勢は3着リスグラシューが33秒3でも届かない展開。平均に速い脚を使うソウルスターリングには、もっとも合わない流れ。そう考えれば、あの惨敗は説明がつく。

 今回は左回りワンターンの東京マイルに替わる。スタートから3角までの直線距離が長く、コーナーも大きい分、極端にペースが落ちることはない。先週のNHKマイルCも、前半1000メートル58秒0、上がりは34秒8だった。瞬発力より持久力・タフさが求められるコース替わりは、間違いなくプラスに出る。

 昨秋は天皇賞、ジャパンCで一線級牡馬相手に厳しい競馬を強いられた。その精神的なダメージを引きずってないか心配もあるが状態はいい。前半58秒台のハイペースで折り合い、瞬発力型に脚を使わせる形がベスト。流れが変われば、結果も変わる。

脚質転換あるか ソウルスターリング

 ソウルスターリングはオークス勝利後、4戦連続して掲示板を外している。牝馬の不振脱出は困難といわれるが、藤沢和厩舎は06年のダンスインザムードを桜花賞以来、約2年ぶりの復活Vに導いた。そのきっかけとなったのが、思い切った「脚質転換」だ。

 04年暮れの香港カップ13着から5戦中3戦で2桁着順と精彩を欠いたが、05年の府中牝馬Sではそれまでの先行策から一転、どん尻強襲で上がり32秒7の脚を引き出した。結果は8着だったが、これが刺激となり続く天皇賞・秋は13番人気で3着。翌年ヴィクトリアMの鮮やかな勝利へつなげた。

 今回のソウルはどんな戦法に出るのか。逃げか、それとも追い込みか。復活を懸けたルメール騎手の手綱さばきにも注目したい。

早仕掛け2着も地力証明 ドンキ

 阪神牝馬S【S】4角で先頭、2番手のミスパンテール、レッドアヴァンセが1、2着。完全な前残りの競馬だった。内容的には7番手から差してきた3着リスグラシューが優秀。

 福島牝馬S【M】逃げたカワキタエンカを目標に早めに動いたデンコウアンジュはゴール前で末脚が甘くなった。じっくり構えられる東京なら昨年の再現も。

 中山記念【M】大逃げマルターズアポジーの離れた2番手を進んだアエロリットは、前半1000メートル通過60秒前後。平均ラップで連対を確保。勝ち馬にかぶされてからがしぶとかった。

 高松宮記念【H】前半3ハロンは33秒3。レッツゴードンキは中団から内を回って進出。追い出した時の反応が良すぎて、残り400メートルで先頭へ。結果的には早仕掛け。鼻差2着であらためて地力を示した。 【】内はペース