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au版ニッカン★バトル

新着

リングにかける男たち

新日本も山あり谷あり…リング内外で感じた新たな風

棚橋弘至(2018年12月12日撮影)

スポーツ新聞は、オールドメディアと言われることもある。それでも、この媒体がやっぱり面白いと、まだ何かやれることがあると思えるから仕事を続けているのだと思う。12月末、4人のプロレスラーにインタビューし、思わず自分の仕事をプロレスに重ねた。

棚橋弘至、オカダ・カズチカ、内藤哲也、飯伏幸太。今をときめく4人全員が、客が入らない、またはブーイングを浴びる不遇の時代を経験してきた。その中でもプロレスの面白さを変わらず信じ続け、今は新たなプロレスブームをけん引している。「地上波のゴールデンタイムでプロレスを」(飯伏)。「大人が楽しむ文化の一ジャンルにしたい」(棚橋)。いまだに尽きない夢やアイデアに、刺激を受けた。先が行き詰まったようにみえても、続けていたら何か新しいことが見えてくるかもしれないと思えた。プロレス担当となって1カ月。リング内外で熱気と新たな風を感じながら仕事をしている。

この4人へのインタビューのお題は「俺の平成ベスト1・4」。新日本の1月4日東京ドーム大会に向けた連載のためで、92年から続く同大会の中から心に残る試合を選んで語ってもらった。資料として持参したのが、1・4を報じた27年分すべての日刊スポーツの紙面。全員が真剣にそのプリントすべてに目を落とし、うれしそうに思い出を語ってくれた。特に、ファンクラブ会員だったことで知られる内藤選手は「あぁ…」「うーん」などと声を漏らしながら、約5分間熟読。同席した新日本の担当者の方が「インタビューの時間、終わっちゃいますよ」とつっこむほど夢中になって読んでくれた。

手前みそだが、この27年分の紙面は今見ても面白い。その時代の空気感が伝わってくる。例えば1995年(平7)の1面は「高田 武藤を逆十字」。メインでUWFインターナショナルの高田が新日本の武藤に勝利。その他にもアントニオ猪木、長州力、馳浩とそうそうたるメンバーの試合が2、3、裏面と4枚展開で報じられている。また「新春4日ドーム恒久開催決定」の見出しも。そこから数年は大展開が続くが、2000年中盤から一変。観客数の減少と合わせるように、紙面のスペースも減っていく。

08年は、白黒1ページだった。そこには「観客数は2万7000人の過去最低」「2年連続で2階と外野スタンドを開放しない『身の丈サイズに合った興行』(菅林社長)」とある。ぎゅっと情報を押し込めたその1枚にはマイナー感が漂う。その後、12年ごろからフロントの改革と現場の努力によって、新日本プロレスの売り上げはV字回復をとげた。それに沿うように、13年ごろから再びカラーで派手に紙面展開するようになる。そして昨年1月4日の翌日。1面は、メインで内藤に勝利したオカダ。1・4が1面となるのは「小川 健介戦放棄」(小川直也が佐々木健介戦を途中放棄)の02年以来、16年ぶりのことだった。

プロレス担当となった昨年12月。棚橋選手にあいさつすると、「Kさんは元気ですか?」と聞かれた。08年の不遇の時代に担当をしていた記者の名前が真っ先にあがった。これまでと同様、今年も我々は1・4をしっかり報じる予定だ。「1月5日の1、2、3面を空けてますから」と棚橋選手に言うと、「おぉ!」と、大変喜んでいた。

1月2日時点で、チケットの売り上げは昨年の動員数3万4995人を超えているという。時代と寝て、空気を伝えるのがスポーツ新聞の役目。19年1月4日の東京ドームの熱気を、できるだけ伝えられるよう努めたい。【高場泉穂】

原功「BOX!」

多士済々 五輪が生んだヘビー級の次世代スター

現在、ヘビー級は3団体統一王者のアンソニー・ジョシュア(29=英)、WBC王者のデオンタイ・ワイルダー(33=米)、さらに昨年12月にワイルダーと引き分けた元3団体統一王者のタイソン・フューリー(30=英)が「3強」といわれている。今年か来年には最終的な頂上決戦が行われるだろうと期待を集めているところだ。こうしたなか次世代のスター候補も徐々に頭角を現してきている。今回はそんななかから4選手を紹介しよう。

この半世紀ほど、オリンピック(五輪)はのちのプロのスター登竜門的な意味も持つようになった。現にジョシュアは12年ロンドン大会の金メダリスト、ワイルダーは08年北京大会の銅メダリストである。そういった流れからすると、16年リオデジャネイロ五輪スーパーヘビー級金のトニー・ヨカ(26=仏)を近未来の王者候補として真っ先に挙げなければなるまい。身長201センチ、体重約108キロのヨカは17年6月にプロデビューし、1年で5連勝(4KO)を収めた。まだ世界的な強豪との対戦はないが、WBCでは12位にランクされている。ただ、ドーピング違反のためフランスのコミッションから1年の出場停止処分を受けており、現在は活動を自粛している状態だ。復帰戦が6月か7月に計画されている。

アマチュア時代からヨカのライバルだったのがジョー・ジョイス(33=英)だ。15年の欧州選手権ではヨカに勝ったジョイスだが、その年の世界選手権で敗れたあと16年リオデジャネイロ五輪決勝では惜敗した。身長198センチ、体重117キロの巨体から打ち下ろすワンツーを主武器に、プロでは7連続KO勝ちを記録している。英連邦王座やWBAコンチネンタル王座を獲得しており、WBAで5位にランクされている。23日には前WBC王者のバーメイン・スティバーン(40=ハイチ/米)との試合に臨む。これをクリアするようだと注目度がさらに上がりそうだ。

WBC28位に名を連ねるダニエル・ドゥボア(21=英)は素質の塊のような選手だ。身長196センチ、体重108キロの鋼のような肉体から基本に忠実なワンツーを繰り出す強打者で、プロで9連勝(8KO)をマークしている。3月8日には世界挑戦経験者との試合が組まれており、徐々に対戦相手の質が上がってきた。このまま伸びれば2~3年後には世界戦の舞台に上がっていても不思議ではない逸材だ。

16年リオデジャネイロ五輪ベスト8のエファ・アジャバ(24=ナイジェリア)も順調に成長している。17年7月にプロ転向してからの戦績は8戦全勝(7KO)。KOを逃したのは、相手が開始ゴングと同時に戦いを放棄、リング下りた試合だけだ。ちなみに、この試合は相手の失格=反則負けとなり、ボクシング史上最短決着(1回1秒)として記録されている。アジャバは身長196センチ、リーチ224センチ、体重107キロと恵まれた体格の持ち主で、その筋肉質の体から放つ右ストレートでKOの山を築いている。3月9日には元世界ランカーとのテストマッチが組まれている。

トニー・ヨカ、ジョー・ジョイス、ダニエル・ドゥボア、そしてエファ・アジャバ-

彼らが世界ヘビー級トップの座に君臨する日は近い?

