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梅ちゃんねる

チコちゃん無双、ISSAは写真…紅白舞台裏10選

大みそかの紅白歌合戦の余韻も一息ついた。サザン&ユーミンや米津玄師のような大ネタはひとまず置き、舞台裏のほっこりした小ネタを10個ばかり選んでみた。

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NHK紅白歌合戦の出演者としてリハーサルに参加するチコちゃん

◆チコちゃん大人気

人気のチコちゃん(5さい)は、リハでも歌手たちのアイドル的存在。スタッフと手をつないで進行スペースに登場すると、隣同士になった関ジャニ∞からペタペタと歓迎されていた。全体リハは立ち位置がAKB48と乃木坂46の間で、握手したりお辞儀したりとかわいい交流も。リハ中は常に身ぶりをして手抜きが一切なく、ダンスも上手。注目の的だった。

◆リハ用のクイズも用意

「チコちゃんに叱られる!」のクイズ場面のリハでは、チコちゃんの立ち位置とCG班の連携を主に確認。本番で出題された「なんで紅白歌合戦は紅白なの?」に代わり、リハ用にチコちゃんが出題したのは「曲で一番盛り上がるところをなんでサビって言うの?」。「ワサビ」がらみの答えを関ジャニ村上信五がうっかり正解してしまったが、「ボーッと生きてんじゃねえよ!」のCGは大成功。ちなみに、岡村隆史と木村祐一の控室は本館エレベーターの真ん前だった。

NHK紅白歌合戦の出演者としてリハーサルに参加するチコちゃん

◆キンプリのステージを見守る櫻井翔と松本潤

King&Princeのリハは、櫻井翔と松本潤の2人が進行エリアで見守る流れだったが、見守り方に個性の違いがあってほほ笑ましいひととき。櫻井は、体全体でリズムをとって、曲とステージを楽しんでいる感じ。一方の松本は微動だにせずステージを凝視し、キンプリが最後のポーズをキメた瞬間、とびきりの笑顔で拍手を送った。嵐のコンサートの演出も手掛ける松潤。始めから終わりまでをトータルで見る演出家気質が垣間見えた。

舞台袖で、「U.S.A」の舞台セットをスマホで記念撮影するDA PUMPのISSA(中央)

◆ISSAはセットの写真をパチリ

DA PUMPのISSAは、音合わせを終えると、ステージいっぱいに電飾された「U.S.A」の舞台セットを何度も見上げていた。撤収作業のじゃまにならない隅っこまで来ると、スマホを受け取ってセットをパチリ。16年ぶりの紅白がどれだけうれしかったかが伝わってきた。翌日の全体リハでは、音準備が整うまでの間、ステージ上で地声で発声練習。メンバーたちも、ヒザ上げ、股割り、アキレス腱(けん)伸ばし。待ち時間の過ごし方も見ごたえがあった。

◆取材陣も「けん玉」に気が気でない

「いごっそ魂」の歌唱中にけん玉のギネス世界記録となる124人連続成功に挑んだ三山ひろし。リハで成功すると、取材陣から自然と拍手が起こった。前年失敗した「14番」さんは、今回はラッキーセブンの7番手で再挑戦。124人のプレッシャーを思うと、取材陣も「ぶっちゃけ歌どころじゃない」と祈るような気持ちで、ロビーではライバル紙同士が「成功しました?」と情報交換。重圧を乗り越え、本番も見事に成功。本当におめでとうございます。

第69回紅白歌合戦の企画コーナーのリハーサルを行った刀剣男士

◆定番質問でいちばんウケていた刀剣男士

囲み取材で定番化している「今年1年を漢字一文字で」の質問。答えも無個性に陥りがちな中、刀剣男士の三日月宗近は「まあ、『刀』ですな」。お見事な斬り口に場が爆笑となった。“恒例の一句”をリクエストされた和泉守兼定がフリーズすると、メンバーが「考えていなかったようだ」と涼しくフォローしたのもなごむ。「紅白で 伝説残すぞ 全員で」というややウケの一句に不思議な好感度。「よく知らなかったがファンになった」という記者が続出。

◆三浦大知の囲み取材力

ロビーでの囲み取材は、歌手が階段の3段目あたりに立ち、取材陣が下に集まる形で行われる。中のリハに影響しないよう、騒々しい場所でマイクなし。後方に陣取るとほとんど聞こえなかったりするのだが、三浦大知の囲みは「今年もよく聞こえる」と取材者を感動させた。決して大きな声ではないが、最後列と、その向こうにいる全国のファンをきちんと意識して話すので届くのだ。ISSAやYOSHIKIなど、こういうタイプの人は声の大小にかかわらず声がよく聞こえて、取材者から一目も二目も置かれる。

第69回紅白歌合戦のリハーサルで入館証を提げて歌う郷ひろみ

◆郷ひろみはリハでも首に入館証

以前、警備員に「ちゃんと首から下げて」と止められたことがあったそうで「それ以来毎年下げています。言われたことはちゃんとやるA型です」とにっこり。郷さんの歌唱は、エントランス→ロビー→ホール内を歌いながら移動するハードな演出。カメラワークの確認のため、通しで3回行われたが、肩で息をしながらも、本番の掛け声がかかるとビシッときめる。

◆その場で覚える嵐のスキル

嵐は、音合わせのその場で紅白仕様の振り付けとフォーメーションを一から覚える作業。振り付け担当者の指示を受け、カウントを数えながら個々に動きと立ち位置を確認していった。5分くらいで「それでは音を出します」(舞台監督)と音楽が流れると、一発でピタリ。2曲のメドレーで両翼ステージに分かれたり中央に集まったりと段取りはたくさんあったが、難なくこなしていて10年連続出場のスキルを感じる。

◆ADも舞台監督も黒スーツ

ホール内のカメラは、ざっと見ただけでも、ステージ前に4台、客席後方に6台、クレーンカメラ1台、2階席に1台。ステージ上を動き回るステディカムや、数台の手持ちカメラ、副音声席の固定カメラなど全部で何台あるんだか。進行台本は電話帳並みの分厚さ。総スタッフは3000人以上にのぼり、常にフロアにいる数十人はADから舞台監督まで全員白シャツ&黒スーツ着用の伝統。ちょっと民放ではあり得ない光景がいかにも紅白で、番組責任者は「スタッフがいとおしい」と涙目のあいさつだった。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)

制作者も「怒られそう」テレビ局買収ドラマの舞台裏

テレビ局買収の攻防戦を描くドラマ「新しい王様」が話題だ。藤原竜也×香川照之で1月にTBS深夜で放送されるや、ホリエモンこと実業家堀江貴文氏もツイッターで「やばいくらい面白い」。テレビ局の舞台裏もあけすけに描かれ、現在シーズン2が動画配信サービス「Paravi(パラビ)」で配信されている。ハマって見ている1人として、プロデュース、脚本、演出を担当する山口雅俊氏に話を聞いた。

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TBS×Paraviスペシャルドラマ「新しい王様」(C)TBS

-テレビ局買収をめぐる攻防と、番組制作の舞台裏がすごい見ごたえですが、制作のきっかけは。

山口 なんとなくこういうジャンルの企画を思い描いていた時期に、企業買収を描いた「ハゲタカ」(07年、NHK)を見て。訓覇圭プロデューサーに会って、素晴らしい作品だけど登場人物たちが立派すぎるのでは、みたいなことを話しました。起業家の人たちってもっと「女性にモテたい」とか「すごいオフィスでハッタリかましたい」みたいな俗な欲求もあると思うんですよ。「立派すぎないハゲタカを作ります」と訓覇さんに宣言してようやくできた作品です。

-買収の舞台をテレビ局にした意図は。

山口 勝手知ったる業界に踏み込んだら面白いかなと。今までのテレビ局ものには物足りなさもあったので、ある程度怒られるだろうなと思いながらも(笑い)、ちゃんと取材したのでやってみようと。

-大手プロダクションのご威光のかかった女優A(夏菜)が番手を上げていくくだりは爆笑で、彼女の扱いをめぐるテレビマン同士の対立も生々しいです。

山口 「これは俺のことじゃないか」とか怒られそうですが、このドラマに特定のモデルはいません。僕が今まで会った人たちや経験、取材を複合して作っています。フジテレビを独立して15年になりますが、いま放送できるギリギリがなんとなく自分で分かるので、女優Aのああいうリアルをドラマでやってもいいんじゃないかと。

TBS×Paraviスペシャルドラマ「新しい王様」(C)TBS

-ドラマで描いている中央テレビの買収は、ホリエモンがフジテレビ、楽天がTBSに買収を仕掛けた05年あたりの騒動をベースにしているのですか。

山口 それはありません。「新しい王様」を配信で見ている新しい世代の視聴者は、あの騒動を知らないですよ。テレビ局買収を舞台にしてはいますが、描きたいのはお金と幸せの関係。ZOZOの前澤社長の月旅行とか、ゴーン前会長の報酬問題とか、お金の格差がより苛烈化して見えなくなっている時代に、お金と幸せの関係について若い人が迷って分からなくなっている。「お金もうけは悪いことだ」では何も解決しない。対極のお金哲学を持ち、互角に戦えるアキバ(藤原)と越中(香川)を通して、最終話までに答えを出す試みです。

-中央テレビを通して、放送業界の旧態依然ぶりも描かれています。相当の株を買われた状況下でも社長が役員会で「視聴率がすべてを解決する」とハッパをかけるくだりとか。

山口 視聴率はとても分かりやすい指標だから、そう考える経営者もいるだろうなと。僕がフジにいた時、上層部が「今この瞬間をもって、視聴率をとれるドラマを良いドラマとする」と言ったことがあって(笑い)、組織ってそういう名言が生まれがち。中にいてこそ面白いことってたくさんあるんですよ。

ドラマ「新しい王様」について語る山口雅俊プロデューサー

-作品と関係ないとはいえ、フジの買収騒動の時は山口さんは社員でした。当時の心境は。

山口 アキバにも言わせていることなんですけど、株をたくさん買われれば企業は身構える。何をされるんだろうって。でも、ずっと平時が続かないアラート状態も、いいことなんですよ。

-ドラマの制作現場も同時進行で面白いですよね。「同じような顔ぶれ、どこかで見たようなストーリーのドラマ作りをぶっ壊したい」と力説するディレクターも、それを全否定する上司の言葉にも説得力があります。

山口 今まで「テレビ局をぶっ壊したい」と言った人は何人もいるけど、テレビ局の社員というのはすごく居心地が良くて、その年収と地位にしがみついたら何もぶっ壊せないと。「月9をぶっ壊したい」とかもよく聞きましたけど、ぶっ壊せないだろうなあと(笑い)。

一方で、こつこつあいさつ回りをしている弱小プロダクションの社長(モロ諸岡)と新人女優(武田玲奈)みたいな、応援したくなる登場人物もたくさんいますよね。

山口 マネジャーが頭下げて渡したプロフィルが捨てられる場面というのは何べんも目撃してきて。松嶋菜々子さんのプロフィルが捨てられるのも見たことがあります(笑い)。彼女が売れて、そのプロデューサーがマネジャーへの態度をひょう変させたのも見たことがある(笑い)。

TBS×Paraviスペシャルドラマ「新しい王様」(C)TBS

-このドラマを見ていると、報道や情報番組などもいかに編集で印象を操作しがちかと分かります。メディアリテラシーの重要性は、山口さんの訴えたいことでもあるのですか。

山口 覆面をした人に自分のカード番号なんか教えないのに、ネットの空間だと教えちゃうじゃないですか。なるほどと思ったらウラもとらずにリツイートするとか。でも、そういう危険性はいつの時代もある。テレビ局の偉い人が「電車で女子高生たちがウチのドラマを絶賛していた」なんてことを、評判を知る上での重要なサンプルみたいに言っているのとか(笑い)。「電車の女子高生が言ってたから」も「ネットに書いてあったから」も、危うさとしては変わらないと思います。

-せりふにもある“テレビとネットの融合”という言葉はそれこそライブドア騒動のころからありますが、永遠のテーマなのでしょうか。

山口 SNSがなかった当時と違い、スマホの出現は大きいですよね。今はスマホを片手にテレビを見ていて、SNSに書き込んだことが拡散する時代。大手配給会社の中には、映画館もスマホ解禁にしていいんじゃないかという人もいる。スクリーン見ながらツイートしてくれた方が次の集客になると。これからは、もっと融合するんじゃないですかね。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)

◆ドラマ「新しい王様」 TBSと動画配信サービス「Paravi(パラビ)」の共同制作。現在、第2シーズン(30分×全9話)をパラビで配信中。毎週1話ずつ、木曜日に配信しており、現在3話まで配信されている。

弁護士ドラマ明暗、「はじこい」に満点/冬ドラマ評

1月期の冬ドラマ。日本テレビ、TBS、フジテレビで弁護士ものがかぶった一方で、不動産業、後妻業、新人ポリス、ハケン占い師など、ヒロインのお仕事はさまざまだ。「勝手にドラマ評」37弾。今回も単なるドラマおたくの立場から、勝手な好みであれこれ言い、★をつけてみた(シリーズもの、深夜枠は除く)。

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フジテレビ月9ドラマ「トレース~科捜研の男~」

◆「トレース~科捜研の男~」(フジテレビ、月曜9時)錦戸亮/新木優子/船越英一郎

★★★☆☆

原作はダークな事件性を節度ある登場人物たちがまっすぐに受け止める快作。錦戸亮の代表作になると期待したが、船越英一郎が“刑事の勘”で1時間怒鳴り散らし、科学もヘチマもない。錦戸亮が気の毒すぎる。助演がモンスター化して悪目立ちするパターンが最近多すぎるし、中高年層へ向けた昭和演出のつもりならありがた迷惑。ドラマ作りはまず主人公の魅力作りに集中してほしい。原作は、口数少なめの優秀男子と、感性で何かを学んでいく新人女子の必勝フォーマット。「フラジャイル」や「アンナチュラル」寄りで勝負できたのに、カジュアル路線の「科捜研の女」をギャグった副題も残念だった。

テレビ東京ドラマBiz「よつば銀行~原島浩美がモノ申す!~この女に賭けろ~」

◆「よつば銀行~原島浩美がモノ申す!~この女に賭けろ~」(テレビ東京、月曜10時)真木よう子

★★☆☆☆

経済と働く人に特化し、快作を連発するドラマBiz枠第4弾。初の女性主人公で何が描かれるか楽しみにしていたが、男社会の性差別と戦う女性管理職ものという、手あかのついた題材で腰が抜けた。20年以上も前の原作をベースに、「空気が読めないトラブルメーカーキャラを武器に」という相変わらずの女性像をやっていて悲しくなった。「美人だから昇進」のやっかみ、男性陣が結託して協力拒否、「お手並み拝見」の薄笑い。そこからですかの洗礼がしつこく、女性主人公だとまだ純粋なビジネスドラマ作ってもらえない2019年の現実だけはよく分かった。

フジテレビ系連続ドラマ「後妻業」

◆「後妻業」(フジテレビ、火曜9時)木村佳乃/高橋克典/木村多江

★★☆☆☆

資産家老人をたぶらかして後妻に入り、バレないように殺して遺産をゲットする後妻業の女(木村佳乃)と、たくらみに気付いた娘(木村多江)の仁義なきバトル。殺す気満々のブラックコメディーと思ったら、片山さつきみたいなカツラで「けったくそわる~!」と関西弁張り上げてドタバタするコントな味わい。行儀悪さやヘンな関西弁でインチキ臭さに取り組んでいるが、後妻業を演じるには木村佳乃は美人すぎ。リアリティー不足でグロテスク感が漂わないのが残念。映画版、大竹しのぶの偉大さを思い知る。コントではなく、真っ当な怪演が見たかった。ハマる人には中毒性あり。

TBS火曜ドラマ「初めて恋をした日に読む話」

◆「初めて恋をした日に読む話」(TBS、火曜10時)深田恭子/永山絢斗/横浜流星/中村倫也

★★★★★

受験も就職も婚活も失敗したアラサー塾講師が、不良の東大受験に巻き込まれて人生激変のラブコメディー。聡明そうな不良・横浜流星、幼なじみのエリート商社マン永山絢斗、クールな元同級生中村倫也。この3人に同時に好かれるって、前世でどれだけ徳を積めばそんなことに。それぞれの魅力と人間性を3俳優が丁寧に演じ、学生時代のようにはいかない男たちの片思いの形がどれも切なすぎる。バックナンバーのエンディングと1話の永山絢斗に丸1日泣けた。流星くんにも中村倫也にも、きっといいシーンが用意されているんだと思う。「しみったれた人生の先輩」だから言える深キョンのせりふの数々も独創的で、受験ドラマとしてもちゃんと面白い。

日本テレビ水曜ドラマ「家売るオンナの逆襲」

◆「家売るオンナの逆襲」(日本テレビ、水曜10時)北川景子/松田翔太

★★★★☆

三軒家チーフのスパルタ営業再び。サンチーがほぼロボ化してきたが、社外にフリーランスのライバル(松田翔太)を登場させたのは当たり。もう1人の天才を相手に、ワンツーの組み立てやロープ際からの逆転など、戦い方に起伏が出て、サンチーのしぶとさがさらに光る。孤独死をめぐる泉ピン子とサンチーの2話は、主義主張の力作。「家族に見守られようと死ぬ時は1人!」。サンチーのとどめをさらにひっくり返したピン子の“吹きだまり論”と、それも読んでいたサンチーのウルトラCがハッピーな後味だった。熟年離婚、ネット炎上、少子高齢化など、なんだかんだ社会派。優雅なイケメンを演じたら松田翔太は無敵。千葉雄大との急なBL展開で、おっさんずラブ要素をぶち込んできたのもさえている。

テレビ朝日木曜ドラマ「ハケン占い師アタル」

◆「ハケン占い師アタル」(テレビ朝日、木曜9時)杉咲花/小沢征悦/志田未来

★★★☆☆

人の原風景にシンクロできる主人公が、特殊能力で同僚を悩みから救う。占いというより、千里眼のお悩み相談。ロジカルな解決を、いかに占いが効いたように見せるかが絶妙だった「よろず占い処 陰陽屋へようこそ」(13年、錦戸亮)のような理系アプローチを期待していたので、昔のホームビデオ見せて泣き落とすファンタジーは私の好みとは違った。職場の人たちは応援しがいがあるので、杉咲花がオカルト発動→一緒に過去を見て叱られる→キーアイテムを捨てて新しい自分に、という定型に乗っかればさくっと楽しい。コネ入社で孤立している青年(間宮祥太朗)の2話は、悩みも過去も独創的で泣けた。こちらを1話で見たかった。

フジテレビ木曜劇場「スキャンダル専門弁護士QUEEN」

◆「スキャンダル専門弁護士QUEEN」(フジテレビ、木曜10時)竹内結子/水川あさみ/斉藤由貴

★★★☆☆

映像クリエーター関和亮氏演出、キャラクター監修バカリズム。よく分からない感じが画面にも。世論を操作し、依頼人をスキャンダルから救う「スピンドクター」の活躍。フレッシュな題材が「弁護士」というタイトルに負けてしまい、法廷外の弁護士ものという分かりにくさだけがある。スピンドクターを主語にして、ボスと女3人のチャーリーズ・エンジェルをぐいぐい動かしてほしかった。1話のアイドル事件はタイムリー。芸能界のウラ事情と、アイドルたちの強い結末に救われた。スキャンダル題材は攻めているだけに、仕事内容にリズムがなくてテンポが悪いのがもったいない。竹内結子のミス・シャーロックな鼻っ柱はけっこう好き。

TBS金曜ドラマ「メゾン・ド・ポリス」

◆「メゾン・ド・ポリス」(TBS、金曜10時)高畑充希/西島秀俊

★★★★★

退職刑事のシェア・ハウスの住人と、新人女性刑事の異色捜査。老眼、腰痛のおっさんずが経験豊富で頼もしく、ひたむきなヒロインを中心にした異色のゴレンジャー編成にわくわく感がある。メゾンのエース西島秀俊が、元副総監近藤正臣、元鑑識野口五郎、たたき上げ角野卓造、事務小日向文世というメンツの中でパシリ扱いなのも新鮮。「密室殺人」「青猫事件」などの謎解きテイストと、ずしんとくる人間ドラマ。ひるんだり傷付きながらも何かをつかんで成長するヒロイン像は大好き。最近、奇人変人役ばかり回ってきた高畑充希が、普通の人という最も難しい役どころで女優力を開放していて、今まで見た彼女の中ではこれが一番好き。

◆「イノセンス 冤罪弁護士」(日本テレビ、土曜10時)坂口健太郎/川口春奈

★★☆☆☆

実証実験で冤罪を解き明かす若き弁護士の活躍。コメディー路線で当てた「99・9」のシリアスバージョンかと思ったら、そうでもなかった。優秀なマイペース男子と、その周りで教科書通りなことをわめく新人女子、という古いテンプレで騒々しく尺をとり、でんじろう先生みたいな実験で冤罪を晴らす。「司法の壁」を語るのは荷が重いように見える。「1度疑われた人間がずっとさらされる偏見」。無罪後も続く現実から目を背けない視点があるのに、玄関の前にゴミとか、ご近所さんがヒソヒソとか、結局テンプレに着地。平成も終わるのだから、古いテンプレはもう法律で禁じてほしい。

