ソウル ジェンティル級/ジャパンC

 ジャパンCは牝馬が怖い。水島晴之記者が独自視点で分析する「G1前哨戦その一瞬」は、天皇賞・秋で底力を見せつけたソウルスターリング(牝3、藤沢和)に注目。4角で接触しながら6着まで盛り返した内容は、オルフェーヴルに競り勝った12年ジェンティルドンナの強さに匹敵する。

メンタル、筋力、体力兼備 ソウルスターリング

<天皇賞・秋>◇10月29日=東京◇G1◇芝2000メートル◇3歳上◇出走18頭◇

12年ジャパンCでオルフェーヴルに競り勝ったジェンティルドンナ(右
12年ジャパンCでオルフェーヴルに競り勝ったジェンティルドンナ(右

 ソウルスターリングはやはり怪物フランケルの娘だ。競馬では「負けて強し」という表現をよく使う。前残りの流れで2着に追い込んだり、逆にハイペースで逃げ粘ったりと、展開面を指して言うことが多い。しかし、この馬の「強し」は、これらとは一線を画す。内面からくる芯の強さだ。

 レースを振り返る。道中は手応え良く、4角まではいい感じで進んだが、直線入り口でギアチェンジしようとした瞬間、外のシャケトラと接触。内ヤマカツエースにも外へ張られ行き場をなくした。いったん10番手までポジションを下げたのも痛いが、並の精神力なら戦意喪失してもおかしくない大きな不利だった。

 内めを抜けてきたキタサンブラックには差をつけられたものの、体勢を立て直すと外→内→外へ進路を変えて盛り返した。キャリアの浅い3歳牝馬とは思えない勝負根性。よほどメンタルがしっかりしているのだろう。ルメール騎手も「スムーズなら3着はあった」と悔しがった。

 そして、もう1つは筋肉の強さだ。2000メートルで2分8秒以上もかかる不良馬場。バランスを崩す馬が多い中、ノメりながらも最後までしっかり走り切った。きれいなフットワークで跳びも大きい。理想は良馬場だが、それでもこなせたのは、強靱(きょうじん)な筋力が体を支えたから。着順以上に中身は濃い。

 藤沢和師は「回復が早かった」と参戦を表明した。メンタル、筋力、そして体力。この3つの強さがあれば、牡馬一線級とも互角にやれる。

◆牝馬とJC◆

 過去10年でのべ5頭が優勝。12年ジェンティルドンナは牝馬3冠を達成して挑戦した。そのほかのウオッカ、ブエナビスタ、ショウナンパンドラも世代トップの実力牝馬。重量の恩恵(3歳牝馬は古馬牡馬と4キロ差)もあり、オークスを史上2番目に速い時計(2分24秒1)で勝ったソウルスターリングなら上位争いが可能だ。

◆古馬撃破へ三度目正直◆

 オークス馬ソウルスターリングが三度目の正直で古馬撃破に挑む。15日に美浦ウッドで古馬(1600万)に1馬身遅れも、しっかり追われて上々。19日にも坂路で4ハロン55秒5―12秒9と動きは軽快だ。秋は毎日王冠(8着)、天皇賞・秋(6着)と古馬の壁に阻まれたが、藤沢和師は「前走は1、2着馬が内を通る中、外を回らされて6着だから内容は悪くない。ダメージもなく順調ですよ」と前を向く。C・デムーロ騎手が最終追い切りに騎乗予定。

強さ光った レイデオロ

<神戸新聞杯>◇9月24日=阪神◇G1◇芝2400メートル◇3歳◇出走14頭◇

 3歳同士とはいえ、レイデオロの強さが光った。スタートを互角に出ると3、4番手の正攻法。直線も余力十分に抜け出した。2着キセキが菊花賞を勝ち、ダービー2着のスワーヴリチャードがアルゼンチン共和国杯を楽勝した比較からも、古馬の壁は感じない。道悪(不良)を走った天皇賞組より、フレッシュな状態で出走できるのもプラスだ。

長い脚収穫 シュヴァル

<京都大賞典>◇10月9日=京都◇G2◇芝2400メートル◇3歳上◇出走15頭

 シュヴァルグランが、新しい一面を見せた。スタートで挟まれて後方からの競馬。2角では後方2番手に置かれた。スローの瞬発力勝負では厳しいポジションだが、坂の下りから大外をまくって0秒1差まで詰め寄ったのは立派。ある意味、けがの功名だが、長く脚を使えることが分かったのは収穫だ。

日本向きは イキートス

<外国馬>

 バーデン大賞を勝ったギニョールは、しぶとい先行力が持ち味。切れる印象はないが、ばてずに長く脚を使う。2着イキートスは、いかにも切れがありそう。日本向きという点では後者か。凱旋門賞ではアイダホ、サトノダイヤモンドに先着しており、410キロ台と小柄で、57キロで走れる(前走バイエルン大賞は60キロ)のも有利。昨年7着と馬場適性は示しており、穴をあけるとすれば、この馬か。