村田破ったブラントが初防衛濃厚、どうなるミドル級トップ戦線
昨年10月、村田諒太(33=帝拳)を大差の12回判定で破ってWBA世界ミドル級王者になったロブ・ブラント(28=米)の初防衛戦が15日(日本時間16日)、同級8位のカーサン・バイサングロフ(21=露)を相手に米国ミネソタ州ヒンクリーで行われる。バイサングロフは17戦全勝(7KO)のホープだが、村田に勝って自信を増しているブラントの防衛が濃厚とみられる。
ブラントは村田戦では9対2のオッズで不利とみられていたが、試合では巧みな位置どりと手数でポイントをかき集めた。パンチの多くは軽打だったが、放った総数は1262発、ヒット数は356発だった。ミドル級の世界戦では12回まで戦った場合、600発前後が平均といわれるなか、いかにブラントが多くのパンチを繰り出したのかが分かるデータといえる。敗れた村田も774発を打ち、そのうち180発を当てたが及ばなかった。
村田戦後、新王者のブラント(25戦24勝16KO1敗)には、12年ロンドン・オリンピック(五輪)決勝で村田に惜敗したエスキーバ・ファルカン(29=ブラジル)との初防衛戦プランが浮上したが、これは見送りとなった。ブラントの地元での試合をファルカンが嫌ったためとも伝えられる。
代わりに挑戦することになったのがバイサングロフだ。このロシア出身の21歳は185センチの長身で、ガードを比較的高く上げた構えから左ジャブを突き、右フックや左ボディブローに繋げる攻撃パターンを持っている。機をみて左構えにスイッチすることもある。
ただ、41パーセントのKO率が示すようにパワーには欠ける。12対1というオッズが出ているように、ブラントが手数とテクニックで試合を支配したすえ中盤から終盤でストップする可能性が高そうだ。
試合以上に注目したいのは、ブラントとミドル級トップ戦線の今後である。現在、ミドル級ではWBAレギュラー王者(ブラント)の上にスーパー王座が設けられており、そこにサウル・カネロ・アルバレス(28=メキシコ)が君臨している。WBCには正王者アルバレスと暫定王者ジャモール・チャーロ(28=米)がおり、IBFではダニエル・ジェイコブス(32=米)、WBOではデメトリアス・アンドレイド(30=米)がそれぞれ王座に君臨している。このうちアルバレスとジェイコブスは5月に統一戦を行うことが決まっている。その勝者がアンドレイドとの4団体統一戦に向かうというプランがある。この3人はDAZNと試合放映の契約を交わしているため、マッチメークの面で壁が少ないのだ。
アルバレスと2度にわたって大接戦を演じた元3団体統一王者のゲンナディ・ゴロフキン(36=カザフスタン)も返り咲きを狙っている。そのゴロフキンにはDAZNがアンドレイド戦とアルバレスとの第3戦で合計約50億円という条件で契約を持ちかけており、その行方が注目されている。
一方、WBC暫定王者のチャーロと契約しているPBC(プレミア・ボクシング・チャンピオンシップ)もゴロフキンに条件提示をして接近していると伝えられる。また、村田とファルカンを擁するトップランク社&ESPNチームは、村田戦後にブラントと契約を交わして王座の一角を占めている。
ゴロフキンの例が示すように米国ではボクシングを放送する前出3グループがトップ選手の囲い込みに躍起になっており、契約下の選手同士でカードを組んでいく傾向が顕著になっている。したがって、たとえば「アルバレス対チャーロ」は、よほどのウルトラCがない限り実現は難しいのが現実だ。
リング外が巴戦の様相になっている現在、ブラントの今後の対戦候補は自ずと絞られてくる。したがって、再起戦で勝利を収めることが大前提になるが、村田が王座奪回を狙ってブラントと再び拳を交える可能性は決して低くはないのだ。そういった意味でも、まずは15日(日本時間16日)に行われるブラント対バイサングロフに要注目といえる。