TBS日曜劇場「グッドワイフ」

◆「グッド・ワイフ」(TBS、日曜9時)常盤貴子/小泉孝太郎/唐沢寿明

★★★★☆

原作はエミー賞受賞の米ドラマ。検事の夫が汚職容疑で逮捕され、子供を守るため16年ぶりに弁護士復帰した妻の奮闘を描く。19年ぶり日曜劇場主演の常盤貴子がこのヒロインに合っていて、ブランクの中でも適性を発揮していくタフな魅力がきちんとある。絶望した人に「まずカーテンを開けて掃除機をかけて…」のくだりはいいアレンジ。日常を大切に過ごせば、ラクにはならなくても強くなれるというこの人の哲学に共感できた。裏では夫への憎悪で震えていたり、軽やかな小泉孝太郎に油断ならない一面があったりと、A面だけではない人間の分厚さが隅々に。キャスト陣の迷いのない演技に演出の力を感じるとともに、まとまりすぎて物足りなさも感じる。

◆「3年A組 今から皆さんは、人質です」(日本テレビ、日曜10時半)菅田将暉/永野芽郁

★★☆☆☆

教師が生徒を人質にとり、ある生徒の死の真相を暴いていく10日間の過激授業。爆破で教室を孤立化→菅田将暉が戦闘力発揮→「1人殺す」宣言→小さなヒントを仕掛けて観察、あたりまではスピード感があってわくわくしたけれど、その先は、教師が泣きながら生徒に自己批判を迫る長い長い説教ワールドになってしまった。あちこち破綻している作品を身ひとつで支えている菅田将暉の離れ業。個人的には「ソロモンの偽証」と「告白」をもう1度見たい。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)

映画ヒットで思い出す、クイーンが愛した本田美奈子

英ロックバンド「クイーン」のボーカル、フレディ・マーキュリーの半生を映画化した「ボヘミアン・ラプソディ」が記録的大ヒットを続けている。革命的な音楽性と熱い友情をスクリーンで見ながら、彼らに愛され、楽曲を作ってもらい、ヨーロッパツアーの楽屋にも招待された歌手、本田美奈子.さん(05年死去、享年38)を思い出した。こんな日本人歌手はいないと思うので、所属事務所の高杉敬二社長に当時を聞いた。

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クイーンのブライアン・メイと英ロンドンでレコーディングをした本田美奈子.さん(1986年10月)

-美奈子さんがクイーンのメンバーと会ったのはいつですか。

高杉 クイーンが人気絶頂だった86年のヨーロッパツアーです。11月のフランクフルト公演に招待され、終演後の楽屋にもおじゃまさせてもらいました。ギターのブライアン・メイが美奈子に曲を作ってくれて、10月に一緒にレコーディングした縁で。用意してくれた飛行機はファースト、ホテルはスイート(笑い)。30万人規模のコンサートなんて初めて見たし、前座がゲイリー・ムーアとペットショップボーイズ。何もかもがケタ違いのスケールで、美奈子も僕も圧倒されっぱなしでした。

-楽屋で会ったフレディはどんな人でしたか。

高杉 とても優しい人。豪華な食事が用意された中でメンバーや関係者とワイワイやっていて、美奈子のことは誰かの子供と思ったみたい(笑い)。ブライアンが「先月一緒にレコーディングした子で、とても歌がうまいんだよ」と紹介したら「おいでおいで」って隣に座らせてくれて、写真も撮ってくれて。「年はいくつ?」とか「歌はいつから始めたの?」とか、いろいろ話し掛けてくれた。人に対して壁を作らない、本当に魅力的な人。

-美奈子さんは何を話したのですか。

高杉 珍しく緊張しまくって、何もしゃべれなかったんですよ(笑い)。美奈子はデビューした年(85年)の記念すべき武道館コンサートの1曲目に「ボーン・トゥ・ラヴ・ユー」を選んだほどのクイーンのファンだったから。ジョン・ディーコンもロジャー・テイラーもみんなフレンドリーでよくしてくれた。「ボヘミアン・ラプソディ」を見ましたけど、彼ら4人の魅力が懐かしかったです。

本田美奈子.さんのレコード「GOLDEN DAYS」のジャケット

-ブライアン・メイに曲を作ってもらったのは、美奈子さんがクイーンのファンだったからですか。

高杉 そうですね。レーベルが同じEMIだったから、クイーンの担当だった宇都宮カズさんに冗談半分で仲介をお願いしたら、ビデオを添えて伝えてくれて、ブライアンからまさかのOKの返事が来た。「かわいくて歌がうまい」と。美奈子も本当に驚いて、みんなでワーッと大喜びしました。

-86年だと、「1986年のマリリン」のころですか。

高杉 そう。マリリンが大ヒットした後くらい。6~7月に「CRAZY NIGHTS」と「GOLDEN DAYS」の2曲を作ってくれて、10月にロンドンで2週間、一緒にレコーディングしました。日本語版の歌詞はマリリンの秋元康君にお願いして。当時の秋元君は、売れる前のスタートラインのところ。「この街のノイズは」とか、かっこいい詞なんだよね。日本の作詞家でクイーンとがっぷり組んだのは彼しかいないと思う。

-スタジオで、目の前にブライアン・メイがいるってすごいですね。

高杉 映画の通り、インテリで見た目もかっこよくて、人に優しい。美奈子を「ベイビー、ベイビー」ってかわいがってくれて。美奈子もなぜかブライアンには全然緊張していなくて(笑い)、一緒のディナーで料理を待つ間に居眠りしたこともあった。僕からブライアンに謝ったら「ベイビーだから寝かせておこう」って言ってくれたり。

-クイーン流のレコーディングはどうでしたか。

高杉 何もかもがケタ違い。ロンドンのブライアンのスタジオでしたが、2つのスタジオをつないで、(多重録音の)チャンネルが100以上ある(笑い)。音の厚みがすごいわけ。当時の日本は多くても48とか68とか。2つつないで百何十チャンネルなんて撮り方は考えつかないものでした。

クイーンのブライアン・メイと英ロンドンでレコーディングをする本田美奈子.さん(1986年10月)

-どちらも、クイーンサウンドを実感できる曲ですよね。

高杉 「GOLDEN DAYS」のオリエンタル風なイントロや、チクチクと刻むサウンドなどはまさにクイーン。ポップな曲調の「CRAZY NIGHTS」も、イントロの弾き方がいかにもブライアンのギターで。2曲完成した時は美奈子も「宝物だ」って飛び上がって喜んで。

-レコーディングは快調に進んだのですか。

高杉 歌唱にダメ出しはありませんでしたが、英語の発音はマンツーマンで指導してくれて、何テイクもやりました。音や完成度への徹底したこだわりは美奈子も大きな影響を受けたと思います。特に「GOLDEN DAYS」は、ブライアンが「この楽曲はUKでもやる」と急きょロンドンで記者会見まで開いて。現地の大勢のマスコミにプロデュースの理由を聞かれて「ベイビーがかわいいから。そして何より歌がうまい」と美奈子を絶賛してくれました。

-プロモーションのため、「GOLDEN DAYS」はミュージックビデオも撮っていますよね。映像の方でも名作ぞろいのクイーン流を体験しているのは貴重なことですね。

高杉 すっごいいい映像なんですよ。スタジオに広々と水を張って、真ん中に美奈子を置いて。つま先でポーンとやると、水に映った彼女の姿が揺れる、みたいな。11月で寒かったけど、理想の形になるまで足を温めながら20テイクくらいやって。美奈子も「メイクだけは自分でやる。そうでなければ自分が出ない」という信念だけは相手がブライアンでも譲らなかった。目尻を真っ黒にしたエキゾチックなメークをして出てきた時は、ブライアンも驚いて感動してくれて。

-映画でまたクイーンが脚光を浴びていますね。

高杉 僕のようなクイーンを知っている世代は納得だけど、知らない若い世代に響いているというのがすごいですよね。

-美奈子さんもフレディも、もういないのは残念です。

高杉 本当にね。美奈子はクイーンに出会ってから音楽へのこだわりが強くなって、バンドをやったり脱アイドルへの模索を始め、後にミュージカル、クラシックへと幅を広げていったのですから大きな存在です。05年に美奈子が亡くなった時も、ブライアンが追悼メッセージを寄せてくれて、美奈子の歌う「アメイジング・グレイス」にギターをつけてくれた。フレディはいないけど、ブライアンら3人はみんないますしね。美奈子とクイーンの交流は、当時も今も大きな財産です。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)

低視聴率でバカ売れ、おっさんずラブが示した稼ぎ方

2018年のテレビドラマ界。その目玉となったのが、4月期のテレビ朝日「おっさんずラブ」だ。平均視聴率4%。数字的には失敗作といわれる水準でありながら、感動コメディーがSNSで社会現象化。ツイッターの世界トレンド1位、流行語大賞、映画化決定など、半年たった今も圧倒的な話題性を放っている。低視聴率でも2次展開でバカ売れ。SNS時代のメガヒットを体現している。

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劇場版「おっさんずラブ」は2019年夏に公開される(C)テレビ朝日

テレ朝の早河洋会長は、「おっさんずラブ」の快進撃を「上期最大の収穫」と評価した。自社イベントや定例会見の場で「平均4%というのは視聴率的には失敗作といわれる数字だが、(勝機の)出口はいろいろあるということを十二分に達成してくれた」。視聴率で直接稼げなくても、動画配信や関連イベントなど、コンテンツの2次展開においてあらゆる可能性を示したことへの評価だ。

テレビ局の収入の柱は「広告収入」。番組のCM枠をスポンサー企業に買ってもらい、その売り上げで会社利益を得る。視聴率が高い番組ほどCM枠は高く売れる。視聴率1%の違いは営業上大きい。

一方、視聴率も頭打ちの中、各局が強化しているのが「おっさんずラブ」が体現した「放送外収入」のジャンルだ。内容は、動画配信やDVDセールス、イベント事業、出資映画からもたらされる収入など。2年前に大ヒットした「逃げるは恥だが役に立つ」(TBS)が、DVD、ブルーレイだけで20億円前後の売上高アップに貢献したケースは大きな話題になった。「おっさんずラブ」も、この分野での売り上げは記録的になりそうだ。

実際、視聴率以外はあらゆる場で記録を打ち立てた。最終回の見逃し配信は121万回再生超えとなり、DVD&ブルーレイの予約数とともにテレ朝史上1位。海外への番組販売は、韓国、台湾、米国など6カ国に及ぶ。シナリオブックなどの出版、「おっさんずラブ展」などの巡回イベント、コミック連載開始などのライツ事業、日めくりカレンダーなどのグッズ販売など波及は全方位。タイトルは流行語大賞のトップ10入りとなり、このほど「劇場版おっさんずラブ(仮)」(来夏公開)の制作も発表された。

テレビ朝日土曜ナイトドラマ「おっさんずラブ」(C)テレビ朝日

SNSからヒットの火が付くここ数年のドラマ界の流れの決定版でもある。キャラクターの魅力、爆笑&号泣のストーリー性、人を好きになる感動が受け手に刺さり、激アツな別れからまさかの次回予告となった6話は、視聴者のつぶやきが殺到し、ツイッターの世界トレンド1位に。世界的関心事である「UCLファイナル」を抜く快挙に「視聴率3・9%なのに世界規模の話題!」とネットニュースが沸き、社会現象化した。翌週の最終回も世界1位。ツイート数で「逃げ恥」超えを果たしている。

このSNSの勢いが視聴率に反映しないまま、賞や新記録で独自に強コンテンツ化したのが「おっさんずラブ」の特徴的なところ。SNSの「恋ダンス」ブームを発端に人気を上げ、最終回視聴率20・8%のパワーでその後の2次展開を押し上げた「逃げ恥」とは違う流れだ。そもそも低予算の深夜ドラマだったことを考えると、こんな人気の広がり方、稼ぎ方もあると業界に示したインパクトは大きく、新しい。

放送は6月に終わったにもかかわらず、新年1月2日には全話一挙放送(午前6時55分から)も決まり、夏には映画も公開される。おっさん旋風は2019年も続く。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)

「月9書いて」フジ大多氏14歳ヤンシナ大賞に感慨

「第30回フジテレビヤングシナリオ大賞」を受賞した鈴木すみれさん(右)。左は第1回受賞者の脚本家坂元裕二氏

「第30回フジテレビヤングシナリオ大賞」に14歳女子中学生、鈴木すみれさんの「ココア」(来年1月4日午後11時半)が選ばれ、創設30年の節目を史上最年少受賞で飾った。30年前、新枠の月9を書く脚本家がいないという切迫した裏事情で創設したヤンシナ。プロデューサーとして立ち上げに携わった大多亮常務は「30年も続くと思わなかった」と振り返り、中学生受賞に「月9も書いて」と祝福している。

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大賞受賞作「ココア」は、学校や家族から疎外された3人の女子高生が、生きる希望を見つけるまでのオムニバスストーリー。「東京ラブストーリー」「101回目のプロポーズ」などの敏腕プロデューサーでもある大多氏は「永山耕三(「ロングバケーション」「モンテ・クリスト伯」など演出)が読んで『坂元裕二以来の天才』と興奮していた」と明かし「小説家も中学生や高校生がたくさん出ている時代。14歳の大賞もおかしくない。特にヤングシナリオ大賞は、完成度より感性度が大切なので」と語る。

コンクールが創設されたのは87年。新枠の月9がまだ何のブランドでもない時代だった。書いてくれる売れっ子脚本家がおらず、同世代の作家を発掘して即登板してもらう目的で始まった。「あの時はとにかく脚本家が欲しい、自分たちの手元に置きたいというのが願いだった」。今や脚本コンクールのトッププランドに成長したことに「脚本がドラマの命であり、うちの財産になってくれるという強い気持ちが現場に脈々と受け継がれてきた結果」と話す。

脚本コンクールは各局にもあるが、ヤンシナの知名度と実績が群を抜いている背景には、即戦力主義で現場に出していく育成システムがある。大多氏が発掘した第2回大賞の野島伸司氏は、受賞から半年で連ドラ「君が嘘をついた」(88年)を書き、91年の「101回目のプロポーズ」まで毎年月9に起用されている。

大多氏は「最初は『そんな素人を使って』といろいろ言われましたけど、とにかく実戦で投げながら覚える」「ドラマ作りは、プロデューサーと脚本家のコンビネーション。それは現場でしか育たない。自分たちの書いたものが映像化され、視聴者の目に触れ、視聴率が出る。そういう体験を何度もしてお互い勉強していく」。出身者に他局で活躍されてしまうジレンマにも見舞われているが「それは創設当初から分かっていたこと。フジ出身の脚本家が多方面で活躍しているのはうれしい。その上で、うちをいちばんのフランチャイズにしてほしいという思いはあります」。

第30回フジテレビヤングシナリオ大賞「ココア」。左から、南沙良、出口夏希、永瀬莉子(C)フジテレビ

今も昔も、受賞後はプロデューサーとの二人三脚でオリジナル脚本を仕上げていくのが主な流れ。この10年を見ても、野木亜紀子氏(10年大賞)は14カ月後に「ラッキーセブン」、倉光泰子氏(14年大賞)は17カ月後に「ラヴソング」で月9デビューしている。

そう考えると、現在中2の鈴木さんが今後、月9でスピードデビューを果たすのも、なくはないようにも思える。小1から小説を書き始め、すでに6作仕上げているという創作意欲もある。大賞受賞作「ココア」も、中学生とは思えない筆致でぐいぐい読ませる世界観が印象的だ。現役中学生だから書ける16歳のせりふがみずみずしい一方で、「映画やドラマを見て、気持ちを想像して書いた」という不倫妻のベッドシーンなど、大人の世界も堂々と表現。「無限の可能性」(荒井俊雄審査委員長)という評価もよく分かる。

これまでの最年少記録は、第1回大賞の坂元裕二氏の19歳。その坂元氏を「最も尊敬する脚本家」と語る鈴木さんが記録を塗り替えたことにも歴史を感じる。その坂元氏と「東京ラブストーリー」などでコンビを組んだ大多氏は「14歳で月9書かせたら制作も大したもんだけどね」と、やはり即戦力目線。「僕のころはラブストーリーだったけど、最近のドラマは弁護士やお医者さんモノが多いからどうだろう。いや、書けるかもしれませんよ」と話している。

◆「ココア」(来年1月4日午後11時半放送) 出演は南沙良、出口夏希、永瀬莉子ら。自分、家族、友達など、愛せないものに悩む3人の女子高生の青春群像劇。母親の不倫相手役として斎藤工が出演。

◆ヤングシナリオ大賞でデビューした主な脚本家 【大賞】坂元裕二、野島伸司、尾崎将也、金子ありさ、安達奈緒子、金子茂樹、古谷和尚、野木亜紀子、小山正太、倉光泰子ら【佳作など】水橋文美江、橋部敦子、浅野妙子、いずみ吉紘、武藤将吾、黒岩勉ら。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)

王者TBSラジオ「脱聴取率」の挑戦は業界変えるか

TBS外観

TBSラジオ三村孝成社長が11月28日の定例会見で、聴取率の調査期間に行っている「スペシャルウィーク」をやめ、今後は特別な編成やプレゼント企画を行わないと発表した。長く業界が争ってきた聴取率からの脱皮宣言だ。17年連続首位、V100を達成したリーディングカンパニーの決断は、低迷するラジオ業界にどう影響するだろうか。

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ビデオリサーチによる首都圏ラジオ聴取率調査は、2カ月に1度、1週間ずつ行われ、翌月に発表されている。この期間はスペシャルウィークとして各局が豪華プレゼントや豪華ゲストを用意し、お得感の過当競争を呈しているのが現状だ。中には露骨すぎてリスナーから「通常放送の方がいい」と煙たがられるケースもある。必ずしも媒体価値の向上につながっていない現状に歯止めをかけようとしたのが、今回の三村社長の「スペシャルウィークやめます」発言だ。

背景には、聴取率目当てでどれだけプレゼント攻撃を仕掛けようと、ラジオ業界に勢いが出ない現状がある。業界全体の放送収入は25年間下がり続け、SIT(セッツインユース=放送を受信しているラジオの割合)は史上最低の5・2%。対象受信機が100あれば、95人は聴いていないということで、景品作戦は効果がなさげなのだ。

代わりに三村社長が番組作りの参照データとして注視するよう社内に通達したのが「ラジコ」のデータ。パソコンやスマホで無料でラジオを聴けるサービスとして9年前に登場し、すっかり聴取スタイルとして定着している。24時間365日、リアルタイムでリスナーの数と動きを知ることができる。現場ではとっくにラジコのログをチェックしながらの番組制作が進んでおり、あらためてここに一本化しようという話だ。

三村社長は「年52週のうち、6週間しか調査されないデータを金科玉条のように気にするのはナンセンス」。大事なのは新規リスナーの獲得とし「プレゼントをするにしても、わざわざ調査週にやるのではなく、引っ越しや入社の春など、最適なタイミングについて個々の番組がアイデアを絞るべき」。同じようなことは、ライバル局も感じているようだという。

今年最後の定例会見で他局に先駆けて方針を打ち出したことについては「V100を達成し、1位の時にやる方がいいかなと思った」と明快だ。方針はあくまでも制作現場に向けた話で、広告・営業上の議論はこれから。「今後の聴取率調査のあり方について、ラジオ業界全体で考えていきたい」という。

とはいえ、TBSラジオの「17年4カ月首位」「V100」はいずれも聴取率の称号。ここに限っては聴取率に胸を張るというのも矛盾を感じる。と思ったら三村社長の腹はとっくに決まっていて「だからね、これからはもう言いません」とあっさり。トップの意志が明確で、現場もやりやすそうだ。とりあえず“脱スペシャルウィーク”の挑戦は、10日から始まる12月期調査からスタートする。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)

日曜夜に異変、イッテQに迫る「一軒家」と「天才」

民放各局の10月改編説明会資料

民放10月改編で2年ぶりに勃発した“日曜バトル”が活発化している。日本テレビ「ザ!鉄腕!DASH!!」(午後7時)と「世界の果てまでイッテQ!」(午後8時)の牙城に挑んだテレビ朝日とTBSの新番組が2ケタ視聴率に乗せ、見違えて戦える状態になってきた。「DASH」「イッテQ」の相次ぐ激震という“敵失”もあり、日曜バトルはかつてない争いになりつつある(視聴率はビデオリサーチ調べ、関東地区)。

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18日の日曜(午後7時、8時)は、3局とも2ケタ視聴率が並ぶ戦いとなった。

◆日本テレビ 「DASH」13・6%、「イッテQ」16・5%

◆テレビ朝日 「じゅん散歩SP」(7時~9時)11・6%

◆TBS 「消えた天才」(7時~9時)10・7%

日曜バトルで大健闘しているのが、テレ朝の「ポツンと一軒家」(午後8時)だ。18日は「じゅん散歩SP」で放送がなかったが、10月から「イッテQ」の裏でレギュラー放送が始まると、11・8%(10月14日)、12・8%(同21日)、13・7%(同28日)、14・4%(11月4日)、15・4%(同11日)と猛烈な勢いで視聴率を上げ、今月11日は「イッテQ」の16・6%にあと1・2%と肉薄した。6時半から90分枠の「ナニコレ珍百景」も10~11%台の2ケタで健闘中。「スポーツ大将」「日曜アメトーク」で1ケタを刻んでいた改編前とは見違える戦いぶりとなっている。

TBSも、18日の「消えた天才」が10・7%を獲得し、2ケタに乗せた。こちらも、改編前の「ピラミッド・ダービー」や「東大王」(水曜へ枠移動)が5~7%あたりの戦いだったことを考えると見違える。7時台の「坂上&指原のつぶれない店」が2ケタ番組に成長すれば、日曜7時、8時は3局が2ケタ水準でしのぎを削る活況となる。