リングにかける男たち

世界に挑んだ2人のボクサー、熱い会長とこれからも

高橋竜平

モンスター井上尚弥がいよいよ5月にボクシング発祥の地英国に初上陸する。海外は17年の米国以来2試合目。初の団体統一戦で19年の黄金カード第1弾となる。井上に限らず日本勢の海外進出はどんどん増えそうだ。今年もここまでの世界戦は米国での2試合。2人とも壁にはね返されたが、印象に残るボクサーで熱い会長だった。

横浜光ジムの高橋竜平は11回TKO負けした。東洋大ではレギュラーにも入れず、12年のプロデビューも初回TKO負け。そこから米ニューヨークにある格闘技の殿堂マディソンスクエアガーデンにたどり着いた。試合の正式決定は1週間前も、石井一太郎会長は「可能性は0%でない」と迷うことなく受けた。

会長は明大時代にボクシングを始め、日本、東洋太平洋王座を獲得した。宮川会長から勧められてトレーナーに転身したが、2年後にその会長が急逝した。元々は会長が会社経営のかたわら開設。存亡危機となったが12年に跡を継ぎ、世界王者を3人育てたジムの歴史をつないだ。

現役時に海外修行経験もあり、積極的に海外での試合もマッチメークする。高橋も17、18年とタイでの試合で成長させ、世界ランクを上げたのが世界戦に結び付いた。選手指導は基本的にトレーナーに任せて「選手をリングに上げるのが仕事」と話す。

14年には動画配信サイトも立ち上げた。裏話や臆せず物言う専門誌の連載コラムも評判だ。36歳とこの業界では若く革新的会長だ。

ワールドスポーツジムの井上岳志は、斉田竜也会長と同じ駿台学園、法大を経て入門した。米ヒューストンでNBAロケッツがホームのトヨタセンターで世界挑戦。判定は2人がフルマークも、全勝のスター候補王者にひけをとらず「偉大なファイター」と言わせた。

斉田会長は国体と全日本を制したトップアマだった。卒業後はダイエーに入社も1年半で退社。「ボクシングの世界が恋しくなって」と、ジム開設を前提に国際ジムでトレーナーに転身した。足立区の若手経営者を支援する無利子で資金を貸すシステムを利用。05年に東京・竹の塚のビルを買い取ってジムを開いた。

1年以上かけて、昨年5月にリニューアルオープンした。3、4階が練習場で、6、7階は合宿所。更衣室のある2階には整骨院も併設され、会員は割引料金という。さらに5階には銭湯とサウナがあり、会員は無料で利用できる。

「合宿希望者は断っている」という状況から、現在は整骨院を1階に移し、2階も合宿所にする工事が進んでいる。実に豪華で近代的な日本初の銭湯付きジム。やり手の会長の下へ今後も有望選手が集まりそうだ。

高橋も井上も世界への思いはより強くなり、再挑戦を期す。二人三脚の歩みはまだ続く。【河合香】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)

井上岳志
大相撲裏話

平成の終わりと白鵬時代の潮目、若手台頭で変革の時

大相撲初場所13日日、貴景勝に突き落としで敗れた白鵬(2019年1月25日撮影)

「平成」の元号が終わりを告げる年、初場所で時代の潮目を感じた。担当歴2年弱の新米で、相撲のなんたるかもまだ分からんのですが、確かに感じるものはありました。

数年後に「あれが引き潮やったんか」と思うかもしれん出来事は、14日目に起こった。横綱白鵬の休場。驚いた。初日からの10連勝後、御嶽海、玉鷲、貴景勝に3連敗した翌朝、白鵬の朝稽古を見ようと訪れた宮城野部屋前で一報が入った。確かに玉鷲に1差リードを許したが、残り2日で逆転Vの可能性はあった。なのに休んだ。それまで途中休場は5場所あったけど、場所が最も押し迫ったタイミングは関脇やった05年名古屋場所の9日目。優勝争い最中の14日目の休場なんて初めてのことでした。

診断内容は「右膝血腫、左足関節炎で約1週間の加療を要する」。額面通りに受け取れば重症ではない。ただ、右膝は昨秋に骨片除去手術をして、昨年九州場所全休の要因になった箇所でもある。13日目の取組後、左膝の違和感を問われて「(初日から)ずっとだからね」とこぼしていた。

残り2日、無理を押して相撲をとって、症状が悪化する怖さがあったのかもしれない。白鵬も33歳。11年以上も横綱を張った者にしかわからない疲労や、体への不安もあるんでしょう。41度も賜杯を手にした、絶対的な強さは揺らいでいるのかもしれません。

逆に「あれが上げ潮やったんか」と思う現象は、やはり若手の台頭です。優勝は34歳の関脇玉鷲が手にしたものの、26歳の小結御嶽海が3横綱1大関を破り、途中4日も休みながら殊勲賞に輝いた。22歳の関脇貴景勝が、昨年九州場所初優勝の勢いを持続させ、千秋楽まで2場所連続優勝の可能性を残した。平幕で2桁白星を残したのは3人いたが、32歳の魁聖を除いて、残る2人は28歳遠藤と24歳阿炎でした。また9勝に終わったものの、26歳北勝富士が西前頭2枚目で9勝し、春場所の新三役を濃厚にした。

千秋楽に御嶽海はこう言いました。「時代が動いてるな、と感じますか?」と聞くと「時代は動いてますよね」。おうむ返しのようなやりとりですが、かみしめるような口調は印象的でした。

春場所は3月10日から始まります。貴景勝は自他ともに認める大関とり。御嶽海も自信を深め、体調を整えてくるはず。貴景勝の躍進に燃える同世代の阿武咲、阿炎もいれば、御嶽海をライバル視する同学年の北勝富士もいる。そんな20代の勢いを、白鵬が受け止められるのか。

平成最後の本場所は、まさに待ったなしです。【加藤裕一】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

大相撲初場所で殊勲賞と敢闘賞を受賞した玉鷲(中央)左は殊勲賞の御嶽海、右は技能賞の貴景勝(2019年1月27日撮影)

原功「BOX!」

村田破ったブラントが初防衛濃厚、どうなるミドル級トップ戦線

昨年10月、村田諒太(33=帝拳)を大差の12回判定で破ってWBA世界ミドル級王者になったロブ・ブラント(28=米)の初防衛戦が15日(日本時間16日)、同級8位のカーサン・バイサングロフ(21=露)を相手に米国ミネソタ州ヒンクリーで行われる。バイサングロフは17戦全勝(7KO)のホープだが、村田に勝って自信を増しているブラントの防衛が濃厚とみられる。

ブラントは村田戦では9対2のオッズで不利とみられていたが、試合では巧みな位置どりと手数でポイントをかき集めた。パンチの多くは軽打だったが、放った総数は1262発、ヒット数は356発だった。ミドル級の世界戦では12回まで戦った場合、600発前後が平均といわれるなか、いかにブラントが多くのパンチを繰り出したのかが分かるデータといえる。敗れた村田も774発を打ち、そのうち180発を当てたが及ばなかった。

村田戦後、新王者のブラント(25戦24勝16KO1敗)には、12年ロンドン・オリンピック(五輪)決勝で村田に惜敗したエスキーバ・ファルカン(29=ブラジル)との初防衛戦プランが浮上したが、これは見送りとなった。ブラントの地元での試合をファルカンが嫌ったためとも伝えられる。

代わりに挑戦することになったのがバイサングロフだ。このロシア出身の21歳は185センチの長身で、ガードを比較的高く上げた構えから左ジャブを突き、右フックや左ボディブローに繋げる攻撃パターンを持っている。機をみて左構えにスイッチすることもある。

ただ、41パーセントのKO率が示すようにパワーには欠ける。12対1というオッズが出ているように、ブラントが手数とテクニックで試合を支配したすえ中盤から終盤でストップする可能性が高そうだ。

