最後も祭りだキタサンブラック/有馬記念

 ベテラン水島晴之記者が有馬記念の出走予定馬を前哨戦の内容から分析します。今回の対象はジャパンC、エリザベス女王杯、金鯱賞、菊花賞、天皇賞・秋です。前哨戦の着順だけではない、プロの視点をチェックして下さい。

武豊の絶妙ペース配分 キタサンブラック

<ジャパンC>◇11月27日=東京◇G1◇芝2400メートル◇3歳上◇出走17頭

ジャパンCをキタサンブラックで制しガッツポーズをする武豊騎手(撮影・丹羽敏通)
ジャパンCをキタサンブラックで制しガッツポーズをする武豊騎手(撮影・丹羽敏通)

 武豊騎手の絶妙なペース配分で、キタサンブラックが逃げ切った。スタートからの3ハロンを13秒3―11秒3―12秒6の山切りラップで後続を幻惑。単騎逃げに持ち込むと、ラスト4ハロンは3回も11秒台を刻むロングスパートで突き放した。レース前に「東京コースは合うと思う」と話した通り、スピードの持続性を発揮して、2着サウンズオブアースに2馬身半差の圧勝だった。

 今回は2周目3角から流れが速くなる中山芝2500メートル。マークもよりきつくなり、東京ほど楽な競馬はできないだろう。乱ペースを鞍上がどうさばくか。このあたりが勝負のポイントとなりそう。とはいえ、馬は確実にパワーアップしており、最後も〝キタサン祭り〟で締めくくる可能性は高い。

 2着サウンズオブアースは、直線で外へ振られる不利が痛かった。あそこがスムーズなら、もっと際どい勝負になっていた。冬場に強いタイプで状態は1戦ごとに上向き。昨年の2着以上もある。3着シュヴァルグランは、大外枠がこたえた。上がり34秒4は勝ち馬を0秒3、2着馬を0秒1しのいでおり、G1でも瞬発力は通用することが分かった。中山替わりもプラスに出そうだ。

 4着ゴールドアクターは8キロ増(504キロ)の数字が示す通り、太めの影響があった。それでも2着とは首+半馬身。得意の中山で馬体が絞れれば連覇が見えてくる。15着ヒットザターゲットは、流れが落ち着きすぎた。激流でゴール前もつれるような展開にならないと苦しい。

<レース後コメント>

 1着キタサンブラック(武豊騎手) いやぁ、本当に強かった。最後は突き放してくれたし、いい方向にイメチェンしてくれた。

 2着サウンズオブアース(デムーロ騎手) これまでで一番いい状態だった。最後は内の馬が外へ張ってきたのが痛かった。馬体を併せる形なら違ったかも。

 3着シュヴァルグラン(福永騎手) 4コーナーでペースが上がった時に置かれたが、よく伸びてくれた。次の中山は合っていると思うので期待したい。

 4着ゴールドアクター(吉田隼騎手) イメージ通り乗れたが、最後は同じ脚しか使えなかった。以前よりコロンとした体形で、少し重かった感じ。

 15着ヒットザターゲット(小牧騎手) 展開に左右される馬。淡々とした流れになってしまったので。

立ち回り次第で牡馬とも互角 ミッキークイーン

<エリザベス女王杯>◇11月13日=京都◇G1◇芝2200メートル◇3歳上牝◇出走15頭

クイーンズリングがエリザベス女王杯を制する(撮影・奥田泰也)
クイーンズリングがエリザベス女王杯を制する(撮影・奥田泰也)

 3着ミッキークイーンは勝負どころでの反応に、半年ぶりの影響が出ていた。本来ならもっとスッと動ける馬だけに本調子手前とみていい。それでもゴール前の脚は目立っており、1度使えば変わる印象は十分に植え付けた。中山替わりはプラスとは言えないが、立ち回り次第で牡馬とも互角にやれる。

 6着マリアライトは1コーナーでの致命的な不利がすべて。内、外を固められた状況で前の馬が減速。何とか外へ逃げたが、落馬寸前だった。それでも上がり3ハロン33秒9で盛り返したように、休み明けを2回使って気持ちは戻ってきた。牡馬との力差がないのは昨年の有馬で証明済み。上位争いできる。