ざっくり調べたところ、スポーツの世界戦やM-1グランプリなどの特番を除き、レギュラーもので3局が2ケタで並ぶのはここ4~5年はなく、最も惜しいのは14年2月2日(「DASH」18・7%、「イッテQ」20・6%、TBS「駆け込みドクター」10・9%、テレ朝「シルシルミシルさんデー」9・9%)までさかのぼる。いかに「DASH」と「イッテQ」が盤石だったかということだ。

しかし、そんな両番組も最近は少々様子が変わってきた。昨年、年間平均19・7%という驚異的な視聴率を記録した「イッテQ」は、TBSとテレ朝の挑戦を受けたこの10月以降20%超えはなく、16・8%(10月28日)、16・6%(11月11日)など16%台もちらほら。目玉コーナー、祭り企画のやらせ疑惑も浮上し、テロップで謝罪した18日放送分も16・5%だった。「DASH」も、元TOKIO山口達也不在で初めて放送された5月13日の20・8%を最後に下降。10月以降は13%~14%台で推移している。

ライバル局関係者は「日テレさんの背中が見える時も出てきた」「今回は準備万端の自信作で勝負している。歯が立たずに死屍(しし)累々だった今までとは違う」「敵失とはいえ、チャンスはチャンス」と、これまでとは目の色が違う印象だ。

民放が日曜夜を特別視してバトルを繰り広げるのは、ここが1週間の流れと局の勢いを左右する編成の本丸であるためだ。在宅率が高く、各局がファミリー向けの重点番組を並べる目抜き通り。枠の広告料も他曜日より高い。ここで弾みをつけて月~金曜につなげ、ステーションイメージを上げていく。日テレが4年連続視聴率3冠であるのも、日曜を制してきたことが大きい。

長年にわたり日テレの日曜を支えてきた「DASH」の激震と、「イッテQ」の金属疲労。追い打ちを掛けるように、同局は先月、足掛け5年にわたる月間視聴率3冠を逃している。日曜バトルの行方が業界の勢力図に影響するのか、しないのか、注目したい。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)

8Kで見た!「2001年宇宙の旅」超精細な臨場感

12月1日に開局する「NHK BS8K」で世界で初めて8K放送される映画「2001年宇宙の旅」を試写した。8K並みのクオリティーを持つ70ミリフィルムで撮影されながら、ポテンシャルを発揮できる場がほぼなくなっていた同作。8Kでよみがえった本来の映像は、宇宙船の細かなディテールまでよく見え、クリアな色彩も想像以上だった。8Kなんて必要ないと思っていたけれど、美しさと臨場感は圧倒的だった。

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「8K完全版 2001年宇宙の旅」(C)Turner Entertainment Company

試写会は今月7日、300インチのスクリーンを持つNHK内の試写室で行われた。液晶モニターではないのでテレビの見え方とはちょっと違うが、通信やAV機器の専門メディアの記者たちは「思ったよりすごい」と感想を語り合っていて、堪能したようだ。

8Kの解像度は一般的なハイビジョンテレビ(2K)の16倍。漆黒の宇宙空間や、謎の物体モノリスの質感など、臨場感が格段に違う印象だ。木星探査に向かう宇宙船ディスカバリー号の細かなディテールには息をのむ。ただでさえ緻密な外観は、ぼやけたりにじんだり暗かったりした細部までくっきりと見えて、ダクトのデザインまで伝わってきた。コクピットも、さまざまなパネルの細かな表示がよく分かるので、作品もファンは楽しいかも。

ディスカバリー号の人工知能HAL9000も、赤がはっきりして、奥まで見えて迫力がある。終盤のロココ調の部屋では、クリーム色だと思っていた壁に微妙な色が入っていたり、何を食べているのかよく分からなかった黄色いものがあの料理かと分かったり。スターゲートに突入する極彩色の場面は、8Kの最も得意とするところで圧巻だった。

「8K完全版 2001年宇宙の旅」(C)Turner Entertainment Company

「2001年宇宙の旅」は、50年前の1968年に公開されたスタンリー・キューブリック監督のSF超大作。当時35ミリフィルムが主流だった映画界において、最高クオリティーの70ミリフィルムで撮影された作品だ。4Kを超える情報量を有し、8K並みのクオリティーを持つが、70ミリで上映できる環境は非常に限られ、本来のポテンシャルで見る機会はほぼなくなっている。

NHK編成局の坂本朋彦チーフ・プロデューサーによると、同作の世界初の8K放送は、作品を管理しているワーナー・ブラザースにNHKが呼び掛けて実現した。ワーナー側が専門チームにフィルムの修復と8Kスキャンを依頼。約1年かけて本来の映像が8Kで再現された。

「8K完全版 2001年宇宙の旅」(C)Turner Entertainment Company

坂本氏は「ネガにあるものを大事にするキューブリック監督の意図を何よりも優先し、監督が意図したもの以上でも、以下でもない、劇場公開時に近いものになるように作業が行われました」。作業チームも、8K版の臨場感に息をのんだという。「監督の美学が、細部にまでデザインされて構築されているのがよく分かる。CGもない50年前の作品なのに、まったく古びていない。キューブリックが撮ったものがどれだけすごいかが分かったのも8Kならでは」と話す。

放送は、「BS8K」で12月1日午後1時10分から。8Kテレビや対応チューナー、アンテナが必要で、自宅で視聴できる人はごく一部であるのが現状だ。見るには、各地域のNHKや、8Kテレビをデモする家電量販店に足を運ぶのが現実的なようだ。試写はスクリーンだったので「より解像度を体感できる」という液晶も、当日どこかでちょっと見たい。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)

話題作よりテレ東の唐沢寿明が面白い/秋ドラマ評

10月期の秋ドラマが出そろった。今期もマンガ原作が多い中、「獣になれない私たち」「大恋愛」など人気脚本家のオリジナルも話題。月9ドラマ「SUITS/スーツ」での織田裕二と鈴木保奈美の27年ぶりの共演や、「黄昏流星群」「今日から俺は!!」などバブル世代を意識した作品も並ぶ。「勝手にドラマ評」36弾。今回も単なるドラマおたくの立場から、勝手な好みであれこれ言い、★をつけてみた(シリーズものは除く)。

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フジテレビ月9ドラマ「SUITS/スーツ」

◆「SUITS/スーツ」(フジテレビ、月曜9時)織田裕二/中島裕翔/鈴木保奈美

★★★★☆

米ドラマのリメーク。エリート弁護士と天才フリーターのバディもの。攻めっ気と精神力の鬼みたいな主人公を織田裕二がニヤけたどっしり感で演じ、随所に発想の刺激があって楽しい。中島裕翔も、天才的記憶力と経験不足がアンバランスな新参者を若々しく表現。「お前が弁護士失格なのは、本気じゃないからだ」。つかず離れずの信頼関係がきちんと絵になっているだけに、アメリカンなジェスチャーや倒置法でのジョーク、吹き替え風のせりふ回しなど、しつこい本家感は逆に覚める。15分延長がなかった3話はテンポよく見られた。ドラえもんのポケット並みに優秀なスーパー秘書ドナ(中村アン)がその他大勢な扱いで少々悲しい。

テレビ東京ドラマBiz「ハラスメントゲーム」

◆「ハラスメントゲーム」(テレビ東京、月曜10時)唐沢寿明/広瀬アリス/古川雄輝

★★★★★

パワハラの汚名で地方スーパーの店長に降格された敏腕が本社復帰し、あらゆるハラスメント事案を解決。「頑張れ」さえもハラスメントと言われる息苦しい時代に、悟りすぎて逆に社内自由人な秋津室長がカジュアルに突っ込む展開にわくわく。1話は異物混入事件とパワハラ、2話はパート一揆と世話ハラ。炎上フローと人間の機微を誰よりも理解していて、合理的な大岡裁きに二重三重の見ごたえがある。何も注意してもらえない方がよほど残酷で無慈悲なパワハラなのだという秋津の言葉に共感でき、「頑張れって言ってもいい?」の着地にぼろぼろ泣けた。キーキーと優等生な部下、広瀬アリスとのコンビも良く、ダークな社内政治の行方も分厚い。

◆「僕らは奇跡でできている」(フジテレビ、火曜9時)高橋一生/栄倉奈々

★★☆☆☆

「何やってるんですか」「カエルと歌ってます」。ルールや興味、対人関係に独特のものさしを持つ生物学講師の純真ワールドで、見る人によって好みが分かれそう。森の楽器っぽい音楽や、シュガーパウダー系のふんわり映像がデリケートな主人公の輪郭になっていて、「みんなちがってみんないい」の精神が満載。「カメは勝ちたいのではなく、ただ前に進むのが楽しいんです」。ささやかな種を提供して「あなたはどうですか」と“気付き”をいざなうテイストだが、抽象的に問い掛けておけば真理っぽいみたいなねらいが難解すぎて、何の話かよく分からなかった。エリート女性の手詰まり感がうまい栄倉奈々と、器が小さすぎる彼氏の展開の方が気になる。

TBS火曜ドラマ「中学聖日記」

◆「中学聖日記」(TBS、火曜10時)有村架純/岡田健史

★★★★☆

中学教師と教え子の禁断の恋。純真ゆえのルーズな先生を有村架純がエロい湿り気で演じていて、先生ごっこの不安定と、ガラスの10代の不安定が共鳴し合っていく愚かさがそこそこの格調で描かれている。先生に教えてもらった漢詩を暗記していた黒岩くんの聡明さと、雨の中の2人の暗唱はプラトニックな官能名場面だった。新人、岡田健史の手あかのついていない横顔が黒岩くんの危なっかしさと重なるだけに、体格的に中学生に見えないのが残念。普通に「高校聖日記」で良かったのでは。美しい風景をしっかり物語にする映像と、心象風景を彩るピアノ音楽の演出力。先が見える話を今後どう展開させるか注目。主演より吉田羊が目立ってしまっている。

日本テレビ水曜ドラマ「獣になれない私たち」

◆「獣になれない私たち」(日本テレビ、水曜10時)新垣結衣/松田龍平/田中圭/黒木華

★★★☆☆

パワハラ上司、使えない同僚、優柔不断な彼氏、迷惑な血縁などの「獣」にNOと言えない過剰適応型OLの「バカになれたらラクなのに」な疲弊生活。ガッキーがいきなりのパンクファッションで反撃開始かと思ったら、3話になっても自己愛の沼で立ち往生していて話が進まず、テレ東の唐沢寿明にちゃちゃっと解決してほしくなる。松田龍平の立ち位置もよく分からない。共感はあってもあこがれがないのは私にはしんどい。「こんな人になりたい」「このチームに入りたい」「あの男かっこいい」などあこがれ要素満載だった「アンナチュラル」との差を感じる。好みは人それぞれとはいえ、野木亜紀子×新垣結衣の話題作で視聴率が8%台と「ドロ刑」を下回り、プロデューサーの責任は重い。

テレビ朝日木曜ドラマ「リーガルV~元弁護士・小鳥遊翔子~」

◆「リーガルV」(テレビ朝日、木曜9時)米倉涼子/向井理/林遣都

★★★☆☆

弁護士資格を剥奪されたスキャンダラスな女が、若手弁護士やペーパー弁護士をこき使いながら勝訴を勝ち取る。一匹狼でわが道を行くより、人をうまく使う方がはるかに難しいので、個人的には「ドクターX」よりこちらのしぶとさの方が好み。鉄道マニアの設定が空回り気味だが、1話はうまく機能。鉄道知識とファッション情報を組み合わせ、見たことない角度から痴漢冤罪(えんざい)を立証した。金の匂いで手のひらを返す不二子っぽさと「資格がないと人を救っちゃいけないの?」という正論に巻き込まれかいがある。ポチの林遣都と、使えるチャラ男、三浦翔平の配置もいい。2話以降は土曜ワイド劇場っぽい。

フジテレビ木曜劇場「黄昏流星群」

◆「黄昏流星群」(フジテレビ、木曜10時)佐々木蔵之介/黒木瞳/中山美穂

★★☆☆☆

人生折り返し地点を迎えた中高年の不倫ラブストーリー。出世争いに敗れた夫(佐々木蔵之介)はスイス旅行、妻(中山美穂)は家でハーブティー作り、清純派の愛人はお洋服もお帽子も白。バブルムーブメントとはいえ、この世界観と弘兼憲史氏独特の女性観が強烈すぎて、ラブストーリーが頭に入ってこない。スイスでロケできるほどバブルではなく、残念なクオリティーのCGをバックに「山がお好きなんですか」「エーデルワイスが見たくて」「僕もです」「あ、流れ星」。俳優陣が気の毒になった。次が気になる展開にはなっているものの、どこを楽しんだらいいのか、コツと心の置き所がまだ分からずにいます。

TBS金曜ドラマ「大恋愛~僕を忘れる君と~」

◆「大恋愛~僕を忘れる君と」(TBS、金曜10時)戸田恵梨香/ムロツヨシ

★★★★☆

若年性アルツハイマーの女性医師、尚と、バイトで暮らす元小説家、真司の10年愛。出会いから病の判明まですべて偶然で済ませる大石静先生の雑な1話になえたが、2話から病の進行と2人のきずなの一本道で分かりやすい。真司が孤児ゆえに、初めてできた“身内”を大切にする衝動に説得力があり、2人のストーリーに集中できる。楽しすぎるお祭りで爆笑しながら泣く戸田恵梨香の女優力。幸せと、自覚症状が増す不安の両輪で「余命3カ月の方がよほどいい」という苦しみも伝わってくる。彼女を励まそうと3話からムロがちょっと面白くなってきて、キメキメで恥ずかしかった1話より人間味もかっこよさも増した。富沢たけしの働きと、バックナンバーの主題歌が無双。

◆「ドロ刑-警視庁捜査三課-」(日本テレビ、土曜10時)中島健人/遠藤憲一

★★★☆☆

窃盗犯を扱う新人刑事が、大泥棒、煙鴉(けむりがらす)の助言を受けながら一人前のドロ刑になるまで。24時間テレビの石ノ森章太郎役で一皮むけた印象の中島健人。カメラにキメ顔のアイドル路線ではなく、原作の真っすぐな熱血漢でもいけたのでは。若年層向けの枠だと思えば、ダメなチャラ男という設定もなくはないが、「俺がお前を最強のドロ刑にしてやる」という遠藤憲一のまなざしが親身なお父さんみたいで、酔狂なヒリヒリ感が薄まっているのは残念。とはいえ、原作も脚本もすっきりしているので、土曜の夜にさくっと楽しむにはいい。泥棒捜査のいろはや、防犯豆知識も楽しい。煙鴉の本当のねらいと、2人の結末は興味がある。

TBS日曜劇場「下町ロケット」

◆「下町ロケット」(TBS、日曜9時)阿部寛/土屋太鳳/竹内涼真

★★★☆☆

3年ぶりの続編。頓挫したロケット開発のゆくえと、トラクターという新たな挑戦。町工場が大企業をぎゃふんと言わせるフォーマットのもと、競合大手とのコンペ決戦、銀行との戦い、ずるい大企業からの特許侵害のイチャモンなど、置かれたハードルはほぼ同じ。ワンパターンに苦笑しつつも、少年マンガの「努力、友情、勝利」の3要素を外さないので、つい見てしまう。イモトアヤコが味方の天才エンジニアという重要な役で登場。ものづくりへの誠実さを端正に演じ、「分からないんですか、このバルブのすごさが」から始まる1分間の涙のシーンに応援しがいがあった。お笑い勢、古舘伊知郎、福沢朗、古坂大魔王など異業種ばかりで画面が相変わらずうるさすぎる。

◆「今日から俺は!!」(日本テレビ、日曜10時半)賀来賢人/伊藤健太郎

★★★☆☆

伝説のヤンキー漫画をコメディー界の奇才、福田雄一氏が実写ドラマ化し、いつものおふざけワールド。主題歌「男の勲章」をキャストがバンド演奏し、地デジ前の映像と80年代のフォントで仕上げたオープニングがよくできている。卑怯さがキレキレの三橋と、正面突破の伊藤。空手28段、両目にばんそうこう、バンチラをガン見などのギャグ要素から乱闘シーンの一瞬の色気まで、賀来賢人と伊藤健太郎がフルスイングで演じている。1話は監督と俳優の自己満足なノリが面倒だったが、三橋が恋をした2話から少しストーリー性が出てきた。なんだかんだ女に弱い漢ぶりと、ほんのちょっとの義理人情というヤンキードラマのツボは押さえている。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)

フジ復活の切り札、社内プレゼン大会は実を結ぶか

フジテレビ「第3回企画プレゼン大会」の様子

フジテレビが、バラエティー復活への試みとして立ち上げた社内イベント「企画プレゼン大会」が先ごろ行われた。企画力向上と、若手ディレクターの発掘・育成が目的で、入社3年目でゴールデンのレギュラー枠を射止めるシンデレラボーイも輩出している。3回目となる今回も「フジテレビを自分の手でもういちど1位にしたい」という20代が続いた。若手パワーで何かが変わるだろうか。

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大会の名称は「13階クリエイター企画プレゼン大会」。13階とは、バラエティー番組を制作する第二制作室のフロア階数。所属ディレクターや制作会社スタッフから次世代のスタークリエイターが生まれることへの願いを込めた。59本の書類審査を勝ち抜いたファイナリスト8人がそれぞれ3分のプレゼンを行い、会場に集まった社員約130人が投票。その場で順位が決まり、金銀銅のメダルに輝いた企画は特番枠での放送が約束されるという「フジテレビ初」(編成局)のオープンな試みだ。

立ち上げの背景には、やはり「フジテレビバラエテイー復活」への強い思いがある。昨秋、視聴率低迷で「非常事態宣言」を行った同局は、17年秋、18年春、18年秋の3改編で攻勢に転じる計画を発表し、総仕上げの秋を迎えている。情報番組とドラマが復調の兆しを見せ始めた中、あとはバラエティー待ちの状態となっている。

編成局制作センターの坪田譲治担当局長は「ジャパニーズドリームというか、いい意味での競争や闘争心というフジテレビの文化をもう1度掘り起こしたい」と意図を語る。現場時代に「なるほどザ・ワールド」「SMAP×SMAP」「笑っていいとも」などを手掛け、約10年ぶりに担当局長として古巣のバラエティー畑に戻ったばかり。「バラエティーは20打数1安打が当たり前の世界。ヒットの打率を上げるためにも、まずは打数を増やすことが大事」と明快だ。

結果は出始めている。昨年9月の第1回は、入社2年目の千葉悠矢ディレクターが金メダルを獲得した。プレゼンした「超逆境クイズバトル!! 99人の壁」は1対99の斬新なフォーマットが話題を呼び、3回の特番放送を経て、この10月から土曜7時のゴールデン枠へ大出世した。25歳の総合演出誕生は、テレビ界でも大きな話題だ。

ほかにも、制作会社スタッフが企画した「ロケ最強芸人決定戦 外王」や、報道からの転身組が“世の中で禁止になっているもの”に焦点を当てた「NG調査団」、「FNS歌謡祭」など音楽番組を手掛ける女性ディレクターが企画した夢バラエティー「夢の数だけ抱きしめて」など、フレッシュな企画が次々と特番放送され、フジのバラエティーを活性化させつつある。

坪田氏は「入社2年目が金メダルという下克上は、第二制作室のベテランにも若手にもいいモチベーションになった。若手は実績や知名度がないゆえに企画が通りにくかったりもするので、その場の投票で枠をゲットできる場は大きな刺激になる」。さまざまな部署の社員の投票というシステムも「編成マンの選び方と違い、『見てみたい』という一般視聴者の視点に近い。価値観の多様性を社内に広げていくことは大事なこと」と話す。

今回優勝したのは43歳の木村剛史ディレクター。かつて入社5年目で「トリビアの泉」を立ち上げたヒットメーカーだ。“フレッシュな手腕”とは対局の横綱プレゼンで会場を圧倒し、「複雑な気持ち。若手の芽を摘む形になってしまった」と頭を抱えた。プレゼン大会について「その場で結果が出て枠をもらえるという試みは入社以来なかったこと。いい若手も育っている中、立てるバッターボックスがあるのは大きな意味がある」と話す。

銀メダルは入社5年目の田中良樹ディレクター(27)。第1回目で後輩の千葉ディレクターに先を越されたことに「悔しい思いをした」という。今回、芸能人が高校に戻って青春を取り戻す「1日転校生!」で、入社以来初めて企画を通し、感激もひとしお。田中さんは「新しいことをやろうという今の風土は、入社のころにあこがれたフジテレビそのもの。民放3位の時に入社したが、自分の手でもういちど1位にしたい」と、現場の士気も上がってきた。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)

フジモンVSフルポン村上、プレバト名人爆笑大舌戦

俳句ブームをけん引するTBS系バラエティー「プレバト!!」(木曜午後7時)。5年前に始まったプレバト俳句は、今や5人の名人と10人の特待生が昇段ピラミッドにひしめき、季節ごとにタイトル戦が行われる活況にある。番組初期からの功労者、FUJIWARA藤本敏史(名人9段)と、わずか2年で名人8段に駆け上がった俳句エリート、フルーツポンチ村上健志。何かと対照的な2人が、名人トークバトルを展開した。

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俳句について語るフルーツポンチ村上健志(左)とFUJIWARA藤本敏史(撮影・丹羽敏通)

-藤本さんはプレバト俳句の功労者ですよね。

藤本 そうですね。だから村上みたいに後から乗っかってきて目立つやつは腹立たしいですけどね。教材や情報がたくさんある状態で始めている村上と違って、僕は五七五から始めてここまできたのでね。

-俳句を作ることになった時は驚いたのでは。

藤本 めちゃくちゃ思いましたよ(笑い)。ゼロからですもん。お笑い芸人だから笑える俳句がほしいのかなと、勝手に考えて出したら夏井いつき先生にブチギレされまして。俳句はひどいわ、笑いにもなってへんわで。

