スタミナ比べならダンビュライト/菊花賞

 菊花賞は、「最強の1勝馬」が怖い。水島晴之記者が独自の視点で分析する「G1前哨戦その一瞬」は、皐月賞3着馬ダンビュライト(牡、音無)に注目する。決め手勝負の神戸新聞杯は切れ負けして4着に敗れたが、長距離戦でスタミナ比べになれば、持ち味のしぶとさが生きる。

武駆け引き巧み ダンビュライト

<神戸新聞杯>◇9月24日=阪神◇G2◇芝2400メートル◇3歳◇出走14頭

神戸新聞杯 直線抜け出したレイデオロ(左から2頭目)はダービー馬の貫禄で他馬を振り切る (撮影・渦原淳)=2017年9月24日、阪神競馬場
神戸新聞杯 直線抜け出したレイデオロ(左から2頭目)はダービー馬の貫禄で他馬を振り切る (撮影・渦原淳)=2017年9月24日、阪神競馬場

 神戸新聞杯はスローの瞬発力勝負だった。逃げたアダムバローズの前半1000メートルは61秒4。勝ったレイデオロは4角4番手から上がり34秒1で2馬身差の快勝。2着キセキは同10番手から33秒9、3着サトノアーサーも同5番手から34秒4。決め手のある馬が上位を独占した。

 この流れで持ち味が生きなかったのが、4着ダンビュライト(上がり35秒0)だ。2番手から早めに仕掛けたが、ラスト3ハロンが11秒3―11秒4―11秒8の高速ラップでは、どうしても切れ負けする。武豊騎手も「上位の馬には完敗だったね」と脱帽したが、あくまで相手(瞬発力のある馬)の土俵で相撲を取っただけ。流れが違えば結果も変わる。

 皐月賞3着、ダービー6着と世代トップクラスの成績を残しながら、1勝馬に甘んじているのは、詰めの甘さが影響している。相手なりだが勝ち切れない。もどかしさもあるが、しぶとい先行力を生かせば逆転があっていい。それを証明するデータがある。

 同馬が最高のパフォーマンスを見せた皐月賞は、勝ったアルアインと0秒1差(首+ 3/4 馬身)だった。前後半1000メートルのラップは前半59秒0、後半58秒8。その差わずかに0秒2という平均ペース。一方、神戸新聞杯は、前半61秒4に対して、後半は58秒6。後半が2秒8も速い後傾ラップでは、決め手で劣るダンビュライトが4着に沈んだのもやむを得ない。

 今回はジョッキーが駆け引きできる3000メートルの長距離戦。流れ次第で自分からペースを上げることも可能だが、名手・武豊騎手ならそれができる。後続に脚を使わせる形で坂の下りから一気にスパート。有力馬の切れを封じれば「最強1勝馬」の戴冠シーンも十分にある。

アルアイン圧倒 スワロー瞬発力

<セントライト記念>◇9月18日=中山◇G2◇芝2200メートル◇3歳◇出走15頭

 セントライト記念 ミッキースワローは、ラスト1ハロン10秒台の脚を使っている。レースラップは11秒0だが、残り200メートルではアルアインの方が半馬身ほど前に出ており、それを考えると10秒8~9で坂を駆け上がってきたことになる。皐月賞馬を置き去りにした瞬発力は、G1でも通用する。中団馬群で我慢できたのも収穫。気性的に距離延長はプラスとは言えないが、うまく折り合えば3000メートルでも面白い。

 アルアインは目標にされた分と、休み明けの差だろう。ただ、ゴール前は止まった印象があり、血統的にも3000メートルはプラスとはいえない。同じ池江厩舎なら4角で前が詰まり、スムーズさを欠いたサトノクロニクルに魅力を感じる。そのほかでは太めで息切れしたクリンチャー。長距離向きのスタミナがあり、先行してしぶとさを生かせば大駆けがある。

トリコロール&ヴンシュ出番

<別路線組>

 1000万条件を勝ち上がった組にも、楽しみな馬はいる。日高特別を勝ったトリコロールブルーは、直線のたたき合いで2着馬にいったん離されながら、ゴール前できっちり首差かわした。一瞬の脚はないがロングスパートの利くタイプで、京都の坂越えはプラスとなってくる。

 もう1頭は九十九里特別を競り勝ったマイネルヴンシュ。手応えの割に並ばれてからがしぶとい。まだ体も気持ちも幼いが、水野師は「まだまだだが、背中の感触が良くて、いずれは重賞を勝てる馬」と高く評価。距離はまったく問題なくスタミナ比べになれば出番だ。