<レース後コメント>

 3着ミッキークイーン(浜中騎手) いい感じで競馬はできたが、直線でズブさを見せた。1回使っていたらかわせたと思う。

 6着マリアライト(蛯名騎手) 1コーナーの不利で落ちるかと思った。多大な影響があった。馬は良くなっていたし、あの不利がすべてだ。

「ためて差す」 ヤマカツエース

<金鯱賞>◇12月3日=中京◇G2◇芝2000メートル◇3歳上◇出走13頭

池添騎手騎乗のヤマカツエースが直線差し切って金鯱賞を制する(撮影・奥田泰也)
池添騎手騎乗のヤマカツエースが直線差し切って金鯱賞を制する(撮影・奥田泰也)

 ヤマカツエースが鋭い切れ味を発揮した。最近は好位で競馬することが多かったが、大外13番枠を考えて池添騎手は中団で脚をためた。上がりはメンバー3位となる33秒1。減っていた馬体が20キロ増と戻り、調子が上向いていたこともあるが「ためて差す」競馬ができたのは収穫。本質的に2500メートルは長いが、うまく折り合えば、ぎりぎりもつかもしれない。

 サトノノブレスは勝ち馬の少し前に位置し、3コーナーから早めに動いたが3着まで。16キロ増で少し余裕があったのも影響したか。絞れれば違う。7着ムスカテールは馬群をうまくさばけなかった。速い脚があるタイプではなく、早めに外へ出せないと苦しい。8着デニムアンドルビーは、ごちゃついて脚を余した。上がりは最速タイの32秒8。脚力に衰えはない。

<レース後コメント>

 1着ヤマカツエース(池添騎手) 前の有力馬がリズム良く走っていたので、合図を出していった。最後までしっかり反応したし、やっと力のあるところを見せられた。

 3着同着サトノノブレス(シュミノー騎手) もう少し前が理想だったが、ロスなく運べていい位置で乗れた。最後、3着を取れたのは良かった。

 7着ムスカテール(中谷騎手) まだまだやれる。前が開いた時に速い脚があれば飛び込めた。

 8着デニムアンドルビー(バルザローナ騎手) 進路があれば3着はありそうな反応だった。

コースさえ克服できれば サトノダイヤモンド

<菊花賞>◇10月23日=京都◇G1◇芝3000メートル◇3歳◇出走18頭

他馬を抑え圧勝したサトノダイヤモンド(撮影・上田博志)
他馬を抑え圧勝したサトノダイヤモンド(撮影・上田博志)

 サトノダイヤモンドは3000メートルをどうこなすか。この点に注目して見ていたが、1周目スタンド前で馬群の外へ出した時点で、ほぼ勝利を手中にした。折り合いに不安がなければ瞬発力が違う。3コーナーの下りでディーマジェスティが仕掛けると、その動きに合わせるように前へ。直線は余裕をもって抜け出した。2着レインボーラインとは2馬身半差だが、いっぱいに追っていれば、もっと差は開いていただろう。春に比べると心身ともに成長した印象で、古馬一線級相手でも引けは取らない。中山コースさえ克服できればチャンスはある。

<レース後コメント>

 1着サトノダイヤモンド(ルメール騎手) 流れが遅くて掛かり気味だったので4コーナーまでちょっと心配でした。直線は大きなストライドですごい反応だった。

立ち回り次第で上位争いに アドマイヤデウス

<天皇賞・秋>◇10月30日=東京◇G1◇芝2000メートル◇3歳上◇出走15頭

直線で鋭く抜け出したモーリス(右端)が2着リアルスティール(右から2頭目)を抑え天皇賞・秋を制した
直線で鋭く抜け出したモーリス(右端)が2着リアルスティール(右から2頭目)を抑え天皇賞・秋を制した

 アドマイヤデウスは掲示板を外したとはいえ、差のない6着に善戦した。一瞬の脚がなく、リアルスティール、ステファノスにいったん離されたが、最後は盛り返している。脚質的に東京は向かない。中山に替われば立ち回り次第で上位争いに加われる。10着サトノノブレスは不利もあったがG1級相手では決め手に欠ける印象だ。15着ヤマカツエースは正攻法の競馬をしたが、この相手ではひと工夫ないと厳しい。

<レース後コメント>

 6着アドマイヤデウス(松田助手) 馬が良くなっている。今後が楽しみになる内容だった。

 10着サトノノブレス(シュタルケ騎手) もう少し前を取りたかったが、駄目だった。不利もあって厳しい競馬になった。

 15着ヤマカツエース(池添騎手) 好位で運べたけど、瞬発力の差で引き離された。