-どんな句ですか。

藤本 「紅葉(もみじ)より 舞妓はん見て 高揚す」(部屋中爆笑)。

村上 あー、これはダメ句だなあ(しみじみ)。

藤本 紅葉と高揚をかけてます、みたいな。そら先生怒るやろ(笑い)。だからこそ「よっしゃ次」となったのもありますね。こんだけ言われて、今に見ていろと。3作目の節分で1位になって、ほめられた時はめちゃくちゃうれしかったです。

-「節分の 次の日靴に 豆ひとつ」。ほっこりとした光景が浮かぶすてきな句ですよね。

藤本 自分の実体験を俳句にしました。何もないところから想像で書くより、僕の場合はそっちの方がリアリティー出るかなって。映画やCMで見たワンシーンのイメージとか。ちょっとワザをつかんだ気がしました。俳句に関しては努力しましたね。昔の有名な人の句を調べたり、ネットで一般の人のを見たり。「こういう俳句いいなあ」と、そこから始めました。

俳句について語るFUJIWARA藤本敏史

-「山あいの 秋雲工場 フル回転」「はこね号 これより初夏に 入ります」「マンモスの 滅んだ理由 ソーダ水」など、ファンタジーな作風は意外でした。

藤本 この顔がじゃまをして、僕本来のファンタジーさが伝わらないとこありますけど、ディズニーとか、昔からかわいいものが大好きなんです。

-マンモスとソーダ水を組み合わせる発想がすごいというか。

藤本 勉強するうち、まったく別のもののカットを重ねる作り方もあるんだと知って。

村上 二物衝撃ね。

藤本 (イラッと)こういう教養が鼻につきますね。青学出身で。

-努力型の藤本さんとは対照的に、村上さんは超スピード出世。「コスモスや 女子を名字で よぶ男子」「テーブルに 君の丸みの マスクかな」の2作で夏井先生に「この人は本物」と激賞されて特待生になり、名人位も最速で駆け上がってもう8段。これまで「運動神経悪い芸人」などのヘタレ枠が多かったので、言葉のエリートぶりに圧倒されます。

村上 僕が俳句にしたいと思うテーマは絶対間違っていないと、報われた気持ちでいっぱいですね(にやにやと)。飲み屋でみんなに「気持ちわりぃな」とか言われる感性を、俳句の世界だとほめてもらえる。居場所を見つけたって感じですね。

藤本 お笑い界で居場所がないから。

村上 やめてくださいよ、マジでここしかないんだから。もともとプレバトに出る1年くらい前、「サラダ記念日」を読み直したのをきっかけに短歌を趣味で始めていたんです。短歌との違いは、俳句は映像であること。主役である季語と、や、かな、けり、みたいな切れの文化。3作目くらいで俳句のコツがちょっと分かってきて。

俳句について語るフルーツポンチ村上健志

-梅沢富美男さんらと番組初期からプレバト俳句を盛り上げてきた藤本さんは、このスピード出世にジェラシーはないですか。

藤本 ないですね。

村上 あってくださいよ。

藤本 お笑いで抜かれる心配はないし、彼に僕の俳句のようなファンタジーの魅力はないですから。マスクの句なんか、気持ち悪くないですか? 女の子がテーブルに置いたマスクを見てる男ってどうかと思うわ。ギリギリのとこですよ、ロマンチストと変態の。

村上 だから、そういう気持ち悪いのもよしとされる世界じゃないですか。

-気持ち悪さはさておき、村上さんの俳句はどれもショートムービーが撮れそうな世界観と作家性があって、私は好きですが。

藤本 (噴き出して)確かにね。村上のすごいところはね、恋愛にあこがれる耳年増な中学生のような、そないに恋愛したこともないのに想像力がもう。うはは。「オルゴールの ネジ巻く妊婦 窓の雪」って全然分からん(笑い)。結婚もしてないわ、子供もいてないやつが「妊婦」って何言うてんねんと(ひたすら笑う)。想像力が超豊かですわ。僕は実体験しかムリですもん。

村上 僕はどこまでも飛んでいけますよ。

-想像力の広げ方は。

村上 お題の写真を見て、想像し得ることを全部書き出すんです。ラジカセの写真なら、スーパーの鮮魚コーナーのラジカセとか、実家の押し入れのコンポとか、盆踊りのラジカセとか。太鼓は人間がたたいてるけど笛だけラジカセ、みたいな小さい盆踊りがあったら泣けるな、とか、物語のように。

「プレバト!!」秋の俳句タイトル戦「金秋戦」での藤本敏史(左)と村上健志(C)MBS

-実体験をベースにする藤本さんと、想像力の村上さんという対比がいいですよね。村上さんから見た藤本さんの俳句の魅力と弱点は。

村上 魅力は、楽しい感じがするところ。一見、幼稚に見えかねない言葉を使っているんだけど、ちゃんといい。うまいっしょ、みたいな感じを出さないさりげなさがあるんです。弱点は、まだ俳句がよく分かっていないところ(笑い)。季語の意味とか、まだ全然勉強していないと思う。気を抜いたら、最初の「舞妓はん 高揚す」を作った人にいつでも戻れちゃう。

-プレバト俳句といえば夏井先生の毒舌と劇的添削ですが、先生のすごいところは。

藤本 添削のあざやかさはもちろん、毒舌でいじったりする時の言葉のセンスはピカイチですね。きついだけじゃない。国語の先生だけあって、悪く言う時もちゃんと笑いになるんですよね。勉強になります。

村上 「ここは残してあげなきゃ」という作者の思いを残して添削するところ。僕なんか30点の俳句見たら「どうにもなんないから違うの考えろ」としか言えませんから。

俳句について語るフルーツポンチ村上健志(左)とFUJIWARA藤本敏史

-いよいよタイトル戦の金秋戦です。今回は5人の名人と特待生8人の13人での戦い。この活況に、初期メンバーの藤本さんは感慨深いのでは。

藤本 うーん…。でもほとんどおっさんなんで(笑い)。(リストを見て)これじゃダメですね。よこしまな考えじゃなく、もっと若い女の子の力や感性が入ってきてくれたら、もっと盛り上がると思うんですけどねぇ。女優の吉本実憂ちゃん(21)の、「…」とか書いてたやつ(「台本の ラストの『…』 春の宵」)。あれ良かったなあ。

村上 あれうまかったですね。番組で、若い女優さんやタレントさんの俳句を鍛える合宿みたいなのやってほしいです。僕が教えるんで!

-若い女子力が足りないという視点の合致はさすが名人だと思います。息のあったライバルなんですね。

村上 そうですね。8段なんで、年内に藤本さん(9段)を抜きますよ。

藤本 お笑い界に居場所がない村上は、俳句に対する思いが僕らとは違いますからね。ええ。抜いてもらって全然大丈夫です。

◆フジモンの主な俳句

「肩車 子の鼻先に 触れる梅」(梅の湯島天神)

「羊群の 最後はすすき 持つ少年」(箱根のすすき)「セイウチの 麻酔の効き目 夏の空」(海)「大仏の 御手から月は 生まれます」(月と鎌倉大仏)「タッパーを 持ってモツ煮屋 春の宵」(ラーメン屋台)

◆フルポン村上の主な俳句

「初日記 とめはねに差す ひかりかな」(新春の富士山)「春の月 消しゴムのカス あたたかし」(梅と太宰府天満宮)「村祭 ラジカセが笛 担当す」(ラジカセ)「真夜中の 花屋の灯り 秋澄めり」(駅の花屋)「作家別に 揃え直して 夜は長し」(古書店街)

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)

健康番組もういい…見えない視聴率で変わる改編戦線

民放各局の10月改編説明会資料

民放各局が10月改編の発表を終えた。健康番組などこれまでの中高年シフトとは一線を画し、各局の新番組は“コア層”と呼ばれるファミリー層、若者層を意識したラインアップとなった。高齢者相手に視聴率をとっても「スポンサーのニーズはそこにはない」というここ数年の事情が、タイムテーブルに表れてきた形だ。「世帯視聴率をとるために高齢者向けの番組を作るつもりはない」(フジテレビ)と、脱中高年シフトを宣言する局も出てきた。

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私たちが普段目にしている視聴率は、世帯視聴率のこと。誰が、ではなく、各世帯がどの番組を見ているかをビデオリサーチ社が計測したもので、テレビ局が「最高視聴率○%を記録!」「今期連ドラ1位!」などと発表している数字はすべてこの世帯視聴率だ。

今や夜帯にテレビを見ている人の約7割が50歳以上といわれる時代。世帯視聴率を上げるには60代、70代あたりにウケる番組を作るのがセオリーで、結果的に中高年タレント多数出演の健康番組が量産されてきた。しかし、民放の中堅営業マンは「スポンサーはもう健康番組を望んでいない」。数字の大半がモノを買わない高齢者層であるのは魅力薄で「スポンサーのニーズはもはや世帯視聴率にはない」というのが現状だったりする。

そこで存在感が増してきたのが「コアターゲット」「ファミリーコア」などと呼ばれる若い層の視聴率だ。消費の中心であるファミリー層と、ブームを作る若者層。スポンサーが注目するこの層の視聴率をテレビ局が独自に合算したものだ。日テレは13歳~49歳、TBSは13歳~59歳など、どの年齢をコアとするかは局によってまちまち。もともと内輪の営業用語でしかなかったが、最近は改編説明会の配布資料にも記されるほど存在感を増してきた。

ちなみに「ヒルナンデス!」や「水曜日のダウンタウン」など、劇的な視聴率をとらなくてもしっかり続いているタイプの番組は、このコア視聴率が非常に高く、セールス好調なのがポイントとされる。逆に、高齢者相手にちゃんと数字をとっている番組のスタッフにとっては「コア層が低い」と責められてしんどい時代だ。「けんかになるので世帯視聴率とコア視聴率の両方を社内表彰している局もある」(中堅営業マン)という話もあり、過渡期ならではの光景だ。

各局の改編説明会を振り返ると、その流れに1歩踏み込んだのがフジテレビ。斎藤翼編成部長が冒頭で「世帯視聴率をとるために、高齢者向けの番組を作るつもりはない」と語った。営業から来た編成部長という、コア戦略を象徴する人事も話題になっている。「高齢者層向けに番組を作れば手堅く7~8%はとれるが、そうはしたくない。『動脈硬化』や『遺産相続』がテーマでは、若い人は見ない」と明快だ。

斎藤氏は「いい番組とは、家族みんなで見てもらえるもの。それはスポンサーの意図とも重なる。営業出身の戦い方として、オールターゲットで2ケタをとれる番組に青臭くチャレンジしたい」。「イッテQ」のような看板番組を目指し、10月から金曜7時枠に目玉バラエティー「坂上どうぶつ王国」をスタートさせる。坂上忍をMCに、土地を買うところからどうぶつ王国作りを始める企画で、「夢とロマンを伝えていきたい」としている。

前回の4月改編で本格的に「ファミリーコア重視」を打ち出したTBSは、若者層を中心に結果が出ているという。編成部の石丸彰彦企画総括は「マスコミは勢いのあるブームを仕掛けていかなければならないし、スポンサーもそれを望んでいる」。若者に人気の「東大王」を10月から水曜7時枠に移動し、「水曜日のダウンタウン」までコア層の縦の流れを作った編成も、ファミリーコア戦略の一環だ。

独特な中高年シフトをとってきたテレビ朝日も、今回の改編では、日曜の新番組「ナニコレ珍百景」(午後6時半)「ポツンと一軒家」(午後7時58分)を軸に「ファミリー」というキーワードを連発した。西新総合編成局長は「価値観がバラバラで最大公約数を見つけるのが難しくなっているからこそ、いろいろな世代が集まって画面を共有できるテレビの特徴を大事にしたい」と話す。

04年に最初にコアターゲット戦略を打ち出した日テレも「戦略を堅持」(岡部智洋編成部長)。内村光良とサンドウィッチマンで「お茶の間」を意識した新番組「THE突破ファイル」(10月25日スタート、木曜午後7時)をスタートさせる。新井秀和プロデューサーは「T層(10代)がたくさんいるところで、なるほどね、という楽しさをお茶の間で味わえる番組にしたい」と、コアのど真ん中をねらっている。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)

永野芽郁「半分青い」ラストの展開に「やばいこれ」

NHK連続テレビ小説「半分、青い。」が、29日の最終回ヘ向けラストスパートに入った。先月クランクアップした主演永野芽郁(18)は、「いつでも鈴愛に戻れる自信はある」と、ヒロイン鈴愛を演じた10カ月を振り返った。最終回へ向けて気になるのは、鈴愛と律(佐藤健)の関係のゆくえ。「びっくりしてお風呂に台本を落とした」ほど衝撃的なラストだという。

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NHK連続テレビ小説「半分、青い。」クランクアップで涙するヒロイン役の永野芽郁(C)NHK

-撮影を終えた心境は。

永野 もっとロスに襲われるかと思ったのですが、すんなりと「さよなら~」という感じ(笑い)。大変な日常ではありましたが、いただいた寄せ書きの自分の写真が全部笑っていて、私は楽しい現場にいられたんだなと思いました。いつでも鈴愛に戻れる自信はあります。私にしかできない役がこの世に存在しているのはうれしいし、それが鈴愛で良かった。

-大変だったことは。

永野 10カ月同じ人を演じるのは初めてで、自分の生活の中にどう鈴愛を落とし込んでいいのか分からなくてガーンときたこともありました。100円ショップの「大納言」や映画会社の「クールフラット」あたりのころがいちばんキツくて、記憶がない。やばかった(笑い)。涼ちゃん(間宮祥太朗)と別れる時の「死んでくれ」というあたりも、覚えてないです(笑い)。

-思い出に残るシーンは。

永野 泣いているシーンはどれも印象に残っています。秋風先生(豊川悦司)とのお別れのシーンは、監督から「鈴愛が泣いているところに水たまりができてた」と言われるくらい床がびちょびちょで。律との七夕のお別れのシーンもめっちゃ泣きましたね。律がいなくなったら自分はどうやって生きていこうと、涙が止まらないくらい泣いていて、その日は自然と健さんと距離をとっていました。

NHK連続テレビ小説「半分、青い。」の撮影オフショット。花野役の山崎莉里那(右)をおんぶする永野芽郁(C)NHK

-終盤では、お母さんになり、アラフォーになりという展開ですが、演じてみていかがでしたか。

永野 30代、40代に見せるのは難しかったですが、娘の花野(山崎莉里那)がかわいくて、このいちばん大切なものを全力で守ろうという姿になれた。鈴愛が1人の女性として成長できたのは、花野がいたおかげ。幸せな時間でした。

-10カ月の撮影を通して成長したことは。

永野 1日の撮影量、せりふ量がとんでもないんですけど、やってみると意外とできる。今の記憶力はけっこうすごいです。今なら映画1本分の台本を3時間で覚えられます(笑い)。

-女優として何か変わりましたか。

永野 これだけ長い時間、役と向き合ってみて、自分を甘えさせる方法がちょっと分かったというか。今までは限界を知るのが怖いから何も考えずにまっすぐ進んでいましたが、それだと周りに心配や迷惑をかけることが分かった。ちゃんと自分の中で「ここまでだ」とラインを引くべきだと、自分の中で大人になりました。誰かと目を合わせてお芝居するのは楽しいことだと、女優さんというお仕事が大好きになったし、逆にこの仕事がとんでもなくつらいとも感じました。

-周りにどんな迷惑をかけたのですか。

永野 いっぱいありましたけどナイショ(笑い)。しんどい時にお母ちゃん(松雪泰子)が来て抱き締めてくれて、泣きながら話を聞いてもらったこともありました。私は人に恵まれる運や縁があって幸せだと思う。みんなが私のことを全力で受け止めてくれた。奇跡だったなあと、幸せ者だと思います。

NHK連続テレビ小説「半分、青い。」の永野芽郁(左)と佐藤健(C)NHK

-振り返ってみて、鈴愛という女性の魅力は。

永野 まっすぐで、タフで、1度決めたら曲げなくて。それがいい方に回る時もあれば、悪く回る時もある。それがすごく人間らしい。友達にはなりたくないですけど(笑い)。友達の友達くらいがいい。

-最終回に向けて、見どころを。

永野 律とどうなるのかが気になりますよねー。お風呂で女子力上げながら台本を読んでいたのですが、びっくりしてお風呂に台本落としました(笑い)。うぎょぎょ、と思って「やばいこれ」と。衝撃的でした。「まじ?」という感じです。

やはり完敗、裏のみやぞんに薩長同盟丸かぶりの悲劇

NHK大河ドラマ「西郷どん」(C)NHK

幕末のハイライトのひとつである薩長同盟が「24時間テレビ 愛は地球を救う」(日本テレビ)のみやぞんのゴールと重なってしまったNHK大河ドラマ「西郷どん」32話の視聴率が、番組ワースト2位の10・4%となった(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。裏がみやぞんで「やばいな」と語っていた主演鈴木亮平の予感が当たってしまったが、チャレンジ回であっただけに、惜しい結果ではある。

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薩長同盟の見せ場はみやぞんのゴールと完全に重なってしまった。

いよいよ西郷吉之助(鈴木)と桂小五郎(玉山鉄二)の会談が始まった8時半ごろに、24時間テレビのみやぞんが「白い雲のように」のBGMでラストスパートへ。西郷が桂に土下座をしたクライマックスの8時37分ごろ、みやぞんは残り600メートルのウイニングロードに入り、「負けないで」の曲で激走した。坂本龍馬(小栗旬)の仲介で西郷と桂が固く“シェイクハンド”を交わし、番組が終了する8時45分のタイミングでみやぞんがゴール。この瞬間に最高視聴率34・7%を記録した。

結局、薩長同盟の視聴率は8月12日の10・3%に次ぐワースト2位の10・4%となった。「歴史に残る薩長同盟と自負している」(桜井賢チーフ・プロデューサー)という力作だっただけに、ほろ苦い結果だ。

「西郷どん」に限らず、裏が24時間テレビと重なる週の大河ドラマは、この10年を見ても平均視聴率を下回っている。前の週と比べても、15年の「花燃ゆ」は3%マイナス、16年の「真田丸」は4・8%マイナス、17年の「おんな城主 直虎」は1・2%マイナスだ。今回の「西郷どん」は0・6%のマイナスだから、健闘した方かもしれない。

録画、BS、再放送などさまざまな視聴手段がある大河ドラマが視聴率を気にするのはナンセンスという意見もあるが、テレビドラマに携わる人にとっての主戦場はやはり本放送のリアルタイム視聴率である。情熱を傾けて作った作品ならば、本放送で見てもらいたい、裏に負けたくないと思うのは当然のことだ。特に薩長同盟は物語上の重要回。マスコミ向け試写会を開いて宣伝に努めたNHKも、裏がみやぞんと知って「どうしても見てほしい」と闘志をあらわにした鈴木と玉山も、送り手として極めて健康的だと思う。

ちなみに、「裏がみやぞん」を切り出したのは玉山。「放送はちょうどみやぞんさんがゴールするあたりだと思う」とし「彼は24時間走ってゴールを目指す感じだと思うが、亮平くんはもう1年近く走り続けています。ある種、重みが違う」と主演を盛り上げた。収録が押し、遅れて登壇した鈴木は、着席してから裏番組事情を知った。「やばいな~」とフリーズした様子に主演俳優の責任感がにじんでいて、あれこれ猛アピールを始めた姿に好感が持てた。

「歴史に残る薩長同盟が描けた」と胸を張るだけあって、中身はいろいろ斬新だった。英国に渡った薩摩と長州の留学生たちの、藩の垣根を超えた1枚の写真が流れを変えるというドラマチックな展開。「この若者たちはとっくに助け合っているのに自分たちは」と感極まった西郷が迷わず先に土下座する演出に、ネット上もどよめき。薩摩藩士の土下座の輪が桂を取り囲むという、自由な発想の激アツ名場面だった。坂本龍馬に教えってもらった西洋文化のシェイクハンドが、ここで効いてくるのもいい結びだった。

結果的に、みやぞんのゴールも、薩長同盟も激アツだった。24時間テレビに重要回を当てた大河の謎采配はさておき、次回は坂本龍馬が寺田屋で襲われ、療養のため鹿児島を訪れます。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)

終戦特番も庶民目線、テレビの片隅にすずさん効果

映画「この世界の片隅に」のポスター(C)こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会

 終戦の夏、今年も各局で戦争を題材にした番組が放送された。ロングラン上映を続けるアニメ映画「この世界の片隅に」(片渕須直監督)の影響か、当時を生きた“庶民の目線”にフォーカスした番組が複数作られ、胸に迫る見ごたえがあった。

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 悲惨さだけではない戦争体験の数々に目からうろこだったのは、8月1日に放送されたNHK「クローズアップ現代+」の「#あちこちのすずさん~庶民が綴った戦争の記録~」。「この世界の片隅に」の片渕監督をゲストに、主人公すずが体験した恋やおしゃれや食べ物のような、暮らしの中の戦争証言が紹介された。

 スイカ1個に「山の土地」という望外な値段をふっかけられたにもかかわらず、子供たちのために買ってしまった女性。「私のばか」という自虐ワードがとても身近で、「戦地にいるお父ちゃんに申し訳ない」という展開に見入った。

 犬に召集令状があったという話も初めて聞いた。犬をイモで育てる描写から、当時の食料事情がよく分かる。家族で育てた軍用犬がいよいよ出征となり、「工面して牛肉と赤飯を食べさせた」「整列した犬の中でいちばん立派に見えた」。家族である動物への“親心”が普遍であるだけに、「戦地へ送られ、帰ってこなかった」という結末を考えさせられた。

