グレーター逆転ある/天皇賞

 天皇賞・秋(G1、芝2000メートル、10月29日=東京)はグレーターロンドン(牡5、大竹)の巻き返しが怖い。水島晴之記者が独自の視点で分析する「G1前哨戦その一瞬」は、毎日王冠で緩急の差に泣いた同馬に注目。仕掛けが遅れながら3着は力の証明。流れ次第で逆転がある。もう1頭、14年ダービー馬ワンアンドオンリー(牡6、橋口)にも復調気配を感じた

負けて強し グレーターロンドン

<毎日王冠>◇10月8日=東京◇G2◇芝1800メートル◇3歳上◇出走12頭

東京11R、毎日王冠。ゴール前、グレーターロンドン(左から2頭目)は外から追い込んで3着
東京11R、毎日王冠。ゴール前、グレーターロンドン(左から2頭目)は外から追い込んで3着

 毎日王冠は「ジェットコースター」ラップについていけたか―。これが勝敗を分けた大きなポイントだ。逃げたソウルスターリングの1000メートルは60秒0。東京開幕週、良馬場、G1級のメンバーを考えればかなり遅い。向正面から4角手前までは3ハロン連続の12秒台。この緩ペースがガラリ一変したのが、残り600メートル地点だ。12秒1→11秒1。一気に「1秒」も速くなった。

 ここでスムーズに前との差を詰めたのが1、2着のリアルスティールとサトノアラジン。対照的にワンテンポ仕掛けが遅れたのが3着グレーターロンドンだ。上がりは最速タイの32秒6だが、高速ラップになったところでスピードに乗り切れなかった。理由はある。15年10月500万以来となる久しぶりの1800メートル。休み明けで「息がもつか」(田辺騎手)の不安がある中、折り合いに専念せざるを得なかった。

 徐々にペースが上がれば対応もできたが、しっかり抱えている状態から、トップスピードに切り替えるのは難しい。天皇賞はさらに200メートル延びる。本番を見据えた場合、あれ以上、攻めの騎乗はできない。しかも直線は大外。通ったコース、脚を測ったと考えれば「負けて強し」。安田記念のように馬群を割る競馬もできる。田辺騎手の乗り方ひとつで逆転は可能だ。

 もう1頭、復調を感じさせたのが7着のワンアンドオンリー。一瞬の脚には欠けるため、11秒1―10秒7の高速ラップでは差を広げられたが、ラスト200メートルは盛り返して3着争いに加わった。ダービーを勝った後、心と体がかみ合わない状態が続いたが、距離を詰めてしまいを伸ばす競馬をさせて、本来の活気が戻ってきた。ゴール前の脚は上位馬をしのぐ。極端に上がりが速くならなければ出番はある。大穴候補の1頭として挙げておきたい。

馬混みで脚余し4着 ロケット

<京都大賞典>◇10月9日=京都◇G2◇芝2400メートル◇3歳上◇出走15頭

 こちらも前半1000メートル59秒9と流れは遅かった。しかも、坂の下りでもペースが上がらず馬群が密集。馬混みで脚を余したのが4着ミッキーロケット。仕掛けてから反応するまでタイムラグがあり、前が開いてシュッとは切れない。トップスピードに乗るまで助走距離が必要な馬。上がり3ハロン11秒5―11秒4―11秒5の瞬発力勝負となっては厳しかった。

 また、1600メートル以下の重賞を3勝しているスマートレイアーが優勝したように、マイラーに有利な流れ。2000メートル以上で実績を残しているロケットが切れ負けしたのもやむを得ない。それでも0秒3差まで詰め寄ったのは底力。広い東京コースは歓迎。早めに動いていく形なら巻き返しがある。

地力強化証明 ステファノス

<オールカマー>◇9月24日=中山◇G2◇芝2200メートル◇3歳上◇出走17

 ステファノスは、自分から勝ちにいく競馬をして2着。逃げたマイネルミラノの1000メートル通過は63秒1。5、6番手を進んだ戸崎騎手は前残りを嫌って3角過ぎから早めに動いた。中山外回りとはいえ、コーナーで11秒台のラップを外から追い上げては体力を消耗する。最内をすくったルージュバックとは通ったコースの差だろう。直線の坂でいったん脚が鈍りかけたが、外から3着タンタアレグリアに来られると、もう1度しぶとく伸びた。上がり3ハロンは勝ち馬と同じ33秒9。負けはしたが、地力強化を証明したといっていい。