試合以上に注目したいのは、ブラントとミドル級トップ戦線の今後である。現在、ミドル級ではWBAレギュラー王者(ブラント)の上にスーパー王座が設けられており、そこにサウル・カネロ・アルバレス(28=メキシコ)が君臨している。WBCには正王者アルバレスと暫定王者ジャモール・チャーロ(28=米)がおり、IBFではダニエル・ジェイコブス(32=米)、WBOではデメトリアス・アンドレイド(30=米)がそれぞれ王座に君臨している。このうちアルバレスとジェイコブスは5月に統一戦を行うことが決まっている。その勝者がアンドレイドとの4団体統一戦に向かうというプランがある。この3人はDAZNと試合放映の契約を交わしているため、マッチメークの面で壁が少ないのだ。

アルバレスと2度にわたって大接戦を演じた元3団体統一王者のゲンナディ・ゴロフキン(36=カザフスタン)も返り咲きを狙っている。そのゴロフキンにはDAZNがアンドレイド戦とアルバレスとの第3戦で合計約50億円という条件で契約を持ちかけており、その行方が注目されている。

一方、WBC暫定王者のチャーロと契約しているPBC(プレミア・ボクシング・チャンピオンシップ)もゴロフキンに条件提示をして接近していると伝えられる。また、村田とファルカンを擁するトップランク社&ESPNチームは、村田戦後にブラントと契約を交わして王座の一角を占めている。

ゴロフキンの例が示すように米国ではボクシングを放送する前出3グループがトップ選手の囲い込みに躍起になっており、契約下の選手同士でカードを組んでいく傾向が顕著になっている。したがって、たとえば「アルバレス対チャーロ」は、よほどのウルトラCがない限り実現は難しいのが現実だ。

リング外が巴戦の様相になっている現在、ブラントの今後の対戦候補は自ずと絞られてくる。したがって、再起戦で勝利を収めることが大前提になるが、村田が王座奪回を狙ってブラントと再び拳を交える可能性は決して低くはないのだ。そういった意味でも、まずは15日(日本時間16日)に行われるブラント対バイサングロフに要注目といえる。

リングにかける男たち

キュートな22歳リー、2階級制覇でスター街道歩む

3月31日のONE日本大会で2階級制覇に挑む女子アトム級王者アンジェラ・リー

3月31日、日本で初開催される格闘技興行ONEチャンピオンシップで、キュートな22歳の女子王者が2階級同時制覇を狙っている。ONE女子アトム級王者アンジェラ・リー(シンガポール)が王座を保持したまま、1階級上の王座、女子ストロー級王者ション・ジンナン(31=中国)に挑む。両親がテコンドーなど格闘技をしていた影響で幼少時代からグラップリング、柔術、テコンドー、柔道、レスリング、キックボクシングと学んでいたという生まれながらのファイターだ。

ONEイベントのために来日した女子アトム級王者アンジェラ・リー

プロ戦績9戦全勝、19歳でONEアトム級王座を獲得している。輝かしいファイト戦績とは対照的に、普段はスイーツ好きな女子。「戦っている時は真剣な表情になってしまうので、普段はスマイルを意識しています」。米総合格闘技UFCではロンダ・ラウジー(現WWEロウ女子王者)が初代バンタム級王者として人気を博し、映画出演など女優としても活躍していた姿にも刺激を受けている。「タレント活動にも、すごく興味があります。将来的にスーパーヒロイン系の役柄で出演できたらうれしいです。日本で試合することで、日本からそんなオファーが来たらいいなと思いますね」と期待感を口にした。

パンクラチオンの世界選手権出場のため、16歳の時はギリシャ、17歳でクロアチアに遠征した。スイーツや旅行が趣味で「世界各国に行くことができて、世界のフードも味わえる。この時、格闘技は天職だと考えました」とプロファイターを志した。1年間だけサッカーのGKを務めたスポーツ歴はあるものの「まったく上達しなかったのです。格闘技向きなのが分かりました。家族やコーチを残念がらせたくなくて試合が怖いと思うことはあっても、対戦相手を怖いと思ったことはないですし」と自信に満ちた表情を浮かべた。

1月に都内で開催されたONEのファン公開ワークアウトに参加した女子アトム級王者アンジェラ・リー

17年11月に拠点の米ハワイで自動車運転中に交通事故に見舞われた。奇跡的に大けがはせず、すぐに退院できたことを契機に「すべてを当たり前と思わず、感謝すること」を再認識したという。今回の2階級制覇挑戦の舞台も故障が原因で昨年11月に中止となっていた。「ONEが完治するまで待つと言ってくれて。今回、日本で同じカードが組まれて運命的なものを感じます。日本で2階級同時制覇をしたいと思います」。

3月の王座戦後は1週間ほど日本に滞在予定。「桜の季節と聞いていて楽しみ。日本の観光地やスイーツが本当に楽しみ。でも今は2階級制覇に集中しています」と隙をみせない22歳のリー。王者対決は両国で注目されるカードの1つ。日本で2階級制覇を成し遂げれば、スター街道へのスピードが加速しそうだ。【藤中栄二】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)

◆アンジェラ・リー 1996年7月8日、カナダ・バンクーバー生まれ。テコンドーなどをたしなむ両親の影響で、3歳から格闘技を開始。2度世界パンクラチオン王者に。15年5月にONEチャンピオンシップ27大会でプロデビュー。父の生まれ故郷シンガポールを拠点とするイボルブ・ファイト・チームに加入。16年5月、ONE女子アトム級王座決定戦で山口芽生を下し、19歳で王者に就いた。プロ戦績9勝無敗。米ハワイが生活拠点。弟クリスチャン・リーも格闘家として活躍。家族は両親と弟2人と妹。犬のピットブルがペット。163センチ、52キロ。

大相撲裏話

「稀勢の里」過去記事に懐かしさ 親方での今後期待

引退後にはじめてスーツ姿で年寄総会に出席し国技館を後にする荒磯親方(元横綱稀勢の里)(2019年1月31日撮影)

初場所4日目に横綱稀勢の里(32=田子ノ浦)が引退した。「平成」のうちに行われる本場所は残り1場所。3月の春場所だけだ。平成に誕生した最後の横綱であり、おそらく平成のうちに引退する最後の横綱となるだろう。現在は年寄荒磯を襲名。本来は「荒磯親方」と表記しなければならないが、主に現役時代の話に触れるので、あえて「稀勢の里」と書かせてもらう。

初めて取材したのは2010年春場所だった。途中、6年も相撲担当を離れていたが、それでも自分が書いてきた稀勢の里の記事を調べてみると、大小合わせて500本近くにものぼっていた。以前書いていた記事を読み返すと、自分で書いたものにもかかわらず驚かされる。例えば10年8月8日、福島市での夏巡業の関取衆による申し合いの際には「驚異の17人抜きを達成した。18人目で大関把瑠都に敗れたが-」と表記していた。当時は大関昇進の1年以上前となる24歳。こんなワクワクする若手と接していたのかと、懐かしいような、どこか新鮮な気持ちにもなった。

同日の取材では、稽古や本場所などを通じて感じた反省点を、不定期ながら、その半年ほど前からノートに記していることも明かしている。土俵の上ではもちろん、土俵外でのまじめさ、熱心さを今さらながら感じた。

また11年1月7日に書いた記事を読み返すと、初場所初日の2日前にもかかわらず、当時の鳴戸部屋で計45番も相撲を取っていた。本場所初日の2日前は、基礎運動などで軽く汗を流したり、まったく稽古を行わずに休養に充てたりといった力士が多い現在では、信じられないような番数をこなしている。しかも若の里、高安、隆の山ら関取衆相手の申し合いが大部分を占める中、45番で43勝2敗と驚異的な勝率。当時の師匠で、故人の元鳴戸親方(元横綱隆の里)から「土俵際はがけっぷちだと思え」と、ゲキを飛ばされながらの熱のこもった稽古だった。