 特集は2回にわたって放送された。「空襲の炎が美しい」という極限状態の証言や、「空襲で焼けた実家に戻ったら、水を張っていた米が炊けていた」「持ち出し禁止のパンを持って帰れるので空襲さまさま」「学徒動員で部品を作りつつ、私たちが作る飛行機が飛ぶわけないと思っていた」など、生身の証言はどれも意外で、たくましい。

 番組には2000を超える「#あちこちのすずさん」の証言が寄せられたという。片渕監督が選んだエピソードは「ばーちゃんと婚約して軍需工場に来たじーちゃんが鉄くず盗んでばーちゃんに指輪作って持ち帰った」という若者からの投稿。監督は「鉄くずが兵器にならず結婚指輪になった。じーちゃんばーちゃんも青春真っただ中だったと教えてくれるエピソードだった」。スタジオには笑いも起きたし、監督の雰囲気もほっこり。従来の戦争番組とは違うとっつきやすさがあり、切り口のひとつとして意義を感じた。

 11日にNHKBSプレミアムで放送された「ドラマ×マンガ“戦争めし”」は、「食」から戦争にアプローチした快作だった。「食べることは生きること。それは戦争の真っただ中でも同じ」。マンガ家、魚乃目三太さんの原作をベースにしたオリジナルドラマで、こちらもも庶民の証言あってこその作品だった。

 日本兵とオランダ人捕虜の心をつないだにぎり飯や、東京大空襲でうなぎのタレを守ったおかみなど、取材で得た戦争めしエピソードはさまざま。にがり(塩化マグネシウム)をめぐるゼロ戦と豆腐の関係や、船のソナー作りのために海軍が命じたワイン作りなど、知らない話が次々と登場し、当時の経済事情や人々の思いが新鮮。インパール作戦から生還した元兵士が、戦死した友と交わしたおでんの約束は、血の通った力作だったと思う。

 主人公のマンガ家(駿河太郎)が「自分が書いているのはその人の戦争体験の一部でしかない」と途方に暮れる場面は、戦争を知らないほとんどの日本人の立ち位置そのもの。「興味がある部分でいいから、戦争について考えてみることだ」という編集者(壇蜜)のせりふが胸に染みた。

 TBS日曜劇場では、「この世界の片隅に」の実写ドラマが放送中。過酷な時代を、マイペースに力強く生きるすずの暮らしを松本穂香が好演している。

 徹底取材で戦争の真実を掘り起こす骨太ドキュメンタリーや、平和の尊さを訴える本格戦争ドラマは今後も不可欠だけれど、庶民の暮らしから戦争のリアルを共有することで、地続きの時代がぐっと身近になる。あの時代を生きた人の数だけ真実はあるわけで、庶民アプローチへの取り組みは今後も広がってほしい。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)

マンガ原作多発…deleに救われた/夏ドラマ評

 7月期の夏ドラマが出そろった。視聴率が低くなりがちな夏対策か、マンガ原作、小説原作、韓流ドラマなど原作ものが多発。先の見えないオリジナルでわくわくしたいドラマファンとしては少々切ない夏だ。「勝手にドラマ評」35弾。今回も単なるドラマおたくの立場から、勝手な好みであれこれ言い、★をつけてみた(定期シリーズものは除く)。

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フジテレビ月9ドラマ「絶対零度~未然犯罪潜入捜査~」

◆「絶対零度~未然犯罪潜入捜査~」(フジテレビ、月曜9時)沢村一樹/横山裕/本田翼

★★★★☆

 人工知能が予測した、これから起こる殺人事件の未然捜査。主演の沢村一樹が深い闇を抱えた陽性リーダーというリバーシブルキャラで本領を発揮していて、明るさと不穏が交錯する作品カラーにテンポと見ごたえがある。無愛想な紅一点、パソコンおたく、職人肌のベテランなど新チームの配置も良く、前作に続く横山裕の正義感キャラがきちんと機能していて見やすい。骨伝導フォンを使った通信もいい新鮮味。魅力的なチームだし、AI捜査という切り口も独自なのだから、「絶対零度」にする必要はなかったのでは。前任者上戸彩のベトナム編が差し込まれるたびに流れが止まるのは残念。

テレビ東京ドラマBiz「ラストチャンス再生請負人」

◆「ラストチャンス再生請負人」(テレビ東京、月曜10時)仲村トオル/椎名桔平

★★★☆☆

 経済ドラマに特化したテレ東新枠の第2弾。飲食チェーンの財務責任者に転身した元銀行マンの会社再建。主人公の周りが抵抗勢力と裏切り予備軍だらけでわくわくするし、うらみ、つらみ、ねたみ、そねみ、いやみ、ひがみ、やっかみの「七味とうがらし」というテーマもドロドロ感を盛り上げる。テイストはWOWOWの社会派ドラマ寄り。転職業界の人間模様を1話完結で描いた前期の「ヘッド・ハンター」が攻めっ気満々の快作だっただけに、「第三者割当増資」「含み損」などの顛末が続き物で展開する本作はちょっと難しくてテンポが悪く感じた。銀行合併のシビアな現実、フランチャイズのからくりなどの描写は、経済に強いテレ東印。

フジテレビ系連続ドラマ「健康で文化的な最低限度の生活」

◆「健康で文化的な最低限度の生活」(フジテレビ、火曜9時)吉岡里帆/井浦新/川栄李奈

★★★☆☆

 原作マンガと同様、きれいごとばかりではない生活保護の世界を偏見なく伝えたいという志を感じる作風。悪目立ちヒロインの役が続いていた吉岡里帆は、今回のまっすぐでまじめな公務員役は久々のはまり役だと思う。テーマも展開も重めで夏向きではないが、青臭さが裏目に出たり、その場しのぎの言葉が後で大ごとになったりという新人らしい失敗に共感できる。悩んで反省して何かをつかむヒロイン像は大好きなだけに、よちよちした描写が長いのが残念。落ち込む仲間が明日もちゃんと働けるように「自転車の油差しといた」と無愛想に去る川栄李奈は名場面だった。上司が田中圭、指導役が井浦新という天国。視聴率ほど中身は悪くない。

TBS火曜ドラマ「義母と娘のブルース」

◆「義母と娘のブルース」(TBS、火曜10時)綾瀬はるか/竹野内豊/佐藤健/上白石萌歌

★★★★☆

 「リサーチと交渉」のビジネス脳でぐいぐい母親ミッションしてくる変人義母と、どん引く娘がきずなで結ばれるまでの10年の軌跡。原作は4コマのギャグ漫画。1話の綾瀬はるかの腹踊りにさっぱり笑えなかった自分が心の傷になり、完全に波に乗り遅れてしまった。娘のため、たった1人でPTAにけんかを売った3話でギャグ路線から感動路線にシフト。変人キャリアウーマンが成し遂げる規格外の家族づくりとして、楽しむツボが分かってきた。脚本は森下佳子氏。後半に向けて伏線の回収と感動の大波をもってくる手だれなので期待。個人的にホームドラマが大の苦手なので4だが、先は楽しみ。

日本テレビ水曜ドラマ「高嶺の花」

◆「高嶺の花」(日本テレビ、水曜10時)石原さとみ/峯田和伸/芳根京子/千葉雄大

★★★☆☆

 華道名家のお嬢さまと、ブサメンな自転車屋さん。脚本野島伸司で「101回目のプロポーズ」のテイスト。ガラスのハートと火の玉のような自意識が交錯するこじらせキャラは石原さとみの独壇場だが、ちょっと頼りすぎ。峯田和伸の刺激が強すぎる画面とか、多すぎる登場人物たちの介護やら引きこもりやらでトータル何の話かよく分からないストーリーとか、主演の負担が大変そう。「アンナチュラル」で新境地を見せつけた後だけに、得意な悪態と、時々飛び出すポエムみたいなせりふで腕力勝負させられているのは惜しい。ヒールの千葉雄大、ダークサイド発動の芳根京子という強キャラが魅力的なので、仁義なき華道界バトルで普通に見たかった。

フジテレビ木曜劇場「グッド・ドクター」

◆「グッド・ドクター」(フジテレビ、木曜10時)山崎賢人/上野樹里/藤木直人

★★★☆☆

 韓流ドラマ原作。自閉症であり、驚異的な記憶力を持つサヴァン症候群の新任医師、新堂湊の小児医療での活躍。デリケートな設定だが、異分子が組織と人を変える流れはドクターXと同じ医療ものの王道。「この子、死んでしまうんですか」「はい。あと30分で死にます」。心の準備や、オブラートに包むなどの情緒と無縁な新堂先生の言葉はヒヤヒヤするが、なぜ30分なのか、どうすれば助かるのかの根拠にもうそはないので、受け手の心の置き所が試される。主人公が無慈悲に怒鳴られ、どつかれる韓流テイストと、粘り強さが引き寄せる勝利。ラストで描かれるサヴァンならではの患者へのギフトがよく練られていて、心温まる着地に救われる。

TBS金曜ドラマ「チア☆ダン」

◆「チア☆ダン」(TBS、金曜10時)土屋太鳳/石井杏奈/佐久間由衣/オダギリジョー

★★★★★

 女子高生たちがチアダンス部を作り、「できっこない」全米制覇に挑む青春。実話を描いた大ヒット映画の9年後。ぐいぐい来る転校生エースの登場でヒロインのやる気スイッチが入る導入があざやか。四面楚歌の部員集め、意外な人物の加入、みんなでつかんだ最初の1歩。ベタな過程を丁寧に描き、彼女たちとうれし涙、悔し涙をともにできる。土屋太鳳の「全力でやろうさ」にピチピチな説得力があり、石井杏奈、佐久間由衣ら次世代スター大集合で画面に勢いがある。逆転劇への産声となる「悔しいです」の団結と、顧問オダギリジョーの教師像がベールを脱いだ3話は上等だった。いいなあ夢ノート。夏はこういうキラキラしたのがいちばん。

テレビ朝日金曜ナイトドラマ「dele(ディーリー)」

◆「dele(ディーリー)」(テレビ朝日、金曜11時15分)山田孝之/菅田将暉/麻生久美子

★★★★★

 デジタル遺品の削除(=dele)を請け負う1話完結のバディもの。ベストセラー作家本多孝好の原案脚本で、脚本陣に金城一紀ら映像界のすごい人たち5人が参加。クリエーティブファーストな作品の世界観を山田孝之、菅田将暉がきっちり形にし、消したいものに宿る人間ドラマが格の違う面白さ。優秀なガキの使い(菅田)の採用で「社交性と機動力」のアナログ力を手に入れた車いすプログラマー(山田)。デジタル力とバディ力が一気に動きだす1話にわくわく。テンポのいい会話劇も、一瞬のアイコンクタクトも息ぴったり。引きで撮れる映像センスが映画的で、菅田将暉のらせん階段アクションがかっこよかった。

◆「サバイバル・ウェディング」(日本テレビ、土曜10時)波瑠/伊勢谷友介

★★☆☆☆

 テレ東の「LOVE理論」以来、もう何匹目のドジョウか分からないスパルタ婚活指南もの。2年前に中谷美紀&藤木直人がやったTBS版が、ドSとスポ根の応酬で斬新な婚活ドラマに仕上げてきただけに、よそとは違う何かが伊勢谷友介のおかっぱ頭だけというのは悲しい。「半年以内に結婚できなければクビ」という設定と、人に流される性格のドタバタだけがあり、主人公がぐずぐずと成長しないのはドラマとしてしんどい。心の声を多用するドラマも苦手。変人編集長、伊勢谷が語る実在ブランドのマーケティング学になるほど感。伊勢谷友介は何もしなくても十分風変わりなので、こんな髪形にせず、素でやってくれた方が変人度が上がったかも。

テレビ朝日土曜ナイトドラマ「ヒモメン」

◆「ヒモメン」(テレビ朝日、土曜11時15分)窪田正孝/川口春奈

★★★☆☆

 「オトナ高校」「おっさんずラブ」ときて今回は「ヒモ」。女のカネで暮らしたいヒモ男と、更生させたいカノジョの戦いを描いたマンガ原作をドラマ化。「仕事探さないの?」「えっ、俺が?」。ナチュラルすぎるヒモ体質を窪田正孝が陽気に演じていて、バックハグして「1000円ちょーだい」のC調がクズすぎて笑える。働くくらいなら短パンで崖を登る無職のエネルギーに未知のドラマがあり、働きたくない強い気持ちがゆり子(川口春奈)のピンチを救っていく。「みくびらないでください。俺は無職です!」「無職の前では無力ですっ」。どんな権力者も無力化する戦い方が新しい。これもひとつの働き方改革。

TBS日曜劇場「この世界の片隅に」

◆「この世界の片隅に」(TBS、日曜9時)松本穂香/松坂桃李

★★★☆☆

 女の子が恋をしたり、日常をカラフルに工夫するのは戦時中もインスタ時代も同じ。ヒロインに地続き感があったアニメ版に比べ、やはり朝ドラ臭いというか、課題図書っぽく感じた。単純に、連ドラで放送時間が長いせいかも。この時期の戦争ドラマは、やはり2時間くらいのSP版がベストなのだと思う。朝ドラ、大河のスター陣で固めた豪華なキャスティングは、よそから大物選手を集めた勝ち組球団みたいで苦手。むしろ既視感のない村上虹郎の人間味にぼろぼろ泣けた。クラウドファンディングでこつこつ手作りしてヒットさせたアニメの希望の方が原作マンガと重なるが、どちらも丁寧に作られた良作。松本穂香のおおらかな笑顔に救われる。

◆「ゼロ一獲千金ゲーム」(日本テレビ、日曜10時半)加藤シゲアキ/小池栄子/間宮祥太朗

★★★☆☆

 義賊を名乗る塾講師が、カネの帝王主催の闇ゲームで優勝賞金1000億円を目指す。「アカギ」ほど絶対的な天才でも、「カイジ」ほどクズ型の天才でもない優等生のゼロは福本伸行マンガの中ではジャニーズ向き。一方で、ゼロの優秀さや福本作品の深さがよく分かる悪趣味なゲームほど、アイドル仕様の対策になるジレンマ。友情、努力、勝利のピュアさや、「義賊」へのあこがれなど、原作17歳だからはまる青臭さを30代アイドルがやるカオス。1話はなかなか鉄球が落ちない、2話は結局飛ばない。ぎゅっとしたら5分くらいのゲームを延々と引っ張り、3話で少しだけテンポが出てうれしい。つっこみどころ満載で逆にクセになってきたので毎週見る。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)

大人気チコちゃん制作者が語る神ワザ神ボイス神設定

 NHK雑学バラエティー「チコちゃんに叱られる!」(金曜午後7時57分)が大人気だ。「いってらっしゃいをするとき、手を振るのはなぜ?」。5歳児のチコちゃんが日常の素朴な疑問を投げかけ、答えられない大人を「ボーッと生きてんじゃねえよ!」としかる。番組コンセプトや、CGを使ったチコちゃんの造形など、斬新な手法の数々はテレビ界の注目の的だ。チコちゃんはどうやって撮ってるの? なぜ5歳なの? 声はなぜキム兄なの? 素朴な疑問を、水高満チーフ・プロデューサー(50)に聞いた。

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NHK雑学バラエティー「チコちゃんに叱られる!」(C)NHK

 -「チコちゃん」誕生のきっかけは。

 水高 フジテレビのバラエティー黄金期を支え、現在共同テレビにいらっしゃる小松純也さんと飲む機会があって、「5歳児の女の子にクイズを出され、知らないと『ボーッと生きてんじゃねえよ!』としかられる番組をやりたい」と(笑い)。おもしろいので一緒にやりましょうと。

 -チコちゃんの姿形は決まっていたのですか。

 水高 その時は決まっていませんでした。モニターの中のCGキャラクターでもいいし、ロボット、着ぐるみ、人形劇など、いろいろ考えて今の形になりました。

 -髪形や服装が昭和っぽいですよね。

 水高 今の子供たちは大人の顔色うかがういい子ちゃんが多いけれど、ひと昔前にいたような、ちょっとこまっしゃくれたおませな女の子という設定で、昭和イメージの姿形を考えました。MCとして「ボーッと生きてんじゃねえよ」というNHK的でない言葉を吐くので、顔がアニメみたいに動いた方がかわわいいかなと。

 -収録の時、チコちゃんはどういう状態なのですか。

 水高 マル秘事項なんです(笑い)。でも、着ぐるみとCGが融合していることは確かで、チコちゃんはちゃんとスタジオにいます。顔ものっぺらぼうではないです。

 -表情は何種類くらい作れるのですか。

 水高 無限です。NHKアートのCG班が、どこからがCGで、どこからが着ぐるみか分からないようにしています。ハリウッド映画がやっているようなことをウイークリーでやっているので大変ですが(笑い)、チコちゃんプロジェクトのメンバーたちが、チコちゃんを愛してとんどん作ってくれています。チコちゃんプロジェクトはCG7人で1チームの班が6班あります。

 -チコちゃんの声を担当しているキム兄(木村祐一)がはまり役ですが、起用意図は。

 水高 ギャップの激しい人の方がおもしろいし、いちばんはアドリブ力ですね。収録の時、岡村隆史さんやゲストの方はクイズについて何も知らずに入ってくる。チコちゃんのキャラをまっとうしつつ、出演者をいなして場を回せるMC力を考えると、できる人は限られているのかなと。ゲストへのちょっとしたツッコミとか、我々も「そうきたか」と感心する場面はいっぱいあります。

 -木村さんは別室でしゃべっているのですか。

 水高 そうです。アドリブに合わせてチコちゃんが動いていて、神ワザと言われています(笑い)。

 -木村さんの女の子口調もうまいですよね。5歳のお年頃の、ちょっとこまっしゃくれた感じが。

 水高 われわれも意外でした(笑い)。キム兄も、ちっちゃい女の子のお子さんいらっしゃいますし。最初にボイスチェンジャーでリハをやった時にもう面白くて、いけると。木村さんは制作者の視点もある人だからうまくいっているのだと思います。言われたことをやる俳優さんたったらこうはならない。

 -5歳の設定の理由は。

 水高 ヘンな言葉覚えて大人をしかったとしてもイラッとこない感じとか、背伸びしてもかわいい感じは5歳くらいがちょうどいいんですよね。3歳だと大人に対等な口をきく感じでもないし、小学生になってしまうと理屈っぽい。まだ社会生活や規律に染まっていない5歳くらいがちょうどいいんです。

 -「ボーッと生きてんじゃねえよ」のキメぜりふは企画段階からあったのてすか。

 水高 小松さんのアイデアにすでにありました。5歳の女の子が大人に言っていちばん面白い言葉ということで。

 -流行語大賞もいけるのでは。

 水高 ならないでしょう(笑い)。

NHK雑学バラエティー「チコちゃんに叱られる!」のPR会見で。左から塚原愛アナ、チコちゃん、岡村隆史(3月29日) (C) NHK

 -「どっこいしょ、ってどういう意味?」「なんでタンスに小指をぶつけるの」など、よその番組にないクイズの数々はどう考えているのですか。

 水高 毎週ネタ会議。きのうは6時間でした(笑い)。知識を問うのではなく、「そういえば考えたことがなかった」とハッとするというのが大事なので、日常もチコちゃんの目線でものを見るようになりました。ボーッと生きていたら見つからない(笑い)。

 -取材も相当時間を割いているのですか。

 水高 はい。1問1ディレクターでやっています。子供が発する素朴な疑問は掘っていくと深い。諸説あるという壁は番組の見せ場にもなりました。サウスポーの由来の回なんか、諸説ありすぎて「分かりませんでした」という答え。でも、サウスポー研究の最前線は全部見せた。ディレクターが頭抱えたり言い訳したりする様子もそのまま流すのはほかのクイズ番組ではあり得ないことで、画期的だと思います。

 -水高さんが特に印象に残る問いは何ですか。

 水高 最初の単発の時の「いってらっしゃい」かな。なぜこのしぐさがバイバイなのかと。相手の魂を呼び寄せるとか、袖振り合う、につながる文化なんだと分かった時に、いけると思いました。

 -4月レギュラーのスタート当時、ここまでの反響は予想していましたか。

 水高 まったく予想外でした。NHKらしくないとも言われますが、そう言われる場合の多くはいい意味で言ってくれているので、いいと思います。

 -金曜夜(7時57分)の本放送よりも土曜の朝8時15分の再放送の方が視聴率が高いという現象も話題ですよね。7月14日は番組最高の13・9%。

 水高 朝ドラ「半分、青い。」からの流れは大きいと思います。チコちゃんも若い層に見ていただいているので、「半分、青い。」の視聴者層と親和性が高いということもあります。

 -最後の縁側でのおたよりコーナーも好きなんですよ。何歳の人でも、はがきには「5さい」と書くきまり。すごい年配感のある達筆で「5さい」とか(笑い)、受け手もチコちゃんワールドに乗っかって楽しそうです。

 水高 最初は子供限定も考えたんですけど、5さいって書いてくれればいいやと(笑い)。何歳の人がきても単純に面白いし、みんな楽しんでくれている感じです。辛辣(しんらつ)なクレームがくることもあるのですが、そういう投稿もみんな「5さい」って書いてあるんですよ(笑い)。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)

地下鉄サリン当日、麻原初公判…取材ノートのウラ話

地下鉄サリン事件当日の築地駅の様子(1995年3月20日)

 オウム真理教教祖、麻原彰晃死刑囚(63=本名・松本智津夫)の刑が6日、執行された。95年5月の逮捕から23年。地下鉄サリン事件など一連のオウム事件の詳細を、教団トップが語らないまま幕となった。一連のオウム事件を取材し、今も鮮明に記憶に残るのは、犯罪史上類を見ない凄惨(せいさん)な事件の数々のいびつさと、“あの日”の大混乱だ。地下鉄サリン事件当日と、前代未聞の初公判を振り返ってみた。

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 ◆緊迫感にじむ営団地下鉄の手書き資料

 地下鉄サリン事件当日、情報の前線基地となったのが、上野の営団地下鉄(現東京メトロ)本社だった。動いていた銀座線で駆け付けると、ロビーの一角に即席の取材エリアができていて、広報スタッフが続々と入る情報を必死に紙にまとめて配っていた。

 まだウインドウズ95がないアナログ時代で、「帝都高速度交通営団」と印刷されたオフィシャル用紙に、すべて手書き。読み返すと、どれも筆跡がまちまちで、営団職員が数人で手分けして書いているのが分かる。どれもうまい字だが、明らかに急いで書いていて、当時の緊迫感が伝わってくる。

 午前9時半に非常対策本部が設置され、「第1号」のナンバリングで配られたプリントは午前10時40分付。「本日8゜14築地駅に停車中の北千住駅発~中目黒行A720S列車内で爆発物が破裂したのをはじめ、」とあり、まだサリンではなく「爆発物」とされていたことが分かる。ほかに、異臭情報や負傷者数リストなど。「第2号」のプリントは死亡者2名の氏名と搬送病院名、「第3号」は千代田線と丸ノ内線の折り返し運転のお知らせだ。

 広報レクや営団総裁の会見がめまぐるしく行われ、メモる私も、配布資料の裏に直接メモしている。「安ぜんゆそうのしめいがある」など、ひらがなばかりで、かなりあせっているのが分かる。芸能担当から社会面担当に配置換えになった初日にこの事件が起こり、とんでもない重大事件を取材しているという自覚に身がすくんだ。

 日刊スポーツは最も大きな被害が出た日比谷線築地駅近くにあり、社に戻ると、「A720S列車」に乗っていた社員が何人もいて、「めまい」や「視界の異変」を訴えていた。隣の聖路加病院は、搬送された人たちがロビーや廊下にあふれ、必死に救命活動にあたる医師や看護師で野戦病院のようになっていた。本紙は「救え命を」の大見出しでその奮闘を伝えている。聖路加病院が紙面を壁に張り、スタッフたちの励みにしてくれていたというのが救いだった。

 ◆ペンを持つ手が震えた初公判

 96年4月24日、48席の傍聴席に1万2292人が並んだ初公判に運良く入ることができた。弟子の多くがそれぞれの法廷で涙で贖罪(しょくざい)を語る中、当時の麻原被告は口を開けて居眠り。あまりの光景に弁護団がペンでつついて「大丈夫か」と起こすほどだった。体中をかき、洗っていない頭をボリボリ。フケがバラバラと落ち、思わず両脇の刑務官ものけぞった。

 意見陳述では「つまりカルナ」「つまりウペクシャー」など、弁護団ですら理解できない内容。聞き慣れない宗教用語ばかりでメモが追いつかず、ペンを持つ手が震えた。公判が終わると、どの記者も頭真っ白な様子であせっている。早版の締め切り時間を考えれば、一般紙、スポーツ紙の垣根などなくなり、廊下で「あのくだり、誰か分かりますか」「メモできた人いますか」と、なりふり構わぬ“読み合わせ”の輪ができた。結局、誰もよく分からず、裁判所の速記者が起こした全文を待つしかなかった。

 今回、同時に刑が執行された6人の中では、井上嘉浩死刑囚(48)の公判を多く傍聴した。教団裏部隊のトップだったが、最も早い段階で謝罪の意志を明確にした幹部の1人。公判では、まるで檄文(げきぶん)のような大声と直立姿勢で反省の意見陳述書を読み上げ、「裁判で松本智津夫氏に立ち向かい、真実を明らかにすることで償いたい」と叫んだ。

 周辺取材をしても、勤勉でまじめな人物像しか伝わってこない。きゃしゃな体格と、起訴された凶悪事件の数々とのギャップに途方に暮れたのを覚えている。彼が手にしていたミッキーマウスのタオルが、いかにも当時25歳という若さを物語っていた。

 こういう若者たちが、なぜこれだけの大事件に次々とかかわっていったのか。23年もかかった末に、教祖から背景が語られることはもうない。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/記者コラム「梅ちゃんねる」)

あえて振り返る…W杯裏番組“その他視聴率”争い

W杯決勝トーナメントで、ベルギーとの戦いに挑む日本代表チーム(ロイター)

 3日未明にNHKで放送されたサッカーW杯決勝トーナメント、日本対ベルギーの視聴率が30・8%だったことが明らかになった(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。今大会は、コロンビア戦での48・7%など、視聴率的にも大きな注目を集めた。裏番組はゆるい特番でやり過ごすセオリー通りの展開となったが、意外な番組が地味に健闘していたりする。W杯の裏で確かに放送していた番組の戦いぶりをメモしてみた。

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 【6月19日 コロンビア戦/NHK午後8時45分~同11時、視聴率前半42・8%、後半48・7%】

 ゴールデンタイムだっただけに、裏の各局は消極策ながら特番を編成。コロンビア戦以外の“その他視聴率”争いを展開した。

 トップはテレビ朝日「特捜!映像Xファイル」(午後8時半~同9時54分)の8・3%。埋め草特番のスタンダードである衝撃映像ものの編成だったが、テレビをつけていた人の10・7%の占拠率を獲得した。「警視庁・捜査一課長」シリーズでおなじみの俳優内藤剛志がスタジオMCという身内感ながら、前週、米朝首脳会談で午後9時から拡大放送された報道ステーションの7・0%よりも高い数字を出していた。後半戦と重なった10時枠の報ステは6・0%で裏番組4位。

 2位はTBS「予約殺到!スゴ腕の専門外来SP」(午後8時~同11時)の7・2%。不定期に放送している特番の11弾。4月に放送された第10弾の8・9%よりは低かったものの、W杯を相手に健闘した。10時枠は火曜ドラマ「花のち晴れ~花男NextSeason~」。最終回直前のタイミングで5・2%というあおりを受けたが、翌週の最終回は9・5%に戻した。

 得意のナツメロ路線を編成したテレビ東京「100年先まで残したい日本の名曲3時間SP」も6・6%と健闘して3位。太川陽介、草野満代をMCに、歌謡史に残したい120曲を秘蔵映像で振り返り、手堅い固定層にアピールした。日本テレビ「世界で笑いと驚きが起きた瞬間200連発!?」(午後9時~同10時54分)は5・5%、映画「ボクの妻と結婚してください。」を放送したフジテレビは3・6%だった。

 【6月24日 セネガル戦/日本テレビ午後11時40分~深夜2時10分、視聴率30・9%】

 深夜0時キックオフという深い時間帯だっただけに、裏番組も1~2%台の戦い。NHK「ニュース・気象情報」2・9%、TBS「ゲンバビト」2・5%、テレ朝「ANNニュース&スポーツ」2・2%など。

 【6月28日 ポーランド戦/フジテレビ午後10時40分~深夜1時10分、視聴率44・2%】

 午後11時キックオフだったので、他局は主にニュースの時間。日テレ「NEWS ZERO」が2・9%で最も高く、TBS「NEWS23」は1・3%まで落ち込んだ。テレ東「ワールドビジネスサテライト」も1・3%。NHKは「W杯デイリーハイライト」4・5%、テレ朝は「アメトーク!」3・1%。深夜とはいえ、第2戦に比べてまだテレビを見ている人が多い時間帯。テレビをつけていた人はほとんどサッカーを見ていたようで、占拠率は予選リーグ3試合で最も高い73・5%だった。

 【7月2日 ベルギー戦/NHK午前2時45分~同5時、視聴率30・8%】

 深夜3時キックオフのため、他局はほとんどが通販番組。視聴率も1%に届かない横並びで、NHKの総取り状態。視聴占拠率は87・8%だった。

※表記は日本時間。日時はビデオリサーチの区分で統一。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)

「男性キャラに元気ない」脚本賞応募作今どきの弱点

「テレビ朝日新人シナリオ大賞」授賞式で。下段左から受賞者の板谷将行さん、川瀬太朗さん、松本稔さん、上段左から、審査委員の岡田恵和さん、井上由美子さん、両沢和幸さん

【先週の言葉】「最近の男性主人公にはせりふがない。欲望を感じる瞬間がない。元気な女性はたくさん出てくるが、元気な男がなかなか出てこない」

 先ごろ行われた「第18回テレビ朝日新人シナリオ大賞」授賞式で、審査員の両沢和幸さんが応募作の傾向について語った言葉です。

 優秀賞2作と奨励賞1作の受賞者は全員男性でしたが、描いた主人公は全員女性でした。鳩レースの老人との出会いをきっかけに再び陸上競技と向き合う女子大生、息子の家出まで仕切って追い回す豪快シングルマザー、生死を超えて友情を結ぶ2人の女子高生、というラインアップで、男性キャラは、ヒロインと適切な距離をとった見守り役や、言いたいことを飲み込むタイプとして登場。シナリオを拝読しましたが、確かに受け身で変化なくフェードアウトする存在で、両沢さんの言う「元気な男」とは対照的です。

 両沢さんは「若い俳優や脚本家志望とよく話すが、男はみんな迷っている。何をしたらいいのか、迷路の中にいるような若い男連中が多い」と現場ならではの視点を語り、「男はどう生きるべきかをぜひ書いてほしい」と切望しました。「皆さんテクニカルだし社会性のある題材の取り上げ方もうまいが、そこに関する自分なりの意見がない。世の中ではこう言われているけれど私はこう思う、という部分を見たいのが正直な思い」。

 今年の大賞は「該当者なし」となりました。決定打不足について、審査員の岡田恵和さんは「似たような雰囲気の作品が多い。ティーンを題材に、生き方を肯定するものが多かった」。両沢さんも「(作者の)気持ちの優しさや、視聴者への思いやり」と分析しています。対立を避けるデリケートな時代性が、男性キャラの描き方に反映されているのかもしれません。しかし、「アンナチュラル」でも「おっさんずラブ」でも、ヒットするドラマほど男性キャラの意思と振る舞いが生き生きと描かれているもの。女性視聴者としては、やはり男性キャラから刺激や影響を受けたいと思うのです。

 プロデューサー出身の両沢さんは、最後に「僕ならこうダメ出しする」と、愛ある指摘もプレゼントしました。「この老人は最後、お亡くなりになった方がいい。最近は登場人物を救おうとするものが多いが、世代を描くということは、どうやって死ぬかを描くこと」「最後はこの母親が危機に陥って、少年が成長すべき。少年と母親の関係性が変わらないままのエンディングは不満」。こんなふうに男性キャラを生き生きと動かしたら、ヒロインの厚みがさらに増して、物語が一気に輝きそう。やはり売れっ子脚本家は“自分はこう思う”がしっかりとあって、元気です。

 とはいえ、脚本コンクールは、その年の話題作に影響を受けて傾向が傾いたりするもの。「来年は『おっさんずラブ』的なものがわっと来ると思う」(岡田さん)という指摘もあり、元気な男性キャラが量産されるかもしれません。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)

石橋貴明は「めげない」低予算でもバラエティー魂

 とんねるず石橋貴明(56)のフジテレビ新番組「石橋貴明のたいむとんねる」(月曜午後11時)がスタートして3カ月。昭和カルチャーや豪傑列伝などのディープな見ごたえがじわじわと支持を伸ばし、2%台で始まった視聴率も4%台に“倍増”してきた。「みなさんのおかげでした」の木曜9時枠から月曜深夜へ。低予算とコンプライアンス時代に折り合いをつけながら「めげずに」と語る思いを、本人に聞いた。

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フジテレビ「石橋貴明のたいむとんねる」について語るとんねるず石橋貴明

 -柳沢慎吾さんがびびった大物俳優列伝とか、江夏豊本人が語る「江夏の21球」とか、客層を中年視聴者に絞った番組づくりが新鮮で、分かる世代の1人として毎週楽しく見ています。初回2・9%でスタートした視聴率も4・7%まで上がってきました。手応えはいかがですか。

 石橋 そんな。4・7じゃさあ(笑い)。

 -深夜で4・7はダメなのですか。

 石橋 ダメでしょう。もっと上げますよこれから。スマホとか録画率とか、いろんな見方をされている時代にそれ(視聴率)が正しい数字になっているのかとは思うけど、なんなら松坂大輔や武藤敬司をゲストに肩やヒザの痛みとか、そっち側で数字ガンガン上げてやろうかな(笑い)。深夜だから少しエッチなことも入れたいんですけど、フジテレビが怒るのよ。でも、僕らが子供のころって「11PM」とか「トゥナイト」とか、大人が喜んでる番組が面白そうに見えたじゃないですか。ああいう雰囲気を目指しています。

 -PR会見の時、昭和のカルチャーやスターを知らない世代にどう魅力を伝えるか、という質問に「伝わらない」と即答していましたよね。広さではなく、ターゲット層に向けて深さ重視でいくのは絶対面白そうだと思いました。

 石橋 あ、それはうれしい限りです。「幅広い人に見てもらいたい」というのは、今のテレビの現状ではたぶん無理。若い人は家にテレビがない人も多いし、見たいものはユーチューブで引っ張ってスマホサイズで見ている。「江夏の21球」どころか松坂や中田英寿を知らない人にまでアピールするより、とらやのようかんみたいに、ウリを特化して丁寧に作っていくしかないんだろうなと。

 -イケイケに芸能界を突っ走ってきたイメージなので、「丁寧に」はちょっと意外です。

 石橋 いや、ものすごく考えてますよ。ルールがたくさんできて、すぐにコンプライアンスとか言われちゃうんで。俺たちが昔からやってきたことはほぼ無理な状況。ここでキャッチボールしちゃいけないというなら違う場所でキャッチボールするしかないし、もっとやりたいことがあるなら違う“遊び場”を探すしかないという。

フジテレビ「石橋貴明のたいむとんねる」(C)フジテレビ

 -そういう“遊び場”としては「たいむとんねる」は攻めていますよね。江夏さんの劇画みたいな新人時代とか、東国原英夫さんが若手時代に台湾に密入国して強制送還された話とか爆笑でしたけど、規格外な話をエンタメとして聞ける場は貴重です。

 石橋 でも東くん、放送後かなり「けしからん」とやられたらしいですよ(笑い)。話半分だって分からねえのかなっていう。

フジテレビ「石橋貴明のたいむとんねる」。6月11日放送分は、俳優高橋克実(右)をゲストに、バイク、クルマ、サブカルチャーなど60年代生まれにはたまらないものを語り合う(C)フジテレビ

-けしからんというネットの声は気になりますか。

 石橋 (少し考えて)ささっと書かれたものが本当なのかなって。昔、ホテルオークラで働いていた時、朝のミーティングでマネジャーがお客様からいただいたお叱りの手紙を“ラブレター”と呼んで読み上げていたんです。「早く空港に行きたかったのにサービスが遅い」とか。そこには、オークラなんだからもっと頑張ってほしいというお客様の思いが入っていて、みんなで肝に銘じようと。手紙や電話の手間をかけても訴えてくる芯のあるお叱りなら信じるけど。僕は相変わらずガラケーだから、機械には疎くて(笑い)。

 -昭和とか、今よりちょっと前の魅力、パワーは何だと思いますか。

 石橋 ケータイがなくて不便だった分、待ち合わせでやっと会えた時の喜びとか、喜怒哀楽に芯があったこと。(カメラマンを見て)カメラマンさんだって、昔は焼いて初めて分かったからうまい人とヘタな人の差が出た。今は撮ったその場で確認できるから、撮る方も撮られる方も緊張感ないですよ。生きていく体幹の強さが違うという。

 -あの時代に関する石橋さんの記憶力がすごすぎますよね。スポーツでも文化でも、あらゆるデータを記憶していて笑えます。「みなさんのおかげでした」とは違う持ち味で。

フジテレビ「石橋貴明のたいむとんねる」について語るとんねるず石橋貴明

 石橋 だって同じことやってたらどうにもなんなくなっちゃう(笑い)。それに、深夜番組はお金がないから同じようにはできないし。6月に向けて、サッカーW杯とか高校野球100回大会とかやりたかったんだけど、映像が高くて借りられなかった(しょんぼり)。いろんな制限をぬいつつ、いい企画をと。

 -低予算は若手のころに経験があるのでは。

 石橋 ひどかったですよ。初めてのグアムロケで、俺らやADくんに食費をくれないとか(笑い)。みんなで金出し合って食材買って公園のバーベキューエリアに行ったんだけど、真っ暗だし素人ばかりで種火がつかないのよ。そしたら1人がガソリンかけちゃえと(一同爆笑)。ボーボー焼けたけど、肉がガソリン臭くて食えないのさ。俺と憲武で泣きながら西城秀樹さんのホテル行って、「なんにも食わしてくれないんですここのスタッフ」ってヒデキさんに飯をごちそうしてもらって。あのころを思えば、なんのことはないですね。

フジテレビ「石橋貴明のたいむとんねる」について語るとんねるず石橋貴明

 -バラエティーに絶望はしていないんですね。

 石橋 ちょっとはあるんですけどね(笑い)。でも、いい話もあって。「みなさんのおかげです」の最終回で「情けねえ」の歌詞を「フジテレビのバラエティーを滅ぼすなよ」と替えて歌ったじゃないですか。それを聞いていたこの番組の美術さんが「とんねるずの思いに、石橋の思いに負けないセットを作ろう」と、細かいところまで素晴らしいセットを作ってくれて。こういう思いのスタッフがいなくならない限り、テレビのバラエティーは続いていくと思う。文句を言ってもしょうがないんで、めげずに、下を向かずに作り続けたい。

 -フジテレビはずっと調子悪いですけど…。

石橋 フジテレビ批判なの?(笑い)。でも、数字がここまで悪いと、若い制作者には最大のチャンスですよ。いい時は枠が空かないけど、今はいろんな企画出してチャレンジできる状況。企画につながる不良に出てきてほしいですよね。でも、潮目が変わればまた。いつの時代も、ずっとトップで調子がいい局なんてないんだから。

 -木曜9時枠から離れて、生活の変化はどうですか。

 石橋 ついに6月からキックボクシング習おうかなと。肉体がどんどんじいさんになってきちゃって。

 -ダウンタウンの松本さんみたいな体に鍛えたいのですか。

 石橋 松本みたいにマッチョになるとかじゃなくて、多少変なやつが来てもワンツーで倒せるくらいの力をもう1回つけてみようかと。それやってどうするんだという話だけど(笑い)。ほんと、ヒマなんですよ。日刊スポーツで雇ってくんないかな。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)

だまされて快感!コロンボ印の推理劇が激アツだった

舞台「殺しのリハーサル」。左から、山口馬木也、サヘル・ローズ

 「刑事コロンボ」の作者が82年に書き下ろした劇場ミステリー「殺しのリハーサル」が俳優山口馬木也(45)主演で舞台化され、このほど東京と石川での全公演を終えた。エドガー賞にも輝いたあざやかな推理劇と、演劇人の自意識バトルがたどり着く人間ドラマは、“第2のコロンボ”の呼び声にふさわしい見ごたえだった。仕事柄、演劇を見る機会は多いが、やっている側のデリケートな胸の内も新鮮だった。

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 「誰がやったのか」を重視するミステリーをフーダニット(Who done it?)というけれど、誰もいない劇場に容疑者5人が集められた非日常の空間は、フーダニットとして申し分ない。「刑事コロンボ」の作者、リチャード・レビンソンとウィリアム・リンクが仕掛けたトリックと極上の人間ドラマに、受け手は客席側から引きずり込まれることになる。

 1年前、婚約者だった主演女優モニカを謎の転落死で失った脚本家アレックスが、当時のプロデューサー、演出家、共演者らを劇場に集めて真犯人をあぶり出していく。「新作を書いた」と手渡された脚本は、1年前のあの日に起こったことのすべて。不穏な立ち稽古を通して、事件の意外な真相が明らかになっていく。

 ちょっとしたせりふや小道具など、脚本家だからできる探偵手法にエンタメ性があり、ミステリーファンには有名などんでん返しもあざやか。私も大いにだまされた。やられた! というミスディレクションの爽快感と、それぞれのキャラクターの真の魅力が後からループでくる。フーダニットは、だまされた方が断然楽しいのだ。

 すべての犯人候補に説得力を持たせる演出と、キャストの役作りも確かだったと思う。2つの時間軸と、劇中劇の構造をわくわくと引っ張ってくれた山口馬木也の座長力は圧倒的だったし、何より、いかにもモテる敏腕脚本家に見えるのがいい。才能があっても婚約者を守れなかった男の後悔にきちんと色気があり、彼のペースに乗ってやろうと思わせる雰囲気があるのだ。

 1年前のパートを背負う女優モニカを演じたサヘル・ローズも染みた。この人が不自然な芝居をしたり、客席の共感を得られなければこの芝居は終わり。殺された謎が解けてみると、いかにサヘルが心を込めてこの役をやっていたかが分かる。

 舞台を見て取材する側としては、ショービジネス界を知り尽くしたレビンソン&リンクが描く、ブロードウェー初日の舞台裏も面白かった。何カ月かけて書いた芝居も、有力紙の批評欄にどう書かれるかがすべて。脚本家、演出家、プロデューサーは「批評家がたまたま腹痛だったり夫婦げんかの直後だったら」とまで心配し、ねらった場面で笑いがとれるように祈りまくる。主演女優は緊張におびえて楽屋を飛び出し、ぶるぶる震えて「映画の撮影では絶対こんなことないのに」。テイク2のない舞台の世界の緊迫感が伝わってきた。