11年8月には、20日間にも及ぶ青森合宿に初めて最初から最後まで参加した。例年は巡業のため、途中で離れていたが、八百長問題の影響で、その年の夏巡業は中止となっていた。連日の50番にも及ぶ猛稽古と、夜には初めてねぶた祭を見物し「一番前で見せてもらった。迫力があった」と語っている。さらに中学生の時以来10年以上遠ざかっていた、絵描きにも挑戦。観光施設で、筆で色付けしながら「ねぶた」を1時間以上描き続けた経験を、初々しく話していた。心身共に成長したこの夏合宿の蓄積が、同年11月の九州場所後の大関昇進につながったと見る部屋関係者は多い。

そんな稽古熱心で、好奇心旺盛な稀勢の里の復活を、小学生時代から知る地元茨城・牛久市で市議会議員を務める池辺己実夫氏は、最後まで信じていた1人だ。17年にパレードを行ったJR牛久駅から伸びる「けやき通り」を、通称「横綱通り」または「ごっつぁん通り」と命名したいと考え「早ければ3月の議会で提案します」と宣言していた。牛久市役所も、初場所で優勝争いをしていた際には、土、日曜日ながら14日目や千秋楽に市役所でパブリックビューイングを行う準備をしていた。市役所の玄関には、稀勢の里が締めた綱を飾り、外にはのぼりを立てて盛り上げていた。19年ぶりに誕生した日本出身横綱は、郷土の英雄だった。

「平成最後の横綱」ながら、悔しくてもグッとこらえ、言い訳もせず、黙々と稽古に打ち込む。難病に苦しむ相撲好きの子どもがいると知れば、人知れず見舞いに行って励ます。昭和の香りを残す稀勢の里だからこそ、今度は親方として、自分以上に老若男女から愛される弟子を育てることに期待したい。【高田文太】

(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

原功「BOX!」

世界へ“追試”の岡田、復活期す岩佐に重要な一戦

2月10日(日本時間11日)と16日(日本時間17日)、日本のトップ選手が米国カリフォルニア州で相次いで“準世界戦”のリングに上がる。まず10日、主要4団体すべてで10位内にランクされるスーパー・ライト級の岡田博喜(29=角海老宝石)がフレズノで元WBO世界ライト級王者のレイムンド・ベルトラン(37=メキシコ)と対戦。16日には前IBF世界スーパー・バンタム級王者の岩佐亮佑(29=セレス)がロサンゼルスで同級5位のセサール・フアレス(27=メキシコ)と拳を交える。岡田と岩佐にとって、勝てば近い将来に世界戦が具体化する重要な一戦だ。

日本スーパー・ライト級王座を6度防衛後、WBOアジアパシフィック王座も獲得した実績を持つ岡田は昨年、米国の大手プロモーター、トップランク社と契約。9月には標的とするWBC世界同級タイトル戦の前座に出場してアルゼンチンの選手に10回判定勝ち、戦績を19戦全勝(13KO)に伸ばした。しかし、最終回にはダウンを喫するなど不本意な内容だった。そのため即世界挑戦とはいかず、今回のベルトラン戦がセットされた経緯がある。岡田にとっては“追試”の意味がある試合だが、極めてリスクの高いカードといえる。

ベルトランは20年のプロキャリアで45戦35勝(21KO)8敗1分1無効試合の戦績を残しているベテラン強打者で、かつて6階級制覇王者のマニー・パッキャオ(40=比:現WBA世界ウェルター級王者)のスパーリング・パートナーを務めていたこともある猛者だ。昨年8月に世界王座を失ったあと引退宣言をしたが翻意。岡田を倒せば2階級制覇の展望が開けるだけに、こちらも高いモチベーションを抱いているものと思われる。

17対2でベルトラン有利というオッズが出ているが、体格で勝る岡田が得意の左ジャブを突いて攻めれば勝機は広がりそうだ。

岩佐対フアレスはIBF世界スーパー・バンタム級挑戦者決定戦として行われる。昨年8月、TJドヘニー(32=アイルランド/豪)に12回判定負けで王座を失った岩佐にとっては、返り咲きのために通過しなければならない関門といえる。相手のフアレスは過去に2度の世界挑戦を経験している攻撃型の選手で、IBF5位のほかWBA3位、WBC12位、WBO7位と主要4団体すべてで挑戦圏内にいる実力者だ。

再起戦でもあるサウスポーの岩佐は、スピードとテクニックを駆使してフアレスの接近を阻みたいところだ。そのうえでチャンスには一気に攻めてジャッジと観客にアピールしたい。岡田同様、岩佐にとって楽な展開は予想しにくいカードだが、ドヘニーとの再戦に繋げるためにも奮起を期待したい。戦績は岩佐が28戦25勝(16KO)3敗、フアレスが29戦23勝(17KO)6敗。

リングにかける男たち

画びょう34万個、ファンとともに作ったデスマッチ

画鋲をリングにまく高橋匡哉(2019年1月14日撮影)

その晩、後楽園ホールの6メートル四方のリングは金色の海と化した。

1月14日に行われた大日本プロレスのBJW認定デスマッチヘビー級選手権。この日のために集められた画びょうの数は史上最多の34万4440個。ファンの愛がこもったその海の上で、王者高橋匡哉(32)と挑戦者伊東竜二(42)が、画びょうを用いてあの手この手で技をかけ合う。

その度に飛び散る画びょうに照明の光が反射し、きらきらと輝いた。両者の体も徐々に血の赤で染まっていく。加えて凶器に使われた蛍光灯の白い破片も彩りを添えた。激しいデスマッチでありながら、あまりに美しいその試合はその後もずっと筆者の頭から離れなかった。

SNSなどを通じ、34万もの画びょうが集まったその事象自体も非常に興味深かった。歴史に残るこの一戦について、2月頭、高橋、伊東の2人にあらためて話を聞いた。

「挑戦しないとだめ。飽きさせないのが仕事」と語る高橋匡哉(撮影・高場泉穂)

高橋 あの画びょう1つ1つがお客さんの気持ち。お客さんがいなかったら成立しませんでした。感謝しています。

異常な金色の舞台を作り上げたのは大日本の熱烈なファンだった。きっかけは1月2日。高橋がタイトルを初防衛した直後、次戦で戦う伊東のデビュー20周年にかけ、画びょう2万個マッチを提案。すると伊東が「全然足りない」と、これまでの最大5万個を超える20万個を要求した。

しかし、14日の試合までわずか12日間。提案した伊東でさえ「10万個でも集まればいいかな」と思っていたが、ファンの熱は伊東らの予想をはるかに超えていた。募集開始から2日後の1月4日。新木場での試合で、さっそく持ち込みがあった。

高橋 お客さんが僕のところに来て、「ネット通販で画びょう買い占めました。売り切れにしました」と。そのすぐ後に来たお客さんは「すいません、高橋さん。サイトで画びょう探したんですが、売り切れていました」と。買い占めた人そこにいるよと(笑い)。とんでもないことになるなと思いました。

そこから毎日のように横浜にある道場に郵送で画びょうが届いた。1週間もしないうちに数は軽く10万個を超え、試合前日と当日の持ち込みで34万個に達した。

「いい意味で、この人たちはイカれているなと思った」と高橋。画びょうが満杯につまった大型バケツ4個がリングの上に置かれ、それを2人がまくところから試合は始まった。

「20年、30年たってもデスマッチの中心にいたい」と語る伊東竜二(撮影・高場泉穂)

伊東 あんだけの量があったので、全部使わなきゃだめだろう、と。そんなつもりでした。まこうとしてバケツに手をかけた瞬間、重たいなぁ、と。何十キロとかあったと思います。

白いマットに画びょうが敷き詰められたが、それはただの敷物ではない。2人は画びょうをさまざまな方法で使った。特にベテラン伊東のアイデアが光った。

試合序盤に持ち込んだのは、粘着テープを巻き付けたバット。それに衣のように画びょうをまぶして、高橋を殴打した。凶器制作のきっかけはその数日前。大のプロレス好きで知られる芸人、東京03の豊本明長とテレビで共演。その際にアドバイスをもらったという。

伊東 豊本さんが(バットに)マグネットをつけてやったらどうだと提案をくれたんです。でも、マグネットだとふる度にいろんなところに飛んでいっちゃうので、粘着テープを購入しました。

高橋をあおむけに寝かせ、その上にスコップで画びょうをふりかけて、たたく。砂遊びのような攻めも披露した。

伊東 片付け用にスコップを使うといっていたので、試合後に使うぐらいなら試合中に使ってやろう、と。今までの画びょうマッチでは使ったことはなかったです。

趣味の読書や釣り、普段の生活のあらゆる場面で「プロレスに使えないかなと思って生きている」という伊東のひらめきがさえた。

試合は王者高橋が伊東をブレーンバスターで投げ、最後は蛍光灯の上にたたきつけて2度目の防衛に成功。試合後、会場は湿度のある熱気と、幸福感さえ漂う不思議な雰囲気に包まれた。

やぼな質問だと思いながら2人に聞いたが、画びょうはやっぱり相当痛いらしい。それでもデスマッチファイターは戦うことをやめない。「2度とやらなくていいかなと思いながら、50万個ぐらいでもいけるんじゃないかな、と思う気持ちもあります」と伊東は笑った。

凶器を用いるデスマッチは決してメジャーな形式ではない。流血を嫌う人も少なくないだろう。ただ、そこには体だけでは表現できない奥行きがある。大日本の登坂栄児社長はその魅力を「身近なものでお客様も同様に痛みを共有できる。戦うことが、生きているということを感じるものだと共感できる一つの試合形式ではないか」と語る。

今後も大日本プロレスでは観客とともに作り上げるデスマッチを続けるという。常軌を逸した企画に期待したい。【高場泉穂】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)

34万個画鋲デスマッチを終え、リングに転がる伊東竜二(奥)と高橋匡哉(2019年1月14日撮影)

大相撲裏話

新十両霧馬山が師匠の約束守り関取でモンゴル里帰り

新十両を決め部屋の前でポーズを取る霧馬山

関脇玉鷲(34=片男波)の初優勝で大相撲初場所の幕を閉じた角界に、また1人、モンゴル出身の関取が誕生した。1月30日の大相撲春場所(3月10日初日・エディオンアリーナ大阪)番付編成会議で、新十両に霧馬山(22=陸奥、本名ビャンブチュルン・ハグワスレン)が昇進した。95年初場所の旭鷲山(元小結)に始まり、これでモンゴル出身の関取は、約24年で34人目。1年に1人以上、関取を輩出していることになる。

現役関取最重量の逸ノ城(25=湊)、突き押し相撲を貫く玉鷲らを除けば、柔軟性を身上に軽量でしなやかな身のこなし、多彩な技、俊敏性を生かしたスピード、四つ相撲など、モンゴル出身力士は似通った武器を身につけている。霧馬山も入門時94キロの体重(身長は184センチ)を、無理なく増やし130キロで新十両昇進を果たした。124キロで大関昇進を果たした師匠の陸奥親方(元大関霧島)も「稽古やトレーニングをやりながら自然と大きくなっていくのがベスト。寝てばかりで体重を上げても意味がない。自分に合った体重があればいい」と、ここまでの体の成長ぶりには合格点をつけた。

巨漢の小錦を力相撲でねじ伏せた師匠のように、鋼のような筋肉質の体で、まわしを引きつけて力を発揮する。霧馬山は目標とする力士に、同郷の先輩横綱の日馬富士、白鵬、鶴竜のほかに「まわしを取って力を出す、千代の富士関(元横綱=故先代九重親方)も自分のタイプ」と言う。闘争心やスピードは日馬富士、反射神経に裏付けされた抜群の相撲勘の良さは白鵬、強靱(きょうじん)な足腰と無類のかいな力は千代の富士…。そんな究極の力士像を目指す。

性格は「優しい」と陸奥親方。ヒジのケガで低迷した時は、人知れず涙を流すこともあった。入門時には師匠から「関取になるまでモンゴルに帰るな」と約束され「ハイ」と即答したものの「なんで返事をしちゃったんだろう」と、郷愁に駆られ悔やむ日もあった。昨年11月の九州場所前のこと。そんな愛息の胸中を察してか、モンゴルから両親と兄、妹が来日した。約4年ぶりの再会を果たし「ボクのちょんまげ姿を見てビックリしてました。“えーっ”て。一緒に食事とかしてリラックスできました。だから、あの九州から(成績が)いいんです」と霧馬山。西幕下12枚目の九州場所で6勝1敗。そして西幕下筆頭に番付を上げた初場所で4勝3敗と勝ち越し、念願の関取の座を射止めた。

陸奥部屋にとっても、08年初場所の霧の若以来、11年ぶりの新十両。部屋の関取衆も、八百長問題で2人が引退勧告処分を受けたため、11年5月の技量審査場所の番付を最後に、関取衆が途絶えていたが、そのブランクも埋めた。師匠にとっては、さぞや感慨深いものがあろうと思いきや「いや、それも一瞬(の喜び)ですよ。もう頭は次の場所にいってます。自分が現役の時も、勝って喜ぶのは花道を過ぎるぐらいで、うれしいのはそこまで。支度部屋に戻ったら明日のことを考えていましたから」と、すでに春場所を見据えている。霧馬山本人も喜ぶひまはない。

ただ、1つだけ自分へのご褒美として、喜びを実行に移す。入門時の師匠との約束を果たし、2月13日にモンゴルへ里帰りすることだ。17日には再来日する慌ただしいスケジュールだが、新十両昇進の報告を電話でした時、泣いていた母エンフゲルさん(47=内科医)とも再会できる。「日本から何かお土産を買って帰る?」の問いかけに「この自分が(何にも代え難い)土産です」と即答した孝行息子。氷点下20度の故郷で、温かな家族のぬくもりを感じて再び精進の日々が始まる。【渡辺佳彦】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

原功「BOX!」

佳境に入る“ウェルター級ウォーズ”最強は誰だ

147ポンド(約66.6キロ)を体重リミットとするウェルター級が年初から賑やかだ。すでに1月にWBAレギュラー王者のマニー・パッキャオ(40=比)とWBAスーパー王者のキース・サーマン(30=米)が防衛に成功しており、遠からず団体内の統一戦が期待される状況といえる。このあと3月、4月にも他団体王者たちの試合が組まれており、スター選手が集結している「ウェルター級ウォーズ」は佳境に入っていくことになる。

1月19日、6階級制覇の実績を持つパッキャオ(70戦61勝39KO7敗2分)は元4階級制覇王者のエイドリアン・ブローナー(29=米:39戦33勝24KO4敗1分1無効試合)を大差の12回判定で退け、昨年7月に獲得した王座の初防衛を果たした。パッキャオは昨年12月に40歳になったが、ブローナー戦では最後まで手数もスタミナも落ちず、まだまだトップで十分にやっていけることを証明した。

その1週間後の26日、WBAスーパー王者のサーマン(30戦29勝22KO1無効試合)はホセシト・ロペス(34=米:45戦36勝19KO8敗)に12回判定勝ちを収め、暫定王者時代からの防衛回数を8に伸ばした。17年3月以降、肘や拳の負傷で2年近くを休養に充てることになったサーマンだが、この試合でリングに戻ってきた。