 「タイムズは死亡記事の記者をよこしたんだ」「パーティーはもうケータリング業者しか残っていない」「劇評が悪かったからといって、人は自殺しない」。しゃれたせりふでグサグサと表現されるブロードウェー流の会話劇もいいテンポ。演劇がやたらと長尺化する中、2時間1本勝負でまとめているのもエンタメとして信頼が置ける。

 賭けみたいなどんでん返しにも根拠があり、俳優心理を突いたアレックスの最後のせりふは、レビンソン&リンクの真骨頂だと思う。人間の切なさとしぶとさが交錯するエンディングはいかにもコロンボっぽい余韻があり、実際カーテンコールであのテーマ曲が流れてきて客席は拍手喝采だった。舞台裏の人間模様に触れ、これから演劇の見方がちょっと変わるような、変わらないような。いつか再演があれば、とりあえずもう1回頭からガン見してみたい。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)

ローラ派ヤングマン派…訃報で分かる各局のヒデキ愛

「YOUNG MAN (Y.M.C.A.)」で第10回日本歌謡大賞に輝き歌唱する西城秀樹(1979年11月23日撮影)

 歌手西城秀樹さん(享年63)が死去し、公になった17日はテレビ各局も訃報を大きく伝えた。子供のころから歌番組の当たり前の存在として見てきた世代としては、あらためて画面で見るスター性と歌唱力に圧倒されるばかり。当日夜のニュース番組は全部見たけれど、編集は「傷だらけのローラ」派もあれば「ヤングマン」派もあって、伝える側のヒデキ愛もいろいろだった。勝手な目線で振り返ってみた。

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 ◆映像満載、ローラ派の編集がかっこよかった日本テレビ「NEWS ZERO」

 西城秀樹に関してセンス抜群。冒頭はカックラキン大放送での「ヤングマン」で、星条旗バックのセーラー衣装が申し分ない。ザ・トップテンなどの自社素材やコンサートの取材映像などから、ヤングマン、ブーメランストリート、ギャランドゥ、情熱の嵐、激しい恋、傷だらけのローラ、恋する季節、薔薇の鎖の8曲で他局を圧倒。スタジアムでの宙づりなどド派手演出の先駆者ぶりと、2年連続でレコ大歌唱賞に輝く「絶唱型」ボーカリストとしての才能もきちんと伝えていた。他局の「寺内貫太郎一家」から「ちびまる子ちゃん」まで、短い時間でよくここまで。CM前にローラ、CM明けにローラ、結びにローラ。選曲も使いどころも完璧だった。

 ◆本人不在、締め方が暗すぎるTBS「NEWS23」

 冒頭、中盤、終盤とヤングマンが3回出てくるヤングマン派な編集。ザ・ベストテンとレコード大賞を素材に持つ局だけに期待したが、紹介したのはかなり短くつまんで5曲。全盛期の歌唱→寺内貫太郎一家→バーモントカレー→脳梗塞との戦い→還暦イベント、と素材を時系列に並べただけで、アーカイブ力が不発だった。ベストテンでヤングマンが9999点を出した瞬間と、寺内貫太郎一家の映像に救われる。最後は黒柳徹子さんと樹木希林さんのコメントでシリアスに終了。スターの訃報は、本人が最も輝いていた時で鮮烈に締めて、喪失感に浸らせてほしい。

 ◆まさかの「さいごうさん」で緊張が走ったテレビ朝日「報道ステーション」

 富川悠太アナがど頭で「野口五郎さん、郷ひろみさん“ら”とともに新御三家と称され」とし、西城さんを「さいごうさん」。これも大スターの訃報の緊張感かも。まとめたVTRは約11分だったが、ベストテンのような昭和の歌番組がない同局は歌手の訃報は常に不利。今回も「徹子の部屋」のトークや松竹から借りた映画「愛と誠」など、歌以外の映像で編集する流れだった。ローラとヤングマンは民放持ち回りの放送だった日本歌謡大賞から。最後はありし日の写真などをバックに「ブルースカイブルー」。センチメンタルにフェードアウト。

 ◆3分で終わったフジテレビ「FNNプライムニュースa」

 「夜のヒットスタジオ」「ミュージックフェア」を持つ局だが、曲数はいちばん少ない4曲。VTRの最後をはつらつとしたヤングマンで締めたのはTBSよりはいいものの、制作がヒデキを知らない世代なのか、4曲の中にローラがなくて腰が抜けた。さらに、ヤングマンとブーメランストリートはリハビリから復帰後のステージのもの。全盛期の映像を探せなかったのだろうか。全体で3分というのも、NHK9分、日テレ20分、TBS8分、テレ朝11分と比べてかなりあっさり。長さの問題というより、あらゆる部分でもうひと頑張りしてほしかった。

 ◆ガチのローラ派、異例のCM放送が上等だったNHK「ニュースウオッチ9」

 ローラで始まりローラで結ぶローラ派。冒頭のローラは紅白歌合戦に初出場した74年のステージで、快傑ゾロのような奇抜な衣装をこんなにかっこよく着こなせるのはヒデキかジュリーしかいないだろうと懐かしい。音楽評論家湯川れい子さんの解説、リハビリ担当者の証言、新橋のカラオケ店の盛り上がりなど取材が厚い分、肝心の歌映像がローラ、ヤングマン、ブーメランストリートくらいだったのが残念。“ヒデキ、感激”のバーモントカレーのCMもしっかり。NHKで「ハウスバーモントカレーだよ~」の企業名と商品名が流れること自体が、西城さんの偉大さを物語っていた。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)

ファンの掃除マナー、原点は20年前のhide葬儀

 98年に死去したX JAPANのギタリスト、hideさん(享年33)が5月2日に没後20年を迎え、関連イベントが各所で開かれた。

 20年前の葬儀で強烈に印象に残るのは、献花に並んだファンたちのマナーあふれる振る舞いだった。サッカーワールドカップや羽生結弦の凱旋(がいせん)パレードなど、ゴミひとつ残さないファンの美学が話題になることは多いが、原点はここにあると思っている。

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告別式に飾られたX JAPANのhideさんの遺影=1998年5月

 hideさんの葬儀が行われた築地本願寺は、日刊スポーツ本社のすぐ近く。仮通夜の準備段階から本願寺の正門前には徹夜組を含めて500人以上のファンが詰めかけ、大混乱となっていた。翌日にはファンが悲鳴を上げて正門のフェンスに殺到し、警備員と小競り合いになることも。そんな無秩序な光景が、マスコミによって伝えられていた。

 事態を打開したのはファンだった。「私たちがこんなことでは、hideが恥ずかしい思いをする」と、どこかのしっかり者が呼び掛けると、同じ志を持っていた人たちがあっという間に連帯の輪を広げていった。遺体が安置された3日昼から告別式の7日までの5日間、互いに呼び掛け合って整然と列をつくり「近隣に迷惑をかけない」ことで団結していた。

 「ゴミはありませんか」と列を回って集める人たちや、ほうきとチリトリを持って約700メートル先の勝鬨橋の方までたばこの吸い殻を掃除する人もいた。宝塚歌劇のファンが紙吹雪を掃除して帰るのは見たことがあるけれど、ロックファンで見たのは初めてだった。ファンによると、そもそもhideさん自身がきれい好きだったらしい。黒い服と奇抜な髪の色という彼らのファッションは注目を集めたけれど、こうした美学や自主性はもっと注目を集めた。

 ほかにも、泣く泣く帰る地方のファンの花束を引き受ける人や、そういう花がしおれないようにバケツの水を用意する人も。SNSのない時代に、初めて会う人たちが悲しみを共有し、支え合って献花の時を待っていた。「ファンのレベルを見ればタレントのレベルが分かる」というのは芸能記者の共通認識。取材各社に、みるみるファンとhideさんへの敬意が広がり、報じられていったのを覚えている。

築地本願寺を後にするhideさんの霊きゅう車(左車線)と、歩道を埋め尽くすファン=98年5月7日

 告別式では約2万5000人(築地署調べ)ものファンが隅田川沿いまで約2キロにわたって列をつくったが、最後までゴミ問題とは無縁だった。本願寺の向かいは小学校。告別式の日は混乱を避けるために早下校になったけれど、文句を言う保護者はいなかった。

 亡くなってなおファンをまとめたhideさんもすごいし、「hideならどうする」としっかり応えてみせたファンの意地も尊い。故人が望まないであろう後追い自殺があったことも事実だし、出棺で車道に飛び出す一部のファンの絶叫がクローズアップされるのも仕方がないことだけれど、あの場にいた人たちが当時の世の中に刻んだファンの流儀は、その後の芸能界やファンのあり方に大きなインパクトを残したと思う。hideさんが残したものは、音楽や人柄だけではないのだと実感している。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)

シグナルの無線力、おっさんの乙女力/春ドラマ評

 4月期の春ドラマが出そろった。経済にテーマを絞ったテレビ東京の新枠や、時空を越えた捜査など、自由な発想の意欲作に見ごたえがある。プライム帯(午後7時~同11時)では苦戦が続くラブストーリーも、深夜帯ではひと工夫を加えた快作がカラフルだ。「勝手にドラマ評」34弾。今回も単なるドラマおたくの立場から、勝手な好みであれこれ言い、★をつけてみた(定期シリーズものは除く)。

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フジテレビ月9ドラマ「コンフィデンスマンJP」

◆「コンフィデンスマンJP」(フジテレビ、月曜9時)長沢まさみ/東出昌大/小日向文世

★★★★☆

 だましのトリックを二重三重に仕掛け、悪いやつからお金をだまし取る信用詐欺師の痛快劇。天才肌でしぶとくてお金大好き。峰不二子みたいなヒロインを長沢まさみが大胆に演じていて、札束広げて「日当配りまぁぁす!」の血走った目にげらげら笑う。ジャズな世界観や、男連中が女に弱い哲学も初期のルパン三世っぽくて好感。もうちょっとこちらの予想の上をいくコンゲームのカタルシスがあるとうれしいのだが、「スティング」や「百万ドルを取り返せ!」と比較するのも野暮な話。リゾート開発、美術商などさまざまな業界のお金事情を1話完結で見せる古沢氏の手腕をぜいたくに楽しむ。テイストである茶番感を楽しめるかで好みが分かれそう。

テレビ東京ドラマBiz「ヘッドハンター」

◆「ヘッドハンター」(テレビ東京、月曜10時)江口洋介/小池栄子/杉本哲太

★★★★★

 「ガイアの夜明け」「カンブリア宮殿」のテレ東が、経済スキルをドラマに反映した新枠。第1弾は両番組の江口、小池、杉本が集結した豪華版で、敏腕ヘッドハンターの視点から「働く人々」のドラマを描く。人生の決断がある転職は人間ドラマの宝庫であるうえ、題材となる業界にも、転職業界にも詳しい日経グループの品質保証。1話は家電メーカーのエンジニア。特許や論文からたどる人材探しのいろはや生産ラインのつぶし方など取材力が分厚く、お勉強臭さの一線を越えない脚本林宏司氏のドラマ力にぐいぐいはまる。転職の救世主なのか悪魔なのか、油断ならない主人公も魅力的。ライバル小池栄子の切れ味もかっこいい。テレ東らしい挑戦。

フジテレビ系連続ドラマ「シグナル 長期未解決事件捜査班」

◆「シグナル 長期未解決事件捜査班」(フジテレビ、火曜9時)坂口健太郎/北村一輝/吉瀬美智子

★★★★★

 別の時間軸にいる2人の刑事が、無線機でつながって長期未解決事件に挑む。時空を結ぶ無線機という設定の面白さがスリル満点で、こういう韓流はやはり面白い。1話、2話は95年の凶悪事件が時効となる1日の攻防。真っ赤な口紅の長谷川京子のサイコっぷりが極上で、頭脳フル回転の坂口との分刻みの心理戦に息をのんだ。過去から交信してくる大山巡査部長(北村一輝)。ありし日の人柄を丁寧に描いて愛着が持てるので、ここのSF感に不思議な説得力がある。三枝警部補(坂口)が過去に介入することで、結果が良くも悪くもなる。通信のワンチャンスをめぐる頭脳戦にわくわく。坂口健太郎はシリアスが似合う。今期イチオシのタイムパラドクス。

TBS火曜ドラマ「花のち晴れ~花男Next Season~」

◆「花のち晴れ~花男Next Season~」(TBS、火曜10時)杉咲花/平野紫耀/中川大志

★★★☆☆

 花の4人組F4が卒業してから10年後の英徳学園。松本潤、小栗旬、松田翔太、阿部力の05年版に比べると今回のC5は華に欠けて見えるので早く慣れたい。1話は庶民狩りのくだりが普通に陰湿だわ、話が散らかってるわで困ったが、2話で見違えて面白くなってびっくり。ヘタレを財力で補うC5リーダー神楽木が音に恋してからぐっと話がまとまった。根はまっすぐな神楽木の魅力を平野が生き生きと演じ始め、浮世離れの全力ド天然がいちいち面白い。音の婚約者、天馬との三角関係も明確になり、ヒロインがタイプの違う王子様の間で揺れる少女漫画の王道がちゃんと来た。前作をヘンに神格化せず、堂々と新章を描いてほしい。

◆「正義のセ」(日本テレビ、水曜10時)吉高由里子/安田顕/三浦翔平

★★☆☆☆

 不器用な元気印キャラ、実家は庶民的な自営業、ヒールで走ってコケる、本気モードで髪を結ぶ。よくある設定と演出の寄せ集めに戸惑う。被疑者に挑発されて「ぜったいゆうざいにしてやる~」と激おこ、被害者の苦労話に同情して「あなたをしんじまぁす」とぐすん。絶望的に法律家の適性がなく、成長物語とはいえこのレベルからはしんどい。今どき職場で泣くヒロインとか、リアルとかけ離れたよちよち描写は勘弁してほしい。泣かずに踏ん張るヒロインの方が泣ける。家族と法廷ごっこしたり彼氏とデートしたりのシーンは、ごっそり要らない気がする。このテンプレ以外にも、吉高由里子はもっといろいろできる人だと思う。

テレビ朝日木曜ドラマ「未解決の女 警視庁文書捜査官」

◆「未解決の女 警視庁文書捜査官」(テレビ朝日、木曜9時)波瑠/鈴木京香

★★★☆☆

 文書解読のエキスパートが未解決事件を捜査。倉庫の魔女として頭脳だけで“安楽椅子探偵”をする文字フェチな鈴木京香と、手足となって現場を走るワトソンな波瑠のバディもの。文字から人物像や状況を暴いていく切り口が面白いので、原作通りに文字フェチが主人公で良かったのでは。W主演で波瑠をメーンにしていて、体育会系女子の空回り捜査に鈴木京香の文字の力が埋没しがちで気が散る。どんな役もこなす波瑠も、さすがに「自分は」と自分呼びするどすこいキャラは無理め。全体的に楽しめないわけではなく、普通。この2人をしっかり描いてくれればオールOKなのに、遠藤憲一や沢村一樹などとにかく豪華に集めすぎて画面が渋滞。

フジテレビ木曜劇場「モンテ・クリスト伯-華麗なる復讐-」

◆「モンテ・クリスト伯~華麗なる復讐~」(フジテレビ、木曜10時)ディーン・フジオカ

★★★☆☆

 中世フランスの名作を今の日本でどう描くのか注目したが、オープニングが「愛は勝つ」のフラッシュモブというカオス。この曲とセットでセンチな作風が進むのだとしたら、心躍る冒険小説を書いたアレクサンドル・デュマがあの世でキレないか心配。船が遭難→ヤバい手紙託され反逆罪→結婚式で逮捕→監獄島送り、という序章をそのまま日本の漁村で描いたのは「ここが大事」と「復讐が始まらない」で評価が分かれそう。初回視聴率5・1%は残念。今後は大資産を手に脱獄し、金にモノをいわせてあちこち復讐して回る流れ。純朴な青年からの十数年後、経済界での大変身は五代さまのディーン向き。ファリア神父に田中泯は神キャスティング。

日本テレビ木曜ドラマF「ラブリラン」(C)ytv

◆「ラブリラン」(日本テレビ、木曜11時59分)中村アン/古川雄輝/大谷亮平

★★★★★

 3カ月分の記憶が欠落し、職場の後輩町田くんと身に覚えのない同棲をしていた地味系女子の驚愕ラブコメ。なぜか恋も仕事も大変身している自分との奮闘に、ドラマ初主演で一生懸命な中村アンがよく合う。つんのめったり煮詰まったりのカラフルな表情に笑わされ、「あなたなんて知らない」の悔し涙に泣けた。「俺は好きだったよ」の町田くんも最高。そっけない男の分かりにくい愛情を古川雄輝が体温のあるまなざしで見せてくれて、思いがスルーされるのもキュンとする。1度原作を分解して、エッセンスや人物の魅力を映像に再構築できている脚本。幼なじみ、元カノなど報われない関係がいくつもあり、切なさと成長がきちんとあるキラキラしたドラマは大好き。

TBS金曜ドラマ「あなたには帰る家がある」

◆「あなたには帰る家がある」(TBS、金曜10時)中谷美紀/玉木宏/ユースケ・サンタマリア/木村多江

★★★☆☆

 平成最後の「金曜日の妻たち」という触れ込みだが、いしだあゆみ、篠ひろ子、小川知子、古谷一行の魔性感にはほど遠いような。売りである“夫婦あるある”も「夫が洗濯物を取りこまない」とかいうレベル。原作は94年だった。お料理ベタとか週末の痴話げんかとかの古いテイストに、所帯臭さが漂わない中谷美紀&玉木宏が苦戦して見える。逆に、薄幸な木村多江の魔性感や、ユースケのホラーな隣人感はもはやネタの鉄板ぶり。夫へのあてつけで仕事復帰した中谷美紀の悪戦苦闘の方が見ごたえがあった。PDFを知らず、若手にお荷物扱いされ。復職ミセスがぶち当たる壁と悔し涙に新鮮なドラマがあって、こちらのあるあるの方に興味がある。

日本テレビ土曜ドラマ「Missデビル 人事の悪魔・椿眞子」

◆「Missデビル 人事の悪魔・椿眞子」(日本テレビ、土曜10時)菜々緒/佐藤勝利/木村佳乃

★★★☆☆

 人事の悪魔、椿眞子の働き方改革。新入社員を肉体的、精神的に追いつめる過激なパワハラ描写。見る人を異論暴論で張り倒してラストに着地する「女王の教室」のテイストで、会社と対等となるために死に方(退職願の書き方)を学べとか、よくしっぽを振る人間も組織には必要とか、挑発の中に真理あり。首切り部署の人材活用ラボが発足した2話からは、ちょい辛の「ショムニ」っぽい。大河ドラマで新境地をみせた菜々緒にまた悪女役は新鮮味に欠けるものの、ファッションと美しい回し蹴りは目を見張る。菜々緒にネクタイつかまれ、ガン飛ばされ、恐怖の壁ドンされる佐藤勝利くん。振り回されるフレッシュマンを上手に演じ、応援しがいがある。

テレビ朝日土曜ナイトドラマ「おっさんずラブ」

◆「おっさんずラブ」(テレビ朝日、土曜11時15分)田中圭/吉田鋼太郎/林遣都

★★★★★

 おっさんがおっさんに恋をし、おっさん同士でおっさんを取り合う剛速球ラブコメ。一昨年の単発ドラマが好評で、わずか16カ月で連ドラ化。ヒロイン吉田鋼太郎。営業所での圧倒的なダンディズムと、はるたん(田中)に恋する乙女心をフルスイングしていて、シェイクスピア俳優の快刀乱麻に腹抱えて笑う。弁当だ交換日記だといじらしく、バラの花束で「好きでーす!」の純愛が食い気味に瞬殺されて泣けた。後輩社員林遣都との三角関係も王道。主人公のてんてこ舞いを田中圭があれもこれも受けきって笑わせ、極上のラブコメに落とし込む主演力。自信もって挑戦する若手制作陣がすごい。男性視聴者には全然刺さっていなさそうなのも乙。

◆「ブラックペアン」(TBS、日曜9時)二宮和也/竹内涼真/内野聖陽

★★★★☆

 海堂尊氏の小説をドラマ化。大学病院の権力闘争と、出世に興味のない天才外科医のある思惑。「1000万でもみ消してやるよ」。腕を武器にした大胆不敵な渡海先生を二宮和也がダークな魅力で演じ、プライドとヒールの境界線でいい鼻っ柱。1話は心臓祭り。時間勝負のオペでの怒鳴りまくりに、命にだけはまじめな本質がにじむ。1億払い終えるまで人生を握られた世良先生(竹内涼真)は気の毒だが、この人の下で学べるなら1億は安い。原作では脇役の渡海先生を主人公にしたことで、佐伯教授(内野聖陽)との単純ではない話と、ブラックペアン(止血用鉗子)の意味があざやかに効いてきそう。私も渡海先生に「じゃま」と言われたい。

◆「崖っぷちホテル!」(日本テレビ、日曜10時半)岩田剛典/戸田恵梨香

★★☆☆☆

 ホテルや旅館の再建モノは「高原へいらっしゃい」(76年)の昔からある人気の題材。山田太一や三谷幸喜ら先人のフォーマット通りに普通に作っていればある程度の水準まではいくはずだが、集めすぎた吉本枠にギャグの場を提供するのに忙しい。厨房、フロント、事務所などいろんなところでしっちゃかめっちゃかに話が進み、本線がよく分からなかった。2話で視聴率が一気に4・5%減。制作の責任は重い。岩田剛典の演技力がどうだろうと、主演にした以上、この人をもっと動かして従業員とかかわらせ、この人を中心にした職場の成長物語を描くべき。というか、菜々緒が来て片っ端からリストラした方が早いと思う。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)

「だまされて」月9主演、長澤まさみのしぶとい自信

 女優長澤まさみ(30)主演のフジテレビ月9ドラマ「コンフィデンスマンJP」(月曜午後9時)が9日にスタートする。人をだます信用詐欺師を演じる長澤は、11年ぶりの月9主演に「私もだまされたようなもの」とゆるっと笑う。前回は19歳だった彼女も節目の30歳。「おばさんの始まりだとしたら、おばさんって楽しい」と充実している。

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フジテレビ月9ドラマ「コンフィデンスマンJP」主演の長沢まさみ(撮影・山崎安昭)

 -月9の主演は、小日向文世さんから聞いたとか。

 長澤 そうです。映画「マスカレード・ホテル」(19年公開)の撮影の時に小日向さんから「次、月9じゃん」と言われて驚いて。大型ドラマだと聞いていたので、私もだまされたようなものですよ(笑い)。でも、月9だからやめるなんてことはないし、私にとっては、見てくれた人がこれからどんな感想を語ってくれるかの方が大事。「面白かった」「感動した」と言ってもらえるように、いい作品を作るしかないという気持ちです。

 -「月9はリスク」という風評まで出ている中での登板にプレッシャーはないですか。

 長澤 リスクなのだとしても、リスクに踏み込んでいない人よりは一歩先を行っているわけで、それは自分の自信になる。「海月姫」(主演芳根京子)も見てましたけど、若い人たちすごいなと、刺激を受けました。逆境の中、やり切っていてえらいなあと。みんなが勇敢な戦士に見えました。やってみないと分からないことは世の中たくさんある。なるようになるんじゃないですかね、ふふ。

 -すごい前向きで気持ちがいいです(笑い)。

 長沢 父親(ジュビロ磐田初代監督、長澤和明氏)がそうなので。おみくじで3年連続で大凶を引いても「あとは上がるしかないから大丈夫っしょ」って(笑い)。潔くて努力を怠らない人。母親も皆勤賞タイプのまじめな人で、そんな両親がいたからこそだと思います。逆境に立った時がいちばん自分の本領が発揮される。チャンスですよ。

フジテレビ月9ドラマ「コンフィデンスマンJP」(C)フジテレビ

 -今回は、天才肌で無軌道な魅力を持つ信用詐欺師のダー子という役どころ。演じてみていかがですか。

 長澤 私は人をだますのが苦手なタイプだし、周りからものんきそうなイメージで見られることが多いので大丈夫かなと思いましたが、インテリジェンスな方向性ではなくて、ユーモアのある仕掛けなので、自分に合っていたと思います。古沢良太さんの脚本は、張り巡らせた伏線とか、読んで分かっているこちらから見ても面白いんです。ダー子のキャラクターも、ふざけているようで、どこからまじめなのか分からない感じが楽しい。

 -仕掛けたトリックが二転三転しながらお金をだまし取るコンゲームは、映画や小説でも昔から人気のジャンル。なぜ人の心をとらえるのだと思いますか。

 長澤 非現実の魅力だと思います。危機的状況にいる人のやっていることを、人ごとだからおもしろがれるというか。そこには人間の憎悪や、心の流れや乱れがあって、人間らしくてひかれるんじゃないかと思います。

フジテレビ月9ドラマ「コンフィデンスマンJP」(C)フジテレビ

 -長澤さんと、東出昌大さんと、小日向文世さんの3人組が物語の中心となりますが、主演として心掛けたことは。

 長澤 率先して何かをやる、ということはしていません。若いころは、主演だから頑張らなきゃと力が入りすぎていたと思う。でも、現場を作るのは私自身だけじゃない。人に頼る、身を任せるのも大切なことと思っているので、役に集中して、やるべきことをこつこつと。

 -ダー子とか、大河ドラマ「真田丸」のきりとか、しぶとい女の役がはまる印象です。

 長澤 自分で言うのもあれですけど、私、しぶといし、我慢強いし、根性あると思います。農家をやっていた祖父も言ってくれたんで(笑い)。イヤミを言われたり、そういう小さい攻撃は全然平気なんですよね。ずっとこの体、この自分で生きていかなければならないんだから、それくらい図太く根性もって生きていかないと、せっかく生まれてきたのに自分がかわいそう。

フジテレビ月9ドラマ「コンフィデンスマンJP」主演の長沢まさみ(撮影・山崎安昭)

 -ちょうど30歳の居心地はどうですか。

 長澤 20歳の時は、30歳っておばさんだと思っていたんですよ。おばさんの始まりだとしたら、おばさんの時間長いなって(笑い)。おばさんが強いのは、おばさんでいる時間が長い分、振れ幅が無限にあるからかも。子供っぽくてもいいし、老けていてもいい。どっちにもなれると思うと、おばさんって楽しいと思う。

 -長澤さんがおばさんというのも違和感が(笑い)。

 長澤 10代の子から見たらおばさんですよ。うちの母親が映画館にいたら、前にいた子供が、私のことを「きれいなおばさんだね」って言ってたって(笑い)。ありがとう! みたいな。むふふ。おもしろいです、30代って。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)

月9脚本家が戦う「ヒットしない方が話題になる枠」

 フジテレビ月9ドラマ「コンフィデンスマンJP」(月曜午後9時)が9日にスタートする。低迷する月9が、ヒットメーカーの脚本家古沢良太氏と主演長沢まさみのタッグで視聴率浮上を目指す勝負作だ。「リーガル・ハイ」「デート~恋とはどんなものかしら~」など、ハズレなしといわれる創作手腕で月9と向き合う古沢氏に、発想法や、視聴率について聞いた。

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フジテレビ月9ドラマ「コンフィデンスマンJP」について語る脚本家古沢良太氏

 -古沢さんが月9を担当するのは「デート」(主演・杏)以来3年ぶり。月9は視聴率的に苦戦が続いていますが、悩める枠を任されてプレッシャーはないですか。

 古沢 なんにもないです(笑い)。枠とか関係なく書き始めていて、途中で「枠は決まったんですか」と聞いたら「この内容でできる予算は月9しかない」と言われたので。ほとんどの作り手はそこ(視聴率)にはいないんじゃないかという気がします。メディアや一般の人が視聴率を話題にしているのを見ると、正直遅れているなと思っちゃいますけど。

 -とはいえ、月9は調子悪すぎませんか。「民衆の敵」も「海月姫」も4%台を出し、商業放送としてはさみしいような。

 古沢 ヒットしないとすごい話題になる、不思議な枠ですよ(笑い)。先日、知人に「最近ドラマ見てる?」と聞いたら「忙しくて全然見てない。『海月姫』もまだ見てない」って。「海月姫」というタイトルは知ってるんですよ。月9でやっていることも。ほかの枠だと、ヒットしない作品はタイトルも知らないのが普通。あれこれ言われるほど注目度が高いというのは、いいことなんじゃないですかね。

 -たくさんの人に見てもらえて視聴率が上がればなおいいと思うのですが。

 古沢 テレビのビジネスモデルはいまだに視聴率であるので、テレビをやる以上はそこで戦わないといけないとも思う。反感買う言い方かもしれませんが、デビューして数年で脚本の名だたる賞みたいなものをもらっちゃったんで、そっちの方は感覚的に難しくない。僕にとっては、社会現象みたいな爆発的な数字をとることがまだ未知なので、仕事としては目指したい。狙ってできるものでもないですが、狙わないとできるものでもないので。

フジテレビ月9ドラマ「コンフィデンスマンJP」(C)フジテレビ

 -「コンフィデンスマンJP」は、月9初のコンゲームが題材。詐欺師を主人公に、だまし合いでストーリーが二転三転する人気のジャンルです。

 古沢 コンゲームはいつかはやりたいと思っていたんです。「スティング」はもちろん「ペテン師とサギ師/だまされてリビエラ」とかもともと好きで。世の中がモラルや倫理に厳しすぎるんじゃないかと思っていたので、主人公のダー子(長沢まさみ)を作る時は、常識やモラル、法律にまったく関係なく生きている人を書きたいと思って。どうすれば愛すべき詐欺師になるかというのは苦労したところ。

 -詐欺の取材はどのように。

 古沢 荒唐無稽なので手口は非現実的でもいいやと。それより、スポーツ、古代遺跡、美容など、その業界で有名で金をもうけている人を調べました。そういう人って目立ちたがり屋で講演とかしていて、だいたいユーチューブに流れてる(笑い)。うさん臭い考古学者が荒唐無稽な説を一生懸命論じてるやつとか、今でも僕のユーチューブはそういうのが勝手にレコメンドされて上がってきます(笑い)。偽物を追求していくと、じゃあ本物って何なのかというのがテーマになることが多かったです。

 -何を書いても「不謹慎だ」と言われてしまう時代ですが、古沢さんのせりふは、痛快で刺激的なのにあまりやいやい言われませんよね。

 古沢 過激なせりふを言っているようでも、それを言っているこの人が面白い、と解釈してもらえているんじゃないかと。こいつしょうがないやつだな、ひどいこと言うやつだなと(笑い)。僕にとってのいいせりふって、普通のせりふなんだけど、この人がこの状況で言うから面白い、というもの。何を言うかは割とどうでもよくて、それを言っているこの人を面白くしたいんですよね。

フジテレビ月9ドラマ「コンフィデンスマンJP」について語る脚本家古沢良太氏

 -一方で、しっとりしたいい話もお書きになる。「相棒」の靴職人の話とか、大好きなんですよ。

 古沢 僕も好きですね、われながら。

 -ああいうハートウオーミングなテイストは古沢さんのどういう部分から生まれてくるんですか。

 古沢 自分の精神状態がおかしいのかもしれないんですけど(笑い)、街の普通の人の風景に泣けてくるんですよ。冬に車を運転していたら、おじさんが、寒くて強風の中、背中を丸めて書類かばんを抱えて歩いていて。色がまた、えんじ色の昔のかばんで。なんか、こみあげてきちゃって。あと、夜11時くらいに女の人がスーツケース引いて坂道のぼっていて、その後ろを7、8歳くらいの女の子がついていって。なんでこんな時間に親子で歩いているのかなって、なんか泣けてきて。

 -原作ものより、基本的にオリジナルでお書きになるのも分かる気がします。

 古沢 何か作るのが好きなんですよね。子供時代はベビーブームだったので、近所に子供がいっぱいいたんですけど、1年から6年まで年が離れていたりすると、ひとつの遊びができない。だからルールを変えたり、新しい遊びを考え出したり、ボードゲームみたいなのを自分で作ってみんなで遊んだり。そういうのが好きで得意だったんです。今もドラマでそれをやっているような気がします。集まってくれたみんなが楽しんでくれたらいいなと。

 ◆古沢良太(こさわ・りょうた)02年、「アシ」でテレビ朝日21世紀新人シナリオ大賞を受賞し脚本家デビュー。同局「相棒」シリーズや、NHK「外事警察」、フジ「リーガル・ハイ」シリーズなどヒット作多数。05年の映画「ALWAYS 三丁目の夕日」で日本アカデミー賞最優秀脚本賞。

 ◆ドラマ「コンフィデンスマンJP」 天才肌だが無軌道なダー子(長沢まさみ)、お人よしのボクちゃん(東出昌大)、百戦錬磨のリチャード(小日向文世)の信用詐欺師3人組が、欲望にまみれた人間たちから大金をだましとる、痛快エンターテインメントコメディー。9日スタート、月曜午後9時。1話の悪役ゲストは江口洋介。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)

朝ドラ脚本家が語る「佐藤健しかできない」裏テーマ

 脚本家北川悦吏子氏(56)が手掛けるNHK連続テレビ小説「半分、青い。」(月~土曜午前8時)が4月2日からスタートする。

 「ロングバケーション」「愛していると言ってくれ」などのヒット作で“恋愛ドラマの女王”として知られる氏と、朝ドラの初タッグが話題だ。左耳が聞こえない女の子が、高度成長期から現代を駆け抜け、一大発明を成し遂げるまでを描く。北川氏が「朝ドラに革命を起こした」という自信を語った。

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NHK連続テレビ小説「半分、青い。」のヒロイン永野芽郁(左)と佐藤健

 -「朝ドラでやりたい」と自らNHKに企画を持ち込んだ作品ですよね。

 北川 3年前、自分が左耳を失聴してショックだったんですけど、傘をさすと左側だけ音がしなくてちょっと面白いと思ったのがドラマになるんじゃないかと思ったのが最初で、朝ドラでやれたら画期的になるんじゃないかと。ファーストシーンになっていますが、タイトルと一緒にポンと出たという感じです。

 -手応えは。

 北川 朝ドラに革命を起こしたんじゃないかというくらい。同じ産院で同じ日に生まれた男女の話で、ヒロインが幼少期からじゃなくて、胎児から出ます。3話で新生児室で横並びのシーンがあって、(相手役の)佐藤健くんのナレーションで「まだ名前もない時に僕たちは出会った」と。今までラブシーンの出会いのシーンを散々書かされてきましたが、「名前もない時に出会った」なんて書けたのは自分でも画期的。健くんが「もう北川さんの代表作はロンバケって言わせませんよ」と言ってくれて、若い人たちが意気込んでくれているのはすごいうれしいことだと。

 -ヒロインの鈴愛(すずめ)を演じる永野芽郁さんの印象は。

 北川 鈴愛はこの子だと思って、私の中で自然にアテ書きが始まった。ひどいことを平気で言っちゃったり、好きなように書いている。そこをせき止められると、脚本がどんどん狭く小さく面白くなく、誰が書いても一緒になるので。あと、朝ドラは、実在の人物、戦争をはさむ、あとひとつ何だっけ(笑い)。この3つがあると当たると言われていて、それを全部外して書いているのもチャレンジング。私は、ヒロインはポンポンしゃべる早口な女の子がいいので、彼女は鈴愛にぴったり。彼女なら左耳が聞こえなくてもたくましく生きていくだろうという感じ。

 -そのたくましさをテーマにしていますよね。

 北川 昔、「オレンジデイズ」(04年)という、両耳が聞こえない女の子のドラマを書いたことがあるのですが、見てくれた人が「両耳が聞こえない女の子の話」ではなく「オレンジデイズみたいな青春したい」という青春ものとして語ってくれるのがうれしいことで。今回も、私のねらいはそこだった。

 -相手役の律を演じる佐藤健さんについて。

 北川 律は3回笛吹いて呼ばれるマグマ大使みたいに、自発的に動かない子なんですね。そんな彼がどうやって、どういう人生を見つけていくかというのがこの作品の裏テーマだと思う。健くんが来てくれたのは本当に大きい。「バクマン。」で彼のお芝居を観た時に、どうしても彼が欲しいと思って。受けの芝居と攻めの芝居が内在する人。ただ優しい子じゃない律の強さや意志は、佐藤健でしかできなかったんじゃないか。律は、自分が書いてきたラブストーリーの相手役の集大成になると思う。

NHK連続テレビ小説「半分、青い。」の脚本家北川悦吏子氏

 -15分×6本で1週、という朝ドラのサイクルを書く難しさは。

 北川 全部で156話の長丁場を書くのは初めて。よく千本ノックのように言われますけど、オリジナルなので球を探すところから始めて打つ、というハードなことを3日に1本やっています。私の原点のひとつに「世にも奇妙な物語」があるんですね。週に3つ企画出せみたいな百本ノックを常にやってきて(笑い)、アイデア勝負でオチまで攻めるというのが、15分の朝ドラと使う頭が似ている。フジテレビのトレンディードラマで軽やかな会話劇を学び、TBSの「愛していると言ってくれ」(95年)などで重たいシックなものを培い、それが全部重なってこの「半分、青い。」になったのかなと。

 -北川さんといえば恋愛ドラマですが。

 北川 そうではなくて、ずっとホームドラマを避けてきたんです。私としては、身内を書く方が恥ずかしいんですよ。でも、書いてみたらすごい書けた(笑い)。恋愛でも家族でも、自分は人と人を書くのが好きなんだなと。母と娘のシーンとか、ほっとくと一生書かないまま終わったと思うので、朝ドラとの出会いは新鮮でした。

 -びっくりした時の「ふぎょぎょ」など、北川さんの造語について。

 北川 自分で言葉を作るのが好きで。「チャラ男」って初めて言ったのは自分だという自負があります(笑い)。「愛していると言ってくれ」で書いたんですよ。キメぜりふを入れるのはかっこ悪いと自分では思うのですが、朝ドラにはそういうのがあってもいいのかなと。やってみたら意外と楽しい。流行らせようという野心はまったくありません(笑い)。

テレ東流の豪華さが涙ぐましい…変貌する改編説明会

テレビ東京改編説明会で。人気だった「孤独のグルメ」のコーナー

 先週相次いで行われた民放4月改編説明会で、ちょっとした異変があった。テレビ東京の説明会が大いにビジュアル化、体感型化してきた。会場を特大パネルで飾ったり、新番組のVTRをドラマ風に編集したり、試食コーナーを設けたり。会議室で編成幹部が資料説明、というパターンから脱皮し「少しでも話題を」と手作りしてきた。SNS時代で改編ネタへの関心度が格段に上がった中、説明会も変貌している。

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 今回テレ東が説明会を行ったのは、メインスタジオの第1スタジオ。だだっ広い空間に新番組の特大パネルをいくつも並べ、「こんな番組が始まるのか」と、MCの顔や番組の雰囲気が見た目に分かる趣向だった。

 ただのポスターの拡大版ではないのも気が利いている。4月から日曜ビッグバラエティ枠で月イチでレギュラー化される「緊急SOS! 池の水ぜんぶ抜く大作戦」のパネルは、これまで水を抜いてきた全国21の池と、そこにいた在来種、外来種の一覧を記した日本地図。専門家も学術的価値があると評価する力作で、「このまま紙面に転用したいくらい」と、一般紙記者も群がって写真を撮っていた。

 ドラマ24「孤独のグルメSeason7」(金曜深夜0時12分)は、ラーメン店のカウンターに主演松重豊の等身大パネルを組み合わせたもの。隣に座ると松重とラーメン店にいるように見える趣向で、ネット記者たちが「SNSのネタに」と“ツーショット”を撮って発信していた。「味もネタになれば」と、作品に登場した料理3品の試食コーナーまであり、ネットやSNSウケする工夫を凝らしていた。

 各新番組の紹介VTRもひと工夫。いきなりお父さんと娘が出てきて「お父さん、大変大変」「何だ急に」。父と娘の会話の中で新番組VTRを紹介するという、まさかのドラマ仕立て。「池の水ぜんぶ抜く」の流れでバラエティー新番組を紹介すると「お父さんの髪もぜんぶ抜いちゃうか、わはは。そんなことより次はテレビ東京の経済だ」と、経済系の新番組を紹介。編成部長や担当プロデューサーによるPRに弾みをつけていた。

 説明会の変貌について、宣伝担当者は「いつもと違うことを、という狙いでいろいろやってみました」。小孫茂社長のカラーも大きい。昨夏に所信表明した「新しいことを始めたな、と言われるテレビ局でありたい」というマインドが、改編説明会にも反映された形だ。新番組VTRについて同局は「個別のものをつなげているだけでは印象に残りにくいと思い、お父さんと娘の会話に組み込んで壮大な話にしてみました」。当初はお母さんも登場するバージョンだったというが「長いと言われてカットした」と笑う

 特大パネルも「ビジュアルにした方が印象に残りそう」。低予算と戦うテレ東らしくないと思ったら、やはり「別件の再利用」という答えが帰ってきてほっこりする。改編説明会の前に行われる、スポンサー向けの広告説明会で「何か新しい趣向を」と作ったもので、「記者の皆さんにも見ていただこうと置きました。特別予算はないので、やれる範囲で頑張っています」。今まで付き合いのなかったウェブ媒体にも声を掛け、広い第1スタジオを用意したという。

 改編説明会が、誰も行かない行事だった時代を考えると隔世の感がある。年に2回、昭和から存在する古いイベントだが、ネットがない時代は、取材者は新聞とテレビ雑誌くらい。内容のほとんどは発表済みであり、担当記者として義務感で足を運ぶか、ほかの取材優先で「合本だけ送ってください」で済ませるか、というのが一般的だった。

 当コラムで初めて改編説明会について書いたのは14年9月。読み返すと「編成局幹部による地味な会見で記事になることはほとんどないが」「そもそも改編説明会とは」とあるが、ことのほか多くの人に読まれ、潜在的な需要に面食らったのを覚えている。あのへんを境に、各媒体のネット化やSNSが本格化し、発表済みのものでもどんどん記事になり、読まれる時代へ。局側にとっても宣伝の大チャンスとなり、会場を広くしたり、VTRを作ったり、局アナが進行係を務めたりと変化しながら今に至っている。

 ちなみに今回は、日本テレビ、TBS、テレビ朝日が、会議室で編成幹部が資料に沿って説明する従来型パターン。TBSは進行係が局アナだったが、日テレはほぼ無改編のため編成部長のみ。テレ朝はVTRも局アナもない伝統方式を貫いている。フジテレビは、今も昔も一流ホテルでのパーティー付きである。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)

梅田恵子(うめだ・けいこ)

 東京都生まれ。89年入社以来、芸能・社会を中心に取材。テレビおたく、ドラマおたくの立場から勝手な好みで毎クールのドラマを採点する「勝手にドラマ評」も7年目。左利きフェチ、食オンチ、方向オンチ。取材、分析の「梅ちゃんねる」とは別に、ゆるーいネタをゆるい視点でゆるーくつぶやく「B面★梅ちゃんねる」も始めました。