このあと3月9日にはWBC王者のショーン・ポーター(31=米:32戦29勝17KO2敗1分)が、08年北京オリンピック銅メダリストのヨルデニス・ウガス(32=キューバ:26戦23勝11KO3敗)を迎え撃つ。攻撃型のポーター、技巧派のウガスという組み合わせだけに激しいペース争いが展開されそうだが、プロでの経験値と馬力で勝るポーターが9対2のオッズで有利とみられている。

その1週間後、3月16日にはエロール・スペンス(28=米:24戦全勝21KO)対マイキー・ガルシア(31=米:39戦全勝30KO)のIBFタイトルマッチが行われる。すでにスーパースターへの道を歩み始めている王者のスペンスと、勝てば5階級制覇となる正統派パンチャーのガルシア。4対1のオッズが出ているように体格とパワーで勝るサウスポーのスペンスが有利とみられているが、ガルシアの右ストレートが番狂わせを起こす可能性もある。

4月20日にはWBO王者のテレンス・クロフォード(31=米:34戦全勝25KO)が、元スーパー・ライト級王者のアミール・カーン(32=英:37戦33勝20KO4敗)の挑戦を受ける。左右どちらの構えでも戦えるスイッチヒッターのクロフォードと、スピードと右ストレートの切れに定評のあるカーン。3階級制覇を成し遂げているクロフォード有利は不動だが、カーンの右ストレートには注意が必要だろう。オッズは6対1でクロフォード有利と出ている。

これだけのスター選手が集結しているだけに、ファンの注目は「ウェルター級で誰が最強なのか」という点に絞られている。各団体の思惑に加えマネージメントやプロモーターの問題もあり王座統一戦は容易ではないだろうが、選手と関係者はファンの要望に耳を傾け最大限の努力をするべきだろう。3月と4月の試合を楽しみに待つと同時に、5月以降にどんなカードが組まれていくのか、大いに期待したい。

リングにかける男たち

「下町ロケット」の魅力に重なった坂本真宏の情熱

8回、坂本はムザラネ(右)から顔面にパンチを受ける(撮影・加藤哉)

池井戸潤原作のテレビドラマが好きだ。特にTBS製作のやつで、毎回気持ちよく泣かせてもらう。正月の特別版で「下町ロケット ヤタガラス編」が終わってしまったので、再放送を探していると、まだ見ていなかった「陸王」を一挙放送していたから、全部録画して一気見した。

「本当の負けってのは、挑戦することをやめた時だ。挑戦しなけりゃ負けもなければ、勝ちもない」。

役所広司演じる主人公の足袋店店主が、資金難を押してランニングシューズの開発続行を決断した時、社員の前で語ったセリフ。「ええ言葉やなあ」と、グスグスしながら見ていて、あるボクサーを思い出した。昨年の大みそか、マカオでIBF世界フライ級王座に挑み、判定負けした坂本真宏だ。

完敗、いや惨敗といえた。10回終了時、ドクターストップによるTKO負け。王者ムザラネに。必死のガードの隙間をぬう左ジャブを浴び、逆に坂本の左ジャブはことごとくガードにはね返された。坂本は「ガードの上からでも、効きました。今までジャブで、ここまで目が腫れたことはなかったです」と言った。どす黒く腫れ上がった右目の奥に、光るものがあった。

坂本は大阪市大工学部の大学院生で、日本ボクシング界初の国公立大現役大学院生による世界挑戦という話題があった。坂本は1度決まったロボット工学系企業の内定を蹴って、勝負に出た。所属する六島ジムの枝川会長は王者からのオファーを受け「坂本にチャンスをやりたい」と決断。南アフリカ在住の王者陣営の旅費、ファイトマネー、IBFへの負担金など総額数千万円は必要だが、テレビ中継がつかず、マカオ開催のためチケット収入も見込めない。会長は資金集めに奔走、大阪市大OBが役員などを務める企業を中心に14社のスポンサーを集め、足りない分は持ち出し覚悟で実現にこぎつけた。

マカオの宿泊先は、カジノの街らしい高級ホテルとはほど遠い、下町にある安宿だった。現地での公開練習、予備検診などのイベント後取材は、坂本の背後にスポンサー14社のネームを入れた紙を、会長と武市トレーナーが両サイドを手でつかんで広げ、メディアに露出するよう努力した。陣営のジャージーも前部に14社のロゴがあった。いずれも、武市トレーナーが手作業で貼り付けた。まさに「手作りの世界戦」だった。

世界王者と世界14位。力の差は明白だったかもしれない。ジャッジ3人の10回までの採点は100-90、99-91、92-92。私が参考でつけていた採点も100-90。フルマークで王者がとっていた。坂本は試合後の第一声で、謝罪した。「まず、応援していただいたたくさんの方々に申し訳ないです」。枝川会長も持ち前のエネルギッシュさがさすがに影をひそめ「真剣勝負やしね。仕方ない」と赤い目で話した。

試合2日前の予備検診後、坂本と「下町ロケット」の話をした。「僕も見てますわ。おもろいですよね」-。池井戸潤原作のドラマの魅力は、何より「情熱」にある。世界王座奪取には失敗した。でも、世界王座に向けて疾走した坂本、枝川会長らの情熱には、グッと来た。【加藤裕一】

大相撲裏話

大成道が兄・笹山の引退に花道 関取復帰を手中に

前日の取組後に引退した兄の笹山(右)と記念撮影する大成道(撮影・小沢裕)

今場所の幕下上位は、兄弟力士に注目が集まった。十両貴源治の双子の兄で、東3枚目貴ノ富士(21=千賀ノ浦)は貴公俊のしこ名を改名。すでに勝ち越しを決め、再十両も視野に入ってきた。7戦全勝で幕下優勝を果たした西3枚目若元春(25)は、荒汐部屋「大波3兄弟」の次男。新十両は確実で、来場所は三男の弟、十両若隆景との兄弟関取が誕生しそうだ。

その中でも大成道(26=木瀬)は、特別な思いを抱いて今場所に臨んだ。東の筆頭で勝ち越しを決めて、来場所の関取復帰は濃厚。「兄が最後だったので…。花道を添えてあげたかった」。3学年上の兄、笹山(29)は今場所限りで引退。兄は3年前に幕下の中腹まで番付を上げたが、関取の夢はかなわなかった。「相撲を始めた時も、相撲界に入った時も、常に兄の背中を追っていました。入門した時も、仕事を丁寧に教えてくれて…」。小学校1年生の時、相撲道場に誘ってくれたのは兄。高校も入門部屋も兄を追った。だからこそ、半年前に引退の意向を聞いて「関取として送り出したい」と、結果で感謝を示したかった。兄は今後、都内で地元、青森の郷土料理を扱う飲食店で働く。「これからも兄と地元を盛り上げたい」。角界を離れても、兄弟の絆はつながっている。

【佐藤礼征】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

大相撲裏話

41代式守伊之助59歳 日課はスクワット100回

17日、初場所5日目の取り直しの一番で錦木(右)から土俵際に追い込まれた白鵬(中央)をよける行司の式守伊之助

波乱の多かった序盤戦も、心穏やかだった。立行司の41代式守伊之助(高田川)のことだ。3日目から3日連続で裁いた取組に物言いがついた。取り直しとなった5日目の結びの一番では、土俵外に落ちながら軍配を上げるドタバタ劇。それでも「見た目は必死でも中身は冷静です」と、心の平静を強調した。

今場所から行司の最高位、立行司に昇進した。40代式守伊之助が17年12月の巡業中、若手行司にセクハラ行為をした責任を取って退職。昨年12月25日付で式守勘太夫が41代として昇進することが、同9月の理事会で決まった。先代について「あの人は研究熱心で、今まで何度も行司としての教えを請いました」と振り返った。

59歳。「人間のバランスは体の中にある」と、日々の鍛錬で年齢を補う。朝1時間のウオーキングとスクワット100回が日課。土俵上の攻防に巻き込まれず、取組の細部を見渡せる好位置へ、最短距離で移動することが重要だ。「若くはないからこそ最低限のスピードが必要」と自覚している。力士でいえば、新横綱の地位。年齢を言い訳にせず、最高位として精進している。

【佐藤礼征】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

大相撲裏話

あと1回… 床鳴「稀勢の里の大銀杏」思う

18年9月、稀勢の里(手前)と床鳴

年寄荒磯を襲名した元横綱稀勢の里の引退に、入門以来、まげを結ってきた床山の床鳴(43=田子ノ浦)は、人一倍さみしそうにしていた。引退から数日後の朝稽古後のこと。「横綱の大銀杏(おおいちょう)を結うのも、あと1回か…」とつぶやいた。原則として、9月29日の断髪式が今後唯一の大銀杏になる。こみ上げるものがあった。

荒磯親方が初めて大銀杏を結った日のことは、今も鮮明に覚えているという。「まだ幕下でしたが、巡業で初めて十両の土俵に上がる時でした。当時から、すごく大銀杏の似合う人でした」。当時から風格が漂っていたという。当時は17歳、四股名は本名の「萩原」だった。

同親方が入門したころは「剛毛というか、髪の量が今の2倍ほどあった」と振り返る。だが「激しい稽古ですり切れて、量も少なくなって、髪質も細くなる。でも、それが出世にはつきものですから」。2度の優勝時も、引退を決断した今場所3日目も、稀勢の里は常に物静かな床鳴にまげを結ってもらい、取組後の興奮を抑えてきた。荒磯親方になった今も、名残惜しそうに毎日、まげを整えに部屋に現れている。【高田文太】

原功「BOX!」

井上岳志が絶対王者候補ムンギア挑戦「勝つイメージできている」

WBO世界スーパー・ウェルター級3位の井上岳志(29=ワールドスポーツ)が26日(日本時間27日)、米国テキサス州ヒューストンで同級王者のハイメ・ムンギア(22=メキシコ)に挑戦する。近い将来のスーパースター候補と目されているムンギアが相手だけに、井上にとって厳しい戦いが予想されている。しかし、井上は「超接近戦を仕掛けてタイトルを持ち帰る。勝つイメージはできている」と自信をみせている。

154ポンド(約69.8キロ)を体重上限とするスーパー・ウェルター級は世界的な選手層が厚いことで知られる。80年代以降、シュガー・レイ・レナード、トーマス・ハーンズ、オスカー・デラ・ホーヤ、フロイド・メイウェザー(いずれも米国)、サウル・カネロ・アルバレス(28=メキシコ)といった歴史に残るような名王者たちもベルトを保持していた階級だ。また、マニー・パッキャオ(40=フィリピン)が6階級目の王座獲得を果たしたクラスでもある。

現在、そんな階級でムンギアはWBO王座に君臨しているわけだが、この22歳は世界王者でありながら成長途上にあるとみられている。このまま伸びていけば2~3年後には手のつけられない絶対王者になる可能性があると期待されているのだ。

ムンギアは11歳でボクシングを始め、アマチュアで120戦111勝9敗を記録。13年7月に16歳でプロデビュー後は5年半に31戦して全勝(26KO)をマークしている。約84パーセントのKO率が示すとおりの強打者で、183センチの長身から繰り出す右ストレートに加え左フックの上下打ちなど攻撃は多彩だ。昨年5月の戴冠試合では4回TKO勝ちを収めるまでに4度のダウンを奪い、元王者を相手にしての初防衛戦は判定勝ちに留まったが、6回にはダウンを奪っている。V2戦では3回TKO勝ちを収めている。右を顔面に決めて倒したあと左フックをボディにめり込ませてダウンを追加するという圧勝だった。

対する井上はアマチュアで55戦(39勝21KO16敗)したあと14年8月にプロに転向。日本王座、東洋太平洋王座とWBOアジアパシフィック王座を獲得した試合を含め、4年半で14戦13勝(7KO)1分の戦績を収めている。身長は174センチで、その体を低く構えて接近、ボディから顔面にパンチを打ち分けるスタイルを持つ。

井上は「ムンギアは体にバネがあってパンチは群を抜いて強い。中間距離の戦いでは相手の方が上なので、体をつけた超接近戦に持ち込みたい」と話す。ワールドスポーツジムの齊田竜也会長は「相手が左を打ってくるところに右を合わせる。そして接近戦でボディを攻めたい」と策の一端を明かす。陣営は「ヒット&ジョロウ蜘蛛作戦」と名付けた近距離での戦いに活路を見出すつもりだ。

16対1というオッズが出ているように、飛ぶ鳥を落とす勢いのムンギア有利は動かしがたいが、若い王者は攻防ともにまだ粗削りでもある。そこに井上が付け入るスキがありそうだ。

日本人ボクサーとしては昨年7月、伊藤雅雪(28=伴流)が37年ぶりに米国(フロリダ州キシミー)で世界王座(WBOスーパー・フェザー級)を獲得したが、1カ月後にはアリゾナ州グレンデールでWBOスーパー・バンタム級王座に挑んだ大竹秀典(37=金子)が1回TKO負け。10月には村田諒太(33=帝拳)がネバダ州ラスベガスでWBA世界ミドル級王座を失い、今年1月19日には高橋竜平(29=横浜光)がニューヨークでIBFスーパー・バンタム級王座に挑んで11回TKO負けと、日本勢は伊藤以降、米国のリングで結果を残せていない。井上はその流れをも止め、世界王座を持ち帰ることができるか。井上が勝てば日本では輪島功一(三迫)、工藤政志(熊谷)、三原正(三迫)、石田順裕(金沢)に次いで5人目のスーパー・ウェルター級世界王者となる。

リングにかける男たち

佐山サトルはタイガーマスクになることを断っていた

初代タイガーマスクの佐山サトル(2015年6月5日撮影)

昭和の終わりに空前のプロレスブームを巻き起こしたのが、初代タイガーマスク(佐山サトル=61)だった。戦後の力道山に始まるプロレスの隆盛は、ジャイアント馬場、アントニオ猪木の両雄時代を経て、タイガーマスク人気で極まったといえる。テレビ視聴率が毎回25%を超え、会場はどこも超満員。アニメ「タイガーマスク」から抜け出したヒーローは、アニメを超え、社会現象となった。

タイガーマスク時代の話を佐山に聞くと「実は、タイガーになることに抵抗があって、断っていたんですよ」と意外な言葉が返ってきた。75年7月に新日本プロレスに入門した佐山は、メキシコ修業を経て、英国でサミー・リーとして活躍。英国でも大人気で、ベルト挑戦を目前にしていた。

そんな佐山に、新日本から「もう1試合を決めたから。それを外すと、猪木の顔をつぶすことになる」と最後通告を受け帰国。81年4月23日に、蔵前国技館でダイナマイト・キッドとタイガーマスクの試合が行われた。4次元プロレス、4次元殺法と呼ばれたタイガーのプロレスは観客の度肝を抜き、これまでとは違う新しいスタイルとして、空前のブームを起こした。

試合会場や宿泊先のホテル、合宿所などタイガーの行き先はファンであふれた。新日本は素顔がばれないよう徹底ガードした。そんな騒動の中、佐山は「人気はすごかったですけど、素顔ではなくマスクをかぶっているので、それほど実感はなかったんですよ」と話す。実際、師匠アントニオ猪木の付け人を務めていたこともあり、猪木と同行する際は素顔でガード役を務め、誰からも気付かれることがなかったという。

アントニオ猪木にあこがれて、新日本に入った佐山は、猪木が進める格闘技路線に傾倒していた。道場では先輩の藤原喜明と総合格闘技まがいの練習を続けていた。実際猪木からは「お前は、格闘技路線の第1号にする」と約束されていた。しかし、メキシコ修業、英国遠征と、プロレスでの才能が評価され、思いとは違うところで、ヒーローになってしまった。「実際、26歳ぐらいでプロレスをやめて、20~30年かけて新しい格闘技をつくっていこうという思いがあった。ボクの中には(プロレスの)職人芸と格闘技の2つの自分がいたんです」。

見ただけで、ワザを自分のものとして使うことができる天性の運動能力。メキシコのホテルで、マットレスをはがして床に置き、サイドテーブルから練習して習得したサマーソルト。「猪木さんのすごいところが、ワザや動きがなくても勝負でお客さんを引きつけられるところ。それにワザが加わったのがタイガーマスク」と佐山は説明した。

タイガーマスクの活躍は、83年8月に、新日本に契約解除を通告し、引退を表明して突然、終わりを告げた。アニメの原作者梶原一騎の逮捕による改名問題浮上と、会社経営陣との対立が原因だった。タイガーマスク時代の2年4カ月。通算成績は155勝1敗9分け。

【桝田朗】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「リングにかける男たち」)

大相撲裏話

「与之吉さんは大丈夫ですか?」両陛下が驚きの質問

大相撲初場所8日目をご観戦に訪れ取組後に拍手をされる天皇、皇后両陛下。後方は八角理事長(撮影・小沢裕)

この日は平成では23回目にして最後の天覧相撲。ロイヤルシートに着席された天皇陛下は、説明役の八角理事長(元横綱北勝海)に「今日はありがとう」と切り出され、皇后陛下は「お元気でしたか」と声をかけられた。この言葉に同理事長は「頭の中が真っ白になりました」。昨年は不祥事もありご招待を取り下げ。2年の空白を皇后陛下の温かなお言葉が埋めてくれた。さらに両陛下の、関心の高さをうかがわせる質問に驚いた。「与之吉さんは大丈夫ですか?」。神経疾患のギラン・バレー症候群で5場所連続休場し、昨年11月の九州場所で復帰した幕内格行司の式守与之吉の病状さえも把握されていた。

御嶽海や鶴竜ら休場中の力士のケガを案じ、外国人力士の出身地も熟知され、一番一番に拍手を送られた両陛下。元横綱稀勢の里の荒磯親方についても「今後はどうするのですか」「お元気ですか」と興味を示され同理事長から「今年中に断髪式をして(将来的に)部屋を興すと思います」と説明された。結びのふれで立行司の式守伊之助が敬語を使う意味で「この相撲一番にて本日の結びにござります」と発した。藤島審判長(元大関武双山)は「感激しながらやらせていただいた」と感無量の様子。江戸時代に徳川将軍が観戦した上覧相撲が始まりとされ、昭和天皇は51回のご観覧があった天覧相撲。新元号になっても国技大相撲には、切っても切り離せない行事として存続するだろう。

式守与之吉 えっ! 陛下が気にしてくださったんですか? ありがたいです。びっくりですね。光栄で…、今日は眠れないですよ。

八角理事長(元横綱北勝海) (両陛下は)ひじょうに楽しまれていた感じを受けました。力士のケガ、健康面を心配してくださるのは本当にありがたい。来ていただいて本当に感謝しています。力士は緊張からか熱戦よりアッサリした相撲が多かった。

式守与之吉
大相撲裏話

震災の日に生まれた照強が希望 今年も被災地照らす

初場所6日目、照強は引き落としで徳勝龍(左)を下し、胸を張る(撮影・小沢裕)

東十両筆頭照強(24=伊勢ケ浜)が24歳の誕生日から一夜明け、ご機嫌だ。「昨日は鶴太郎さんにちょっと会いました」。俳優や芸術家としてマルチな活躍をする片岡鶴太郎(64)。6年前には、同じ伊勢ケ浜一門の横綱白鵬に化粧まわしを贈呈したことがある。そんな縁もある鶴太郎から、前夜はお酒をプレゼントされた。「『期待しているよ』と。やっぱり励みになりますね」。

阪神・淡路大震災の95年1月17日、震源に近い兵庫・洲本市の病院で生まれた。17日の朝は神棚の前で手を合わせ、本場所の土俵に臨み、関取としては初のバースデー白星を挙げた。場所前には震災で親族を亡くした人たちから、今も激励の手紙が届くという。「それで震災のことを実感できる。淡路島の多くの人が喜んでくれれば」。6日目を終え5勝1敗。勝ち越せば新入幕が大きく近づく。「あんまり意識していない。それこそ一番一番ですよ」。もう24歳だから、あれから24年がたつ。身長169センチの希望が、今年も淡路を、被災地を明るく照らす。【佐藤礼征】

大相撲裏話

売店も大忙し「稀勢の里弁当」は連日売り切れ

16日、引退会見で涙を拭う稀勢の里

稀勢の里の引退で国技館の売店も多忙を極めている。大関以上の力士の名前が冠してある弁当が置かれているが、中でも「稀勢の里弁当」は連日の売り切れ。引退が発表された16日は、普段より1時間ほど早い午前10時半には完売した。

2階席東方の女性店員(53)によると「稀勢関のお弁当を買い求めようと、今日はお客さんがバーって走ってきたので驚きました。他の売店も売り切れているみたいで『売れ残っていませんか?』とたくさん電話がかかってきます」と証言。5日目以降、一部売店では稀勢の里弁当の発注がなくなるという。この日が最後かもしれない。

その一方で、相撲錦絵師の木下大門氏が描いた錦絵は来場所以降も残るという。「今場所は錦木関、松鳳山関、新入幕の矢後関の錦絵も追加されました。ぜひお買い求め下さい」。稀勢の里ファンは一安心か。【佐藤礼征】

大相撲裏話

新成人の幕下2枚目竜虎、勝ち越して新十両の祝杯を

貴ノ富士(左)を攻める竜虎(撮影・河田真司)

「成人の日」の14日、角界の新成人は土俵の上で黙々と戦っていた。

新成人で番付最高位の西幕下2枚目竜虎(20=尾上)は「自分が最初に関取になりたい」と、同学年の関取一番乗りへ意欲を見せる。おじは師匠の尾上親方(元小結浜ノ嶋)。親戚だけに「(稽古では)みんなより厳しく指導してもらっている」と苦笑いを浮かべる。「上では四つ相撲は通じない」と、四股などの下半身強化で前に出る力を磨いている。

お酒はめったに口にしないが、今場所勝ち越せば「すごく酒が強い」という師匠と乾杯する予定。新十両の祝杯となれば、味わい深い一口となりそうだ。

序ノ口の服部桜(20=式秀)も大人の仲間入りを果たした。昨年の名古屋場所で、自身の連敗を89でストップ。昨年7月の20歳の誕生日に、師匠の式秀親方(元前頭北桜)からビールを勧められ「大人になったんだな」と実感した。

酒の強さは「まあまあ普通のはず」という。力士生活も4年目に突入し、日課は腕立て伏せ100回。「年間で2、3勝できれば」と19年の抱負を語った。【佐藤礼征】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)